かくして博麗は透き通る世界に至る   作:回忌

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忌避するべき

「もういいわよね…あぁーあっつい!」

「はひー、息苦しい、もう脱いでいいよねぇ」

 

出来る限り遠くまで逃げ、もう追ってこないであろう地点にてセリカは目出し帽を脱ぐ

他のメンツも同じである…シロコは脱がなかったが

 

「これでカイザーローンが私たちの利子をどうしていたか分かりますね☆」

「"追っては来てないよ、霊夢ちゃんが始末してくれたからね"」

「仕事はしたくないわね、やっぱり」

 

空中から霊夢が降りてくる

先生より彼女は追撃する存在の抹消を命令されていたので実行していた

マーケットガードは今や立て直し不可能レベルで戦力を削がれてしまった

 

まぁ、もうブラックマーケットに行くことは無いだろうが

 

霊夢は汗も流していなかった

そんな彼女は未だに被ったままのシロコを見た

 

「脱がないと後々面倒よ」

「ん」

 

彼女は端を引っ張って脱ぐ素振りをしない

どういうことだろうか…霊夢は困惑した

ホシノがセーフティを解除しながら言う

 

「もう運命を感じたって言うか…もう魂の一部みたいなー?

 脱ぎたくないんじゃないのー?」

「シロコ先輩はアビドスに来て正解よ…他の学校ならやらかしかねないわ…」

「そ、そうかな…」

 

あれ程脱ぐのを拒否していたシロコだが、セリカの発言は効いたようである

一切動揺していない彼女が少し目を泳がせた

 

尚、覆面は脱がなかった

 

「…それで、この中に入ってるの?集金の奴」

「あー、いや、それなんだけど…」

 

ホシノが、集金記録の書類が入ったバッグに手を伸ばす

少しシロコは言い淀んだが、彼女にバッグを渡した

その中身を見て彼女は驚く

 

「…おー、まじか…」

「あら大金、私達本当に銀行強盗したのね」

「クリスティーヌ、びっくりだお♧」

 

中身はパンパンに詰まった大量の札束

はち切れそうな程の量であるため、使えばアビドスの借金はかなり減りそうであった

 

「こ、これがあれば借金を…!」

「──────────ダメだよ」

 

セリカが札束に手を伸ばす

しかしそれを許さない者が1人いた

 

それは、ホシノだった

 

いつもの緩やかな雰囲気は消え、鋭い目でそれを見ていた

ショットガンを握る手が強くなりすぎて、震えていた

 

「そんなことしていたら、歯止めが効かなくなるよ

 これを使ったら次は?また銀行強盗するの?」

「…それは」

「私は違うと思う、絶対にね」

 

誰も反論できず、黙り込んでしまう

その通りだ、ホシノの言う通り歯止めが効かなくなる

 

そうなって銀行強盗を繰り返せば、それは生徒じゃない

 

 

ヘルメット団と同じ、不良グループだ

 

何も借金を返せればなんでもいい訳じゃない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうかしら?私はそうは思わないけど」

 

しかし、それに異議を唱えるものが一人いた

霊夢は純粋な疑問を持つかのようにそう言った

 

「…霊夢ちゃん?」

「何か私達が悪いことをした?先に仕掛けたのはあちらの方でしょう?」

 

それは、キヴォトスの常識と幻想郷の常識が噛み合ってないことを示していた

学生らしく手を染めずに正攻法で生きていく学生達

それだから大人に騙されて、アビドスのようになっているところもある

 

幻想郷は違う

誰が仕組んだ地獄やら、誰もかも信用は無い

子供が作った世界じゃない、大人が作った楽園だ

そこに純粋な感情など存在するわけが無い

 

そもそも死が軽い幻想郷じゃこの程度のやり返しは優しい方だ

幻想郷ならば恐らく…というか確実に霊夢は死をくれている

 

相手が人間なら人里の法で裁かれろ

 

「そうだろうね、でもだからといってやっていい理由にはならない」

「違うわね、そんなことしてたらいつまでもこのままよ」

「じゃ、暴力に頼って学校の名を汚すというの?そんなんじゃ後々痛い目に遭うね」

「痛い目に遭わなければ良いし、そもそも名を汚す必要は無いわ」

 

ギチギチとした雰囲気が2人を覆う

どちらもいつもの何も興味がなさそうな顔ではなかった

 

明確な、"敵意"が2人から出ていた

 

アビドスの面々は知らない

彼女達が夜の学校でまるで友のように会話していたことを

ある意味仕方ないこととも、必然とも言えることだった

 

「"はいそこまで"」

「む」

「うへ」

 

先生が真ん中に割り込み、会話を無理やり中断させる

そして彼女は目線を霊夢に合わせた

 

「"幻想郷じゃ、そうだったかもしれないけど…ここはキヴォトスなのよ"」

「分かってる…分かってるけど、それでも」

「"いつか機会は必ずやってくる、それまでその火を絶やしては駄目だよ"」

「…、……分かったわ」

 

何故かその言葉には重みがあり、信じるしかないものであった

文句を言うならば噛み付いてやると思っていた霊夢だが、拍子抜けだった故に戸惑ってしまった

 

「…?誰かこっちくるよ?」

 

そんな時、ホシノが言った

彼女の目線の先を辿ると、どうやら誰かが走ってきているようだ

人数は1人、単独のようである

 

『確認します…便利屋のアルさんです!』

「"皆、装着"」

「ん」

 

来たのはアルのようである

なんの用事か知らないが、身バレは不味い

先生はそう思い全員に目出し帽の装着を命令する

シロコが電撃的な速さで装着した、やるところを見えなかった

 

「私はどうすればいいのよ」

「"霊夢ちゃんはそのままでね"」

 

やがて、便利屋のアルが現れた

どうやらここまで全力で走ってきたようだ、息も絶え絶えである

 

「はぁ、はぁ…やっと追いついたわ!」

「ん、何用」

 

シロコはセーフティを解除する

そこで、ホシノは既に気づいていたのか?と疑問に思った

しかし彼女が解除したのはかなり前である、接近なんて分かるわけない

 

…もしかしてかなり近づかれてた?

 

「さ、さっきの銀行強盗凄かったわ…凄いアウトローって感じ!」

「ん?ん…?あ、ありがとう」

「シロ…ブルーが普通に困惑しちゃってるよー…」

 

純粋な褒め言葉がシロコを襲う

こういう褒められ方をしない(普通しない)彼女は困惑していた

まぁ、当たり前っちゃ当たり前だな

 

そこで、彼女は霊夢にも気づく

 

「巫女さんも従えてる!?あの!?あの巫女さんを!?」

「いや、私は────────」

「"そう、私の指揮下に皆ある"」

「凄い!凄いアウトロー!」

 

キッと先生を睨むが、ニコリと返されてしまった

クソ、本当に妖怪の賢者みたいだ、こいつ

名前も体格も顔も似てる、性格もソックリだ

 

「な、名前聞いていい!?なんか組織名とかあるでしょ!?」

「社長ー、急ぎすぎ…あら?」

「くふふ!面白そうな状況!」

「あ、あわわわ…」

 

興奮しているアルの後ろから便利屋のメンツが来る

どうやらこちらを直ぐにアビドスの面々と理解したようだ

直ぐに霊夢は懐から針を取り出そうとするものの、ホシノに静止された

 

どうやらアルに伝える気が無いようである

 

「はい!言っていることはよーく分かりました!」

「ノノミさん!?」

 

なんかもう疲れた

霊夢はその様子を見ながら思う

なぜだかこの感覚は幻想郷で感じたものと同じである

 

一体、何が同じというのか

 

『ふはははは!このワインは私のモノよッ!WRYYYYYY!!!』

『そんなもんよりこの瓢箪の酒の方が美味いよー』

『ハグハグ、妖夢ー?次が遅いわよー?』

『幽々子様もう114514皿目です!厨房が死にます!』

 

「…ふふ」

「あ!霊夢先輩が笑った!」

「いや、笑ってないわ」

「いーやぁ?笑ってたね?」

 

笑い声が響く

なんとも平和な日々である、変わりない

故郷とはまた違った騒がしさがあり、美しさもある

 

 

守るべき、私の生きる場所

 

 

 

 

 

 

 

 

私の、存在意義

 

 

 

 

 

どこであろうと、私は何かを守る運命から逃れられないのだろう




ところで皆さん、ラーメン屋食ってたら爆破されて…
そして立ち上がったところで最初に見えたのが大量のヘイローだったらどうします?

いや、なんかの伏線って訳じゃないですヨ
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