気まぐれな境界が見せた悪夢
彼女の悪夢が覚めることは無い
それは、ある種の執念なのだから
「なんで、貴女達は普通に暮らしているの?」
それは、単純な恨み
彼女がここに来てから抑えていた、感情
本来表すべきでは無い邪悪や物
「のうのうと、何も知らずに生きている
虚しいだの、なんだの…本当の虚しさを知らないくせに」
大幣を振るう
それだけで稲妻が轟き、全てを壊していく
また、炎が渦巻いて龍の形となり全てを薙ぎ払っていく
「お前達は死ぬべきだ、苦しむべきだ」
怒りが、全てを燃やさんとする純粋な炎がキヴォトスを包む
それは彼女の嘆きであり、彼女そのものでもあった
「苦しめキヴォトス、苦しめ生きとし生けるものよ
アリウスじゃなかろうと、全員同罪だ」
そこに全てを守るはずの巫女は存在しない
彼女を止めるべく倒れなかったもの達が銃を取って戦う
何発もの、何万もの弾丸が彼女に迫る
しかし、それは一つも当たりはしなかった
「こっちに来るな!化け物め」
「起きてミサキ、目を開けて…」
嘆きの声が響く
しかし何であろうとそれは届くことはない
ありえないのだ、それが届くことなんて
彼女にはもう、怒りという感情しかないのだから
「あぁ、クソが、早くくたばれよアリウススクワッド」
「グア──────────」
「サ、さおり…?」
霊夢が投げた針が帽子をかぶった生徒に突き刺さる
顔面に四針、正確に投げたソレは確実に彼女の命を奪っていた
膝から崩れ落ち、持っていたライフルが地面を転がる
やがて命が無くなった体を放棄するようにヘイローが消滅していく
「う、嘘だ、サオリが死ぬわけ…」
「…、……ああああああああああああああああああああ!!!」
正気を失った1人が霊夢に向けて走る
持っていたロケットランチャーを、本来の用途とは別の使い方をする
端を持ち、思い切り振りかぶった
「邪魔」
「ぎ」
しかし、そんなのが通用するわけもない
簡単に大幣を薙ぎ払われて彼女は終わった
両腕がちぎれ飛び、彼女は地に伏した
「こ、の…ばけも、の……め」
「黙れ、蛆虫以下のクズが」
彼女の持ち物であるカッターナイフを首元に突き刺した
風前の灯火であった彼女の命は瞬く間に消えていく
一つ、またひとつとヘイローの輝きは失われていく
「皆を…!良くもこんなことが平然と出来るね…ッ」
叩き割られたマスクを外しながら儚い少女は吐き捨てる
体は既にボロボロであり、まともに立てる方がおかしいのである
ライフルは既にへし折られた
戦える手段はナイフの他無い
「お前達は平然と先生を撃ったじゃないか」
「!…それ、は」
しかし、反撃の意思は巫女の言葉により遮られる
本来ならば彼をあんなに撃つ必要なんてなかった
1発の筈だった弾丸は、ヒヨリを失った怒りにより多大な弾丸に変わった
彼女が、先生がヒヨリを見殺しにしなければ
「虚しいなんて、私の前でよく言える
全てを失って…"本当の意味"で虚しい私の前で!」
「ぎゃ」
大幣で殴りつける
殴りつけられた拍子に持っていたナイフを取りこぼしてしまった
すかさず彼女はそれを拾い、少女の膝に投げつけた
「ひぐっ、ああああっ…!」
「お前で最後だ、アリウス」
それは、本当の意味で"最後"であった
彼女以外に生きるアリウス生徒は存在していない
全員巫女に殺されてしまったからである
分校に居た子も
スクワットの皆も
…潜入させたあの子も
巫女が、リーダーのライフルを持ち上げる
その銃口が膝立ちにさせられた彼女に向けられる
明確な殺意、純粋な殺意の塊が彼女に向けられた
「ひっ、だ、誰かたす──────────」
「美しく残酷に、この大地から去ね」
カチリと、虚しい音が響くまで乾いた音が響き渡る
肉を撃ち抜く音が響き渡り、嘔吐くような声が響く
やがて、彼女は蜂の巣のようになって倒れ込んだ
使う必要の無くなったゴミを巫女は投げ捨てた
「次は…無能しか集まらない連邦生徒会か」
次の標的を定めながら
その、深い悲しみを表すかのような"青い"巫女服をたなびかせて
〇
「ゲマトリアは壊滅しました…博麗の巫女によって
いや?もはや破壊の巫女でしょうか?」
右半身が消え失せ、体のあちこちに御札や針が刺さった黒服は言う
余裕そうな顔をしているが、その体から迸る白の稲妻は明滅していた
今にも消えてしまいそうである
「色彩が放たれ、狼の神は死へと顕現した
それは、恐らく…あなたのせいでしょうね」
ベッドに横たわる人物に手を置いた
いつも着ている"中華風の服"や"ドアキャップ"のような帽子は机に置かれている
様々なチューブが彼女の腕に突き刺さっている
顔は包帯だらけであり、左目と口元以外は何も見えない
その下は、恐ろしい傷でまみれているのだろう
「貴女がイオリの足を舐めなかった…のは置いといて
その姿を、本来の姿をさらけだしたのが原因でしょう」
横たわる姿もまた美しいと黒服は思う
その頭にある金髪がまるで波紋のように広がっている
どれもきめ細かく、常人ならば手に入れる事の許されない毛髪である
キヴォトスでも有数の髪だろう
「貴女が妖怪たるべきは恐怖の確保
それゆえ幻想郷では貴女は賢者と呼ばれる程強く、美しかった
しかし、今は…」
クククと、彼は笑う
部屋には心拍音を計測する機械が電子音を鳴らすのみである
近くにあった客人用の席に黒服は腰掛ける
スーツに付いた土を彼は手で軽く払った
そして、ベッドの上を見る
ソレを見て、彼は絶句した
「まさか…あり得ない!」
そこにはチューブを引き千切り、起き上がろうとする先生がいた
目は極限まで見開かれ、ぎこちなく彼女は動いていた
「そこまで…貴女はそこまでするのですか!?」
黒服は叫ぶ
目の前の理解不能の存在に対して
懐から血がべっとりつき、乾いてもはや赤いカードとなった物を取り出した
彼女の目には確かな執念が宿っている
「ククッ…」
それを見た瞬間、黒服は口元を抑えていた
しかし、抑えきれない感情が抑えきれずに溢れ出す
「クハハハハハハ!!!やはり貴女は先生だ!
他の誰でもない…貴女こそが!」
彼女は腕を薙ぎ払うような動作をする
指先に沿うように、空間が"裂ける"
現れるのは、恐ろしい、目玉だらけの空間
「…」
「ククククク!行けばいいですとも先生!
是非とも貴女の可能性を見せて頂きたい!」
興奮する黒服を横目に、彼女は服を着て帽子を被る
覚悟は既に決まっており…またブレることはあり得ない
彼女は、先生なのだから
◯
「ッ!はぁっ…はぁっ…」
布団から飛び起きる
汗が額から流れ落ち、布団を濡らす
嫌な夢を見てしまった…彼女はそう思いながら汗でビショビショのベッドを降りる
彼女は黒いインナーを身に着けていた
豊かな体のラインがかなり強調されている
同性でも見惚れそうな美しい体である
「"お茶、入れようか?"」
「ありがとう、助かるわ…」
ティーポットを用意し、優雅にお茶を入れていく
無性に冷たいものが飲みたいので冷たいお茶である
作り終えたソレを彼女は軽く飲み干した
「"まだ振り払えない?"」
「違うわ、また違うものだった…」
コーヒーを飲みたかったので、コーヒーメーカーの電源をいれる
部屋が真っ暗故に機械の光が部屋を染める
コップを用意し、出来上がるのを待つ
「私自身、まだ力を使いこなせていないのかしら」
「"私の体に慣れていないんだろうね、多分"」
歯軋りをする彼女に対して先生はそう言った
何も貴女が全て悪い訳では無いのである、と
己の体を擦りながらそう言ったのである
「そうかもしれない、しかしこれは…」
「"貴女が生徒じゃないだとか、どうだろうが関係ない
私は困ってる人なら、誰でも助けるよ"」
先生は笑顔を浮かべながら平然と答える
そのもはや悪意とも呼べる善意に、彼女はため息をついた
「いつか撃たれるわよ」
「"その人の為になるなら、本望だよ"」
彼女は、さらにため息をついたのだった
機種変したので投稿遅れるかも
慣れぬこのデカさ