ウルトラマンν/ニュー    作:かいてつろー

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ウルトラマンν/ニュー #2

その後、家に帰った快のスマホに着信が入った。

相手は親友である瀬川だ。

煙草にジッポライターで火を点けてから応答する。

 

「もしもし?」

 

『お、無事か?お前んとこの喫茶店の近くに出動したからさ、心配だったんだ』

 

任務を終えて本部に戻って来た瀬川が心配して電話を掛けて来たようだ。

 

「大丈夫だよ、お陰さまでね」

 

『そうかそうか、良かったよ』

 

そこで快はある事を思い出す。

定連客に聞かれた質問だ。

 

「そいえばさ、ウルトラマンの事ってなんか知ってんの?」

 

『どうした急に?』

 

「常連がさ、瀬川なら知ってるんじゃねって言うから」

 

『なるほどね、それで快に聞いたと』

 

すると瀬川は少し悩んだ様子を見せて答えた。

 

『デリカシーない奴らだな、快が相当落ち込んでるの知ってる癖に……』

 

親友である快が試験に落ちた事を気にかけるような発言をする瀬川。

 

「良いよ別に」

 

『でもお前まだ根に持ってるだろ?』

 

「まぁ、それは確かに……」

 

『じゃあその話された時辛かったろ』

 

「うん……」

 

すると瀬川は察したように言った。

 

『やっぱりお前元気ねぇもん』

 

「そう感じる……?」

 

親友である瀬川はすぐに快の様子に気付いた。

 

『何か元気になるきっかけでもあればいいんだけどな……』

 

「そんな都合いいものないよ」

 

そのような快が元気になるきっかけの話をしながら電話は終了した。

つい話に夢中になってしまい煙草の火はあまり吸えていないというのに消えかけていた。

 

 

 

怪獣災害があったとしても世間では日常の一部であり快の生活に特に大きな変動は無かった。

 

「ブラックお待たせしました」

 

喫茶店で働くフリーターとしての日常は変わらず、常連客たちは相変わらずウルトラマンの話題で盛り上がっている。

 

「何で味方してくれるんだと思う?」

 

「もしかして人間が変身してるとか⁈」

 

怪獣が出現する以前はスポーツなどの話題でよく盛り上がったらしいが今はこの話題で持ち切りだ。

様々な考察を話している彼らを見ているとどうしても親友と違い自分だけ受からなかった事実に胸が苦しくなってしまう。

 

「はぁ……」

 

溜息を吐きながら瀬川に電話で言われた事を思い出していた。

 

 

『何か元気になるきっかけでもあれば良いんだけどな……』

 

 

しかし快にはそんな事は信じられなかった。

今まで全くそのような事は無かったのだから。

 

「(そんな都合いい事ないって……)」

 

しかしきっかけは意外とすぐに訪れる事となる。

 

 

 

ある日バイト先の喫茶店へ出勤した快は休憩室に見慣れない荷物が置いてあるのを見つける。

 

「もしかして新人?」

 

扉を開けて入って来た咲希に問うと彼女はいつもより明るく答えた。

 

「そ、アタシの親友だから優しくしてやるんだよ」

 

そう言った咲希に紹介された新人。

彼女の背後から出て来た小柄な女性は非常に可憐だった。

 

「"与方愛里/ヨガタアイリ"です、よろしくお願いします!」

 

元気よく丁寧に名乗り挨拶してくれた彼女は愛里というらしい。

全力の笑顔がよく似合う明るい女性だ。

 

「は、創 快です、よろしく……」

 

可愛らしい女性に思わず緊張してしまう快。

噛みそうになりながら挨拶をした。

 

「ちょ、緊張しすぎ!可愛いからって手ぇ出すなよー」

 

顔を赤くする快を揶揄う咲希。

図星を突かれた快は余計にあたふたしてしまった。

 

「何言って……!」

 

今まで女性と上手くいった経験などない。

なので好意がバレる事が非常に怖かった。

 

「ふふっ、楽しくお仕事できそう!」

 

しかし愛里は快の予想に反して逆に好意的に受け取ってくれたようだ。

その反応を見て少し安心した快であった。

 

 

 

快は愛里の教育係として仕事を教えていた。

 

「こうして平仮名の"の"を描くみたいにゆっくりと……」

 

あまり任せてもらえないコーヒーを淹れる作業を愛里に実演して見せる。

彼女は興味深そうな目で覗き込んで来るためやはり緊張が解けなかった。

 

「すごい、私に出来るかな?」

 

「大丈夫だよ、俺にだって出来たんだし……」

 

少しネガティブな発言をしてしまったが完成したコーヒーを愛里に試飲させる。

すると彼女は目を見開いて感想を述べた。

 

「え!美味しい!コーヒーってこんなに美味しいんだ!」

 

とてつもなく感動したように愛里は飛び跳ねながら言う。

今までコーヒーを淹れる仕事は咲希や他の店員に取られていたため自分の腕を褒めてもらえるのは新鮮だった。

 

「そんな大袈裟だよ、河島さんの方がもっと上手い……」

 

あくまで謙遜するような態度を見せる快だが愛里はそれでも首を横に振る。

 

「私は美味しいって事しか分からないけど十分凄いと思うよ?」

 

純粋な瞳を輝かせ一生懸命伝えてくれる愛里。

これ以上それを否定するのは心苦しかったため素直に感謝する事にした。

 

「あ、ありがとう……」

 

屈託のない笑顔を向けられたのはいつ振りだろうか。

そもそも女性に優しくされた経験が少ないためこれだけで彼女を意識してしまいそうだった。

 

「顔赤くしすぎだって〜」

 

横目で見ていた咲希が揶揄って来る。

既に快は反応を見せたら負けだと言う事を理解していたので無視をして今使ったコーヒーの器具を片付ける事に専念した。

 

「ふふっ」

 

そんな快の様子を見ながらもキモがらずに笑顔を崩さない愛里に益々好意的な印象を抱くのであった。

 

 

 

休憩時間になり快は自ら店のカウンター席に座り煙草を吸いながら彼の代わりに咲希に教わりながら下手くそにコーヒーを淹れる愛里をチラチラ見ていた。

 

「おっとっと……」

 

「ホラそこで焦らない」

 

厳しくも優しい咲希の教えは快に対する態度とは違いやはり親友という距離だからなのだと思える。

つまりそれは快と咲希には距離があるという事、快の人付き合いの下手さを表していた。

 

「すいませーん」

 

「はいはーい!」

 

咲希が客に呼ばれて注文を受けにいく。

やはりその際の態度も快に対するものとは違って非常に愛想が良かった。

 

「はぁ……」

 

自分の人付き合いの苦手さを再認識し溜息を吐くと愛里がコーヒーを差し出して来た。

 

「これ私が淹れたやつ、飲んでみて欲しいんだけど……」

 

たった今咲希に教わり淹れていたものだろう。

快はカップを手に取りコーヒーを啜る。

 

「どうかな……?」

 

「うん」

 

正直な事を思うと不味くはないが他の店員が淹れたレベルには達していない。

初めてなので当然だが自分を褒めてくれた愛里にこの気持ちを伝えるのは億劫だった。

 

「…………」

 

黙っていると当然愛里が心配そうに尋ねて来た。

 

「やっぱり美味しくなかったよね……?」

 

「い、いやそんな事はなくて……っ」

 

必死に誤魔化そうとするが時既に遅し。

愛里は逆に気遣おうとする快を悲しそうに褒めた。

 

「快くんは優しいね、でも無理しなくて大丈夫だよ」

 

こんな可憐な子に優しいと言ってもらえた事が衝撃で仕方がない。

思わず黙ってしまう。

衝撃だった事だけではない、他にも要因はあったのだ。

 

「さっちゃんって結構厳しい所あるから優しくしてくれる人がいると救いだな」

 

さっちゃんとは咲希の事だろう。

確かに彼女は厳しい所もあるが愛里に対しては愛故の厳しさな気がしている。

 

「河島さんだって優しいじゃん、一人で両立させてるし」

 

少し皮肉めいた笑みを見せながら呟いてみると愛里は快の気持ちを察したようで良い所を言ってくれた。

 

「快くんだって凄いよ、まだ会ったばっかなのにここまで感じさせてる」

 

「そう?」

 

「だからそんなネガティブにならないで?」

 

「うん……」

 

ネガティブにならないでと言われてしまった。いくら愛里の言葉だとしてもそれに関しては難しい。

 

「……でも俺、今のままじゃダメなんだ」

 

「何で?」

 

ここで快は自分の事情を話す覚悟を決める。

可愛い愛里に自分の事を知って同情してほしいだけかも知れない。

 

「"何者か"にならなきゃ、俺はやってられない……」

 

浮かぶのはある光景。

怪獣が暴れ瓦礫の山と化した街の中で動けず助けを求める両親。

 

「何でそんなに苦しそうにするの……?」

 

すると愛里は快に事情を聞いてくる。

なので説明をしてやる事にした。

 

 

 

快は語り出す。

何故自分がそこまで何者かになる事に拘るのかを。

 

「簡単な話だよ、姉が出来た人だったから両親は引っ込み思案な俺を見てくれなかった。だから何とかして気を引こうとしたのさ」

 

「今も上手くやれてないの……?」

 

「もう二度とダメだね、怪獣災害で両親とも和解できないまま死んだんだ」

 

「うそ……」

 

両親が死んだ瞬間を快は思い出す。

その光景は凄惨なものだった。

 

「あの日は姉の誕生日プレゼントを買うために出掛けたんだ」

 

だから姉はその場にはいなかった。

 

『快!助けて!!』

 

瓦礫に挟まれて動けない父を母は必死に助けようとしていた。

確かにあと少しの力が加われば瓦礫を退かす事が出来るように見える。

だから母は必死に快の助けを求め手を伸ばしていた。

 

『……っ!』

 

しかし当時まだ中学生だった快は恐怖が勝ってしまった。

怪獣は両親とは反対方向に向かったためこちらが被害を受ける心配はなかったが快は母の手を取らずに走って逃げてしまった。

 

『うわぁぁぁっ!!!』

 

無我夢中で走り何とか快は逃げる事に成功する。

しかしその翌日。

Connect ONEが怪獣を撃破し行方不明者の捜索が行われた。

そこで両親ともが瓦礫に潰されて死んでいるのが発見された。

 

「関係が良くならないまま両親は死んだ。だから余計に取り憑かれちゃってるのかも知れない、何とか両親に振り向いてもらおうと……」

 

そして話題を姉に移す。

 

「でもそこから姉との関係も悪くなってさ。流石に逃げた事は怖くて話せてないけど何か察してたような気もするんだよね……」

 

すると快は震える手でいつも煙草に火を点けているジッポライターを見せた。

 

「このライター、あのとき姉にプレゼントするはずだったやつなんだ。怖くて未だに渡せてなくて俺が使ってる……」

 

その中央に大きな樹の絵が描かれたジッポライターを愛里に見せる。

 

「この通り俺は臆病で何も出来ないヤツさ、誰かに愛してもらえるような"何者か"には程遠いよ」

 

すると愛里は少し考えるような素振りを見せてから快に告げる。

 

「でも優しい事に変わりはなくない?」

 

「え……」

 

「確かに怖がりなのかも知れないけど私に優しくしてくれた事に変わりないよ?」

 

純白な瞳で語りかけて来る愛里。

心に来るものがあった。

 

「確かにさっちゃんも優しいし快くんにしか出来ない事じゃないかも知れないよ?でもだからってそれは何もしない理由にはならないと思うんだ」

 

「俺にしか……」

 

「実際私は快くんの優しさに感謝してるんだし、出来ればそれに応えて欲しいかな?」

 

すると愛里は少し優しく微笑んで言った。

 

「だから私のためにもネガティブにならないで?」

 

するとここで再度幻聴が聞こえる。

 

 

『君には必ず出来る事がある!』

 

 

その言葉は何故だか説得力があるように思えた。

 

「……そうだね、ありがとう」

 

なんて眩しいのだろう。

彼女の言うように快が愛里を救っているのなら愛里も快を救っている。

益々彼女が好きになってしまった。

 

 

 

その日快は帰るとすぐさま瀬川に電話をした。

 

『どうしたぁ……?昨日遅番で眠いんだよ……』

 

そんな眠そうな様子の瀬川の事など気にせず快は気持ちを伝えた。

 

「きっかけ、あるんだな……!!」

 

瀬川の言っていた変わるきっかけ。

それが訪れた事を嬉しそうに報告したのだった。

 

『良かったな……?』

 

しかし当の瀬川は何が何だか分かっていないようだった。

そしてまた翌日。

快はウキウキしながら出勤した。

たった一日であんなに好きになってしまう程の魅力を持った愛里という女性に今日も会えるのだ。

途端にこの世の全てが輝いて見える。

今まで見向きもしなかった世界はこんなにも美しかったのか。

 

「おはようございまーす!」

 

元気よく従業員入口の扉を開けると既に愛里は出勤していた。

 

「おっす快くん、今日は元気だね!」

 

「うん、与方さんのお陰だよ!」

 

まだ苗字にさん付けで呼んでいるがこれから距離を縮めて行けば良い。

そう思いながら元気に仕事をするのだった。

 

「いらっしゃいませ、こちらの席にどうぞ!」

 

いつも以上にテキパキ仕事を熟す快に咲希は若干引いていた。

 

「何アイツ急に、キモ……」

 

そんな咲希の頭を愛里がチョップする。

 

「そんなこと言っちゃダメだよ、一生懸命頑張ってるんだから」

 

愛里は嬉しそうに快の様子を眺めて仕事をしている。

この一日で変わるのは単純かも知れないが恋のパワーは凄まじいものだ。

 

「いらっしゃいませー!」

 

そして昼時にまた一人男性の客が来る。

派手な金髪にいくつかピアスの空いたチャラそうな男性だ。

よく見ると首から大きな水晶のついたネックレスをぶら下げている。

それも派手に輝いていた。

 

「おひとり様でーす。あ、愛里ちゃんいる?」

 

その男性は笑顔で快に愛里の事を質問して来た。

 

「え、いますけど……」

 

少し訳が分からず元気が止まってしまう。

しかし客の要望なので厨房にいた愛里を呼び出した。

 

「与方さん、知り合い?」

 

すると厨房から出て来た愛里はその男性の姿を確認するや否や、目を輝かせた。

 

「純希くん!来てくれたんだ!」

 

彼は純希と言うらしい。

学生時代の同級生か何かだろうか。

 

「愛里ちゃん!制服似合ってるじゃん!」

 

すると愛里は純希にスタスタと駆け寄って行き何と抱き合ったのだ。

 

「え……」

 

思わず絶句してしまう快。

そんな事を気にもせず純希は愛里の髪を撫でており愛里も決して快に見せてくれたものとは違う笑顔を純希に向けていた。

 

 

 

 

 

つづく

 

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