2021年2月某日。それは、ミアが料理を作り、イーサンがローズをあやして、いたとある夜の出来事だった。突然テレビが砂嵐となってピーガガーと狂った音を響かせ、ローズが泣き出してしまう。
「な、なんだ!?」
「壊れたのかしら…よしよし、大丈夫よローズ」
『アンテナに何かあったのかな?私が見てくるね』
「頼む、エヴリン」
イーサンに小声で言われ、頷いて天井と屋根をすり抜けてアンテナを確認していく。最悪、掲示板のみんなに協力してもらって修理しないとかなあなんて考えていた私が顔を出すと、目に入ったのは異常な光景。カアカアカアと夜空で大量のカラスが鳴き喚く。テレビの音がうるさすぎて聞こえなかった、外で鳴り響く銃声。そこには、何故かクリスと十数人の特殊部隊らしき人間がいて、二人の男女目掛けてアサルトライフルを乱射していた。
「ふあぁあ……無駄だって言ってんのがわからねえのか。欠伸が出るぜ。隣の女はともかく、俺には絶対に弾丸は効かねえ」
「ふざけないでくれるかしらハイゼンベルク。この程度のそよ風なんて涼しくもないわ」
それは、あまりにも異常すぎる光景。片や、決して小さくはないんだけど隣の女のせいで小柄に見える、ジャンクで組み立てられたハンマーを担いだ黒いソフトハットと丸いサングラスをかけた髭面で、オリーブ色のロングコートを羽織った異様な男。欠伸をしながらまるでバリアでも張っているかの様に、弾丸がその目の前の空間で止まって火花と共に跳ね返り、特殊部隊を撃ち抜いていく。
片や、白いドレスに身を包み帽子を被った異様に色白で290cmほどもある超長身の貴婦人。弾丸をその肉体で受け止めて物ともせず、黒い手袋に包まれた右手の指から生えた鋭く長い爪を振るって薙ぎ払っている。
『なに、あれ…』
何もわからない、わからないが危険だということは間違いない。私は急いでリビングに戻り、銃声と悲鳴と怒号が響いていることに気付いたのか警戒している
『イーサン!よくわからない奴らが外にいる!クリスが戦ってるけど、早く逃げて!』
「なんだって!?ミア、何か起きている!逃げるぞ!」
「イーサン、どこに!?」
「わからない!とにかく逃げるんだ!」
ローズを優しく抱えたミアを連れて、壁にかかったショットガンを手に取り玄関に向かうイーサン。しかし内開きの玄関を開けるが、玄関の出入り口は粘着く壁に塞がれてしまっていた。正直粘着くのは嫌だが、壁に飛び込んで外を確認する。
「ここは…もう、俺様の…テリトリーだ お前らは…どこにも…逃げられない。ヒヒッ…マザー・ミランダの…仰せのままにぃ!」
そこには、非常に醜い顔、異様に盛り上がっている背中、半魚人の如き水掻きを有している手足という異形極まりない姿を隠すようにフジツボ付きのローブで全身を覆った男がいた。なんだこいつ!?きもっ!?この粘液の壁、此奴が出したのか!?
『外に変なやつがいる!そいつの仕業だ!』
「イーサン、裏口も塞がれてるわ!」
「くそ、こんなもの!」
ショットガンを叩き込み、粘液の壁を破裂させるイーサンだったが、次から次へと湧き出してきてキリがない。出入り口は完全に塞がれた!
「なら窓だ!」
『駄目、窓も覆われちゃってる!一階は全滅!』
「何が起きているの、イーサン…」
「落ち着け、ミア。俺が守る!こうなったら二階から…!」
二階に向かうイーサン。私が先んじて様子を窺うと、これまた不審な格好の人間がいた。喪服を思わせる黒装束に身を包み、頭には黒いベールを被って素顔を隠している女性だった。座っているその膝の上には顔がひび割れて歪んでいるようにも見え、不気味な雰囲気を醸し出しているウェディングドレスを着た人形が乗せられている。さっきからなんかホラーに出てきそうなやつらだなあ!?
「外は…危険だから、入らせてもらったわ……」
『悪く思うなよな!ヴェェエエエエイ!!』
『キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!』
なんか動き出して跳躍し、床に着地してカタカタと音を立てながら脅かすように両手を上げて威嚇する人形に思わず叫ぶ。動く人形はホラーすぎるってええええ!?
「うるさいぞエヴリン!…何者だ!外の騒ぎもお前の仕業か!」
「私はドナ・ベネヴィエント……そうね、外の騒ぎも入り口を塞いでいるのも私の同胞がしていること……だけど私は彼らの主ではない」
『お前らは!黙ってその餓鬼を渡せばいいんだよぉおおお!』
ドナが語りだしたかと思えば、人形とは思えない身のこなしで跳躍、壁を蹴って天井まで上がり、天井を蹴って急降下してローズに手を伸ばす動く人形。しかしそれを断じて許すイーサンではなく。ショットガンをバットの様に構えてカキーン!と殴り飛ばしてしまった。
『さっすがぁ』
「俺たちのローズを渡せだと?寝言は寝て言え。断じてさせないぞ、そんなこと」
『ヴェ、ヴェェエエイ……』
「アンジー!?しっかりして!?」
憤怒の表情を浮かべるイーサンに、椅子から立ち上がりアンジーと呼ばれた動く人形に駆け寄るドナ。悠長だな。なんでこんなに余裕なんだ。……いや違う、余裕でいられる理由がある…?外の奴らが加勢したら確かにやばそうだけど……っ。
『ミア!後ろ!』
「え、」
「ローズ!?」
聞こえないとは思いつつも、思わず警告の声を上げる。入口に立っていたミアの後ろに、どこから入ってきたのかカラスをモチーフにした仮面を被り、カラスの羽毛のような黒いローブを身に纏っている女が立っていて、ミアの手からローズをかすめ取っていた。カラス……さっきの、夜空で飛んでいたあのカラスか!?
「よい囮だったぞ、ドナ。あとで褒美を取らそう。悪いなウィンターズ夫妻。この赤ん坊はもらっていく」
「させるか!」
撃ったらローズに当たりそうだという理由もあるのだろう。ショットガンを手に殴りかかるイーサン。顔を殴られ、驚愕の顔と共に首がゴキッと音を立てて折れ曲がるがしかし、女の首は巻き戻るように再生していく。なんかのウイルスの力…!?
「…やはりお前は、危険な男だな!」
瞬間、ローブだと思っていた畳まれていた六枚の烏の翼が展開、部屋の壁を引き裂きながら広がった翼が羽ばたかれ、二階が屋根ごと吹き飛んでイーサンとミアは吹き飛ばされる。
「うわああああああっ!?」
「きゃああああああああっ!?」
『待て!』
吹き飛ばされた二階から外に投げ出されるイーサンとミアも心配だったが、そのまま右手でローズを、左手でドナを抱えた女が空に舞い上がっていたため、私は触れないとわかっていながらも手を伸ばす。
『ローズ!』
必死に伸ばしたその手はローズの小さな手に触れた、だけどすり抜けた。私は失意のままに、拳を握るしかなかった。
「なんだ、簡単な事だったな。こんないともたやすく、ローズをわが手に……!」
「アンジー、大丈夫…?」
『ヴェェエエエイ……』
「撤退だぁ、二人とも!ミランダ様が赤ん坊を手に入れたぁ!」
「なんだ、もう終わりか?残念だったなクリス・レッドフィールド。ショータイムは終わりの様だぜ」
「残念。もっと蹂躙していたかったわ。それと、この下品なデザインやめていただけるかしらハイゼンベルク」
「なんだと。UFOはロマンだってわからねえのかドミトレスク!」
さらに下を見れば、巨大なジャンクで組み立てられた鉄の円盤の様なものに、巨大女とサングラスの男、異形の男が乗って空に舞い上がっているところだった。クリスたち特殊部隊が銃を撃つも、やはりバリアでも張られているのか届くことはない。
『ローズを追って……でも、イーサンが……』
「追え、追うんだエヴリン!ローズを……頼む……!」
どうするか空の上で迷っていたら、イーサンからGOサイン。私は意を決して、空を舞うミランダと呼ばれたカラスの女とUFOらしき巨大物体を追いかけるのだった。
ハイゼンベルクとドミトレスクが待機していたクリス率いるBSAAの部隊(ハウンドウルフじゃない)を引き受け、モローが出入り口を封鎖、ドナが囮をしている隙にミランダがローズを分捕る、完璧な計画だあ。なお考えるのをやめただけの模様。こうしてみるとハイゼンベルクとミランダの理不尽ぷり狂ってるよね。
次回は今話の掲示板sideでお送りします。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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