―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった
※属性:戦闘、ダーク(グロい表現有)、シリアス※
……ダーツィ大公国……
ラキオスの南東に位置する、国土の半分が砂漠と化した国……
敵国であるバーンライト王国と同盟関係にある国だという。
その国が、大勢のスピリットを率いてイースペリアに進行中……
ミネアの街に居るスピリットは全員、国土防衛の為に南へ出撃する。
俺達は全員集まり、出撃していったスピリットの背を見送っていた。
特に、ファーレーンの姉ちゃんとニムガキの表情は暗い。
あのスピリット達と共に出撃できなかった無念が滲み出ていた。
……それも当然だろう……
この二人は長期間、この街に滞在している。
世話になったスピリットや、親友と呼べるスピリットも居たのだろう。
どうしようも出来ない無力感に
そんな暗い顔をしてれば、嫌でも背景を読み取れてしまう。
……まるで、最近の俺を見ているような気分だ。
「あの、ファーレーンさん? 同盟国の危機なんですよね?
……なのに、私達は行かなくても良いんですか?」
「私達はラキオス王国に所属するスピリットですから……
ラキオス王国から命令が無い限り、街から移動する事は出来ません」
任務に失敗したら処刑するような連中だもんな……
許可無く行動したら、どんな目に遭うかなんて想像に難しくない。
「さあ、皆さん! 私達は、私達の出来る事をやるんです!
他の街に移動する事は出来ませんが、防衛戦闘は許可されています。
出撃した皆さんが帰る場所を、私達が守るんです!」
ファーレーンの姉ちゃんは激を飛ばす。
その姿は、まるで自分に言い聞かせているように思えた。
ファーレーンの姉ちゃんからの提案に、皆が頷く。
そして俺達は、そのまま南の門で警戒態勢に入るのだった。
………………
…………
……
それから、何時間経ったのだろう?
半径20mに怪しい反応は無い。
『それにしても、また門番の仕事とはな……』
「私、門番の任務って嫌い……
ただ立ってるだけなんだもん」
『奇遇だな、俺も門番の仕事は嫌いだ』
門を背に警戒していると、嫌でも思い出してしまう。
……人を喰らった時の、あの感覚が……
人の体内に埋まる温もりが、やけに生々しく、鮮明に……
『…………』
ダメだ、気持ち悪くなってきた。
俺の身体は既に、人を喰らうという感覚を嫌悪していない。
その感覚が再び訪れる事を待ち焦がれている自分が居る。
……その事実が、本当に気持ち悪くて、気色悪かった……
頭では気持ち悪いと、禁忌すべきと拒絶しているのに……
身体は飢えるように、人を喰らう事を本能的に求めている。
……自分が自分じゃなくなる感覚がする……
自分という存在が
頭で拒絶反応を示している分には、まだマシだ。
だが、その拒絶反応が無くなってしまったら?
……その時点で、俺は狂人と化すのだろう……
どうして、こんな事になっちまったか……
もう何度目になるのか判らない自問自答を繰り返そうとした時だった。
突然ファーレーンの姉ちゃんがハイロゥを展開する。
続くように、ニムガキ、ヘリオンのガキも展開した。
だがアオ以外の皆はハイロゥを展開し、東の方角を見据えている。
「―― 皆さん、敵です!!」
『嘘だろ?!』
俺の感知範囲には、まだ何の反応も無い。
『アオ、俺を抜け! 戦闘準備!!』
「う、うん!!」
アオが俺を抜いたと同時に、敵影を感知……
……相手は1部隊だけ……
種類は黒、赤、緑、青が特徴の髪が一人ずつの計4人……
特筆すべきは、変わった緑スピリットが居る事だ。
……二刀流……
いや、槍が2本だから二槍流が正しい表現なのか?
とにかく、変わったスピリットが居た。
……4対4……
数は同じだが、質ではこちらが勝っている。
ファーレーンとニムガキの保有エーテル量が桁違いだからだ。
「私はグリーンとブラックスピリットをやる。
ニム達はレッドとブルースピリットをお願い……」
「お姉ちゃん、無茶しないでね」
「うん、ニムもね……」
それを合図にファーレーンの姉ちゃんは駆け出した。
アオ達はアオ達で、ブルースピリットとレッドスピリットと対面する。
「はぁ、めんどう……」
これから戦闘開始だというのに、ニムガキは随分と余裕そうだ。
その余裕を、少しでも良いからヘリオンのガキに分けてやって欲しい。
「――っ、い、いい、行きますよっ!」
先手は、緊張で震えているヘリオンのガキからだ。
狙いは敵のブルースピリット……
瞬発力で敵を驚かせたが、放たれた居合は余裕で防がれた。
いつもであれば一撃で離脱する筈なのだが……
……ヘリオンは離脱せず、連撃を試みていた。
「―― えい、やあっ!!」
だが、それでも青の障壁を破れない。
「ヘリオン! 邪魔……ッ!!」
ニムガキが声を上げ、ワンテンポ遅らせてヘリオンの真後ろに投擲する。
明らかにヘリオンを巻き込む形で投擲された槍……
ワンテンポ遅らせたのは、せめてもの情けなのだろう。
「――ひゃぁ!?」
ギリギリで気づいたヘリオンは、上空へと逃げて回避した。
だが、上空へ避けたのはヘリオンだけではない。
相手のブルースピリットも、同じ行動をしていた。
「貰った!!」
敵ブルースピリットの強烈な一撃がヘリオンを襲う。
「――ひぃ!!!」
ヘリオンは持っていた鞘で斬撃を弾く。
―― だが勢いを殺しきれず、地面に叩きつけられる。
「ふっふ~ん……もらったよ、ファイヤボルト!!」
小さい無数の火玉がヘリオンに迫る。
「ヘリオンちゃん!?」
「―― 馬鹿!!」
ニムガキがヘリオン目掛けてシールドハイロゥを蹴飛ばす。
洒落にならない速度で、そのハイロゥはヘリオンのガキと衝突……
ヘリオンのガキが吹っ飛んだ直後に、無数の火玉が通り過ぎた。
「何やってるのよ!?」
「ご、ごめんなさぃぃ……」
チームワークがバラバラだった。
こんな調子で本当に大丈夫なのかと不安になる。
ファーレーンの姉ちゃんは大丈夫なのかと、向こうの様子を伺う。
すると、敵グリーンスピリットは既に霧と消え……
今まさに、敵ブラックスピリットの神剣を手元から弾き、自分の神剣を相手の心臓に突き刺していた。
その鬼神が如くの強さに安堵する。
ファーレーンの姉ちゃんさえ居れば、負ける事は無い。
それにしても二槍流の緑スピリットって、どういう戦い方をしたんだろう?
置き土産のように、槍が防壁を貫通するようにぶっ刺さっていた。
ファーレーンの姉ちゃんの背面に位置している壁だ。
きっと投擲を回避されて、そのままブスッといったに違いない。
残されたその槍に、一人の民間人が近づいた。
……いや、民間人と言うよりは不審者……
フードを纏っており、その正体は解らない。
だが、俺の視点ではハッキリと中身が解る。
スピリットだ、緑の髪をした典型的な緑スピリット……
そのスピリットが、貫通した槍を回収する為に歩いてるのだとしたら?
―― 嫌な予感がした ――
ファーレーンの姉ちゃんは気づいていない。
俺以外の誰も気付いていない。
『て、敵~ッ!! 街の中に敵がッ!! 逃げろファーレーンッ!!』
「……え? ふぁ、ファーレーンお姉 ――」
アオが俺の声に反応して、叫んだと同時に
槍を手に取った緑スピリットは、そのまま防壁をぶち抜いて外に出た。
そして、ファーレーンの背中を、そのまま一閃……
背中から深く切り刻まれたファーレーンは、その場に崩れ落ちた。
……ファーレーンを中心に紅の血溜まりが広がっていく……
「おねえ、ちゃん……?」
ニムガキの顔が絶望に染まっていく。
ファーレーンにトドメを刺そうと槍を振り上げる緑スピリット……
―― だが、ヘリオンはそれを許さない ――
神剣を振り下ろし、ファーレーンの頭部に一直線に吸い込まれる……
―― 瞬時に緑スピリットの目の前に移動、間を置かずして抜刀 ――
―― 鞘から放たれる刀の煌きは、閃光にも似た一閃 ――
振り下ろされた神剣ごと、緑スピリットを横一文字に切断した。
「ファーレーンさん!!」
その結果などヘリオンのガキには眼中にない。
当たり前だ、ファーレーンの傷は致命傷……
早く治療しなければ遅からずマナの霧と姿を変える。
残りは赤と青のスピリット……
……3対2……
こっちは数では勝っていても、この戦闘はあっちの方が有利。
それは、さっきの攻防で周知の事実。
経験は一番多いはずのニムガキは動揺して自分を見失ってる。
アオとヘリオンは、圧倒的に経験というLVが足りない。
それに、先程見せたヘリオンの抜刀……
神剣ごと両断した一撃も、再び出せるとは限らない……
「ニムちゃん!!」
「――っ、わかってるわよ!」
まずは敵を倒してから……
じゃないとファーレーンの姉ちゃんを救えない。
「―― 行きます!!」
ヘリオンのガキが、先に仕掛ける。
瞬発力は相変わらず……
しかし、神剣ごと切断した改心の居合では無かった。
だが放たれたのは、紛れも無く『居合の太刀』、そのものだった。
ヘリオンは障壁を破壊し、間髪いれずにニムのガキが槍を投擲……
―― だが、横に飛んで避けられる。
されど、それを読んでいたアオが追撃を仕掛ける ――
―― が、上空へ逃げようと敵はハイロゥを羽ばたかせる。
「逃がしません、テラー!!」
地面から召喚された闇の手が、ブルースピリットの脚を掴む ――
「――!?」
「いやああああ!!」
―― 斬!! っと、俺の切っ先は首を切断した。
まさに、息の合ったコンビネーション……さっきの戦いとは大違いだ。
「―― アオ!!」
「―― アオさん!!」
唐突に、2人の悲痛な叫びが聞こえた。
その声のお陰で、アオを中心に空から炎の雨が降ってくることに気がついた。
―― 時間が、止まる ――
炎の雨はゆっくり、ゆっくりと……
アオまでの距離、数十センチのところで止まってる。
そう錯覚させるほど遅い。
―― つまり、この勝負は……俺達の勝利で終わる ――
「雫、行くよ……」
『ああ、きついの一発……ぶち込んでやれ!!』
アオは、神剣魔法を放った状態で固まっているレッドスピリットを目標に走り出す。
アオが俺をレッドスピリットの腹へ突き刺した時、
時は、自分が止まっているのを思い出したかのように、動き出し始めた。
「あ、がぁ……」
アオはズルリっと俺を引き抜き、レッドスピリットはその場に倒れた。
「アオ……アンタ、何したの?」
「あ、アオさんの噂は聞いてましたけど……す、すす、すごいんですねぇ……」
二人は驚愕の眼差しでアオを見ている。
「はぁ、はぁ……それより、ファーレーン、お姉ちゃんは?」
反動で疲労困憊となった身体を引きずるように、
アオは心配そうにファーレーンの姉ちゃんのもとに行く。
「大丈夫ですよ、後はニムさんが回復系の神剣魔法を使えば――」
―― そこで、初めて泣きそうな顔をしているニムガキに気がついた。
「……う、うぅ……」
そして、ニムガキはその場で泣き崩れる。
「わ、わたし……回復系の神剣魔法なんて……使えない……」
一難去って又一難……
衝撃の告白を聞いて、俺達はただ動揺する事しか出来なかった。
ファーレーンの姉ちゃんは瀕死であり、背中の傷口からの出血が酷い。
エーテル同士の結合が解け、夥しい量のマナが抜けている。
『出来ないって、やってみなくちゃ解らねえだろ!!』
「ニムちゃん、やってみないと解らないって……雫が言ってる」
「できないの!! 何度も何度も試したけど、出来なかったの!!」
「じゃあ、ファーレーンさんを見捨てるんですか!?」
「嫌だよ! 見捨てたくない!! ……でも、無理なの!!」
ファーレーンの姉ちゃんの顔は、どんどん青くなっていく……
このままじゃ、本当に手遅れになる……
『じゃあ、止血なり応急処置してなんとか――!?』
突如、強烈な悪寒と共に嫌な予感がした。
感知範囲を半径10mから20mまで伸ばし悪寒の正体を探る。
アオ達の背面側13mの位置に、赤の魔法陣が展開されている。
さきほどアオが斬り捨てたスピリットだ。
マナの霧に全身を包まれ、あと1秒後に消滅する直前……
不気味な笑みと共に、魔法陣から炎の塊が速射された。
『―― 後ろっ! 後ろッ! 逃げろぉ!!』
反射的に叫んだが、炎の速度が速すぎる。
射線上に居る、その無防備なニムガキの背中に着弾 ――
―― する直前、アオが突然割り込んだ。
炎の塊は、アオの腹を抉る。
……力なく、俺を落とすアオ……
アオは、ゆっくりとニムのガキの方へ倒れていく……
「『アオーーーーー!!』」
俺とニムガキの叫びが木霊した。
穴が開いてる、アオの腹が、ぽっかりと抉れてる。
背中まで貫通はしてないが、表面が広範囲に抉れてる。
腹で爆弾の爆風を至近で受け止めた感じになってる。
出血量がヤバイ、ファーレーンの姉ちゃん以上に出血してる。
つまり、ファーレーンの姉ちゃん以上にマナの漏れが激しい。
『おいアオ!! テメェ、ふざけんなよ!!』
アオはファーレーンよりも早く、マナの霧に還る。
……そんな確信が、頭から離れない……
「……あ、アオ……さん……」
ヘリオンも呆然としてアオを見ている。
「なんで……なんでアンタまで……っ、ヘリオン!
アオをお姉ちゃんの隣に並べるの手伝って!!」
「は、はい!!」
そして密着するように並べられたアオとファーレーン……
ニムガキは、その二人の上に永遠神剣『曙光』を寝かせるように置く。
そして『曙光』の上に自分の手を置いて、祈り始めた……
「……『曙光』……
お願い、アオとお姉ちゃんを……私はどうなったっていい……
私の全部を使ってもいいから、二人を助けて!!」
ニムガキを中心に、マナが集まる。
だが、それは回復効果を含まない別のマナに構成され消えていく……
「―― っ、お願い……『曙光』……お願い、だからぁ……」
ニムガキは、ボロボロと涙を流しながら……
大気のマナと自分を構成するマナを、必死に送り続ける。
回復の効果は、一向に現れない。
マナの光は、回復とは別の作用を発揮し続け……
無情にも、役目を終えて消えていく……
「……ダメ、もう……マナが、足りない……私じゃ、救えない……」
ニムントールが絶望の嘆きを零した。
すると、ヘリオンは、『曙光』の隣に『失望』を置く……
そしてニムントールを励ますように、手を重ねた。
「『失望』、わたしのマナを使ってニムさんの力に……
アオさん達を助けてあげてください!!」
「……ヘリオン……」
マナの濃さが更に強まる。
……だが二人の必至の想いに反し、全く傷が塞がらない。
『失望』とヘリオンのマナが無慈悲に枯渇していく……
これ以上続けても無駄なのは解りきっている。
俺が名乗りを上げ、次に継いだとしても、結果は変わらないと思った。
でも、それ以上に……
こんな光景を見せられたら……
やらない訳には、いかないじゃないか……
『俺も……どうやってマナを集めるのか、送るのか解らないけど……
もし聞こえるのなら俺からもマナを持っていけ!!』
こんな状況で、自分だけ傍観者という事実が耐えられなかった。
俺の思いが神剣達に通じたのだろうか?
マナの光は俺にも伸び、俺からも力を奪っていく……
「―― 雫? あんたも力を貸してくれるの?」
『当たり前だ、バカ!!
それよりさっさと回復魔法を習得しろ! 全部無駄使いするな!!』
「なんで、みんな……こんなこと無駄なのに……」
でも、その顔は必死で……絶対に助けるという意思で満ちていた。
「―― うわぁぁぁぁああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
……それは、魂を振るわせるような咆哮だった。
ニムガキは全身全霊の力を振り絞るように吠え続ける。
まるで自分の存在そのものを燃焼させるような気高い叫び……
その想いに応えるように、ニムガキの神剣魔法が変質……
僅かな回復の色を伴って、二人の身体に浸み込んでいく……
「ニムさん!! 傷が……傷が塞がってますよ!!」
「っ、解ってる……話し掛けないで!!」
傷は確かに、ゆっくりと、ゆっくりと塞がっていく……
……そう、『とても、ゆっくり』と……
このペースでは、間に合わない。
俺達3人の力を合わせたのに、回復の要素を含んでるマナは極僅か……
―― ダメだ、間に合わない、もうマナが枯渇する…… ――
―― 苦しい、もう無理だ、諦めよう…… ――
そんな情けない思考を頭から蹴飛ばす。
俺はもう、御免なのだ……
シアーの奴が家出した時のような後悔は、もう二度と味わいたくない。
何も出来なかった無力感に、ずっと苛まれ続けるぐらいなら……
無駄だったとしても、自分は出来る事をしたのだと胸を張り続けたい。
だから、もう絶対に諦めないぞ!!
無駄だと解っても、滑稽だと解っても絶対に諦めないからなっ!!
それが唯一、この体になってよかったと思える教訓だから!!
―― でも、このままじゃ本当にどうにもならない ――
―― アオとファーレーンが消えるのは目に見えている ――
―― 現実なんてこんなものさ ――
……それくらい、解ってる……
……でも、あの時もこんな状況だったんだ……
……だから、今回も絶対に現れる!……
……諦めなければ絶対に現れるっ!!……
「ニムントール!! ヘリオン!!」
……幸運の女神って奴がさあ!!……
「……エスペリア? アウルも?」
「二人とも、よく頑張ってくれた」
「後は、私に任せてください」
アウルは労わるようにニムガキの肩を叩き、
メイドの姉ちゃんは持っていた神剣を天に掲げる。
「神剣の主、エスペリアが命じます。
癒しの風よ……彼の者達の傷を癒して!!」
一帯に充満したマナは、アオとファーレーンに注がれていく……
そして、二人の傷口は瞬時に消え去った。
「よ、よかったぁ~~」
ヘリオンのガキが、ゴロンっと仰向けになる。
「……ふぅ……疲れ、た……」
ニムガキも、同じように仰向けとなる。
「お前達は少し休んでいろ……
エスペリア・グリーンスピリット、気を失ってる二人を宿舎に運べ」
「了解致しました」
メイドの姉ちゃんはアオとファーレーンの姉ちゃんを背負って、
アウルの後ろをついていくように、街に向かった。
残されたニムガキとヘリオンは、
仰向けのまま、満足そうに空を見上げていた。
「……ヘリオン……」
「どうしました、ニムントールさん?」
「その、ありがとう……
ヘリオンが居たから、お姉ちゃんを助けられた」
「私こそ、ありがとうございます。
アオさんを命を救って頂いて、本当に助かりました」
感謝の応酬をし合った二人は、クスクスと笑い合う。
「ねえ、ヘリオンとアオは姉妹なの?」
「残念ながら、姉妹じゃ無いんですよねぇ……」
「そうだったんだ……
私とお姉ちゃんみたいに早く契約を結べば良いのに……
……なんで結ばないの?」
「そのぉ、確かに姉妹の契約には憧れてるんですけど……
アオさんと契約をしたら、私が姉の立場になるのであって……
私が姉になると、非常に情けない姉になってしまうので……
時期尚早と言いますか……」
「そっか、そうよね……
あのアオの姉になんて成りたくないわよね……
あんな妹を持つと大変そうだし……」
「―― そんな事無いですっ!
アオさんは私と違って、とっても良い子なんです!!」
ヘリオンは上半身を起こし、力説するようにニムガキを睨む。
そんなヘリオンを見て、ニムガキは心底おかしいと言わんばかりに笑う。
「ヘリオン、立派に『お姉ちゃん』しちゃってるじゃん……
早く契約しないと、本当にアオを誰かに取られちゃうかもよ?」
「それでも構いません。
私のような情けないスピリットが姉になるぐらいだったら……」
そんな自虐癖に苛立ったのか、ニムガキの表情が不機嫌になる。
「……ヘリオン、私の前で自分の事、悪く言うの禁止……」
「なんで、ですか……?」
「いいから禁止! 解った!?」
「わ、わかりましたよぅ……」
「じゃあ、そろそろ行きましょう? ヘリオンはアオの神剣を御願い」
そう言って、ニムガキはファーレーンの永遠神剣『月光』を拾う。
ヘリオンのガキも立ち上がり、俺を拾ってくれた。
そして二人は、手を繋いでミネアの街に戻るのであった。