「さて、ちょっと関係者を詰めてホシノの居場所を見つけたわ」
後日、アビドス対策委員会の部屋にて先生…もとい紫はそう言った
とはいえ見た目上の変化がないのとホシノ以外紫の存在を知らないので、誰も気にしない
「本当ですか!?先生!」
このように、"先生"だと認識する
知っていた霊夢も現実改変を受けてそれを疑うことは無い
ホシノが居れば人格が入れ替わるつど態度がホルスだったりおじさんになる
ま、今気にすることでは無い
「ええ、何とかね」
あの場でもう少し黒服から情報を手に入れるべきだったかもしれない
幻想郷を襲った犯人は"確実に"ゲマトリアの面々に居るはずなのである
あの化け物達がキヴォトスから流れてきたのは確定、そしてそれを作りたりえるのはゲマトリア以外無い
…まぁいい、"気配は覚えた"
「…先生、本当に対策委員会は正式な委員会になったの?」
ふと、シロコがそんなことを聞いてきた
その目にはわずかながらの憤りがあった
この作戦を立案したのは他でも無い紫である
先生では無く妖怪の賢者である私が説明すべきだ
というわけで先生にはただいま待機を命じている
真横で体操座りしているのを横目に会話を続ける
「なったわ、ホシノのサインのおかげで」
「…それを得るために、カイザーを罠に嵌める為にホシノを使ったの?」
「そうね、言う通りだわ」
否定することは無い
飄々と、当たり前であるかのように言った
何せ事実である、何を否定しようと言うのか
出来るのは私には悪意は無く、謝意も一応あるということだけだ
それ以外に言うことはなく、言えば怒るのは当然なので言わないのである
「私はカイザーを嵌める為にサインが必要だった
悪く言っちゃうけど、そのためにホシノを"辞めさせた"」
「…それは…」
それは明らかに"悪い大人"の行動であった
彼女達が最も嫌う人物達がやろうとしたことである
作戦は本当に無謀なことであった
ホシノがサインでは無くハンコ等で済ませていれば前提が崩壊していた
そもそもシロコはあの退部届けを確認したのを知っている
彼女からすれば先生の行為はただの裏切りだ
「そうね、許してくださいなんて言わない
私はここで撃ち殺されても仕方ないのだもの」
紫が言う通りである
アビドス対策委員会に対しての完璧な裏切り
なんならカイザーの借金よりも悪質までもある
信頼していた大人も、また悪い大人であった
だから
「ええ、許せません」
ノノミはハッキリと言う
彼女の目にはハッキリと怒気が孕まれた瞳であった
カイザー理事に向ける瞳も全く同じように感じだった
「貴女はクズです、生きてはいけない奴なんです」
「そうね、そうでしょうね」
乾いた笑い声が漏れた
紫はこうして怒られるのも久しぶりだと、思った
そう思っていた時だった
「ッ!!」
ゾッと背筋が凍るような感覚が走る
まるで背中を全て氷にされたかのような感覚であった
彼女を見てみると、能面のような顔をしていた
ノノミは、怒っていた
それは、先生に対してではなかった
それは、ホシノを嵌めた紫に対してだった
「貴女ですよ、貴女、いつもいつも脇から人を見てるだけで弄んで。」
「え、あ……どういう…」
机を思い切り叩く
パキリ、とノノミが叩いた場所から机にヒビが広がる
彼女が怒っていることをあまりに見ないアビドスの面々は唖然とした顔をしていた
「そうして人のガワに隠れていれば満足ですか?
先生を盾にして…もし失敗したらどうするつもりだったんですか!?」
本気で彼女は怒っていた
涙を流し、紫に対して怒り狂っていた
場所が場所であれば己の得物であるガトリングガンをぶっぱなしているところである
「…、そう、…ね……」
「ッッッ!!!」
歯切れの悪い紫に対してノノミはだんだんと近づいていく
彼女を止められる者は誰もおらず、アヤネも止められるものでは無かった
「歯切れが悪いですね貴女!一体何者ですか!?
夢に出てくるあの"女"と全くもって一緒!
あの夢のように変な力使って私を眠らせようとも!?」
「の、ノノミ先輩!」
彼女は錯乱していた
一種の混乱状態とも言えるものであった
セリカが止めようとするが難なく振り払い、紫の襟を掴む
「"お、落ち着いて、ノノミ"」
「──────────!」
"先生"の一言で、ノノミはピタリと動くのを止めた
それは彼女が信頼している"先生"のものであるからだ
掴んでいた襟を慌てて離し、先生から離れる
「ご、ごめんなさい先生…少し気が動転しちゃって…」
「"分かってるよ、ノノミ…私も気をつける"」
先生はノノミをなだめた
頭を撫でてやり、落ち着きを取り戻させる
("…彼女の前では、もう出るべきでは無いね…貴女は")
(そう、ね……彼女には悪いことをしてしまったわ…)
「…それで、どうやってカイザーにカチコミに行きましょうか」
コホン、とアヤネが咳払いをして空気を戻した
それはそれとして、本当にどうやってカイザーにカチコミに行こうか
行くだけなら単純であるが、あちらも戦力を集中していることだろう
何せここで破られれば後が無い、奴らからすれば。
「"カイザーは本気で抵抗するだろうね"」
「…こちらも戦力が必要」
シロコの言う通りである
今まさに必要なのは戦力なのだ
ただの戦力ではない、圧倒的な強さを誇るもの
そういえば、最近"会ったな"
「"心当たりならある"」
「本当ですか!?一体どんな…」
「"依頼は既に通してあるからね"」
「便利屋?それでも彼女達じゃ足りない」
シロコの言う通り、便利屋だけでは足りない
精鋭揃いだが先程言った通り数が足りないのだ
故に、頼ることにしよう
"最強"が座す、風紀委員に