チートが斬る!   作:トマホーク

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息抜きがてらに執筆。

2〜3時間で一気に書き上げました。






人の形の魑魅魍魎が我が物顔で跋扈する帝都で1人の青年が暗い顔をしていた。

 

「なぁ、もう止めにしない?……というか、まず毎回会うたびに襲い掛かって来るのを止めろ」

 

星空の下で大勢の野次馬達が“それを”遠巻きに眺めている。

 

大通りのど真ん中で顔を狙って繰り出された上段蹴りを屈んで避け、そのまま後ろへ飛んで相手から距離を取ると青年――カズヤは面倒くさそうに言葉を漏らした。

 

「黙れ!!いくらパパを凶賊から救った恩人とは言え、貴様は帝都の治安を乱す悪党!!そんな悪党である貴様はこの帝都警備隊セリュー・ユビキタスが絶対正義の名の下に断罪する!!」

 

「勝手に悪党扱いするなっつーの。それに何回目だよ、そのセリフ……」

 

ポリポリと頭を掻きながらカズヤがそう言うとセリューは悔しそうに顔を歪めて宣言する。

 

「うるさいっ!!今日という今日は必ず貴様を断罪してやる!!トンファガン!!」

 

セリューが構えた2丁の旋棍(トンファ)型の銃からマズルフラッシュが迸りズガガガッと無数の銃弾が放たれる。

 

「このバカっ!?――武装錬金!!」

 

飛んでくる銃弾を避ける事など朝飯前のカズヤだったが、自分が銃弾を避けてしまえば後ろにいる野次馬に怪我人、もしくは死者が出てしまうと判断し咄嗟にメタルジャケットの武装錬金『シルバースキン』を装着。

 

飛んで来た銃弾の半数をシルバースキンで防ぎ、残りの半数を手刀で地面に叩き落とす。

 

「コラ、セリュー!!怪我人が出たらどうする――」

 

「貴様に銃弾が通用しないのは承知の上――だが、これで隙は出来た!!コロ!!捕食!!」

 

「話を聞けよっ!!」

 

テンガロンハット風の帽子や長手袋、襟の長いコート、スラックス、ブーツ等を構成されたシルバースキンで全身を守るカズヤが銃弾の件を咎めようとするが、セリューはカズヤを無視し生物型の帝具『ヘカトンケイル』――コロをけしかける。

 

「キシャアアアアアアアアア!!」

 

先程までの小さく可愛らしい外見ではなく巨大化した姿で、無数の鋭い牙が生えた口を極限まで開き回転しながらコロがカズヤに飛び掛かった。

 

「……お仕置きだ」

 

話を聞かないセリューにイラッとしたカズヤは防戦から一転、攻勢へと転じた。

 

パンッと音を鳴らして掌を突き合わせたカズヤが地面に両手をつけるとバチバチと青白い稲光が生じ、次いで地面から巨大な槍が幾本も飛び出しカズヤを捕食しようとしていたコロの体を空中で串刺しにする。

 

「コロ!?」

 

「忍法、金縛りの術!!」

 

「なっ!?う、うごけな……い!?」

 

地面から突然現れた何本もの巨大な槍によってコロが串刺しにされると思わず声を上げたセリューだったが、カズヤに金縛りの術をかけられてしまい自身もコロと同様に身動きが取れなくなり驚きに目を見開く。

 

「さぁて、話を聞かない悪い娘にはお仕置きをしないとなぁ……。フッフッフッ、ここからはとってもとっても楽しい……――お仕置きタイムだ」

 

シルバースキンを解除し私服姿に戻ったカズヤが黒い笑みを浮かべ、錬金術で錬成した油性ペンを片手にセリューに接近する。

 

「ひっ!!く、来るな!!や、やめっ!!いや、い、イヤアアアアァァァァーーー!!」

 

顔を恐怖にひきつらせ瞳にうっすらと涙を浮かべたセリューの悲鳴が辺りにこだました。

 

――5分後。

 

「これで……よしっと。じゃあ俺はこれで。あぁ、術は30分ぐらいしたら勝手にきれるから」

 

「くそ、くそ……覚えてろよ、この怨みは必ず……正義は……正義は最後には必ず勝つんだからなっ!!」

 

「はいはい……ふぁ〜。じゃあな、おやすみ」

 

お仕置きを済ませ眠たそうに大きな欠伸をしたカズヤがヒラヒラと手を振りながら立ち去った後には串刺しにされたままのコロと顔中にイタズラ書きをされたセリュー、そしてセリューを見てクスクスと笑う野次馬達だけが残されていた。

 

 

「今日は依頼がなんも入ってないし、どうするかな。とりあえず飯でも食うか……ん?」

 

今やすっかり帝都の名物として定着してしまったセリューとの一悶着を終えた翌朝。

 

仕事がなく暇をもて余したカズヤが大通りをぶらぶらと歩いていると見知った顔を視界に捉えた。

 

「あっ、カズ兄!!」

 

「えっ、ちょ、マイン!?どこ行くんだよ!!」

 

その見知った顔の相手もカズヤの存在に気が付いたらしく連れの少年を半ば放置して駆け寄って来る。

 

「おぉ、久し振り……って程でもないか、調子はどうだマイン?」

 

「フフン、バッチリに決まってるじゃない。この前だってアジトの場所を探りに来た敵を一撃で撃ち抜いてやったわ」

 

「そうか……まぁ、怪我には気を付けるんだぞ?」

 

「わ、分かってるわよ……」

 

ピンクの長髪をツインテールに纏めた少女――マインはカズヤに頭を撫でられ頬を赤く染める。

 

「ゼェ…ゼェ…マ、マインいきなり走って行くなよ!!こっちは荷物持ってんだぜ?少しはこっちの事も考えて――」

 

「うっさいわね、部下が口応えスンナ!!」

 

「おぶぅ!?」

 

ようやく追い付いて来た少年の言葉にムカついたマインが少年の頬に拳を叩き込む。

 

「ふむ……あんなに小さかったマインも今や彼氏を作る年か……時が経つのは早いなぁ」

 

「なっ!?コイツは彼氏なんかじゃないわよ!!」

 

「イテテ……いきなり何すんだよマイン……」

 

「うっさい!!あんたは黙ってなさい!!話がややこしくなるから!!」

 

「酷ぇ……」

 

「ハハハッ、仲がいいな2人とも。……で、この少年は?」

 

夫婦漫才のような2人の掛け合いを楽しんだ後、カズヤがマインに問い掛けた。

 

「あぁ、こいつ?こいつはうちの新入りよ。ほらタツミ、カズ兄に挨拶しなさい」

 

「え、あぁ……。初めましてタツミです。――……えぇっと……?」

 

マインに促されてカズヤに挨拶をするタツミだったが、カズヤの名前を知らないためになんと呼べば良いのかと悩んで口ごもる。

 

「え、ちょ、ちょっとあんたカズ兄のこと知らないの!?はぁ〜。信じらんない」

 

そんなタツミを見てマインは呆れ顔でため息をつく。

 

「え……なに?この人そんなに凄い人なのか?」

 

マインの見下するような視線を浴びたタツミはカズヤをチラチラと何度も見直しながら小声でマインに聞いた。

 

「凄いってレベルじゃないわよ。何しろ、あのオネスト大臣でさえカズ兄には手出し出来ないんだから」

 

「え……マジで!?」

 

「本当よ。だってカズ兄は帝具を持っていないのに凄い技や術を使える帝国最強の武人だもの。それにきっと“私達”(ナイトレイド)が束になってかかっても勝てないぐらい強いわよ」

 

「そ、そんなに強い人なのか……」

 

そんなに強そうな人には見えないけど。

 

何故か誇らしげに語るマインの話を聞いて、タツミはカズヤの姿を改めて見直してみた。

 

年相応の標準的な身長に細い体、どことなく人の良さそうなオーラを漂わせ、短い黒髪に端正な顔立ち。

 

……どこにでも居そうな人だとしか思わないんだけどな。

 

カズヤを改めて見直したタツミだったが、そんな感想しか抱かなかった。

 

「じゃ、改めて自己紹介を俺の名はカズヤ。何でも屋をやっている。よろしくな」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

タツミは差し出された手を素直に握り返した。

 

「そういえばさ、ふと気になったんだけど……マインがカズヤの事をカズ兄って呼んでるのは何故?……まさか兄妹じゃないよな?」

 

「ん?あぁ、それは――」

 

「この前教えたでしょ、私が異民族とのハーフで小さい頃、村の連中から迫害されていたってことは」

 

「あぁ、聞いたけど……」

 

「で、その当時帝国の各地を巡って旅をしていたカズ兄が私のいた村に偶然立ち寄ってね。迫害されていた私を助けてくれたのよ。カズ兄はその時からの呼び名ってだけ」

 

「へぇー。唯一認めてくれた人がいたって言ってたけど、この人がそうなのか」

 

マインの説明を聞いてタツミは頷く。

 

「ふむ、立ち話も何だし何処かの店に入ろうか。2人はもう飯を食べたか?まだなら奢ってやろう」

 

「え、いいの!?」

 

「マジで!?」

 

「あぁ、構わん。1人で食べるより皆で食べたほうがいいからな」

 

喜ぶ2人を引き連れ、カズヤはお気に入りの飯屋へと向かった。

 

 

巨大なパフェを嬉しそうにパクつくマインとガッツリ系の肉料理をかきこむタツミを余所にカズヤは新聞を片手にお茶を飲んでいた。

 

「帝都警備隊の隊長と副隊長がナイトレイドによって暗殺される……ねぇ」

 

「ぶふっ!?ゴホッゴホッ!!」

 

カズヤが何も考えずに漏らした言葉を耳にしたタツミが分かりやすく動揺する。

 

あぁ、こいつが2人を殺ったのか。

 

ん?……待てよ、帝都警備隊の副隊長ってセリューの親父じゃなかったか?

 

……どうりでセリューの朝駆けが無かったはずだ。

 

「そんなに動揺するな。深い意味はない」

 

「べ、別に動揺なんか……」

 

汚れた口を拭ったタツミが視線を逸らしながらカズヤの言葉に答えた。

 

「……そうだ、あの……1つ聞いてもいいか?」

 

しばらく沈黙が続いた後、タツミがおずおずと口を開く。

 

「ん、なんだ?」

 

「マインの話だとカズヤは相当強いみたいだけど、うちには入らない――」

 

「やめなさい、タツミ」

 

ナイトレイドには入らないのか?というタツミの質問を遮ったのはマインだった。

 

「カズ兄にもいろいろと事情があんのよ」

 

「いや、でも……」

 

「いいから黙れ」

 

「……」

 

マインの有無を言わさぬ言葉にタツミはしぶしぶ黙り込んだ。

 

「まぁまぁ。そう怒るなマイン。その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」

 

「カズ兄……」

 

気まずい雰囲気を取り払おうとカズヤが口を挟む。

 

「さて、さっきの質問だがな。俺はある人物に追われているから(ナイトレイドに)入るのは無理だ。ま、他にもいろいろと理由はあるが……」

 

「ある人物って?」

 

「カズ兄を追っているのは、あのドS将軍の――」

 

「マイン、そう簡単に追手の名をバラしたらつまらんだろ」

 

「……そういうものなの?」

 

「そういうものだ」

 

カズヤは不敵な笑みを浮かべ、マインの言葉を遮り自身が誰に追われているのかを秘密にした。

 

「じゃ、またな。マイン、タツミ」

 

「バイバイ、カズ兄。またね!!」

 

「じゃあな」

 

……結局誰に追われてるんだ?

 

結局、誰に追われているのかを教えてもらえなかったタツミはカズヤと別れた後ずっと首を捻っていた。

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