無限転生者は死に場所を探す   作:絶対正義=可愛い

1 / 4
「ねぇ…リン君」

それは、ナービィ広場での一時。
俺は芝生の上に、ビャッコを枕に寝転がりながら空をぼーっと眺めていたときだった。

「どうした蒼井」

隣で同じく寝転がって目を閉じる蒼井が唐突に話しかけてきた。

「こんな毎日が、ずっと続くといいね」

ずっと……か。
俺達は兵士だ。
明日死んでもおかしくない。
だからこれは、願掛け。
明日も明後日も明々後日も1週間後も1ヶ月後も、またこうして過ごそうという俺達の言葉に出さない『約束』。

「……そうだな」

簡潔に、それでいて残酷な嘘を吐き続ける。

「ヴァウウ…」

きっと、ビャッコは気付いてる。
だから、俺に寄り添うんだ。

「本当に、ずっと続けばいいのにな」

小さく口の中に閉じ込めた言葉は音にならずに消える。

明日は作戦当日。

それでも、この細やかな幸せを、今は噛み締めよう。




終わる『生命』と廻る『輪廻』

 

クソッ……やらかした…な。

まさか腹に穴があくとは…。

 

「いや、いやですリン君。大丈夫です!まだ諦めちゃいけません!だから、お願い、目を閉じないで……あなたまで失ったら私、私…!」

 

蒼井が必死に俺の腹に手をおいて止血しようとする。

だが、どう見ても致命傷だ。

間もなく俺は死ぬ。

何度も経験してきてるんだ。

 

「は…は…。あんまり…困ら…せない…でくれ、よ」

 

周囲にはセラフが地面に刺さっている。

同胞の物だ。

けど、それも青い軌跡を残して消えていく。

 

「いや、いやだよ…!」

 

仲間を眼の前で食われて、身体が冷たくなっていくのを感じながら看取る蒼井は、俺が死んで、心を壊さないだろうか?

 

「大…丈…夫さ。何たって俺は…不死身なんだ…ぜ?」

 

きっと、心優しい蒼井は自分を責めるだろう。

 

「もう、喋らないで……お願い、だから」

 

どうせ最後なんだ。

言いたいことくらい言わせろよ。

 

「だから…さ、最…期じゃ、ねぇ…よ。……けど…まぁ…、暫く…お別れ、だから、…伝えたい、ことが、あるんだよ…蒼井」

 

そんなに泣くなよ。

最後だけど、最後じゃねぇから。

 

「だから…喋っちゃ……!」

 

もう感覚のない手を最後の力で蒼井に伸ばし、その頬を触る。

 

「お前、達…と、過ごした…かけがえ…の、ない、この日々は…いつも…楽しかったぜ…。本当に、ありがとう…蒼井」

 

そのまま、涙を拭う。

……ははっ。

涙拭こうとして、俺の血付けちゃ世話ないな。

 

「蒼井も…蒼井もです!でも、これからだって、作れます…!だから、だから……!!……リン君…?リン君…!リン君!!」

 

蒼井が頬に添えた俺の手を握る。

感覚がないせいで、分からないけど。

きっと、温かいのだろう。

 

そろそろ時間だな。

 

……この言葉は、蒼井にとって『呪い』となるかもしれないけど。

それでも。

 

「…………………………生き…ろ……よ……ま、たな」

 

手がずり落ち、

 

「いや、いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

蒼井の悲鳴を背後に俺の意識は途切れる。

 

ことはない。

 

視界が真っ暗で、まるで深海を漂っているかのように揺蕩っている。

 

ああ…この感覚。

 

また死ねなかった。

 

何回目だ?

確かもう■■■■は超えたはずだ。

死んで、生き返って、また死ぬ。

 

まるで亡霊だ。

 

 

何処でリスポーンするんだろうな…。

 

次の生は、どうか…『安寧な記憶を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める。

 

木々が風に踊られ、心地よい音が鼓膜を震わせる。

 

身体を起こす。

 

肌を撫でる風が今が冬でないことを知らせる。

 

良かった。

冬じゃない。

 

これで、凍死は免れる。

 

セラフは…

 

「■―■■―■――■■■―■■」

 

大丈夫だ。

呼び出せる。

 

これなら、狩りが出来る。

 

まずは衣服だ。

 

鹿でも何でもいい。

剥げば防寒具位にはなるし、食料も得られる。

 

熊とかだといいんだけど…。

まぁ、高望みはしない。

 

 

……トランスポートは、出来ないか。

それもそうか。

 

デフレクタは基地じゃないと補給出来ないからな。

 

そろそろ動くか。

俺にとって―忌々しいことに―時間は無限だが、この『生』は有限。

 

まずはキャンサー跋扈するこの世界を一人で生き残る。

そして、基地に行く。

 

……先にくたばってんなよ、蒼井。

今から、会いに行くから。

 

 

 

 

 

さあ、何千、何万、何億、何兆回目の『人生』を始めよう。

 

この『生』が終わる場所を探して。

 

 




一緒にご飯を食べた。
一緒に遊んだ。
一緒に昼寝をした。
一緒にショッピングをした。

一緒に…戦った。
戦って、戦って、戦って。

その果てはとても残酷な記憶で、忘れたいのに忘れられない自分の体質が…今は、とても恨めしい。

冷めていく身体。
流れ続ける命の象徴たる液体。

どうしようもない程覚えている。

人の生命の終わる瞬間。


もう一度会いたい。
お話がしたい。
買い物もしたい。
昼寝もしたい。
時々変なことを言う君と、もう一度……。


無愛想だけど、笑うと少年のようなその笑顔が、もう一度…見たい。

忘れられない。

幸せで、残酷で、楽しい、辛い、そんな記憶が脳裏にフラッシュバックする。

もう……いいかな?
君の所に、逝ってもいいかな?

そう思う度に、あの言葉が私を縛る。

『生きろ』

その一言に、私は今も縛られている。
心が軋んで、涙が溢れて、それでも君は優しい目で私を宥めるんだ。

『生きろ』と。

ああ…もう、どうして…どうして……!

だから、私は今も生きている。

神様という存在が居るのなら、どうか、どうか。


安寧な記憶を私に下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。