かくして博麗は透き通る世界に至る   作:回忌

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面白すぎて一気見されたと言われて、もう気が狂う程嬉しいんじゃぁ^〜


運命

カイザー理事の敗因は、単に相手が悪かったと言えよう

 

今まで通り、対策委員会のみのメンバーであればこんなことにはならなかった

彼女達だけであれば既にアビドスは陥落してしまっていただろう

 

このタイミング、全てが噛み合った瞬間

 

全て後手後手の状況であった

先生は幾つかの対策を考えていた

…が、どれも根本的な解決は出来ないものである

 

彼女の案では打開はできない…故に頼ることにした

 

というより紫は手紙を受け取り、読んだ時点で何かしら考えたらしい

アビドスのことについて調べ、なぜ借金があるのか調べ尽くした

アビドス自地区がもはや雀の涙と言える程の物であることも知っていた

 

アビドスに置かれた状況を聞いた時、先生は「こマ?詰みじゃね?」と思った

紫曰く、「私達が来るのが一日でも遅れていたら本当に詰んでた」との事である

 

あまりにもギリギリな状況であったという事だ

しかし、妖怪の賢者としての知力は何一つ落ちていない

力が全盛期の半分だとしても…落ちたのは力だけである

 

この頭は全く落ちてすらない

 

 

勘違いしないで頂きたいのはカイザー理事も馬鹿では無いということだ

この日の為に念入りに、念入りに計画を立てたのだ

砂漠にある宝物の為、とほざいていたが紫曰く間違いでは無いらしい

ただ、探しているものがかなり不味い物だったらしく、詮索ははばかられた

 

今日まで、ホシノを甘い蜜と罠でおびき寄せ…落とす

彼からすれば彼女は最後の砦であり、最終的な障害であった

 

ようやく、彼にとってのチャンスが舞い降りた

 

裏をかかれないようにサンクトゥムタワーへの通信や交通網は全て傍受していた

この土壇場で最後の邪魔をされる訳にはいかないのである

部下に任せて絶対に通信や交通を妨害しろと厳命したのだ

 

この状況で、勝てる方がおかしかった

実際蜘蛛の糸で橋渡する以下の凶行なのである

 

しかし、彼が相手していたのは…人間ではなかった

 

 

妖怪の賢者と言われた、幻想郷でも恐れられた存在

 

人間と妖怪と言う相容れない存在を共存に導く"狂人"

 

恋焦がれた郷を滅ぼされ、残された女

 

 

 

 

オートマタであるカイザー理事よりもずっと長生きしている脳は、気狂いな案を生み出す

機械の、真っ当な脳みそには全く理解できないような"答え"を

 

「ほわぁあああああ────!?」

 

カイザー理事の乗っているゴリアテが吹き飛んだ

霊夢の執拗な脚部への攻撃により、倒れ込んだ所を総攻撃された

ゴリアテの装甲を持ってしても、アビドスと便利屋による総攻撃は耐えられた物では無いらしい

 

そのまま一緒に吹き飛ぶと思われたカイザー理事は、ゴリアテに備え付けられた脱出装置により吹き飛ばされる

どちみち吹き飛ぶ運命だった、死ぬか生きるかの違いだけである

 

「貴様ら…!」

「会長!傷が…!」

「…一旦撤退だ!覚えていろよ…!」

 

胸から落ちるネジ類を拾い上げながら、カイザー理事は逃げる

捨て台詞を吐いて、全軍に命令した

 

その恨みの籠った目が先生を射抜く

 

 

しかし、彼女は不敵な笑みでそれを返すのみであった

 

 

「退却命令!全員撤退だ!」

『本部より撤退命令、本部より撤退命令

 全隊は速やかにHQへ撤退せよ!』

 

今まで猛攻を下してきたカイザーがピタリと攻撃を止め、撤退していく

綺麗に統率が取れた軍である、オートマタだし当たり前か…

 

「聞いた!?アルちゃん!覚えてろ〜、なんて!

 あーんな三下セリフ実際に聞くことなんてあるんだ、アハハ!」

「…予想通りにいった、風紀委員会にも通用すればいいけど」

 

ムツキが堪えきれない歓喜を隠すことなくさらけ出す

話題を提供された何処吹く風と言わんばかりにキメ顔をしていた

カヨコに関しては何故か風紀委員会を次の標的にしていた

なんの恨みか因縁があるのか知らんが、関わることは無い

 

さてまぁ、ここまでは簡単だ、…今までもかなり狂っていた(難易度ルナティック)

 

 

「"今からが本番?"」

「ええ…ま、幻想郷の腹の探り合いに比べればお遊びね」

 

先生と紫は、そのような会話をした

今からが本番であることに少し不安を感じる先生

かたや故郷に比べれば楽過ぎると余裕を持つ紫

 

そんな、2人で1人の彼女の元に1つの通知が入った

 

携帯を取り出し、それを確認した

 

「"…"」

 

その要件…というか内容を確認すると、彼女は皆の方向をみた

丁度皆がこちらに歩み寄って来るところのようだ

 

皆が集合したその時、彼女は伝えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ちょっと、仕事をしてくるよ"」

 

 

大人の、仕事をね

 

 

 

アビドス自地区、商店街

もとい、ビル群が集まる場所にて

 

先生は1人でとあるビルに来ていた

 

 

通知の内容は、座標と時間のみ

他に一文として「来ていただけるのならば、ホシノには手を出しません」とあった

恐らくコイツがホシノと取引した"大人"なのだろうと直感で思った

…というかこの状況でそう言ってくるやつなんてそいつしか居ないだろう

 

確か、黒服だったか

 

指定された座標、部屋の扉の前に立つ

小綺麗な扉である。今回の現状の黒幕がいるとは到底思えない程小綺麗だ

座標がブラックマーケットかつ、薄暗い裏路地の空き部屋とかなら雰囲気は出ていた

 

それと、アロナと紫で特定も出来ていた

ただこんな一般的なビルでは特定も難しい

 

ま、知ったことでは無いが

 

蹴り飛ばしてしまいたい扉をノックもせず開けた

 

 

「お待ちしておりましたよ、八雲先生

 いえ?スキマ妖怪とでも言うべきでしょうか…?

 ともかく、貴女とは一度会ってみたかったのです」

 

 

男が、その部屋には1人居た

しかしあれを男と判断していいものなのだろうか

声が男性のものである、というだけでその他は異常である

 

まず、その顔は我々がよく知る顔では無い

 

まるで黒い炎が纏まり、人の形をしている…というのが正しいだろうか

手袋をしているようだが、僅かに見える肌が顔と同じような色をしている

顔のパーツは存在せず、白い稲妻が迸っている

 

それが奇跡的に顔のようになっている、と言うべきか

人間では無い化け物が人間を模倣しようとして失敗した結果と言われれば納得出来る

…でなければそのような姿にはなり得ないだろう

 

そのくせ黒いスーツを着込んでいるものだから、その異常さに拍車がかかる

紫は初めて見るタイプの大人に、少しの警戒心を持った

 

 

こいつは、恐らく私と同義の存在であると

 

 

「……貴方のことは知っています、連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。

 あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生。

 

 そして、かの楽園の設立者

 

 貴方を過小評価する者もいるようですが、私たちは違います」

 

どうやら彼は既に紫の存在を知っているようである

どのような形で知っているのかは興味ない

 

にしても亡霊みたいなやつであると紫は思った

冥界に居る友人とは全く違うようである

 

にしても、彼女は今どうしているだろうか

冥界の入口を"閉じさせて"、あれから忙しくて何も通信していない

しかしこのキヴォトスにて西行妖は確認されているので多分そこの近くにいるだろう

 

時期が来れば百鬼夜行にも行かなければならないな…

 

などと、全く黒服を相手にしていない紫

 

彼女の代わりに、先生自身が聞いていた

 

「まず、はっきりさせておきましょう──

 私たちは、貴女と敵対するつもりはありません

 むしろ、協力したいと考えています

 私たちの計画において、一番の障害になりうるのは貴女だと考えているのです」

 

トントン、と机を人差し指で叩きながら彼は言う

なんとも偉そうだ、椅子に座ってゲンドウポーズしやがって

先生は何気なくキレていた、ホシノのこともそうだが、椅子ひとつ用意してねぇのか

 

しかしそれをグチグチ言う先生では無い

 

「私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません

 ですが先生、貴女の存在は決して些事とは言えない

 貴女と妖怪の賢者が1人で2人になっている今は、特にね

 …敵対することは避けたいのですよ」

 

言っているのはかなり無理のあることだ

要約してしまえば「お前目障りだから大人しくしてくんね?」とほぼ同じ意味である

 

あと彼は割と本気で敵対したくないようである

彼が注視しているのは先生の中にある、紫の存在だった

 

ま、当たり前である

忘れられた神々云々で忙しかったところ、その問題を軽く超えてくる奴らが現れたのだ

どこぞの閻魔、自由奔放な少女、死を操る亡霊、月の頭脳etc.....

 

彼のストレスはマッハである、可哀想に

 

「"先に名乗るべきだと思うけど"」

 

そして、先生は取引を一蹴どころか聞きもしていなかった

フル無視して「まずは自己紹介だろタコ」と言わんばかりの口調で黒服を攻めた

 

「…そうでしたね、失礼しました

 私としたことが自己紹介を忘れてしまうとは」

 

 

 

 

もはや白々しい態度でやつは言う

なんともいちいち胡散臭い奴である

もっとハッキリと告げないかとブーメランを放ちながら紫は彼のことを見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「適切な名前がありますので、今はそれを借りるとしましょう

 我々は『ゲマトリア』とお呼びください

 そして私のことは『黒服』と…割と気に入っていましてね」

 

彼はどこか上機嫌な様子で、名乗ったのだった

 

 

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