永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった


※属性:ほのぼの※


第8節 『闇夜の御友達計画』

皆が就寝している闇夜の時間、ヘリオンのガキが静かに起き上がる。

隣で寝ているアオを起こさぬように、静かにベットから離れる。

 

この部屋の主であるファーレーンの姉ちゃんは居ない。

俺達をニムガキの部屋に送り出す時に言っていたのだ。

 

急用が出来たので明日の昼まで戻れない、と……

敵の目撃情報が確認されたので、緊急偵察に駆り出されたのだ。

 

「ニムの事、お願いします」

などと言う言葉で頼まれた直後に、あの不幸な事故である。

 

 

ヘリオンのガキは音を立てる事も無く、静かに部屋から退室していく。

 

トイレに行くのかなと思ったが……

意を決した表情をしている事から別の目的である事を察した。

半径10mの認識範囲を20mまで広げ、ヘリオンの様子を観察する。

 

ヘリオンは、ニムガキの部屋の前に移動していた。

部屋に入る事無く、荒れ果てた部屋の中をじっと観察している。

 

そこにニムガキの姿は無い。

……ニムガキなら、今は浴室に居る。

 

古めかしい燭台の仄かな明かりを頼りに、下着姿で洗濯をしている。

インクで汚れた衣類をゴシゴシと、それはもう疲れた表情で……

 

暫く見てると、ヘリオンのガキが再び移動を開始……

 

この部屋に戻って来たヘリオンのガキは、

物音を立てる事無く、ファーレーンの姉ちゃんの部屋を物色し始めた。

 

雑巾を手に取り、水が入る容器を手に取り……

 

掃除道具を集めてるのかなと予想出来た時、

ヘリオンはアオが眠るベットに近づき、アオを静かに揺さぶった。

 

「……アオさん……アオさん……」

ヘリオンは優しく、それはもう優しくアオを揺らす。

……だが、アオが起きる気配は無い。

 

当然だ、赤子をあやすように揺すられても起きる訳が無い。

俺だって、あんなに優しく揺らされても気付かない自信がある。

起こすのであれば、もっと激しく揺らせというのだ。

 

……やがて、ヘリオンのガキはアオを起こす事を諦める。

掃除道具を持って、容器に水を入れに行く。

そしてニムガキの部屋に侵入して、一人静かに掃除を始めた。

 

今は深夜で真っ暗だというのに、ヘリオンは普通に視えている。

そうとしか思えないほど、真っ暗闇の中で的確に汚れた箇所を拭いていた。

……流石はブラックスピリット、夜を司るに相応しい妖精……

 

やる事が無く、眠る事も出来ない俺にとって、二人の行動は非常に助かる。

暇で死にそうになる窮屈な時間を紛らわすように……

俺はヘリオンのガキとニムガキの様子を観察し続ける。

 

やがて、洗濯を終えたニムガキが動き出す。

近くに置いてある槍状の永遠神剣を持ち、洗った衣類に矛先を向ける。

 

すると置かれた衣類の近くに風の渦が発生……

空中でギュンギュンと高速回転する衣類……

衣類に付着した水滴を、ビシャビシャと浴室全体に撒き散らす。

 

すげえ、乾燥機要らずじゃん……と、その光景を感心しながら眺める。

 

風の回転力は少しづつ失われ、

遠心力が失われた衣類の塊はドンッと叩きつけられる。

ニムガキは衣類の塊を拾いあげ、勢い良く広げる。

そして皺だらけとなった己の衣類を見て、泣きそうな溜息を吐いた。

 

……勿体無いなぁ、工夫が足りて無いなぁ……

四角い大きな網とかに挟んで回せば、そこまで皺にならないと思うのに……

網と衣類の間に緩衝材となる布とか挟めば、普通に使えると思うのに……

緩衝材の風通しが良ければ、更に良い……

 

皺々となった衣類を纏い、燭台と神剣を持ってニムガキが移動する。

その足音が聞こえたのか、ヘリオンのガキは急に慌て始めた。

 

焦りながら掃除用具を持って退室……する直前、足を滑らせた。

ビターンと倒れ込み、持っていた容器の汚れた水はヘリオンに降り注ぐ……

 

その音に気付いたニムガキは、慌てたように自分の部屋に駆け出した。

そして目撃するヘリオンの惨状……

 

ヘリオンは泣きながら、脱兎の如く逃げ出した。

そしてドタドタと、一目散にこの部屋に戻って来た。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

本当に全力で疾走してきたのだろう、息が荒い。

 

そしてピチャピチャと滴る己の惨状を実感したのだろう。

ぐすっ、ぐすっ……と、静かに泣き始めた。

 

「う~ん、ヘリオンちゃん……どうしたの?」

その静かな泣き声で気付いたのか、アオが目を覚ました。

 

アオの寝惚け眼の具合、今にも寝落ちしそうな身体の揺れ具合……

……たぶん、コイツの意識は、まだ半分は夢の中である。

 

「アオさん、ごめんなさい……起こしちゃいましたね……」

「……ん~?」

『なあ、アオ……起きてるか? 聞こえてるか?

 アイツが持ってる雑巾で、アイツの身体を拭いてやってくれない?』

「……ん~、いいよぉ~……」

のそのそと、緩慢(かんまん)な動作でヘリオンに近づき、

ヘリオンが持っていた雑巾で、寝惚けたままヘリオンの顔や髪を拭いていく。

 

「アオさん、その……よ、汚れちゃいますよ?」

「……ん~……」

アオの顔は、もう完全に二度寝状態に入ってる。

だというのに、ヘリオンのガキを拭く動作は止めなかった。

 

『もしも~し、アオ、起きてますか~?

 ヘリオンが風邪ひかないように、服を脱がしてやってくれ~』

「……ん~、お服、脱いで~……」

「え、でも……」

「……いいから~、いいから~、脱いで~、ぬいで~……」

 

なんか凄いな、アオ……

顔は涎を垂らしながら完全に寝ているのに……

それでも俺の指示に従ってくれる。

 

「……そう、ですね……

 このままベットに入ったら、汚れちゃいますもんね。

 ファーレーンさんの御迷惑になっちゃいますもんね……」

 

渋々と衣類を脱ぎ、下着姿になるヘリオンのガキ……

少し胸が膨らみかけており、ニムガキよりはスタイルは良い。

だが男を惑わすには、まだまだ色気が足りない。

 

「その、身体も拭いちゃいますので、布を返して貰って良いですか?」

「……ん~……」

アオは動かない、既に夢の中に旅立っている。

 

『アオ、ヘリオンのガキに雑巾を渡してやってくれない?』

「……ん~……」

アオの返答は変わらない。

……が、雑巾を持った腕を伸ばして、ヘリオンのガキに手渡した。

 

アオから雑巾を受け取ったヘリオンは、自分の身体を拭き始めた。

アオは上半身を起こしたまま、完全に眠っている。

とてもじゃないが、起きてるようには見えない。

 

 

けど、何故か俺の指示に従う。

……これって、もしかして……?

 

『……なあ、アオ……

 自分の服を脱いで、ヘリオンのガキに渡してやってくれない?』

「………………」

アオはもう何も答えない。

だが、自分の服を脱いで、その衣類をヘリオンに渡すように伸ばしてる。

 

「……え……? なんで……? アオさんが風邪をひいちゃいますよ??」

『別に構わねえだろ、コイツだけ何もしてないんだから……』

「……ん~……かまわない、よ~……?」

おお、すげえ……アオが眠りながら俺の言葉を代弁してる。

 

「……アオさぁぁん……」

そして、そんなアオを見てヘリオンが感涙してる。

夜目が効く癖して、コイツの寝顔が見えないのだろうか?

 

「でも、アオさんが風邪を引いたら私が困っちゃいますから……

 だからアオさんが着てくださいね……」

アオが持っている衣類を受け取り、それをアオを被せようとした時――

 

―― ガチャッっと部屋の扉が開かれた。

 

 

そこに居たのはニムガキだった。

 

「ひっ?! に、ニムントール、さん……?」

「…………………………」

 

ニムガキは何も答えない。

不機嫌な顔のまま、無言で持っていた衣類をヘリオンに投げつける。

 

「……ふんっ!!」

そして、そのまま退室して行った。

 

ヘリオンは呆気に取られたまま、ニムガキを見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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