キヴォトスの遊戯王   作:ユッケじゃん

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変数

「あ、ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……」

「えっとー、ヒフミちゃんだっけ?それにしても、トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」

「あ、あはは……それはですね……実は、探し物がありまして……もう販売されていないので買うこともできないものなのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……ペロロ様の限定グッズなんですけど……」

 

阿慈谷ヒフミ。自称平凡で普通な生徒である彼女は、キヴォトスで展開されているキャラクターブランド、モモフレンズの熱狂的なファンなのだ。特にペロロという若干キモイデザインをした鳥のキャラクターを激しく推しており、ペロロ様のためなら何でもする、というのが彼女だ。

 

「この、ペロロ様とコラボした限定のデュエルディスクフレームを買いに来ていたんです」

「あー、それかぁ。だいぶ前にウチの会社のHPの要望フォームにペロロ様とコラボしてくださいってメッセージがやたら来てたから、試しにコラボしてみたやつだね」

 

夥しい量の要望メッセージが来ていたから覚えてたんだけど……まさか……?いや、あの量を一人ではさすがに……でもこの子ならあり得るか……。

 

「ウチの……?って、遊戯オウカさん!?」

「あ、うん。私が遊戯オウカだけど……」

「あの!!もっとペロロ様とコラボしたグッズを発売していただけませんか!?前にコラボした時は抽選販売で数も少なかったので買えなかったんです、なので次はもっと数と種類をどうにか増やしてもらえれば……!!」

「えー、あー、うん、検討はしておくよ!ね!だからちょっと離れよ!?」

「あ、ありがとうございます!!ぜひ!!」

 

圧が凄い!!

 

「オウカ先輩がここまで気圧されてるの、初めて見た」

「よっぽど好きなんだねぇ」

「……はっ!し、失礼しました……ところで、アビドスの皆さんは、なぜこちらへ?」

「私たちも似たようなもんだよ。探し物があるんだー」

「そう。今は生産されていなくて手に入れにくいものなんだけど、ここにあるって聞いて」

「そうなんですか、似たような感じなんですね」

 

ここでアヤネちゃんから通信が入った。

 

「皆さん、大変です!四方からそちらに集団が向かってきています!先ほど撃退したチンピラの仲間のようです!」

「望むところ」

「まったく、なんでこんなのばっかり絡んでくるんだろうね?私たち、何か悪いことした?」

「愚痴は後にして……応戦しましょう、皆さん!」

「よーし、やっちゃうよ~!」

 

 

 

「敵、後退しています!だけどこのままでは……」

「仲間を呼ぶつもり?いくらでも相手にしてあげる」

「ま、待ってください!それ以上戦っちゃだめです!」

「ん?どうして?」

「だ、だって……ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安機関に見つかってしまうかもしれません!それに……」

「それに?」

「最近は……かの災厄の狐も出没しているとかで……」

「え?」

 

ワカモが今、ブラックマーケットで……?アビドス編で名前が出てくることなんてなかったはずだけど……。

 

「あうう……そうなったら本当に大ごとです……まずはこの場から離れましょう!」

「ふむ……わかった。ここのことはヒフミちゃんのほうが詳しいだろうから、従おう」

「ちぇっ、運のいいやつらめ!」

「こっちです!」

 

正直気になるし調べたいけど……今はついていこう。

そしてその後、私たちは無事に追っ手を振り切り、ヒフミちゃんと同行することになった。

 

 

 

 

とあるビルの一室。豪勢な執務室の中、受話器を置く音とともに不機嫌そうな呟きが漏れる。

 

「ハァ……奴らのデータ自体は正確なものだったはず。計算ミスか?いや、しかしあの力は明らかに……」

 

 

部屋の陰に佇む黒スーツの男。異形の頭が妖しい笑みを浮かべる。

 

「……お困りのようですね」

「……いや、困ってはいない。ただ、計算に少しエラーが生じただけだ。アビドスの連中が、データより遥かに強かっただけのこと」

「……データにそこまでの不備はありません。これは単に、アビドスの生徒が少し強くなり、そして一つ変数が加わっただけかと」

「それは一体……」

「アビドスにどのような変化要因があったのか、確認してみましょう。では……」

「……」

 

黒スーツは部屋を出る。その笑みを更に深いものにして。

 

「二年。おおよそ二年待ちました。これでようやく、かの存在に干渉できるようになった、と……ククッ、クククククッ!」

 

男は待ちきれないかのように、その歩みを早める。

 

「遊戯オウカ……あなたと会えるその日を、楽しみにしていますよ」

 

男は影に紛れる。その不気味な笑い声だけを残して……。

 

 

 

 

裏路地に一匹の獣がいる。足取りは安定せず、壁伝いに歩いていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

美麗な着物は煤と埃で褪せ、彼女の象徴たる狐の面には罅が入っている。

 

「どこ……どこに……」

 

その足取りとは裏腹に、その目的だけは明確なようだった。

 

「あぁ……どこにあるのでしょう……『ナンバーズ』……」

 

彼女も知らないそのカードを、探し彷徨い続ける。

 

「うぅ……どこ……どこへ……」

 

獣は闇に潜む。苦し気な声をあげ、ふらふらと……。




ようやく本編が始まります。
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