「さて、ルールだが……フィールドとライフは共有で、一人しかいないそっちが後攻でいいな?」
「うん、それでいいよ~」
これまで何度もアビドス高校に襲撃し、その度に撃退されてきたカタカタヘルメット団、その構成員三人。ボコボコにされた回数はもう数えていないが、それでも今日は違うぞと言いたげな雰囲気を出している。
「へへへ……じゃ、アタシから行くぞ!アタシは魔法カード『
「次はこっちだ!私も『
「まだ終わんねえぞぉ!『ドラゴン・ゾンビ』を召喚!そんで三枚目ぇ、『団結の力』だァ!!!!」
「うへ、こりゃすごいや」
「ハハハハハ!攻守が4800上がったモンスターが三体!!突破できるならしてみやがれぇ!!!」
ヘルメット団の場には、攻撃力6000越えのモンスターが三体も並んでいる。一見して突破はかなり困難だが……。
「ふーん、結構やるもんだねぇ」
しかし、ここにいるのはアビドス高校三年、小鳥遊ホシノ。キヴォトス最高の神秘の持ち主である、彼女であれば。
「まあでも、なんとかなるかな」
「ああん!?」
この状況を突破するカードをその手に引き込むことなど、造作もないのだった。
「じゃ、おじさんのターンだね。ドローするよー。お、いいカードが引けたよ?手札から魔法カード『黒魔術のカーテン』を発動。LPを半分払って、デッキから『ブラック・マジシャン』を特殊召喚するよ~」
「ちょおっとまったぁ!!手札から『灰流うらら』を捨てて効果発動!!そのデッキから特殊召喚する効果を無効化する!!!」
「あ、ごめんねー、『墓穴の指名者』を発動。それを更に無効にさせてもらうね」
「なにぃっ!?」
「くそっ、じゃあ『増殖するG』を捨てて効果発動だ!」
「ア、アタシも発動!」
「ふーん?いいカードもってるねぇ。ま、いいや。来て、『ブラック・マジシャン』」
ホシノのフィールドに、暗いローブと帽子を身に着けた魔術師が現れる。杖を携え、その表情は目深にかぶる帽子によって窺えない。
「まずは、魔法カード『
魔術師の杖から輝きが溢れ出す。閃光が放たれ、ヘルメット団の三体のモンスターの間にあった見えない繋がりをいとも容易く絶ってしまった。
「「「へ?」」」
「じゃあ次は、『拡散する波動』の魔法カード。1000ライフ支払って、ブラック・マジシャンでそっちのモンスター全部に攻撃できるようにするよー」
放たれていた魔力が杖の先に収束していく。球のようになったそれの内側で、黒い魔力が渦巻くように圧縮されていく。
「なんだとぉ!?だ、だがまだライフは持つ。次のターンに……」
「うーん、ちょっと足りないねぇ。じゃあ、魔法カード『
魔術師の足元に魔法陣が出現し、彼の魔力をより洗練させる。やがて魔術師は、その杖を彼の敵の方へ向けた。
「ちょ、ちょっと待っ……」
「よーし、やっちゃえ~、『ブラック・マジシャン』!」
主人の号令で魔法が発射される。あたふたしている五体のモンスターと三人の少女に、対抗する手段はなかった。
「「「ギャアアアア!!!」」」
「まあ、こんなもんだよねぇ~。さて、他のみんなは……」
周りを見渡せば、皆無事にヘルメット団に勝利しているようだった。
「ふぅ、よかったよかった。先生とオウカちゃんもいるし、今回は楽勝だね~。……うーん、それにしても……」
ヘルメット団にあっさり勝利したアビドス高校一行とシャーレの二人は、校舎に無事帰還した。
「いやぁ~まさかあんなに簡単に勝っちゃうなんてね。いっつもそれなりに苦労してたけど」
「そういえば、少し遅れてしまいましたけど、あらためてご挨拶します、先生」
アビドスの皆から一通り自己紹介を受けたところで、シロコちゃんが話しかけてきた。
「それにしても、二人ともすごく強かった」
「そうですね、さすがは先生とオウカさんです」
「だねぇ~。二人がいてくれてほんとに助かったよ」
「そ、そうかな?そう言ってもらえると嬉しいなぁ~!ね、先生!」
「そうだね。でも、みんなも頑張ってたよ」
「ありがとうございます!」
「ねぇ、二人ともデュエルしてみたい」
「へ?シロコ先輩、まだデュエルするの!?さっきあんなにした後なのに……」
「さすがはシロコちゃんですね~☆」
「私もシロコちゃんとやってみたいけど、それより今は……」
「うん、ヘルメット団について、もう少し話したいかな」
そう、ヘルメット団について。デュエルしているときに、少し違和感があった。
あいつらが使っているデッキは、多少統一感はあったが寄せ集めと言っていいレベルのデッキだった。それなのに……。
「何人かと戦ったけど、全員『灰流うらら』とか『増殖するG』をデッキに入れてたんだよね」
「あー、やっぱりそうだよねぇ。おじさんがデュエルした子たちもみんな持ってたよ」
「そうそう!何なのあのカード、すっごいめんどくさい!」
『灰流うらら』、『増殖するG』。これらのカードは汎用的に使える妨害カードなのだが、その汎用性と有用性から大抵のデッキに入れる価値がある。私も本気でデュエルするときは大体デッキに入れているけれど……。
「なんであの子たち、あんな高いカードを何枚も持ってるんだろうねぇ?」
そう、みんなが使いたがるカードは購入しようとすると高いのだ。現在のキヴォトスでは問題解決にデュエルが用いられているため、その勝率を左右するとなれば猶更だ。私がそれらのカードの収録されたパックを大量に刷れば価格は下がるのだが、私としてはデュエルが妨害ゲーになってしまうのはつまらないと思うから、あえて数を多くするようなことはしていない。
それにこの世界、どうもカードと使用者に相性があるらしく、そのカードを必要としている人の元に自然とパックから必要なカードが出てくることがあるのだ。だから、数をわざわざ増やさずとも本質的な需要と供給は満たされるらしい。まあ、それでも出ないときは出ないし数を調整したいとかの場合もあるので、結局高額にはなるのだが。
「うん。あんなの町のショップでもあんまり見ない」
「えっそうなの!?あとでどのパックに入ってるか調べてみようかな……」
「あはは、レアカードだから、狙って出るようなものでもないと思うけどね」
「でも、確かに不自然ですね。そんなに余裕があるなら、普通はデッキを基盤から強化した方がいいですよね」
「そうなの。だから気になっちゃってさー、どうやってあんな数を確保したんだろうって」
大方、ヘルメット団にアビドス占領を委託したカイザーが渡したものだろうが……。
「それとね、あの子たちが使ってたデュエルディスク。純正じゃないのは勿論なんだけど、なんかよくわかんないアタッチメントがついてるみたいだんたんだよね」
「アタッチメント……」
「それって、ディスクのフレーム部分を変えてるだけじゃなく、ですか?」
「うん。ちっちゃいディスプレイもあったし、よくわかんない配線も飛び出てたし、多分あんまり良くないパーツなんじゃないかな……」
流通しているデュエル用の道具の中には、純正でないデュエルディスクの他にも不正なパーツがある。デッキのカードの順番をわかるようにしたり、弄ったり、バレないようカードを収納しておくスペースを作って勝手に手札を入れ替えたり……と、その種類は様々だ。そういうのは純粋なデュエルが出来なくなってしまうので、見つかり次第摘発されているのだが……。
「そんなものがあるんだね……。それも、どうしてあの子たちが持っていたんだろうね」
「先生も気になるよねぇ……」
「うーん、そうだなー……よし、おじさんに考えがあるよ」
「え、ホシノ先輩がちゃんと考えて……!?」
「うそっ……!?」
「いやぁ~その反応はいくら私でもちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー。……そういうのを確かめるために、今からヘルメット団の基地にこっちから襲撃しちゃわない?今なら先生とオウカちゃんもいるし」
「うん。いいと思う。ヘルメット団の基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」
「そうですね、あちらもまさか自分たちが襲撃されるとは思ってないでしょうし」
「そ、それはそうですが……お二人はどう思われますか?」
「うん、私もいいと思う」
「私もー!」
「よっしゃ、先生たちのお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」
「善は急げ、ってことだね」
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
そうして私たちは、カタカタヘルメット団の基地に向けて出発した。
とんでもないカード効果に関するミスをしていたので修正しました。
はしゃぎすぎ。