かくして博麗は透き通る世界に至る   作:回忌

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散った物、散らなかった物

─────夢を見る

 

弾幕を放ち、奴らを迎撃する夢を

 

─────夢を見る

 

抵抗虚しく殺されていく仲間たちの姿を

 

─────夢を見る

 

生き残ってしまった己を恨む怨霊たちの姿を

 

 

 

こうして生き残された身として…罪は深い

私は何も守れなかったのだ─────何もかも

 

幻想郷も

仲間達も

人々さえも

 

─────己の居場所さえ、守れなかった

 

奴らは圧倒的だった

妖怪みたいな、ただの化け物だったらとても良かったのだ

 

…しかし、奴らには固有の能力のようなものがあった

 

奴らは劇的な速さで増え、"学習"していく

あの化け物共の特性かどうか分からないが…もう居ないものだ

 

細かく言えば、弾幕の威力を学習し、更に体が固くなっていく

いわゆる進化とか言うやつである…次に会って戦えばなんと攻撃が効かない

どんな必殺技であろうと、である

 

─────ただのクソゲーだ

 

しかもそこらのやつは知能を持たないが、一部のヤツらは知能を持つのである

侵攻し始めは単調なのを良いことに様々な策に簡単に貶めることが出来た

 

…しかし、知能があるやつが出てきはじめましてから変わった

簡単には罠にかからないし、それどころか奴らの罠にハマることもある

 

…皆の名誉の為に言うならば、私達は全力で戦った

 

しかし最後には出し切るものを出し切って…何も出来なくなった

弓やなんやらはもう通じない、かと言って妖力も…

 

生き延びたやつは居ない…"ある意味"生きている奴もいるが

 

幻想郷には多種多様な種族がおり、それらが互いに協力だったり敵対しながら暮らしている

その中に不死人という死にもしないし老いもしない奴らがいるのだ

 

確か、3人

 

月の頭脳と呼ばれたヤツ、輝夜姫本人…後その輝夜姫に恨みを抱く女

 

その3人が居た

化け物達も彼女を襲ったが、途中から不死身だと分かったのだろう

永遠亭に行った時、死に行く従者さんが教えてくれたものだ

…連れ去られた、とね

 

多分おもちゃとして遊ぶため持って帰ったのだろう

いくら殺そうと、いくら喰らおうと生き返る人型の化け物

 

…真相は定かでは無い

奴ら天使らしく封印みたいなものを使ってたし、何かしらやったのだろうとは思う

それがなんなのか…知る機会もないし、知る気もない

 

そういえば、月の頭脳は言っていた

…侵略されてるのはこの幻想郷だけなのであると

 

どうも月やらに侵略は行かなかったようである

何故あの化け物共が幻想郷だけを滅ぼしたか分からない

厄介者が多い幻想郷を先に滅ぼすためか、あるいは"逆"か

 

もし上記が前者だとしても、その後が不明だ

幻想郷が終わったあと、その矛先がどこに向くか…分かりもしない

 

私に言わせれば、あんな貪欲なやつは全てを食い尽くすという話だ

 

 

ともかく、ろくでもない過去というわけである

 

 

そんな夢を、寝る度に見てしまうのである

 

 

「霊夢!奴らをどうにかしてくれ!」

 

無理だ

 

「霊夢!助けて…」

 

手遅れだ

 

「アイツは、あいつは仇なんです!」

 

死体が喋ってる

 

 

─────もう、見たくもない

あれから数日を暮らしたが…一切寝れていない

店主から受け取ったあの制服も、登校の時以外着ていない

あれは私が背負わなくてはならない罪であり…私の枷だ

本音を言えば、制服が暑苦しいというのもある

なんでこんな砂漠のど真ん中で長袖を着る必要があるのだ

 

なんたって通気性が良くない、臍とか腋とか

 

…それはどうでもいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────結論から言うと、最近は不眠症だ

 

 

…眠れない

私はベッドから降りてぼーっと部屋の中を眺める

住宅地にある一軒家…そのひとつ

はっきり言ってかなり大きい、ひとりじゃ持て余してしまう

 

…博麗神社も同じようなものだったか

 

「…まだ、夜か」

 

私は、夢のこともあり不安が募る

 

─────あの化け物がこの世界に現れていないか

そのことを感じてしまうといても立っても居られなくなる

 

寝着から巫女服に着替え、陰陽玉を浮かせる

そろそろ霊力も溜まりきった頃だ、万全に戦える

こうでもしないと私は不安でならない

 

最悪の想像が頭をよぎる

 

『助けて!レぃむぅううーーー!』

『助けて…ください…』

『うへ…もう…やだよ…』

『…誰か…誰か…』

 

「…ッ」

 

私はあまりの想像に、自分に対して嫌悪感を抱いた

何故ここに存在しない化け物が"友達"を襲っている光景を思い浮かぶ?

 

そんな、そんな想像はしたくない

 

そういった思いに駆られ、私は夜のアビドスに出かけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼しい風である、砂粒がなければ

やはり砂漠というのは夜と昼の温度差が段違いだ

住宅地を歩きながら辺りを見渡す

 

これといって異常がある訳ではなさそうである

早苗によれば都市というのは街灯があり、常に灯りがかあるそうだ

 

…確かに、街灯はある

まばらにしか電気がついていないようであるが

 

自宅は電気がついたので、所々意図的に切っているのだろうか

まぁ知ったことじゃないし…明かりは姿を晒してしまう

いくらか目が慣れている方が有利だ

 

そう思いながらブラブラしていると、アビドス高等学校につく

無意識にここに向けて足が向かっていたようである

 

「…」

 

ふと、夜間警備という単語を思い出す

確か夜に建物の中を周り、点検したり警備する仕事だったと思う

 

「やってみようかしら」

 

寝れないから、という不純な理由ではある

そもそもただの真似事であるのだ

しかしまぁ…やらずにぶらぶらするのもなんである

 

そう思いながら、学校の中に入ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

─────暗い

月明かりが廊下を照らしているだけで、それ以外の明かりは一切無い

大幣をプラプラさせながら廊下を進んでいく

 

コツコツと、ローファーの音が響く

 

ふと壁を見ると何年前かの張り紙がされている

少しそれに目が移り、霊夢は立ち止まった

テニス部の勧誘、ガチムチ♂レスリング部の勧誘…

 

「…?」

 

それに紛れていた、1つの張り紙に目がいった

どうやらお祭りの告知のようである

 

「アビドス砂祭り…」

 

どうも今より昔の…廃れていない頃の物のようだ

規模がかなり大きく、街ひとつまるごと祭りの区分となっている

凄いものだ、幻想郷じゃ博麗神社や人里だけだった

 

…いや、人里を"地区"として見るならだいたい同じか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰?」

 

そう思っていると、突然声がした

そちらの方向を見るとホシノが月明かりに照らされていた

その目は鋭く、なんでも切り裂きそうな瞳だ

しかし、こちらが誰なのか分かるとその目はふにゃふにゃと解けてしまう

 

「あぁ霊夢ちゃんか…どうしたの?

 忘れ物をしたようじゃないようだけれど」

 

彼女は持っていたショットガンを下げ、こちらに近づいてくる

忘れ物をしたようじゃなさそう…そりゃそうだ、持ってくるものは無いし

 

 

さてどう適当に言い訳を言ったものであるか

とはいえこういう時には無限に言い訳は出るものである

さすがマイブレイン、別のことにそのリソース使おうな?

 

「夜風に当たりたくて、ね」

「ふーん、そう」

 

彼女はこちらを見ながらそう言ってくる

どうせニヤついた顔だろ、今日くらいはギャフンと言わせてやる

 

そうして、彼女の顔を見たときだった

 

 

 

 

 

「ッ!?」

「…」

 

ホシノは、全くの無表情でこちらを見ていた

その瞳に一切の光は入っておらず、ハイライトは消え失せている

 

その事に怯んだ一瞬の隙を…針に糸を通すように貫く

 

「嘘でしょ」

「嘘じゃ─────」

「嘘、本当は眠れないでしょ?」

 

ホシノはこちらをじっとみながらそう言う

あまりの人の変わりように霊夢は動けなくなっていた

そのうちにホシノは霊夢に近寄り、その頬に手を置く

 

「ほら、凄い隈…よく今までバレなかったよね?」

「どこぞのご老人さんみたいに昼寝してるからよ」

 

学校に来てやることの大半は睡眠だ

皆が近くにいる状況で寝ると、悪夢を見ない

それどころか皆で遊ぶ幸せな夢が見れる

 

「なんで、ここにいるのよ」

 

話題を変えるべく、霊夢は尋ねる

そもそもホシノはなぜここにいるのか

その理由を先に聞きたいのである

 

「いや、ただの夜間警備だよー?」

「…」

 

どうやら、先客がいたようである

よく見てみればホシノは昼の時よりも全然眠くなさそうだ

いつも眠そうにしてるのはこうして見回りをしているからだろうか

 

「ふふ、ちょうど良かったよ──────この前の続きができそうで」

「…続き?」

 

ホシノの言葉に首を傾げる、この前っていつの事だ?

なんのことであるか検討がつかない

疑問に思っていると、教室に案内された

 

 

立ってるのもなんだから、という話らしい

 

 

中に入ると、誰もいないガラガラの教室である

机が詰められるように並べられているがそれを使う人は誰もいないのだろう

 

ふと、1つの机に花瓶が置かれていることに気づいた

 

「で、なんの事?」

「そりゃ──────服屋の続きでしょ」

 

…また、か

ため息をついてホシノを見た

彼女はいつも通りの笑顔で、こちらを見ている

 

ただ、瞳は笑っていなかった

 

「…言うわけないでしょ」

「そんなこと言わずにさ、ね?」

 

執拗に、彼女は問いかけてくる

 

 

 

 

霊夢はぼーっとした頭で考えるが、何も分からない

連日に及ぶ悪夢、寝れない体、疲れのとれない毎日

それは彼女に対して正常な判断能力を既に奪いきっていた

 

 

故に、彼女は───────告げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私は、外の世界とかいう場所の生まれじゃ無いわ」

 

 

 

その時の気分屋な脳みそは───────ホシノになら、伝えて良いと判断を下していた

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