「待ち伏せだったか…!」
カヨコは冷静にハンドガンを構え、遮蔽に隠れる
ついでに白目を向いていた社長…もといアルも連れて隠れた
こうでもしないと恐らく棒立ちになっていい的になる
ハルカは既に爆発にやられた、ムツキもだ
「ちゃんと予測出来なかった…」
アルの言葉に乗せられたところはある
しかし、もう少し警戒すればこんなことにはならなかった
「ぎゃ!?」
「うわあああああ!」
「く、くそがああああああ!」
傭兵達もアビドス対策委員会による的確な射撃によってダウンされていく
あちら側には強力な指揮官がいるようだ、聞いてない
「社長、どうする?」
「あ、あわわわわわわわ」
「ダメそう」
社長に一応指示を仰ぐが、ダメそうだった
なにせ未だに白目を向いて膝をついているのだ
これはひどい、まぁ依頼金が入らなさそうだし…
仕方ない、逃げるか
そう思った時だった
「おーおー、中々押されてんじゃん」
「…お前は」
その声に向けてハンドガンを向ける
しかし、現れたその姿を見て直ぐに銃口を下げた
「…遅いよ、何してたの」
「仕方ないじゃん、安月給だし」
「それは、…ごめん」
「いいよ、いいよ、頼まれたことだから」
その人物はうがーっと背伸びをすると、その両手に火を集めた
首をコキコキ鳴らし、構える
「さーて!皆火傷させますかぁ!」
「ふー、中々吹っ飛んだなァ」
焼け野原になった校庭を見る
傭兵各位はボロボロ、アビドス対策委員会組にも大打撃が入っている
セリカとノノミがダウン、ホシノとシロコのみが立っている
「まだまだ、やる気があるようだな?」
そう言って炎の拳を構えた、その時だった
「──────────藤原妹紅!」
「ッ!この声は!?」
聞き覚えの…いや、忘れるはずのない声が降る
上を見ると、宙に浮く博麗の巫女の姿がはっきりと見えた
彼女が生きている
その事実が私の目の前にあった
「…霊夢!生きていたなんてな!」
「そっちこそ生きてたなんて…あぁいや、あんたらは死なないか」
彼女はこちらを見下すような目で見ながら言った
その声にはどうも怒気が入っており、少しオコのようである
「どうしたぁ!?何か嫌なことでもあったか!?」
「…いいえ、話したいことは沢山あるけど」
ビシリと彼女は大幣を向ける
それは、故郷とも呼べる場所で幾度も目にしたもの
つまり、弾幕ごっこをする前のセリフを吐く時
「まずはあんたを片付けて、そこのヘボ社長もぶちのめす」
「なんですってェエエ!!?(巻き添え)」
左手に札、右手に大幣を彼女は構えた
そして更に守るように陰陽玉も旋回を始める
「…いいだろう!私もバ輝夜としか戦えてないんだ!
久々の弾幕ごっこ……楽しませてくれよ!」
妹紅は気付かない
人には見えない、それ程薄く、儚い雫が霊夢の目から流れることに
妹紅は気付かない
たった1人、取り残されたという感情に押しつぶされそうだった少女に
月まで届け、不死の煙
Byクロネコラウンジ
〇
『あれは、一体!?』
「"…少なくとも、霊夢の知り合いかしら?"」
アヤネの驚愕の声が無線に響く
シロコとホシノはノビたセリカとノノミを安全な所まで引き摺る
先程の火柱を直接浴びたようであるが、少しの火傷があるくらいだ
しかし衝撃が加わったせいか、気絶してしまっている
その頃、霊夢と妹紅は人間とは思えない戦い方をしていた
「…飛んでる」
「霊夢以外にも飛べる人なんているもんなんだねぇ…」
空を飛び、光る玉のような物を放ちあっている
戦いと呼ぶにはあまりにも"美しい"それは、人を見惚れさせる何かがあった
空中を自由に飛び回り、相手からの攻撃を避ける
そこの戦いに隙はひとつもなく、ここから援護してもかえって邪魔になるだろうとシロコは感じた
「見ることしか出来ない」
「その方がいいとおもうよ、シロコちゃん」
ホシノも同意見であった
そもそも彼女はショットガンである上、今はスラグ弾を持ってきていない
あんなに早く飛び回る敵を撃つことは自分には出来ない
「おらぁ!どうしたぁ!?」
「あー、何も変わりないわねぇ」
札のようなものを妹紅が全体的に放つ
それを霊夢は最小限の動きで避け、アミュレットを連射する
スタタンと小刻み良い音がするがあちらは大掛かりに避ける
「不死・火の鳥-鳳翼天翔-!」
何か紙のような物を取り出し、妹紅は宣言する
その瞬間、彼女の背中から炎の翼のような物が生える
彼女はまるで、火の鳥のような様相になっていた
辺りに弾幕を撒き散らし、霊夢に向かって火の鳥のような弾幕を放つ
まるで火の鳥が霊夢に突っ込んで行ってるかのようである
「避けるまでもない」
「…マジかよ」
霊夢は最小限の動きを保つ為、火の鳥の"合間"を抜けていく
それは正しく針に糸を通すかのような正確性であり、非常性でもあった
最小限の動きを保つ為に一番効率的な道を彼女は選んだのだ
失敗するとは絶対に思わずに、何気なく成功させた
妹紅はやはり、博麗の巫女であると確信しながら弾幕を放つ
しかし、いくら撃とうとも彼女に当たる素振りは無い
涼しい顔で全て避けられ、当たると思われたものは大幣で無造作に弾かれる
それと同時に己のスペルカードが切れた
私は笑いながら言った
「腕は落ちていないらしいな、霊夢」
「そう?ならいいのだけれど」
妹紅は自分の腕が落ちていると感じた
なにせ相手がとても早い、霊夢だからというのもあるが、あの夜は確実に補足出来ていたのだ
妖怪の賢者の気配が近くにある気がするせいで気が逸れている…そのせいかもしれない
皆、死んだらしいから気の所為だと思うが
「なら次だ!蓬莱・凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-!」
またしても背中から炎の翼が生え、妹紅を不死鳥へと変える
不死鳥になったり人になったりするその姿は伝承にある通り、まさに不死鳥であった
本人は、全く気づいていないようだったが
彼女は手のひらを突き出し、霊夢に向けて弾幕を放つ
1つの、大きな球体の弾幕…
それが、霊夢の近くに飛んでいく
「あー、こんなスペルカードもあったわねぇ」
近くまで来たそれは爆散し、小さな弾幕を放つ
その爆風のような小玉をきっちり回避していき、ホーミングアミシュレットを連射する
しかし、それらは放たれた弾幕に落とされていく
「おらぁ!一つだけじゃないぞ!」
「知ってる」
同じような弾幕を連射
移動する際に霊夢に向けて牽制の弾幕を波状に放つ
しかし、いくら放とうとも彼女との距離は離れることは無い
それどころか、どんどん近づいていく
「私は、さっさと終わらせたいの」
そう言って、彼女はどんどん近づいてくる
距離はもはや弾幕では放つには近すぎるほどである
何を撃っても辺りそうな距離感だ、恐らく当たらないが
「それでも撃つ!最後だくらえ!インペリシャブルシューティング!」
ラストスペル
これ以上のスペルカードは今のところは私は持ち合わせていない
考えていないというのもあるが、それは仕方ない話だろう
なにせ相手がいないのだから
弾幕を円状に何個も発射していく
「あー、あーはいはい分かった」
実は分かってなさそうな声を出しながら霊夢は的確に判断していく
円状の弾幕が花のように広がり、縮小していく
「まるで開花ね」
圧倒的な弾幕がバラバラと飛んでいく
その量のおかげで直ぐに霊夢の姿は見えなくなっていた
妹紅は弾幕を放ちながら全方位を警戒する
どこから来る、霊夢
お前はこれくらい余裕でくぐり抜ける、そうだろう?
そう、思っていた時だった
「────真正面からだと!?」
「──────────」
光り輝く真正面
そこから霊夢は大幣を構えながら突っ込んできた
明らかに通り抜けられる隙間はどこにも存在しない
ならば何があった?何をどうしたというのだ?
そう思っていると、懐にまではいられた
「久しぶりに発動したわ」
「まさか…!無想天──────────」
最後まで言おうとした言葉は腹への衝撃により妨げられる
霊夢は妹紅の腹にミニ八卦炉を向けていたのだ
霊力を変換したその威力はかつての持ち主にも劣らない物を生み出す
つまり
勝敗は、ついた
敗者は勝者と共に、地面へと墜落して行った
〇
「…凄かった」
シロコはその最後を見ながら、呟いた
このキヴォトスにおいて恐らくどこであろうと見られない光景
そう彼女は確信していたのだ
それはそうだろう
この"遊び"は、彼女達しか知らないのだから
どさり、と妹紅と呼ばれた女性が地面に激突する
続くように霊夢が着地した
シロコやホシノが声をかける暇も無く、霊夢は妹紅の首元を掴んだ
それに対して止めさせようと彼女達は近付こうとした
「…私は、心配したのよ」
無感情な声が響く
その声が彼女達の足を止めさせる
あまりに無機質な、何も無い声
逆に、もはや美しいと思わせる伽藍堂な声
「皆死んだんだって、居なくなったんだって」
霊夢は気づけば妹紅を膝立ちにしていた
妹紅の体はボロボロで、服も既にボロボロだったのが更に酷くなっている
所々から出血をしているのが目に見えた
「…のうのうと、そんな顔を見せれたわね?」
「許してくれよ、何でもするからさ」
無感情な声に妹紅は笑いながらそう言った
何故そこまでの余裕があるのかシロコ達には分からなかった
いや、"知らない方"がおかしくないのだ
分からない方が、良かった
「じゃ、貸一ね」
霊夢はそう言って、持っていた大幣を妹紅の顔面に突き刺したのだった
月が私達を嘲笑う