永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった

※属性:ギャグ(アクセルやや強め)※
※周りに誰も居ない時に読む事を推奨します※
※読む事を我慢できない方は、他者の視線に十分な注意を御願いします※



第7節 『破綻する御友達計画』

ファーレーンの姉ちゃんに見守られながら、

アオとヘリオンのガキによる作戦会議が始まった。

 

ニムントールのガキンチョと友達になるためには、どうすれば良いのか?

紆余曲折を経て出した答えは、『まずは自己紹介』という結論に至った。

 

初対面の相手に対する基本戦術だ。

自己紹介をするだけで、親密度が他人から知人にお手軽レベルアップ。

そして知人という域を超えるだけで、念願の友達関係になれる。

 

友達を作るだなんて簡単なもんよと、アオを焚き付けた結果 ――

 

「ア、アオさん……ほ、本当に行っちゃうんですか?」

「え? ヘリオンちゃんは行かないの?」

 

突撃、隣の晩ごはん的なノリで、ニムガキの部屋に踏み込もうとしていた。

 

「いえ、行きます、行きますけど……ちょっと心の準備が……」

「大丈夫だって、雫が簡単って言ってたから簡単なんだよ、きっと」

「ほ、本当にそうなんでしょうか?

 もっと色々考えた方が良いと思うんですけどぉ……

 それに、ニムントールさんが部屋に居るとは限りませんよ?」

『いや、部屋の中には居るよ?』

だって、感じ取れるんだもん……

俺達が居る扉から背を向ける姿勢で、椅子に座りながら何かを綴っている。

 

羽ペンを持って、一心不乱に文字を書き綴っている。

 

大容量だと感じるインクの瓶にペン先を(つつ)きながら、

単語と思わしき文字を真剣に、何度も何度も書き綴っている。

 

その机の(かたわ)らには何十枚もの書類が広がっていた。

数ある内の数枚は、ヘタクソで歪な文字の羅列……

だが他の書類は、かわいい綺麗な文字がビッシリと書き綴られていた。

 

その光景を感じて感嘆せざる得ない。

 

ただのクソガキかと思っていたのだが……

その実は努力家であり、その姿勢は尊敬に値する。

 

「ほら、居るってッ! じゃあ、とつげーきッ!!」

「―― ちょ?!」

 

ヘリオンの心の準備が整わないまま、アオは勢い良く扉を開ける。

過剰な速度で壁にぶつかる扉 ――

 

バゴンッッッ! ……と、轟音が部屋と廊下に響き ――

メリッ! ……て、ドアノブが壁に埋まる音が ――

ゴッ! ……と、ニムガキの机から膝をぶつける音が ――

ベギッ! ……と、ニムガキが握っていたペンが折れた音が ――

ビシャッ! ……と、宙を舞うインクの液体が机全体に着弾した音も ――

―― その全ての音は、ほぼ同時かつ連鎖的に発せられたのだと理解した。

 

というよりは、同時多発的に半径10m以内で連鎖したので……

コントのような状況がリアルタイムで手に取るように理解出来てしまった。

 

これは、もう、アレだな……初手からもう、手遅れみたいですね……

 

「―― な、なにッ?!」

音にビビったニムガキは、反射的に俺達が居る方に振り返った。

お蔭で、机の上の大惨事には気付いていない。

 

アオとヘリオンのガキを認識した瞬間、表情が不機嫌に変わる。

 

「なに……? 私、忙しいんだけど……?」

不機嫌極まる圧を受け、アオが少し竦んでいる。

 

「えっとね……私の名前は、アオって ――」

「知ってる」

 

「……で、でね……こっちが、雫……」

「あっ、そう……」

 

「あ、アオさん……が、頑張って……っ!」

ヘリオンのガキからの激励を受けたアオは、意を決したように頷いた。

 

「それでね、ニムちゃん ――」

「―― ニムって呼ぶなッ!!」

猫がキレたような仕草で、フシャーとアオを威嚇するニムガキ……

 

「あ、じゃあ……ニムントールちゃんのお名前は??」

「……は……?」

 

「―― あ、あああ、アオさぁぁん!?」

『…………………』

もう、何も言うまい……つーか、慣れた。

……でも、これだけは言わせてほしい。

 

 

名前で呼んでるのに、名前を聞くって、明らかにオカシイだろぉ!!

 

 

「なんか、色々と言いたいことがあるけど……とりあえず、邪魔……」

流石のニムガキも呆れたらしい。

もはや警戒するのも馬鹿らしいと、疲れた表情から察する事が出来た。

 

「?? なんで?」

「ッ! ……あのさぁ……私、いま何してると思ってんの?」

彼女は再び怒鳴りそうになったが、飲み込んで冷静に務めたのは偉い。

 

「………………??」

アオはニムガキの肩越しから覗く仕草をする。

奴の背面に広がる、地獄の跡を凝視している。

 

ヘリオンのガキも、その惨状に気付いたのだろう……

真っ青な顔して、魚みたいに口をパクパクとさせて固まっている。

 

「ん~~~~??」

アオもアオで、必死に答えを出そうと悩んでいる。

 

「ちょっと、いくらなんでも悩み過ぎでしょ? 一目見たら ――」

ニムガキは呆れながら、己の背面に視線を向ける。

漆黒の絨毯爆撃によって真っ黒に破壊された己の陣地を認識したようで……

現実を受け入れられず、当然のように固まった。

 

う~ん、う~ん……と、悩んでいるアオの唸り声だけが虚しく響いていた。

 

改めて、本当に(むご)い光景だなと感心してしまう。

羽ペンは無惨に折れ、透明なインク瓶は力尽きたように倒れている。

もはや机の上は真っ黒であり、本人が被弾しなかったのは奇跡と呼べる。

 

……各々が固まって数分過ぎた頃……

 

 

数分後、アオはとうとう答えを得たようで……

ニッコリと、これ以上無いんじゃないかって笑みを浮かべながら ――

 

 

「わかった、『黒い水遊び』だぁ!!」

―― 導火線を無視して、爆弾の内部に火種を投入した。

 

「―― ちっがぁぁあああうッッ!!」

椅子から立ち上がりながら、当然のようにブチ切れるニムガキ……

まるで、水素爆弾が核融合反応を起こすが如く……

 

その気持ち、痛いほど解ります。

 

「勉強してるの!! 勉強してたのッ!!

 文字を沢山書いてたのに、水遊びって有り得ないでしょうが!」

バンバンバンッと、涙目で机を叩きながら訴えるニムガキ……

 

「へえ、ニムちゃんって偉いねえ」

そう言ってアオは、背伸びしながらニムガキの頭をナデナデしている。

仇を見るような目で睨むニムガキを、よちよち言いながら撫でている。

 

本人からすれば、とてつもない屈辱感に襲われているに違いない。

 

つーか、あれはきっと(あお)ってる。

絶対に(あお)ってるよ、アオだけに……

今後、『(あお)・ブルースピリット』って呼んだ方が良いのかな?

 

「あわ……あわわわわ……」

ヘリオンはヘリオンで、ブチ切れたニムガキを見てパニくってる。

つーか、動揺してねえで奴の(あお)りを止めてやってくれヘリオン!!

 

「ニムちゃんって呼ぶな! それと、頭撫でるな!!」

「え? でも、ハリオンのお姉ちゃんが言ってたんだよ?

 誉められることをしたら、こうしなさいって……」

 

「撫でなくていい!!」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「どうもしなくていい!! 何もするな!!」

「……なんで?」

「っ~~!」

 

それからは泥沼だった。

ニムガキが、あーだこーだと早口で理論を展開させる。

でも、その早口を聞き取れないアオは『なにが?』っと聞き返す。

 

ニムガキが解りやすく、ゆっくりと説明する。

―― が、しかし……アオは理解できずに『なんで?』っと一刀両断する。

 

その言葉で更にブチ切れて、再び早口で言葉を紡ぐが……

やっぱり聞き取れなくて『なにが?』っと答えるアホな娘……

 

……その繰り返し……終わりの無い繰り返し……

英語ではEndless Loop(エンドレス ループ)と言う。

 

 

 

俺とヘリオンのガキは二時間近い時間、その光景を呆然と見ていた。

 

 

 

「……はぁ……」

もう何を言っても無駄だと感じたのだろう。

ニムガキは力なく、黒く染まったテーブルに突っ伏す。

 

……ベチョッっと液が跳ねる音がした……

だが、精魂枯れ果てたニムガキが動じる気配が無い。

 

「?? ……あ、そうだっ!」

アオは何かを思いついたようにポンっと手を叩き、

力なく突っ伏してるニムガキに向かって、トドメに近い言葉を放つ。

 

「それで、ニムちゃんのお名前は……?」

―― むしろトドメだった。

 

「……ニムントール……グリーン、スピリット……」

もう、何もかもがどうでもよくなったのだろう。

喉が枯れた、力尽きた声で、ニムガキは己の名前を口にするのだった。

 

……当然だ……

2時間近く大声で説明すれば喉も枯れる。

しかも、その内容が全く理解されていない。

 

精神的なダメージは如何なるものか……?

インク塗れの机に突っ伏している姿を見れば一目瞭然なのだが……

その姿はあまりにも痛々し過ぎて……正直、想像したくない……

 

「じゃあ、ニムちゃんって呼ぶね」

「……好きに、すればいいじゃない……」

 

「うん、私はアオ・ブルースピリットって言うんだよ!」

「……そう……それで、もう一人は……?」

「へ? わた、わたしは「ヘリオンちゃんだよ」……そう、です……」

喋ろうとしたのに、アオに先を越されて少し凹んでいるガキが此処に一人。

 

此処まで来れば、もう疑う余地はあるまい。

アオ、コイツ……絶対に悪魔だよ……(あお)りの悪魔だよ……

意識的にやってるのであれば、性質が悪い。

無意識に狙ってるのであれば、余計に悪い。

天然で何も考えずにやってるんだったら、魔性の才能としか言えない。

 

「……そう……それで、私になんの用なの……?」

「なんの用って、ニムちゃんの名前が聞きたかっただけ~♪」

 

「………………」

ニムガキは遠い目をしながら空を仰ぐ……

その表情はナニカを悟り、全てを諦観した仏のよう……

 

そして燃え尽きたように、再びテーブルに突っ伏した。

ベチョっという音が再び響く……

 

「じゃあ、もう、いいわよね……?

 ……もう、いい加減に、出てって……お願い、だから……」

「うん、それじゃあね、ニムちゃん! バイバイ!」

「し、しし、失礼しました ――」

 

部屋を出る最中、俺には聞こえてしまった。

『……サイアク……』と、いう言葉を……

その言葉に、激しく同意せざるを得ない。

 

俺達が訪れた目的は、ただ名前を聞く為だけだったのに……

なのに2時間も、ずっと怒りに任せるように叫び続けて……

しかも、疲労したのは自分だけという事実が残酷過ぎる。

 

……可哀想に……ただ、勉強してただけなのにな……

 

でも、これだけは主張させて欲しい。

……これは、本当に事故だったんだ……

 

俺達の誰もが、悪意なんて持っていなかった。

 

俺がアオを焚きつけたのが悪かったのかもしれない。

ヘリオンのガキがアオを止めなかったのが悪かったのかもしれない。

アオが勢い任せに扉を開けたのが悪かったのかもしれない。

 

……でもさぁ、ここまで被害が拡大するとは思わないじゃん……

 

「……………………」

ヘリオンは何も言わない。

青ざめた顔で、これからどうするんだろうと不安に押しつぶされている。

 

「やったよ、雫っ!

 これでニムちゃんとお友達になれるんだよね!?

 私達、ちゃんと自己紹介したもんね!?」

『………………』

 

いや、どう考えても大失敗だよね……?

此処から『知人→友達』になるルートとかってマジであるの??

ハードル高過ぎて眩暈がするんですが?

 

なんにせよ、ニムガキと友達になるよりも先にするべき事がある。

アオの天然魔性の対人会話スキルを何とかしないとニムガキが死ぬ。

ニムガキの(すす)けた背中を感じて、そう思わずには居られなかった。

 

 

 

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