ウルトラマンν/ニュー    作:かいてつろー

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ウルトラマンν/ニュー #1

ある晴れた日の昼過ぎ。

東京の街に暮らす創 快/ハジメカイという青年は自宅の居間に置かれたテレビに映されるニュース番組を眺めていた。

煙草にジッポライターで火を点けて煙を吐き出す。

 

『ここでConnect ONEの到着ですっ、ウルトラマンを救いました……!』

 

そこには昔からこの世界に度々出現する凶悪な怪獣とそれらと戦う防衛組織Connect ONE、そしてヒーローと謳われる謎の巨人"ウルトラマン"が映されていた。

 

「ジュワッ……!!」

 

ウルトラマンのピンチを仲間であるConnect ONEの兵器たちが援護する事で救い共に見事怪獣を撃破した所が丁度映し出された所である。

 

『たった今、怪獣が撃破されました!』

 

キャスターの喜ぶ声が響く中、快は複雑そうな面持ちをしている。

するとそんな快に応えるようにある幻聴が脳内に響いた。

 

 

『君は大丈夫、大丈夫だから!』

 

 

そのようなポジティブな声を聞く快の表情は更に複雑になった。

この反応から幻聴には慣れているのだろうか。

 

「っ……」

 

そこへ姉である美宇がやって来てテレビをリモコンで消した。

 

「あ」

 

「もうバイトの時間でしょ、いつまで見てるの」

 

虚ろな表情の快を不安視しながら美宇は急ぐように促した。

 

「見てたのに」

 

「これ録画だし何回も見てるやつでしょ、どんだけ未練あるの……」

 

どうやら今見ていた映像は録画らしい。

未練があるとはどう言った意味なのだろうか。

 

「未練っていうかさ、瀬川が頑張ってるし応援を……」

 

「応援してるような表情には見えないけど……」

 

これ以上何も言い返せない快。

逃げるように話を逸らした。

 

「も、もうバイト行くから……っ」

 

「そう、行ってらっしゃい」

 

使い込まれた灰皿に煙草を押し付け火を消す。

美宇は快とは違い仕事から帰って来たため逆に煙草を吸い始めた。

こちらは安物の百円ライターで火を点けている。

 

「じゃあ行って来ます」

 

そのまま快は玄関へ向かい上着を羽織り靴を履きバイト先へと向かったのだった。

 

 

 

バイト先である喫茶店"とぅえるぶ"に到着した快。

シャツの上からエプロンを羽織り出勤すると店に置かれたテレビから流れる番組でウルトラマン特集をやっていた。

それを見ていた客たちも喜んでいる。

 

「お、ウルトラマン特集じゃん!」

 

「この間すごかったもんなぁ」

 

ここは喫煙可能店なので客たちも煙草を片手に談笑している。

その様子をカウンター内の厨房から羨ましそうに眺めている快。

すると先に出勤していた同僚の女性、"河島咲希/カワシマサキ"に声を掛けられる。

 

「ちょっと、来たなら手ぇ動かして」

 

「あ、ごめん……」

 

彼女とは高校の同級生であるためタメ口で話せている。

しかしとても距離が近いと言える仲では無かった。

 

「まったく、まだウルトラマンとかそこら辺に憧れてんの?」

 

「いいだろ別に……」

 

下げられたカップや皿を洗いながら快は怪訝そうに答える。

すると咲希は少し見下すように邪悪な笑みを浮かべて言った。

 

「まだ"何者か"にはなれてない?」

 

「おい……」

 

痛い所を突かれたような反応を見せる快。

 

「なれてないから憧れるんだろ……」

 

不服そうに声を小さくしながら呟く。

皿を洗うスピードも落ちていた。

 

「まだなりたいと思う?」

 

咲希のその問いに快は目を丸くして答えた。

 

「……なりたいよそりゃ、"何者かに"さ」

 

羨望の眼差しでテレビ画面を見つめながら呟くと同じようにテレビを見ていた常連の客から声を掛けられる。

 

「なぁ、快くんの友達Connect ONEにいるんだろ?」

 

「ウルトラマンの裏話とか聞いてない?」

 

親友である瀬川のコネがあると思ったのか散々質問をされる。

しかしそれは快にとっては残酷な質問であった。

何故ならConnect ONEの入隊試験には快だけが落ちているのだから。

 

「知らないですよ……」

 

少し不機嫌になってから快は小さく低い声で答える。

そのまま仕事に戻った。

 

「はぁ、このままじゃいつまでもなれないでしょ……」

 

咲希はそんな快の様子を見ながらこっそりとスマホを取り出して隠れながら弄った。

 

 

そんな時、突如として緊急ニュースが入る。

テレビ画面が切り替わりキャスターが一人映し出された。

 

『緊急速報です、怪獣が出現しました。近隣の皆様は直ちに避難して下さい』

 

なんとこのタイミングで怪獣が出現したという。

割と近くだったため一同は避難し出す。

 

「ここから見えるかな?」

 

「開けた場所なら見えんじゃね?」

 

そう言いながら焦らずゆっくり店を出て行く中に快もいた。

そして店を出て上の方を見るとかなり遠くの方で小さく怪獣が暴れている姿が確認できた。

 

「この距離でもあの大きさかよ」

 

「怖ええ」

 

そう言いながらも見続ける彼らを咲希は店員として誘導しようとする。

そこへ。

 

「ジュワッ!!」

 

怪獣を見ている彼らの真上を現れたウルトラマンが飛んで通り過ぎた。

凄まじい突風が起こり彼らの髪や服が大きく揺れる。

 

「おぉウルトラマーン!!」

 

「待ってたぜー!」

 

そして見事に怪獣へ飛び蹴りを決めた。

小さな鳴き声が聞こえる。

 

「お、また来たぞ!」

 

ウルトラマンに続くようにConnect ONEの兵器たちも現れた。

飛行型のウィング・クロウ、陸戦型のライド・スネーク、巨大戦車のタンク・タイタン、スピード重視の飛行型マッハ・ピジョン。

そしてそれらを束ねるキャリー・マザーがやって来る。

 

「瀬川……」

 

その兵器たちを見た快は呟いた。

あの中の兵器、マッハ・ピジョンには親友である瀬川が搭乗しているのである。

羨望の眼差しで視線を追って行く快であった。

 

 

一方ここはConnect ONE兵器マッハ・ピジョンのコックピットの内部。

隊員である瀬川抗矢は操縦桿を握り怪獣を視界に捉えていた。

 

「マッハ・ピジョン、目標を捕捉!」

 

レーダーの中心に怪獣を捉えて指示を待つ。

すると無線機に隊長である名倉から攻撃司令が届いた。

 

「全員配置についたな、ウルトラマンを援護するぞ!」

 

そして一斉に攻撃を開始する。

 

「撃てぇぇーーーっ!!!」

 

各四機から弾丸が連射される。

それらは一直線に怪獣へ向かい全弾命中。

大ダメージを与えて見事にウルトラマンの危機を救った。

 

「グギャァァァッ……!!」

 

悲痛な雄叫びをあげる怪獣。

その隙をウルトラマンは見逃さない。

 

「デェヤッ!!」

 

思い切り背負い投げの要領で遠くへ投げ飛ばした。

倒れる怪獣はまたもや隙だらけ、その間にウルトラマンはエネルギーを溜める。

 

「シュワァァァッ!!!」

 

そして腕を十字に組み蒼白の雷が放たれた。

その光線は猛スピードで怪獣へ向かい命中、その身体を爆散させた。

 

「シュワッチ!」

 

大きく飛び上がり去っていくウルトラマン。

 

「駆逐確認、撤退する」

 

こうしてConnect ONEも撤退、その様子を喫茶店から出た快たちは見つめていた。

 

「すげー!生で見ちゃったー!」

 

喜んでいる客たちとは違い快は飛び去っていく親友が乗る機体を見えなくなるまで見つめていた。

 

「(俺もそこにいた可能性あったのかな……?)」

 

複雑な感情を抱きながら見つめるその瞳は少しだけ潤んでいた。

するとまた例の幻聴が。

 

 

『君はなりたいようになれる、安心して!』

 

 

しかしその幻聴のどこにも説得力は感じず無力感だけが快の感情を支配しているのであった。

 

 

 

 

 

つづく

 

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