永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった


※属性:ほのぼの、ギャグ、シリアス※


第12節 『小さな決意』

ここ最近、アオとヘリオンのガキは仲良しだ。

 

「「……はぁ……」」

今日も訓練所の片隅で、二人して憂鬱な表情を隠さずに溜息をしまくっている。

 

本日50回目の溜息……

二人合わせると3桁の大台に届く回数だ。

 

ラキオスに戻って来てから毎日、この調子である。

 

離れたベンチから二人の様子を伺っていると、

木剣を手にしたネリシア姉妹が俺に近づいて来た。

 

「ねえねえ……」

『どうしたんだ、ネリガキ?』

俺に声を掛けながら、ネリガキは俺の隣に座る。

シアガキは座らず、興味深そうな顔で俺を見つめていた。

 

……そこまで熱心に視られたら、少し恥ずかしくなる。

 

「あの二人、どうしちゃったの……?」

『あの二人って……?

 もしかして、ヘリオンとアオの事を言ってるのか?』

 

「うん、二人とも帰ってきてから、ずっと変なんだもん……」

そうだよな……帰ってきてから、あの調子だもんなぁ……

不審がられるのも、当然と言えば当然かもしれない。

 

「……ね、シアー?? アオとヘリオン、変だよね?」

「ネリー……それ言ったの、シアーだよ?」

シアガキによる突然の暴露……

ネリガキは、思わず言葉に詰まる感じで固まった。

 

『そうなのか、ネリガキ……?』

「いや、ネリーだって気づいてたし……

 ネリーも変だなって気づいてたし……」

その割には、声が思いっきり震えている。

 

『え~、ほんとうに~?』

「本当だもん、シアーに言われる直前……

 ほんとうにギリギリの所で変だなって思ったし……」

動揺しているのか、その姿は挙動不審……

 

 

……実に判りやすくて助かる……

こういう嘘吐きな正直者という人種は大好きだ。

 

『シアガキよりも先に気づくとは流石だな、ネリガキ!』

「そ、そそ、そうでしょ……? 

 ネリーはね、クールなんだから当然気付いたもん!」

「……ネリー??」

動揺しながら胸を張るネリガキ……

そんなネリガキをジト目で見つめるシアガキ……

 

「ほ、本当だよ、シアー! 信じてよ、シアー!!

 ネリーだって本当に解ってたんだから!

 あの二人に話しかけても適当な返事しかしないしっ!」

ネリガキはシアガキに向かって、必死に弁明を始めた。

 

「返事をしたかと思ったらネリーを見て溜息するし!

 ネリーに見とれて、ぼ~としてる事も多いし ――

 ―― はッ?!」

突然、ネリガキが何かに気付いたように驚いた。

 

その姿は、まるで推理ドラマとかの探偵みたいだった。

真相に気付いたようなオーバーリアクションで驚いてる。

 

「これは、もしかして……ネリーの所為かも……

 ネリーがク~ル過ぎて、二人をノーサツしちゃった?」

『………………ぇ?』

迷探偵ネリガキの推理が炸裂……

推理が斜め上過ぎて言葉を失った俺を誰が責められよう?

呆れ過ぎてツッコミを入れる事すら出来なかった。

 

だから、心の中でツッコミを入れる事にする。

 

その貧相な御子様ドラム缶ボディで悩殺……?

……無理無理、絶対無理……

同性相手であれば以っての外……

少なくとも15年経ってから出直して来いと言うのだ。

 

「ノーサツ、ノーサツ……♪」

シアガキは暢気に、ネリガキの言葉を連呼していた。

その行為が楽しいのだろう、凄い楽しそうだ……

 

リズムに乗りながら、ノリノリで身体を揺らしている。

体を揺らす毎に、豊満な胸がリズミカルに揺れていた。

 

……うむ、これこそが本物の悩殺ボディ……

誰もが追い求めて、誰もが羨む究極のボディ……

しかもコレで、まだ発展途上いう事実がエグい……

 

既に大人顔負けの胸を持ってる癖して、まだ成長する?

誰が見ても反則もんの素質を誇っている。

 

きっと将来、苦労するんだろうなぁ……

 

野郎からは欲望の視線に加え、

同性からは嫉妬の視線を一身に受けるんだから……

 

究極ボディを持つ代償としては高いのか、安いのか……?

野郎である俺には、永遠に解る事の無い難題である。

 

「じゃあね、雫っ!!」

ネリガキは突然、思いついたように行ってしまった。

 

「あ、ネリー、待ってよぉ!」

幻の悩殺ボディ様も、ネリガキに続いて行ってしまった。

 

『……なんだったんだ、あいつ等……?』

まあ、いつも通りみたいなので安心した。

 

……元気が良いのは良い事だ……

シアガキが家出して戻って来た時は、本当に酷かった。

 

初めて大喧嘩した後という事もあったのだろうが、

ギクシャクしまくって、見てる方が不安になる程だった。

 

けど、今の様子を見る限り、もう心配する必要は無い。

姉妹の仲は、完全に修復されたのだから……

 

溜息ばかりの二人組も、

ネリシア姉妹みたいに能天気になれば良いのに……

 

 

 

ニムガキとファーレーンの姉ちゃんが心配なのは解る。

 

イースペリアのスピリット隊は全軍出撃中……

ミネアの街に残るスピリットは、今も二人だけ……

 

だがラキオスに戻って来て、かれこれ数日が経過した。

 

なのに、二人は今も上の空……

……いい加減、心の整理を付けて欲しいもんである。

 

 

 

などと思いながら、二人の観察を続ける。

 

しばらく観察をしていたら、ネリシア姉妹が戻ってきた。

ヒミカの姉ちゃんとハリオンの姉ちゃんに連れられて……

 

『…………??』

ネリガキの様子が少しおかしい……?

……というか、やや涙目になってる?

 

先導するヒミカの姉ちゃんが笑顔である事も印象的だ。

その笑顔は、どこか苛立ってるようにも見える。

 

ハリオンの姉ちゃんとシアガキは、そんな二人を見て苦笑している。

 

 

―― そんな愉快な四人組が、俺の隣にやってきた。

 

「ねえ、雫……」

『なんだ、ネリガキ?』

「アオとヘリオン、どうして変になっちゃったの?」

『それ、さっきも聞いた質問だな……?

 ……つーか、なんでオマエ、涙目なの?』

「アオとヘリオンをノーサツしたって言ったら、ヒミカに怒られた……」

『いや、意味が解らん!? なんで怒られてんの!?』

理不尽な怒り方をしてるヒミカの姉ちゃんの様子を伺う。

 

一見すると笑顔だが眼は笑っていない……

その圧が半端無くて、本当に怖いです。

なんで、そんなに強い圧が俺に向けられているのか本当に謎です。

 

 

「ネリーちゃん、もう一度ぉ、事情を説明してみませんかぁ~?

 アオちゃんの神剣さんはぁ~、何も知らなかったかもですからぁ~」

『……事情……?

 アオとヘリオンの様子が変って言ってたヤツか?』

「……雫、知ってるって……」

 

「ほら見なさい、私が思った通りじゃない。

 性質が悪い悪戯好きな神剣なのよコイツ……」

確かに悪戯好きなのは否定しませんが……?

それにしても、なんか攻撃的過ぎないか?

 

「う~ん、そうなんでしょうかねぇ~?」

「ハリオンも見てたでしょ?

 いつもアオが悪戯されて困ってた事を……」

『それは違います、それは冤罪です』

先に仕掛けてきたのはアオだ。

奴が色々と先手を取って、天然の災いを呼び込むのだ。

俺はただ、被害を被ったから復讐しただけなのに……

 

『ほら、ネリガキッ! 通訳っ!!』

「えっと、雫が違うって言ってるけど……」

「なら、どうしてネリーに意地悪なんてしたのよ!?

 私達は大真面目にやってるのにっ!

 アオとヘリオンの悩みを解決しようと頑張ってるのにッ!

 それを知ってる癖に私達を騙して(たの)しんでたんでしょ!」

軽蔑の眼差しでヒミカの姉ちゃんに睨まれる。

 

 

『そうなのか、ネリーさんや?

 オマエ、大真面目に質問してたのか……?』

「うん、そうなの……」

『とてもとても、そうは思えなかったんだが……?』

「それは、その ――」

怒るヒミカの姉ちゃんと俺を交互に見てるネリガキ……

絶対に後ろめたい事があるんだろうな、コイツ……

 

此処は更に深追いしてみよう。

このまま一方的に、俺が悪者にされるとか冗談じゃない。

 

『つーか、なんで俺が悪者になってるの?

 なんで俺が()(この)んで悪戯したみたいに話が広がってるの??』

「だからね……お願い雫、助けてぇ……」

『いや、泣きながら懇願されても困るんだが?

 むしろ助けて欲しいのコッチなんですがね?

 つーか、助けてと言われても、どうやって助けろと?』

「え、助けてくれるの!?」

『……内容による、かな……?』

「じゃ、じゃあ、ネリーが説明するから話を合わせて!

 雫は頷いてるだけで良いからっ!」

『……えぇぇ……』

 

皆が見てる中で『話を合わせて』と自白……と、いうよりは自爆しやがったよ、コイツ……

俺からネリガキに、ヒミカの姉ちゃんのターゲットが変わる。

……が、ネリガキは交渉に必死で気づいた様子は無い。

 

『そっか~、そこまで必死に頼まれたら仕方ないな。

 ……わかったよ……

 ネリガキの頼みは断れないからな……

 仰せのままに、言われるがまま話を合わせてやろう』

「本当!? やった、ありがとう雫っ! 大好きッ!!」

『ああ、俺もオマエみたいな奴は大好きだよ……』

 

嘘吐きな正直者という奴は、見てて飽きない。

だから俺は、ネリガキみたいな奴が大好きなのだ。

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

ネリガキに話を合わせた結果、

無事にヒミカの姉ちゃんの誤解が解けた。

 

なので、そのまま続けてアオ達が上の空である理由を語る。

 

ニムガキとファーレーンと仲良くなった事……

ミネアの街で戦闘となった事……

アオとファーレーンの姉ちゃんが死にかけた事……

イースペリアのスピリットが全軍出撃中である事……

たった2名で、ミネアの街を今でも防衛している事……

 

「だから、ニムントール達が心配で変になってるんだってさ」

「……え? そんな理由……?」

ヒミカの姉ちゃんが呆気に取られた顔をしてる。

 

『そんな理由……』

「そんな理由、だってさ……」

通訳したネリガキの言葉を聞いて、

ヒミカの姉ちゃんは訝しむ顔で俺を見る。

 

「本当なのかしら? また私達を騙そうとしてない?」

『―― だったら直接、本人達に聞いてこいやッ!!』

「直接本人に聞けばって、雫が怒ってるよ?」

 

「ハリオン、どう思う?」

「そうですねぇ~、もし違ってたらぁ~、

 アオちゃん達に直接聞けば良いと思いますよぉ?」

「そうね、騙されたとしても悩みを聞き出す切欠にはなるかも……」

……コイツ等、殴りたい……

特にヒミカの姉ちゃんを思いっきりドつきたい。

 

なんで俺、こんなに嘘つきって思われてるの?

 

「ねえねえ、ハリオン……ネリー達、もう行っていい?」

「シアーも、行っていい~?」

「二人とも、お手伝いありがとうございました~。

 約束通り、明日のヨフアルは多めに渡しますねぇ~」

 

「きゃっほぅっ! やったねシアー!」

「うん、良かったね、ネリー!」

 

「オルファに自慢しに行こうっ!」

「シアーも行く~」

 

騒がしい二人は、そのまま何処かに行った。

 

ネリガキを微笑ましく見送った姉二名は、

訓練所の隅で落ち込んでいるアオ達の近くまで移動する。

 

「二人とも、ちょっと話があるんだけど……」

「ヒミカお姉ちゃん、なに……?」

 

「ファーレーンとニムントールの事で ――」

「―― ニムさんとファーレーンさんに何かあったんですか!?」

「―― もしかして怪我しちゃったの!?」

二人とも弾かれたようにヒミカの姉ちゃんの話題に乗っかった。

目を潤ませ、(すが)るように絶望しかけてる二人を見てドン引きしてる。

そんなヒミカの姉ちゃんを見て、ハリオンの姉ちゃんは苦笑しながら話を続ける。

 

「二人ともぉ~、ラキオスがイースペリアに増援を送るって話は、知っていますかぁ~?」

「それ、本当なんですか?!」

「本当ですよぉ~、南のラセリオの街からミネアの街に向けてぇ~、防衛スピリット隊のスピリットが沢山遠征してるって噂ですよぉ~?」

 

……防衛スピリット隊……

各街の防衛や治安維持を行うスピリット隊の名称だ。

 

第1詰め所に住む上位スピリットが1軍……

俺達、第2詰め所に住む中堅スピリットは2軍……

そして、各街を防衛する下位スピリットは3軍として扱われている。

 

 

「良かったね、ヘリオンちゃん!」

「アオさん、良かったですね!」

アオとヘリオンのガキは、二人して良かった良かったと胸を撫でおろしている。

 

そんな二人を見て、ヒミカの姉ちゃんは意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「な~んか、二人とも……随分と仲良くなってな~い?」

「それはもう、イースペリアでは色々とありましたからっ!

 ……ね? アオさん!」

「そうだったっけ……?」

「ほら、あったじゃないですか……夜中に私が汚れちゃった時……

 アオさんが服を脱いで、私に渡そうとしてたじゃないですか……」

「……ん~?? 覚えてない、かも……?」

そりゃあ、覚えてる訳が無いと思う。

あの時のアオは完全に意識が飛んでいたんだから……

 

「ほら、お二人とも聞きました!?

 アオさんって、こんなに良い子なんですよ?!」

「えっと、ヘリオン??

 アオは覚えてないって言ってるみたいだけど?」

「違うんですよヒミカさんっ!

 アオさんは記憶が無いぐらい寝惚けてる状態だったのに、

 そんな状態でも私を心配して服を貸してくれようとしたんですっ!

 自分が風邪をひいてしまうかもしれないのにっ!」

なんか、ヘリオンのガキが親バカみたいにアオの事を語ってる。

 

「わたし、ここまで親切にされた事が一度も無くて……

 だからアオさんには、すご~く、すごぉ~く感謝してるんです!」 

ヘリオンのガキは力説しながらアオの頭を力強く抱きしめている。

 

「えへへ……」

アオもアオで、嬉しそうに成すがままに受け入れてる。

 

「ヒミカぁ~、どうしましょう~?

 私の可愛い可愛い後輩が、アオちゃんに取られてしまいましたぁ~」

「そういえば、ハリオンとヘリオンって同じ施設出身だったっけ?」

「そうなんですよぉ~、悔しいので私も混ざりますぅ~!」

そう言って、ハリオンの姉ちゃんは二人に抱き着いた。

抱き合ってるアオとヘリオンのガキを纏め込むように抱擁してる。

 

「ハリオン、さん……ぐ、ぐるじい……です……」

「……ぐぇぇ……」

「ふっふっふ~、私が満足するまで我慢してくださいねぇ~」

「あはは」

 

訓練中とは思えぬ仲睦まじい光景を見て、思わず和んでしまった。

 

第2詰め所に住むスピリット達は、誰もが優しい。

殺し合いを生業(なりわい)としているとは思えないほど、性格が良い奴等ばかりだ。

 

 

……ずっと、こんな穏やかな時間が続けば良いのに……

 

 

などと思っていると、一人の爺さんがアオ達に近づいてきた。

 

―― キード・キレ ――

ラキオスに所属する最古参の訓練師であり、齢80歳を越えた爺さんだ。

納刀した刀を杖代わりにして歩いている姿を頻繁に目撃する。

 

すでに耄碌してると思いきや……

その表情は歴戦の戦士に負けないほどワイルドで、凛々しい。

 

俗に言う、『イケおじ』ならぬ『イケ(ジジイ)』……

そのビジュアルセンスは、男の俺から見ても感嘆するしかない。

 

爺さんが近づいてきた事に気付いた4人は、じゃれ合いを止めて姿勢を正した。

 

「キード様、何が御用でしょうか?」

「二人とも、随分とマシな顔つきと成ったな。

 ここ数日の腑抜けた態度が嘘のようじゃわい」

ほっほっほ……と、気さくに笑う爺さん……

だが目は笑っていない、言葉も何処か嫌味を含んでる気がした。

アオとヘリオンが気まずそうに視線を逸らす。

 

「ヒミカ、ハリオン、お前達も手伝いなさい。

 ……改めて、この二人の成長具合を確認したい」

「今から、ですか……? そろそろ日が落ちる時刻ですよ?」

「構わんよ、そう時間を取らせるつもりはない」

そう言いながら、キードの爺さんは静かに俺の隣に座り腰掛ける。

 

「では、まずヒミカはヘリオンと戦って貰おうかの?

 二人とも、模擬剣を持って準備なさい。

 ヒミカは反撃せずに防御に専念、ヘリオンは自由に打ち込みなさい」

「「解りました」」

 

「ハリオンは不慮の事故に備えて待機、アオは観戦してるがええ……」

指示を聞いて、ハリオンの姉ちゃんとアオは離れた所で待機する。

 

爺さんは、真剣な眼差しでヘリオンのガキとヒミカの姉ちゃんを眺めていた。

 

「……うぅ……ヒミカさん、ごめんなさい……

 私達が上の空だったばかりに、付き合わせてしまって……」

「謝らなくても良いから、ほらっ! 全力で来なさいっ!」

「……では、行きます ―― 居合の太刀ッ!!」

 

ヘリオンが飛び込みながら居合を放つ。

木製同士がぶつかる乾いた音が、訓練所に大きく響き渡る。

 

その威力を物語るように、ヒミカの姉ちゃんの手は跳ね上がっていた。

両手持ちで防御したにも関わらず、大きく姿勢を崩したのだ。

 

「やったっ!!」

「―― そこで安心しないっ!」

威力が出て喜びを隠せないヘリオンに向かって、

忠告とともに跳ね上げられたヒミカの姉ちゃんの双頭剣が牙を向く。

 

紙一重のタイミングでヘリオンは後ろに飛び、距離を離した。

 

「凄いじゃない、今の居合……しっかりと威力が出てた」

「はい! 居合のコツ、完璧に掴みましたっ!」

その結果を観ていたキードの爺さんも、満足げにニコニコと笑っている。

 

「ヘリオンには、明日でも次の型を仕込んでやろうかのぉ」

「本当ですか!? やったっ!!」

 

「ヘリオンはもう戻ってええぞ……

 ……次はアオの番じゃな、準備なさい」

「はいっ!」

「アオさん、頑張ってくださいっ!」

ヘリオンの応援を受けたアオは、ヒミカの姉ちゃんと対峙する。

 

鞘から木刀を抜き、両手で構える。

 

「ヒミカお姉ちゃん、行くよ?」

「いつでも良いわよ」

 

そして模擬戦が始まった。

木刀同士がぶつかり合う音が訓練所に響く。

 

アオは威力を重視せず、手数を意識して攻めているように感じる。

その全ての攻撃は、ヒミカの姉ちゃんに防がれていた。

 

木刀がぶつかり合う音は非常に軽い。

さきほどのヘリオンの時と比べると、あまりにも軽すぎる。

 

「もう結構じゃ、打ち方止めいっ!」

キードの爺さんの表情は険しいまま、中断の声をあげる。

 

「死線をくぐったと聞いたが、とても成長してるようには思えんな」

「………………」

その言葉を聞いたアオの表情が曇る。

 

「この調子じゃと、貴様が皆を殺す事になる」

「……私が、みんなを、殺す……?」

 

「近々、バーンライト王国との戦争が始まるじゃろう。

 訓練時間は勿論、スピリットに与えるエーテルにも限りがある。

 その貴重な時間や資源を無駄にするという事は、許されぬ」

「えっと……」

言葉が難し過ぎて理解出来なかったのだろう。

困惑しているアオを見て、爺さんは呆れるばかりだった。

 

「貴様が成長せねば、他のスピリットが死ぬというだけの話じゃよ」

そう言い残して、キードの爺さんは訓練所から出て行ってしまった。

 

「気にしなくて良いのよ、アオ……

 まだ、貴方は生まれて1ヶ月目な訳だし……

 アオがまともに戦えないって事は、私達も知ってるから」

 

「アオちゃんが頑張ってる事は~、みんなが知っていますから~、

 ゆっくり焦らずに~、これから成長して行けば良いんですよぉ~?」

 

ヒミカの姉ちゃんとハリオンの姉ちゃんがアオを励ます。

……だが、アオの表情は暗いままだ……

 

「………………」

 

「……アオさん……その、頑張りましょう?

 私も一緒に頑張りますから、ね……?」

「うん、ありがとう、ヘリオンちゃん……私、頑張るっ!」

 

 

―― アオの瞳に、小さな決意が宿った気がした。

 

 

 

 

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