まぁ仕方ないもんね、故郷奪っちゃったもんね
「…セリカが誘拐された?」
アビドス対策委員会部室にて、霊夢は制服に身を包みながら言った
今朝、なぜだか嫌な予感がして早めに学校に行った
すると、既に皆集合していたのである
携帯が無かったので何が起こっているのか理解出来なかったが…そういう事か
どうやらセリカを誘拐した不届き者がいる様子だ
全く誘拐か、面倒なことである
「昨日、ラーメンから帰った後連絡をしたんだけど、返事がなくて…」
「家に行ったら、誰もいなかった…カバンも何も無かった」
シロコが目を細めて言った
…どうも面倒事の匂いがする
「…昨日の奴?…いや、無いか」
頭の中で思考を回転するが、おそらく違うと仮定する
セリカを誘拐したとてあいつにはおそらくなんのメリットも無いだろう
ホシノが居なくなるなら…分からんでもない、ホシノの神秘は他と比べ物にならない
そう思っていると、先生が口を開いた
「"私の権限を使って探してみるよ"」
「本当ですか!?」
「うへー、やっぱりストーカーっていうのは伊達じゃないね」
…やっぱりストーカーだった?この先生
そう思っていると、彼女はタブレットを取り出し操作する
時折独り言のようなこと言っている…何かと会話しているようだ
…あのタブレットの中に人格がある?
先生の耳に通信機器はついていない…ならば普通に喋っている?
──────────それにしては、何の声もしないが
「"…見つけた!"」
「はっやいわねぇ」
30秒もしないうちに先生が声を上げる
位置情報をどこから知ったのか分からないが、まぁ、シャーレの特権とか言うやつだろう
「"場所は──────"」
「砂漠化が進んだ端の方とかでしょ」
「"…どうして分かったの?"」
驚いた様な顔をした先生がこちらを見た
どうやら当たりだったようである、幸運だ
…いや、誘拐したボケが行くところなんてそこくらいだが
ブラックマーケットとか言うところに行くかもしれないが、誘拐したのは対策委員会のメンバー
どうせ、1人づつ始末するとかそういう魂胆なのだろう
私はそう思いながら言う
「いや、勘」
「…おじさんちょっと霊夢ちゃんが怖くなってきたよ」
「…勘の話は後にして…セリカちゃんを助けに行きましょう!」
ホシノがドン引きした目でこちらを見ながら言った
アヤネもそうだったが、それよりもセリカの救出であると言う
…引かないでほしい、ただの勘だから
「すぐに車を準備します…確かジープが裏手にあったはず…」
「それじゃ、準備しますかねー」
ホシノがのびのびとショットガンを手に取る
中に弾薬が入っているのを確認し、くあっと欠伸をする
私は、立ち上がった
そのことに皆が少し驚いた様子で見てくる
大幣を肩に当て、言った
「私も同行するわ」
「霊夢先輩、行くの?」
「おー、やる気出すねぇ」
シロコやノノミが驚いた顔でこちらを見てくる
今回は少しだけ事情が特別なので、致し方無しという奴である
それに
「友達が誘拐されたなら助けに行くってのが筋でしょ?」
此処で出来た友人を、見捨てる訳が無い
〇
「…目標を確認」
「了解です、このまま突っ込みますよ!」
アヤネがジープを荒々しく、しかし確実に運転していく
ある種の神がかった操縦テクニックを見せながら砂漠を進んでいく
シロコが言った通り、前方にトラックを確認した
シッテムの箱の反応からしてあの荷台にセリカはいるはずだ
…いや、確かにいるのだが、それよりもおかしいことがある
「"霊夢が、飛んでる…?"」
「あー、…うん、飛ぶよ、霊夢ちゃんは」
ジープと並行するように飛行する霊夢
その背中に翼が生えてるとか、変な輪っかがついている訳でもない
ただ、飛んでいた…何も生やさずに
「"凄い、キヴォトスの人って飛べるんだね"」
「…あれは霊夢だけだよ」
「"え?"」
「ん、あれと私達を一緒にしちゃいけない」
そういう会話をしていると、霊夢から通信が入った
『これからあのトラックを止めるわ、準備しなさい』
「わかりました、お願いします」
『後、制圧は私がする』
「"え、ちょ"」
先生が待てと言おうとした瞬間、霊夢が凄まじい速さでトラックに向かっていったのだった
空中でアクロバティックな動きをしながらトラックに接近する
その接近に気付いた助手席のヘルメット団員がライフルを放つ
しかしどれひとつ当たらない
「無駄よ」
そう言って全てのタイヤに向かって針を投擲する
鋭く研がれた針は簡単にフレームごとタイヤを貫通する
砂漠の上にてパンクしたトラックはもちろん体勢を保てず横転する
土煙を上げながら止まったそれに歩いて行く
運転席からカタカタヘルメット団の1人が顔を覗かせる
「う、うわぁ!こっちに来るな!」
「じゃあ動かないでもらえる?」
発砲してくる団員に接近し、頭を大幣で殴る
ヘルメットの硬さがあろうとも脳が揺さぶられ、問答無用で彼女は昏倒した
その隙に、他のメンバーがセリカを確保に向かった
『こちらシロコ、半泣きのセリカを発見』
『なんだと〜!?セリカちゃんを泣かせたのは誰じゃあ〜!?』
「な!泣いてなんかないわ!」
どうやら感動の再会となっているようである
私も会いに行きたいところである
そう思いながらモゾモゾと出てきたもう1人のヘルメット団員の頭を踏みつけ、気絶させた
そこで、唐突に嫌な空気を感じとった
それだけでなく、鋭い聴覚が響くなにかの音を聞きつける
「…嫌な予感がする、皆撤退して」
『霊夢さん!装甲車両がそちらに向かってます!』
嫌な予感は当たった
見てみると、2台の装甲車両がこちらに向かってきている
逃げる暇はアリにあるが、セリカ達の撤退がまだだ
「私が破壊する、先に行きなさい」
『そんな…!援護しますから待って───────』
「大丈夫─────1人は慣れているから」
アヤネの無線から意識を外し、敵を見る
六輪装甲車両、MGが砲台代わりについているものだ
無論、それはこちらを見つけ次第ぶっぱなしてくる
「ブハハハハ!避けられるもんなら避けてみろ!」
「あー、すごいすごい」
ただの人間からすればミンチになるであろう銃撃の雨
凄まじい連射速度の弾丸が大量に降り注ぐ
…しかし、霊夢からすればあくびが出るものである
なぜなら、彼女は博麗の巫女
異変解決のスペシャリストとして、これ以上の弾幕なぞ掻い潜ってきた
当たれば即死の面倒な桜から心を読んでくる小五ロリまで多種多様な敵と戦った
そんな彼女からすれば…このような戦いなぞ、"遊戯"以下である
「弾が奴の体をすり抜けていくぞ!?」
「違う!それは残像だ!」
装甲車両の中から苛立ちを感じられる声が響く
それを聴きながら霊夢は確実に車両に近づいていた
全くもって、霊夢は力の半分すら出していないのだから
「…あー、もういいかしら?」
「弾!弾まだあるか!?」
「まだある!」
撃ち切ったのだろう、カチンと音がした後弾が出なくなる
霊夢はカンカンと肩に大幣を当てながら装甲車両に近づく
それを見たヘルメット団員はおそらく恐怖に犯されたのだろう
「に、逃げろ!勝てねぇ!」
「そ、そうだな!逃げ…あれ?」
逃げようとするヘルメット団員だったが、あることに気づく
全く、アクセルを踏んでも進まないのである
どういう事だと困惑しているうちに霊夢はよっこらせと装甲車両の上に登った
ブイブイ言っている間にこいつらのタイヤも大破しているので逃げることは出来ない
ただ、彼女がハッチまで登ってくるのを見ることしか出来なかった
コンコンと、霊夢はハッチを叩く
「もしもーし、素敵な巫女さんなんですけどー」
「だ、誰もいませんよ?」
「居るじゃない」パカ
ハッチを開き、札をぽいと投げ入れる
すぐに同じ札を近くにいた装甲車両に投げつけた
ひょいっと飛び、その場から離脱する
急に札を投げつけられたヘルメット団員は困惑していた
「何これ、…御札?」
「剥がれないんだけど、どうすれば…」
困惑している間に霊夢は"安全な距離"まで離れた
そして、一言ポツリと呟く
「起爆」
凄まじい爆音と共に装甲車両が吹き飛ぶ
ついでに、中にいたヘルメット団員も破片ともに吹き飛んだ
とはいえ流石キヴォトス人、この程度では欠損もせず、気絶程度ですんでいるようだった
「なんともタフネスな奴らね」
「霊夢ちゃーん、やっぱり来たよ……あ、終わった?」
パンパンと手をはたきながら霊夢は大幣を背中側のハーネスに挟む
丁度その時ホシノがシロコ達を連れて戻ってきたようだ
多分先生が「ヤッパリ援護スル!」と戻ってきたのだろう
あの先生だ、多分そう指示したに違いない
「ええ、丁度」
「久しぶりに霊夢ちゃんが働くの見たよー」
うへ、とホシノは柔らかくなりながら言った
なんとも平常運転なホシノである、働け
「まぁ、取り敢えず帰りましょうか☆」
「ん、アヤネがジープで待ってる」
シロコ達が先導し、ジープに戻っていく
私も取り残されないように彼女達を追いかけるのだった
働く時は働く女、博麗霊夢
尚その戦闘は微塵も力を出していないとする
えなに戦闘しないんじゃ無かったのかって?
本人は遊び感覚なのでセーフ!┏(`・ω・´)σ ヨシ!