滅びし楽園の忘れ形見
「ッ!?」
「わっ!?どうしたのホシノ先輩!?」
ガタンと椅子を倒し、立ち上がった
それ驚いた皆がホシノを心配する
「ッ…、……いやー、なんでもないよ」
「ほ、本当ですか…?」
バクバクと鳴り響く心臓を抑えるために呼吸を整える
深呼吸を数回、瞳閉じて繰り返す
…30秒程経ち、ホシノは瞳を開ける
「いやー、悪夢で飛び起きるなんて私ももう歳だねぇ…」
頭をカリカリかきながらホシノは椅子に座り直す
そんな彼女を見てノノミがあらあらーと笑う
多分彼女には何かしらバレてるかもしれないが…知ったことでは無い
そんなことより
(…さっきの、夢じゃあ…無いよね)
ホシノは定例会議を聞き流しながら考える
定例会議の中に借金が3000%とかいう頭おかしい事になっているのは…気にしないことにしよう
銀行の信用が落ちたとか、アビドス自治区がカイザーにおちているなんてどうでもいい
さっきの光景
霊夢が風紀委員を薙ぎ払い、地を濡らしていく赤い液体
こちらにまで飛んできそうな肉片や脳髄…
そして、それを止めた…妖怪の賢者を名乗る者
先生が、全く別の存在へと変わった瞬間
…あれは、一体なんだったのか
無意識に拳を握りこんでしまう
やはり、大人は信用出来ないのか?
そもそも、彼女は"人間"なのか…?
ありとあらゆる謎が頭を駆けずり回る
「…もう無駄足よ、今日は休んだ方がいい」
「"霊夢ちゃんの言う通り、皆頭を1回冷そう"」
霊夢と先生が興奮する皆を宥めたところで会議は終了した
皆カイザーに対する不満をぶちまけながら帰ってしまう
聞き流していたが、かなり不味い状況のようである
やりたくないことをしなければならないのかもしれない
…やりたくはなかったが…
しかし、その前にやることがある
「先生…いや、"紫"」
「…あら驚いた…覚えてるなんて」
おどけたような表情な顔をして彼女は嗤った
〇
「それで、何を聞きたい?暁のホルス」
「…その呼び名はやめてほしいかな?」
先生の皮を被ったそいつは、空き教室のひとつにホシノを誘った
一応警戒をし、ショットガンのセーフティを解除している
盾もちゃんと展開してるし…何時でも撃てる
しかし、勝てるビジョンは全く無い
それどころか開口一番の言葉にホシノはガタガタに崩されていた
どこまでこいつは知っているんだ?
「あらそう、先輩の安いオマケ?それとも安いオマケの後輩ちゃん?」
「──────────ッ!!!」
銃口を顔面に突きつけた
引き金を危うく引きかけたが、理性を何とか保つ
ギリギリと歯ぎしりをしながらショットガンのグリップを強く握りこんだ
「フーッ、フーッ…!」
「少し言い過ぎたかしら?ごめんなさいね」
奴がそう言うと、何故か心がすーっと落ち着いていく
心を弄られたような…ゾワっとした感覚がした
何をされた…?一体何を…
「で、何を聞きたい?私が何か?先生がどうなってるかとか?」
「…んんっ…そうだねぇ、私が聞きたいのは…
あなたは誰?霊夢のなんなのさ?」
霊夢と親しいような関係のコイツ
彼女から腐れ縁は何人もいると聞いている
こいつもその1人だったりするのだろうか?
「私は彼女の保護者、師匠みたいな…まぁ、育て親とでも思えばいいわ」
「…、……成程ね」
育て親ときたか…想定外だ
師匠ならばかなり納得できるところはある
…それ以外は全く納得できないというのだが
しかし
「霊夢は全員死んだって言ってた、なんで生きてるのさ」
「…それは」
「"私が説明するよ"」
言い淀んだ奴の口から、先生の声が漏れた
どこから聞こえたのか意味がわからなかったが、しかし確実に奴の口からだった
どういうことだ?先生は奴に吸収されたのか?
困惑していると、彼女が話を進める
「"外の世界に居た時ね、裏路地で彼女を見つけたの
かなり衰弱していて…今にも死にそうだった"」
「私からすれば丁度いい恐怖の源があったわねぇ」
「きょ、恐怖?」
ホシノは首を傾げた
聞きなれぬ言葉が話題にでてきた
恐怖?何故今恐怖が出てくる…
「前提知識として、私達妖怪は恐怖から生まれる」
「妖怪…霊夢の言ってた種族か」
「名前しか知らないのなら説明は要るってことねぇ…」
はぁーっと溜息を彼女はついた
名前言うなら構造とか説明しろやというアレなんだろう
まぁ、いいや…
要約すれば、妖怪は恐怖で生きているということである
その対象に対する恐怖が大きければ大きい程対象は強くなる
彼女は幻想郷でかなり恐れられていたので賢者と呼ばれる程強かったらしい
先の戦闘で、それは証明されている
多分この世界で霊夢と渡り合えるのはこの妖怪とヒナくらいだろう…
「で?なんでその恐ろしい大妖怪様が先生になってるのさ?」
「"…瀕死の彼女に、私の身を使わせた"」
「え?」
「正確には依代にしたというか…簡単に言えば私は彼女に取り憑いているような感じかしら?」
…どういうことだろうか
簡単に略して欲しいという目をしていると
「はぁ〜(クソデカ溜息)」
追加の溜息をいただいてしまった
彼女のありがたーい説明をこの身に受けることにした
どうやら彼女の魂が先生の中に強引にぶち込まれているような感じである
瀕死だった彼女が裏路地にホイホイ♂来てしまった先生を押し倒し、瞬間的に生まれた恐怖を利用する
瞬間的に生まれた恐怖につけ込んで己の魂を最後の力を振り絞り能力を行使してねじ込んだ
…どういうこと?
ちなみにその後己の存在を消さない為に外の世界で賢者の姿となり、わざと暴れていたりしたようである
おかげで全盛期とは言わないが、幻想郷に居た頃の半分の力は取り戻したようである
キヴォトスにその情報が来ていないのは先生に尾ヒレをつけないようにするためだそう
確かにまぁ、曰く付きの先生なんて雇わないし…
「これくらいかしら?」
「あと1つ、あの後…何をした?」
眠気に襲われた後、ホシノは対策委員会の部室にて目覚めた
それこそこの話の1番最初…ホシノが飛び起きたところである
私はまるでいつもの会議でいつも通り居眠りしてしまったようだったが…
それ以前に、皆の反応がおかしい
あまりにも平凡…カイザーと一悶着あったものの霊夢の話題が何一つ上がっていない
皆あの場所にいて、惨状を見ていたはずなのに
「私が事実と虚構の境界を操り、事実を揉み消した」
「?…つまり……あれは事実だったということ?」
こくりと彼女は頷いた
しかしその直後に彼女は困ったような顔をする
どうやらなぜそんなことをする必要があるのか、疑問に思ったことを察せられたようである
「…まぁ、色々あるのよ…霊夢とか、あの後正気に戻したらどうするというの?」
「…あ」
彼女は風紀委員を仇だと誤認していた
もしあの後彼女が辺りを見渡せば…そこには己の殺した痕跡が残りきった死体が大量にある
そんなの見てしまえば、彼女は己の存在を失う
かつて"守るべきもの"を破壊された彼女が、自分から破壊に行う
彼女が最初に改めて認識したのが、血塗れた己の手のひら
彼女は…多分、何もかもに絶望することだろう
「実際死にかけたしねぇ…」
「?…何か言った…?」
「いえ?西行妖が百鬼夜行にあるなんてね」
「???」
意味のわからないことをいう紫に困惑する
そんな紫を先生は押し込む
「"まぁ、そんなつまらない話だよ"」
「…私の過去を知ってるのは聞かないけど…先生も、用があるのかなぁ?」
先生の手に握られている紙を見て、私ははにかんだ
シロコが盗った筈のそれは何故か彼女の手に掴まれている
原理は分からない、シロコはカイザーの悪行にそれどころじゃなかったようだが
「"どういうことなのか聞きたくてね"」
「…うへ、盗ったのはシロコちゃんの筈なんだけど」
「"帰っちゃったから、紫さんに代わりをしてもらうよ"」
「あら?仕方ないわねぇ…」
本当に帰ってしまったようである
彼女にもこの学校に思い入れがある、大きな思いが
「"何故辞めようとしたのか吐いて貰うよ"」
「…うへぇ、こりゃ逃げられそうにないね」
ホシノは逃げ場無し、と判断し…窓辺に近寄る
窓の溝にも砂が溜まり込み、僅かな隙間から入り込んだ砂が靴と擦れる
昔から何も変わってない、変わったのは砂が増えたのと、クラスメイトが増えただけ
「昔はとっても大きくて、キヴォトス1とか言われてた学校だった
…らしいんだよね、3年生の私ですら知らないんだよ
先生は多分事前情報で知ってると思うけど…」
ホシノは独白するように言った
先生と紫はなんの合いの手を入れることは無い
きっと、入れない方が彼女の為である
「私が入った時には既に本館は砂に埋もれていた
ここは埋没を奇跡的に免れた別館なのさ
…入った時には私には守るものはあったと思う
既に埋もれていたとしても、何かしらあった筈だった」
ガラスをなぞる
張り付いていた砂が取り除かれ、彼女の指の進むとおりぐちゃぐちゃな丸が書かれる
「…その時に居た先輩達…いや、先輩かな、あの人ももう居ない
何をしたいんだろうね、私は」
パキリ、とガラスにヒビが入った
それは彼女に宿っていた少しの怒りと、大量の虚しさであった
己の守っていたものはもはや何も無い
今は、今は仲の良い仲間達が居る
「ここまで来たのに、私はまだ悩んでる
彼女達の為にいるべきか…それとも…」
「"どこか、行き場所でもあったの?"」
先生の言葉にホシノは目を見開いた
やがて彼女は困ったような顔をする
「先生って、勘がいいのかな?それとも────────頭がおかしいのか…?」
ホシノはそう言いながら、言葉を続けた
「2年前、その辺から変なやつに勧誘を受けてた」
「"一体どこのドイツかな?"」
先生がそう聞くと、ホシノは険しい顔をしながら返す
「…、…分からない」
「"分からない?"」
「うん、大人なのは確かなんだけど…あれはキヴォトスの人間じゃない」
ショットガンを弄りながら、彼女は言う
「奴は、破格の条件を私に突きつけてきた…
条件は言えないけど…あいつらはPMCで使える人材を集めてる
…よく分からないやつだったよ、見た目が黒いから、黒服って呼んでる」
そのトーンは全くもって緩やかな物では無い
明らかな敵意が、その黒服という人物に対する敵意が
いや?大人だろうか?
「…もう、捨てちゃうか。こんな退部届け」
「それが、最善の選択よ」
紫の発言と共にちぎれ、宙を舞って消えていく退部届け
それを見て気持ち良さそうな顔をしたホシノが、背伸びをした
その後は、たわいもない会話だった
さよならと、またあした
そして、その選択を止めないこと
「…ハハハ」
次の日の早朝、アビドス対策委員会の机の上
アビドスの全員に向けた手紙に、退部届と退会届
それは、皆の頭を真っ白にするには…十分のものであった
ほくそ笑む、先生と紫を除けば、の話である
にしても新たなホシノ曇らせ概念出来そうですね
ユメ先輩の彼氏オリ主からお前があの時水筒買わせればとか放置しなければとか
…誰か書いて(はぁと)
先生&紫「(ゲラゲラゲラゲラ)」
他のメンツ「「「(なんか胡散臭い……)」」」
あとんな事より更新ニキは毎日投稿をお望みか?
わたしゃ無理だよ!囧<ウワアアアアアアアアア!!!