永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった


※属性:シリアス、ややダーク? 一部ギャグを含む※


第6節 『始動する御友達計画』

ミネアの街に到着した俺達は、

この街の衛兵に先導されて、街外れの訓練所に辿り着いた。

 

ラキオスと同じように、女性・女児(スピリット)だけが訓練を行っている。

その光景を疑問視する奴なんて、当然のように居る筈も無い。

誰もが当然の光景だと認識している。

 

ラキオスと同盟するぐらいだし……

きっと、この国の価値観もラキオスの価値観と似てるんだろう、と……

諦観しながらこの訓練所に居るスピリットの訓練を眺める。

 

ブルー・スピリットは西洋剣……

グリーン・スピリットは槍……

レッド・スピリットは双頭剣……

ブラック・スピリットは刀……

 

スピリットの色と武器の種類は、万国共通なのだと実感した。

国によってスピリットが扱う武器が違う、なんて事は無いみたいだ。

アオと(オレ)が、この世界では異質なのだろう。

 

訓練の風景を眺め続けていると、

1対3で訓練しているグループが気になった。

 

子供の緑スピリットに対して、

成人と思わしき3人の青スピリットが猛攻を仕掛けているのだ。

 

リンチじゃねえのかと心配になったが、どうやらそうでも無さそうだ。

 

障壁を張って、3人からの猛攻を受け続けている子供の緑スピリット……

緑髪のツインテールが印象的である。

如何にも生意気そうな顔付には、まだまだ余力がある事を感じさせる。

 

対する3名の青スピリットは障壁を突破出来そうも無い。

苛立っている彼女達の表情が、俺の予想を肯定しているように思えた。

 

これほどまでの障壁は、俺達の隣に居るメイドの姉ちゃんと同等か……

あるいは、それ以上か……?

 

それも当然かもしれない。

あの子供とメイドの姉ちゃんを比較すると一目瞭然だ。

保有エーテル量の桁が違う。

 

逆を言えば、桁違いに劣っているメイドの姉ちゃんが凄いのだ。

保有エーテル量が劣っている癖して、同等の障壁を張れるんだから……

 

きっとマナ変換効率の違いだろう。

あのガキよりメイドの姉ちゃんの方が体質的に優れているのだ。

 

そして、俺も凄い。

知らない筈の単語が頭にポンポンと浮かぶんだから……

 

そもそもエーテルって何だよ……?

 

……うん、そうだね……

空間に存在するマナから無尽蔵に作られる動力源の事だね。

 

スピリットは『マナ存在』であるから、

エーテルを体内に取り込めば取り込むほど

永遠神剣の力を強力に解放する事が可能になるんだよな。

 

……うん、知ってた……

というより、いつの間にか知ってた。

 

背筋が寒くなる感覚は無視するに限る。

俺の知能指数が上がったと、能天気に喜ばないとSAN値(正気度)が減る。

 

クトゥルフ神話技能を獲得してSAN値(正気度)が減るというイベントを

リアルで体験するとは思わなかったし、リアルで体験したくは無かった……

 

「ふむ……完成度はまだまだ、と言ったところか」

アウルがそんな言葉を呟く。

 

「どうしてですか? 

 あれほどの攻撃を防御するって、ベテランの人でも難しいんじゃ……」

ヘリオンのガキがアウルに質問する。

 

「防御は素晴らしいが攻撃には転じていない。

 ……いや、転じれないと言うのが正しいのだろうな。

 エスペリア・グリーンスピリットやアセリア・ブルースピリットなどは

 些細な隙も逃さず、そこを見極めて攻撃に移るだろう。

 ……だが、奴は……

 ニムントール・グリーンスピリットは活路を見出せていない。

 俺から言わせれば、まだ駆け引きが甘い」

 

「はあ……それでも、私ならすぐにやられて、終わっちゃいそうですけど」

「当たり前だ、貴様ならば5秒も持つまい」

「はぅ……」

アウルの容赦ない言葉の槍は、容赦無くヘリオンの胸を抉る。

たぶん10回ぐらい突き刺さっている。

 

「だが覚えておけ、ヘリオン・ブラックスピリット……

 人間に問わず、スピリットにも得意、不得意という概念は存在する。

 お前の瞬発力は『漆黒の翼』を凌駕するが、実力は万分の一に等しい」

……漆黒の翼……??

 

「俺の見立てでは貴様と『漆黒の翼』、身体的な能力差は無いと思う。

 予測でしかないが、腕力の強さも同等、瞬発力は貴様が凌駕している。

 ……では、なぜ貴様は『漆黒の翼』に及ばないと思う?」

「それは……技量の差、でしょうか……?」

いつもと違うアウルを感じたのか、ヘリオンのガキは恐る恐る言葉を紡ぐ。

 

―― いつも恐る恐る喋っているっと思うのは気のせいだ。

 

「たしかに技量の差もあるが、それだけが理由ではない。

 貴様と『漆黒の翼』を隔てる差は、経験と信念……

 『漆黒の翼』と比べて信念と経験が絶対的に足りない」

「は、はぁ……」

「技量に関してはどうにもならん。

 例え死ぬ気で技を磨いても経験として身につくだけだ。

 ……だが、信念は違う……

 信念の重さによっては、どんな弱者だろうが強者を上回る場合がある。

 『漆黒の翼』をも越える絶対的な信念を胸に経験を積んでいけば……

 お前はラキオスの蒼い牙どころか、

 『漆黒の翼』をも凌駕するほどのスピリットに化ける可能性もある」

「……信念……」

ヘリオンのガキは、胸にその言葉を刻み込むように呟く。

 

「だが、無理に探そうとするなよ……

 信念というのは、訓練などで見つけ出せるものではない。

 お前が生きてきた中で、形成されるものだ。

 軽々しく信念について語ったが、

 最も難しいのは絶対的な信念を見つけるという事なのだからな」

「じ、じゃあ、どうしようも無いじゃないですか!?」

「技量はどうにもならんが、信念は可能性があるという話をしただけだ」

『…………』

兜を深く被り、素顔が見えないアウルが格好良く見えるのは何故だろう?

 

―― 良い(おとこ)は、何をしても良い(おとこ) ――

 

そんな言葉が思い出される。

 

あれが(おとこ)という者なのか?

いいなぁ、俺もあんな格好良いセリフ使いたいなぁ……

 

「ねえねえ、雫……しんねんって?」

『新しい年の始めの事……』

「あたらしい、としのはじめ……って、なに??」

『おめでたい日って事さ』

「そっか、おめでたい日……」

アオにツッコミを期待した俺が馬鹿でした、ごめんなさい……

色んな意味で、アオには早過ぎでした。

 

……っと、そこでメイドの姉ちゃんが怪訝な顔でアオを見つめていた。

もしかして俺が嘘を教えたって事がバレたのだろうか?

 

「エスペリアお姉ちゃん、どうしたの?」

「ここに来るときもそうでしたが、やはり神剣と会話しているのですね」

「うん」

アオの返事を聞き、悲しく顔を曇らせるメイドの姉ちゃん……

 

なぜ、そんな悲しい顔でアオを見るんだろう?

 

「アオ、貴方はその神剣を怖い……と、感じた事はありませんか?」

「なんで? 雫、意地悪だけど優しいよ」

「『……優しい?』」

メイドの姉ちゃんと俺の声が重なってしまったが、どうでもいい。

 

……俺が? なんで??

意地悪は納得できるが、お前に優しくした覚えは無いぞ?

 

「うん、この前ね……

 雫がお墓を作ろうって言って、ナナルゥのお姉ちゃんと一緒に作ったの」

「お墓……? だれのお墓ですか?」

「えっと、バーンライトのスピリットさんのお墓……

 雫がね、作って欲しいって、お願いしてきたから作ったんだ。

 それでね、『もう痛い思いしなくていいよ』って、皆で祈ってたの」

『………………』

その言葉を聞いて、少し後ろめたさを感じる。

 

俺が墓を作った動機は、そんな綺麗なもんじゃない。

誰かの為ではなく、逃避したいが為に作らせたんだから……

 

死者を冒涜するような行為だ。

退魔に関わるモノとして褒められた行為じゃない。

 

「でも、それでも……神剣の干渉は辛くはありませんか?」

『「???」』

――かんしょー?? 

 

「上位神剣の干渉は、自我を壊すほど強力だと聞いています。

 それを苦としていないのは、その神剣が優しいと思うからなのですか?」

なに言ってんの、このねーちゃん??

 

言葉が理解不能過ぎるんだが……?

俺がアオの自我を壊す?? どうやって??

 

背筋が寒くなる。

 

……アオの自我を壊す方法……

俺が知る由も無い知識が植え付けられている悪寒がした。

 

「雫……かんしょーって何??」

『……知らない……』

 

……そんな方法は知らない……

 

嘘でも何でもなく、本当に解らない。

―― その事実に、心の底からホッっとした。

 

「エスペリアお姉ちゃん、わたし、全然平気だよ?」

「そう、ですか……アオは強いのですね……」

「そうかな?」

「ええ、もしかしたらエトランジェ様よりも……」

「……そっかぁ、えへへ……」

メイドの姉ちゃんとの会話は、ある意味有意義なモノだった。

 

神剣とは、契約者の自我を壊すほど強力なモノ……

つまり、呪われた魔剣の類なのだろう。

 

所有者を呪い殺す人形だとか、人を不幸にする宝石とか……

退魔師の職についている俺にとって、そのような案件を扱った経験がある。

 

だから大丈夫、きっと大丈夫……

悪霊如きが退魔師様に喧嘩売るなんざ10年早いと断言出来る。

そんな呪われた道具の対処法とか除霊方法とかも熟知してる。

 

問題は愛用している退魔道具が手元に無いという事実だが……

大丈夫、きっと何とかなるさ……だって俺、退魔師だもん……

 

 

「よし、今日の訓練はここまでとする」

などと思っていると、訓練師であろう老人が一人声を上げた。

 

「失礼、イースペリアの訓練師殿に話が ――」

「アウルではないか、久しいな……」

 

「なんだ、アンタだったか……」

「訓練師を辞めたと聞いたが、相変わらず変わらんのお」

しみじみと懐かしさを噛み締めている老人に、アウルは筒を取り出す。

 

「昔話より、今はラキオス王の命による伝令がある。

 至急、女王アズマリア様に面会を願いたい」

「せっかちな所も相変わらずじゃな……

 女王様ならイースペリアの王城に居る。

 こんな辺境に来るはずは無かろうて……」

「なら至急に王城へ向うとしよう。

 エスペリア・グリーンスピリットは俺と共に来い」

「畏まりました」

 

「アオ・ブルースピリットとヘリオン・ブラックスピリットは

 此処の訓練所に残り、イースペリア流の訓練を見学していろ」

「へ? へ??」

「は~い」

状況が解っていないヘリオンとは対照的に、アオは能天気に返答している。

 

「ニムントール・グリーンスピリットッ!!」

アウルが知らないスピリットの名前を叫んだ瞬間、

先程1対3の訓練をしていた子供が不機嫌そうな顔でやってきた。

 

「……なに?」

「アオ・ブルースピリット、及びヘリオン・ブラックスピリットを預ける。

 二人の世話は貴様に任せた」

「はぁ!? なんでよ?!」

「俺とエスペリア・グリーンスピリットは首都に向かい、女王と謁見する。

 その間、部屋に泊めてやれと言っている」

「一緒に連れて行けば良いじゃん! なんで私が?!」

 

「ほう、オレに向かって二度も口答えをするか?

 訓練で、さぞ良い度胸が養われたと見えるなあ、ニム……ントール?」

「……ぐっ……」

「どうする? 三度目は流石に看過出来んぞ?

 貴様の姉、ファーレーン・ブラックスピリットにも相応の ――」

「―― 解ったわよっ! 面倒見れば良いんでしょ!!」

 

「物分かりが良い『道具』で何よりだが、言葉遣いも気を付けろよ?

 その言葉で腹を立てた人間が、貴様の姉に悪意を向けないとも限らない」

「ふんっ……ちゃんと使い分けてるから、そこは心配いらないわよ」

「どうだかな……エスペリア・グリーンスピリット、行くぞ……」

失笑と共にアウルは肩を竦めた後、

アウルとメイドの姉ちゃんは訓練師の老人と一緒にこの場を後にした。

 

「……はぁ……」

アウル達が完全に去った後……

なんか、すんごい嫌そうな顔でこちらを見つめている。

 

アオは、その表情に気づいていない様子で話し掛ける。

「私はアオ・ブルースピリット、よろしくね」

「…………」

アオが手を差し出したが、ツインテールのガキは差し出す気が無い。

―― というか、アオを無視して訓練所の外へ歩き出した。

 

 

「あ、あのっ……」

「―― 付いて来ないで!!」

ヘリオンが声をかけようとしたとき、

緑のガキは俺達を威嚇するように怒鳴った。

 

「「…………」」

硬直するヘリオンとアオを尻目に、

あのクソガキはさっさと訓練所から出て行ってしまった。

 

『なんだよ、あのガキは……』

……感じ悪ぅ……

つーか、何をそんなに怒っているのかが不明だ。

 

「あ、あの……どうしまよう?」

「雫、どうしよう?」

『むしろ俺が聞きたい』

さて、本当にどうする?

無闇に動いても仕方がない気がするし、何より迷子になるだろう。

とかいって、此処に残っても時間の無駄……

アウル達が口論していた周りから、もう誰も居なくなってた。

 

俺達がどうしようかと悩んでいると、

兜と覆面をつけたスピリットがこっちにやってくる。

 

「あの、ラキオスから着たスピリット達ですよね?」

「は、はい……そうですけど、アナタは?」

「初めまして、ファーレーン・ブラックスピリットです。

 たしか新しく配属された……えっと……」

「は、はいっ! ヘリオンです!

 ヘリオン・ブラックスピリットです!!」

「私はね、アオ・ブルースピリットです」

 

「ヘリオンに、アオちゃんね?

 お二人を泊めるついでに鍛えてやってくれと……

 アウル様よりお願い……いえ、命令されましたのでお願いします」

「は、はい! よろしくお願いします!!」

「よろしくお願いします、ファーレーンお姉ちゃん!」

2人は規律正しく背筋を伸ばし、

覆面の姉ちゃんを熱い眼差しで見つめるガキ共……

 

その熱い視線を受けた覆面の姉ちゃんは、何故か挙動不審になっていく。

 

「い、いえ……わ、私もまだまだまだまだまだなので……

 そそ、その、あまり期待しないで下さいッッ」

『――なにゆえ声が裏返える?』

その慌てぶりは、まるでヘリオンのガキを見ている気分になる。

 

ブラックスピリットって、もしかして……

こんな奴ばっかりだったりするんだろうか?

 

 

などと思っていると、覆面の姉ちゃんが挙動不審に周りを見渡し始めた。

 

「ど、どうしたんですか?」

「い、いえ……ニムが見当たらないから、何処に行ったのかなって……」

『ニムって、あのクソガキのことか?』

俺の呟きが聞こえたのか、アオは途端に表情を暗くする。

 

「その、ごめんなさい、ファーレーンお姉ちゃん……

 私が、とっても怒らせちゃったみたいで……」

「気にしないでアオちゃん、いつもの事だから……」

「「『――いつも??』」」

 

「とりあえず、私の部屋に移動しましょうか?」

ここじゃなんだしね……っと覆面の姉ちゃんはアオ達を宿舎に案内した。

 

到着した部屋は、見慣れた大きさの個室……

ラキオスの詰所にある個室と、まったく同じと思える部屋だった。

 

「ふぅ……」

覆面の姉ちゃんはゴトンっと、兜を外して机に置く。

覆面は兜の付属品のようで、その素顔が露わになる。

 

現れたのは緑に近い髪の色、エメラルドグリーンという奴だ。

よく観察すれば、瞳も緑色が濃い……

 

「ふわぁぁ……」

「ファーレーンさんの髪の色て、綺麗ですねぇ……」

二人は、キラキラとした視線をファーレーンの姉ちゃんに送る――

―― 間もなく、ファーレーンの姉ちゃんは耳まで紅に染まった。

 

「――そ、そそ、そんなに見つめないで下さい!!」

そして、神速を思わせる速さで即座に兜を被ってしまう。

 

―― 素顔を曝け出した時間、わずか5秒 ――

 

「ええ、なんで隠しちゃうの!?」

「そ、そうですよ!」

「っ~~~~~~~~~……」

アオ達の抗議に、しゃがみ込んで顔を横に振るファーレーンの姉ちゃん。

その勢いは、ブンブン――っと聞こえそうな程に速かった。

 

傍から見れば、ガキに虐められる成人女性そのもの……

 

 

 

そして、そのやり取りは10分近く続けられた。

 

 

 

「と、とりあえず……えっと、何の話でしたっけ?」

「ええっと……ア、アオさんっ! ど、どんな話でしたっけ!?」

「えっとね……雫、なんのお話だったっけ?」

 

『お前等全員、実にアホなんだな……と、いう話だった気がするぞ?』

「―― アホじゃないもん!」

第3者から見る限り十分アホなんだよ、いい加減に気づいてくれ。

 

『つーか、んな事はどうでもいい……

 あのニムとかいうクソガキの話を聞きに来たんじゃねえのかよ!?』

「む~~……えっとね、ニムちゃんのお話!」

「あ、そうそう、そうでしたね……」

ファーレーンの姉ちゃんは、コホンっと咳払いして気を取り直す。

 

「ニムはね……友達がいないの……」

初対面であんな態度を取られれば、誰でも解ると思うのだが……?

 

「そうなの?」

訂正、天然という例外がここに存在した。

 

「…………………」

そんなアオを見て、ヘリオンのガキは複雑そうな顔をしている。

 

―― ああ、私……どうしたらいいんでしょう? ――

―― 私も『解らなかった』っと言えばいいのでしょうか? ――

―― でも、友達いないんだろうなぁ~って薄々気がついてたし ――

―― ああ、私って優柔不断…… ――

 

解りやすい表情と、くねくねと動く体のお陰で、

ヘリオンが何を考えてるのか、非常に解りやすく読み取れた。

 

周りに誰も居ない状況でソレをやっていたら変質者確定なのは間違いない。

 

そして、自分の体が動いている事に気がつくと

非常に面白い驚き方をして、顔を真っ赤にさせて俯くヘリオン……

その事実から、『自滅っ娘』という称号を心の中で授与してあげよう。

 

「ニムは、私以外のスピリットには冷たくてね、友達を作ろうしないの」

「なんで?」

「それは私にもわからない……

 でも、このままじゃいけないと思うの」

兜や覆面で素顔を隠していても、俺にとっては10m以内……

如何に包み隠そうと、問答無用で隠された表情を感じ取れた。

 

本当に、あのニムとかいうクソガキを心配している顔だった。

 

「それでね、アオちゃんやヘリオンにお願いがあるの」

「お願いって、もしかして――」

確信に近いヘリオンの問い。

それに答えるように覆面の姉ちゃんは言葉を紡ぐ。

 

「うん、もし良かったら、ニムと友達になってほしい。

 きっと、ニムは冷たく突き放すだろうけど……

 でも、本当は優しい子なの……だから ――」

「―― うん、知ってるよ」

言葉を遮るように、アオは元気の良い声で答える。

ファーレーンの姉ちゃんとヘリオンのガキは、驚きの表情を浮かべていた。

 

「だって、ニムちゃん……

 怒って出ていくときにね、悪い事しちゃったってお顔、してたんだよ?

 ネリーちゃんやシアーちゃん、オルファちゃんと同じ顔だった」

……そうだったか?

 

「だから、ちゃんとお話すればきっと仲良くなれるもん」

どこをどう理論展開すれば、そんな結論に行き着くのだろう? 

 

アオの証言は、あのクソガキが善悪の区別が付くだけの証明でしょ?

優しさ云々とは、また別の話じゃねえの?

 

「そ、そうですよ。アオさんの言うとおりです」

だというのに、何故かヘリオンが同意の声をあげる。

 

…… 俺だけか? 俺だけがオカシイのか? ……

 

「アオちゃん、ヘリオン……ありがとう……ニムのこと宜しくね……」

「うんっ」

「はい、任せて下さい!」

元気な返事をするアオとヘリオン。

 

ファーレーンの姉ちゃんは、感涙を隠すことなくニッコリと笑っている。

素顔を隠した状態だったが、それだけは確実に解った。

 

 

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