かくして博麗は透き通る世界に至る   作:回忌

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知られる訳には

「…外の世界の生まれじゃない?」

 

ホシノはあっけに取られたように言った

それはそうだろう、今まで外の生まれと思っていたのだ

その服装なら田舎の…どこかの神社の巫女さんかと思えた

 

そこでないならば、どこと言うのだ

 

「正確には私はこの世界の人じゃない…別次元、と言ったら分かるかしら?」

「…うへ、よく分からないな」

 

理解出来ぬ、と言った感じで彼女は言う

当たり前だろう…こんなこと言って理解できる方がおかしいのである

にしても…どう、説明したものだろうか

私は紫みたいにうまく説明出来るタチでは無い

彼女みたく術に精通していたらもっと詳しく話せるのだろうが…

 

私にそんな知識は無いし、つける気もない

故に簡単にしかホシノに伝えることは出来ないのだ

 

「幻想郷という場所、現世から隔離された場所から来た」

「…なんで隔離されているのさ?」

 

それは当然の疑問だった

彼女みたいな能力を持っているものだけなら隔離する必要も無いだろう

キヴォトスがこれなのだ、外の世界も割と終わっている

それにこのキヴォトスじゃ霊夢と同じ…とは言わないが特殊な能力を持つものは居るのだ

 

「妖怪って知ってる?」

「…いや」

 

しかし、そんなヤツらがポンポン居て…尚且つ"人外"である

見た目から判断出来ないやつが多いものの、それぞれが恐ろしい能力を持っている

 

「妖怪ってのは…簡単に言ったら人の恐怖を己の力とする、化け物」

「…そんなのがいっぱい?」

 

ハッと霊夢は鼻で笑った

それ"だけ"ならどれほど救いがあったことだろうか

いっぱい、で済む程度ならあんな都は生まれない

 

…本当に生まれないか?

少し疑問に思ったが、心にしまい込んだ

 

「それだけじゃない、神、吸血鬼、亡霊…挙句の果てに魔界神なんていたわね」

「…」

 

絶句

あまりの単語の数々にホシノは言葉が出なくなっていた

神?亡霊?なんだその現代科学ではありえないような存在

 

おとぎ話にしか存在しないような者の数々

もしかして、それらがほぼ全て集う場所とでも言うのか?

理解ができない、本当にどういう事だ?

 

ホシノの脳内に疑問が駆け回る

 

「…存在は証明できないけど、こういうのを見れば分かるでしょ?」

「…まぁ、そうかな」

 

ふよふよと彼女の周りを旋回し始める陰陽玉を見ながら、ホシノは言った

確かにそのような場所の存在は証明できないし、出来るわけもない

 

…しかし、そんな浮く玉なんて見たこともない

見たところ機械で出来ている訳でもなさそうである

 

それと霊夢の空を飛ぶ能力や戦闘行動等も、である

あのような戦い方や変な技をキヴォトスであまり見た事は無い

存在しないのだから、見るはずがないのだ

 

「それで?なんでそんな所があるのにこんなところに来たのさ?」

「…」

 

霊夢は答えず、窓に近寄り外を見た

雲ひとつない美しい空であり、砂漠特有の美しい星々が空を彩っていた

幻想郷とはまた違う、美しい景色である

 

その事に少し苛立ちを覚えたホシノは背中に声をかける

 

「ねぇ?」

「────────死んだわ、皆」

「…ッ!?」

 

霊夢はホシノを見ずに言った

彼女の表情がどうなっているか見えないホシノには分からない

ただ、恐らく己が見てはいけない…悲しい顔をしているのだと思った

 

催促しなければ良かった、恐らく言う覚悟を決めようとしていたのだろう

…邪魔してごめん、ホシノは心の中で謝った

 

「平和な日々だったのだけれど、突然攻め滅ぼされちゃって

 …あの人が居なければ、アイツが居なければ、私も死んでた」

 

霊夢は拳を握る

あまりに強く握りこんだその拳は、ポタポタと血を垂らしていた

ホシノはそれに対して声をかけることが出来ず、黙り込んでいた

 

「──────私は生かされた、意味も無く…ね」

 

それは、彼女が心に抱く絶望そのものだと、ホシノは感じ取る

恐らくこの世界に来た時から、自分は死ぬべきだと、彼女は思っていたのだろう

そんな目をいつもしている、その慎ましい目を

 

 

…意志を託され、生かされたのなら─────希望のある目をしている

 

まだ、生きてやろうと思う気持ちがある

 

 

 

 

「…それは違うよ」

 

しかし、彼女は違う

彼女は意味も無く生かされ、死ぬべきだと思っている

 

それは違う、断じて違うのだ

 

「霊夢ちゃんは、託されたんだよ、"彼女達"に」

「…アンタに何がわかるっていうの?」

 

霊夢は振り向く

その瞳に色は無く、黒曜石のような漆黒を宿していた

 

見てみれば、呑まれそうな深淵の黒

 

しかし、"一度落ちた"物に呑まれる趣味は無い

 

 

 

「アイツらに一回も会ってないアンタに何がわかるって言うの!?」

 

彼女は、泣いていた

 

もう会うことの出来ない、彼女達を思い出して

あの楽しかった平和な日々を思い出して

───────二度と帰ることの無い、家を思い出して

 

力無く、彼女に掴みかかる

 

「…何も分からないよ」

「ッ!だったら」

「でも」

 

ホシノは、優しげに微笑んだ

その柔らかな笑みに霊夢は掴んだ手を離す

 

「どうして…」

 

自らの頬に手を当て、涙を拭う

枯れたはずの涙が指をつたい床に垂れていく

 

「どうして」

 

霊夢の疑問に、ホシノは優しく答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私も、託されたから」

「…貴女、も?」

 

ホシノは昔を思い出すような目で、窓越しの空を見た

彼女にも、同じような美しい星空が見えているだろう

 

また、別の情景も浮かんでいることだ

 

「…馬鹿な先輩でさ、何もかも騙されてさ」

 

はは、と乾いた笑いを彼女は漏らす

しかし呆れたその声の裏には謎の安心感を感じさせるものがあった

 

「最後には…あぁ…」

「…本当に、傷の舐め合いが好きなのね」

 

もはや、吹っ切れ霊夢はホシノに対して罵倒を飛ばす

お前は自分の傷を舐められて同情を呼ぶ屑だと

それに対してホシノはえへへと笑い返す

 

「こういったのは君が初めてだよ?…誰も言ったことは無かった」

「私なら誰にも言わない、絶対にね」

 

それもそうだろうね、君だから

ホシノはそう言って堪えるように笑った

 

それから、数十秒が経った頃…

 

「…ありがとう、否定しなくて」

「…こっちも、初めて言えたよ」

 

彼女達は笑いあっていた

あれほど警戒した目つきが嘘のような、澄んだ瞳

霊夢の瞳は、うっすらとハイライトを取り戻した

 

…しかし、それはハイライトと呼ぶには烏滸がましい程小さいものでもあったが

 

「そうだ、これを渡すよ…多分、君の世界のものでしょ?」

「…!!それは!」

 

思い出したかのように、ホシノが何かを取り出す

それは、霊夢にとって見覚えしかない…忘れるはずがないものだった

 

 

 

「──────────ミニ八卦炉!」

「砂漠に落ちてたんだよ、最近たまたま見つけたんだ」

 

それは、かつての相棒が使っていた得物だ

所々剥がれ落ちているが、魔力変わりに霊力を使えばまだまだ使えそうだった

その証拠に、霊夢が受け取った瞬間、薄い光を放つ

 

「…なんであったんでしょうね?」

「…もしかしたら、滅びた時にばらまかれたんじゃない?」

 

…そうだろうか

あの世界は何かと不安定ではあるし、幻想入りのことだってある

世界が破壊された後、様々なものがばら撒かれたのかもしれない

ホシノが言うにこの八卦炉を見つけたのは最近、可能性はある

 

もしかしたら、他の道具も落ちているかもしれないな

 

「…本当に、ありがとう、ホシノ」

「…いいよ、これくらい」

 

霊夢は、八卦炉を眺める

八卦炉は不思議な光を放ち、時折薄く輝いている

元の持ち主を探しているというよりその破壊力を出すのは今か今かと待っているようだ

 

…持ち主があれだと、道具も意志を継ぐようだ

まるで魔理沙みたいな奴、と思いながら懐にしまう

 

「…それで、眠れそう?」

 

ホシノは、私にそう言ってくる

私は窓越しに外を見ると、笑顔で言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────────ぐっすりと、眠れそうね」




傷付いたミニ八卦炉

かつて相棒がよく使っていたミニ八卦炉
無尽蔵のエネルギーを持っており、調整次第で
破壊力のある、極太ビームを放つことが出来る

かの魔法使いを知るものはもう既に1人しか居らず
その1人以外、コレを使えるものは存在しない




↓ホシノの失った人
馬鹿だけど信頼して共にすごしていた"たった一人"の先輩

↓霊夢が失った人
とある郷にて共に暮らし、酒を交わしたりした"何人もの"友人と腐れ縁達


Q.ホシノが立っている足の下にあるのが高々1人の死体だと気付いた時の霊夢の心境を答えよ
 この時、霊夢はホシノに心を開いていたと仮定する
 (配点10点)
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