永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった

※属性:シリアス※


Chapter 1  異世界
第1節 『忘却の彼方……』


アオはスヤスヤと寝息を立てている。

 

だらしなく口から涎が垂れており

うぇへへへ……みたいな、下卑た笑いを浮かべている。

 

さぞ楽しい夢でも見ているのだろう。

 

 

普通であれば下卑た笑いというのは不快感を与えるが、

顔面偏差値が高い場合は、その限りでは無いらしい。

 

むしろ、微笑ましいとさえ感じる。

 

その涎が俺の身体に直撃しているというか

柄の部分にポタポタと着弾している実害が無ければの話ではあるが……

 

 

『……っていうか、何で刀を抱いて寝てるんだ、コイツは?』

刀を抱いていなきゃ寝れないとか、何処の剣客様なんだ?

ぬいぐるみの代わりだとしても抱き心地最悪だろうに……

 

ポタポタと滴れる涎を出来る限り無視しながら、

アオに与えられた個室について考察してみる。

 

窓際にはベッド、反対側の壁には作業用の机と椅子……

そして部屋の真ん中には円形のテーブルが置かれていた。

装飾からしてヨーロッパの味が強い……

 

 

少なくとも此処は、日本国内では無い予感がヒシヒシと感じ始めた。

 

 

では欧州の何処かなんだろうと思いたいが、それも違う気がした。

 

現代において、ベッドも椅子もテーブルも机も窓枠も……

全部木造とか有り得るのだろうか?

 

金属使ってる部分が、釘だけって時点で怪しさ満点だ。

 

 

アオが寝てるベッドに至っては、スプリングすら内臓されていない。

言ってはアレだが、木の箱の上に布団を敷いてるのと変わらないと思う。

 

窓に至っては、スライドを補佐するローラーの金具すら見当たらない。

 

 

アオの部屋だけが特別なのだろうかと、隣の部屋の様子も伺ってみる。

隣の部屋では、アオと髪色が同じ子供が二人、仲良くベッドで眠っていた。

アオの部屋と違うのは、作業用の机が2人分あるだけで、家具は全く同じ木造だった。

 

左右と向かい側、下にある個室を含めた

12部屋も調べたが、その全ての部屋の内装が全く同じ……

そのお蔭で、この館は寮として機能しているのだなと理解する事が出来た。

 

それにしても、アオに限らず、どいつもこいつも寝顔の顔面偏差値が高過ぎる。

此処に居る全員が一般人を超越した極上の美人さんって、偶然の産物とは思えない。

 

コイツ等全員、どんな目的で集められたんだろう?

娼婦? アイドル? お天気お姉さん的なニュースキャスター?

 

更に深く考察しようとしたが、飽きてきたので止めた。

 

アオと出会ってからというか、この夢を見てから、既に半日は経過するだろう。

相変わらず視力は回復しないまま、身体すら動かない状態にも良い加減に慣れてきた。

 

だから、そろそろ……良い加減に認めなきゃいけないと思う。

 

 

 

……これは、夢じゃないって事を……

 

 

 

でも、夢じゃ無ければ何なのだ?

現実にしては現実離れが過ぎて、到底現実とは思えないのだ。

 

だって、人間がいきなり刀になぞ変化するものか……

 

百歩譲って刀に変化したとしても、

脳味噌すら無い身体で何故俺は思考出来ているのだ?

 

それに、此処、明らかに現代日本じゃない。

 

この館に来る道中に

住宅街らしき場所を通ったのだが、絶句するしか無かった。

 

現代日本とはかけ離れていた建築物……

 

中世ヨーロッパを舞台にした映画とかに出て来る

貧相な飾り気の無い衣類を来た人々……

 

電気・水道・ガスと言った

インフラを全く感知できなかった事……

 

なんなら、道路がアスファルトじゃなくて

灰色の石材がレンガ状に敷き詰められている道……

 

これ、もしかしてタイムスリップという奴ではと錯覚しそうになった。

 

何度も言うけど、現実にしては現実離れが過ぎて、到底現実とは思えない。

 

もう何も考えずに眠りたいのだが、いつまで経っても寝る事が出来ない。

視界は最初から消失しており、半径10mの情報がいつまでも流れて来る。

どうにかして流れて来る情報をシャットアウトしないと眠れそうにないのだ。

 

 

……極めつけは、空腹感がヤバイ……

 

まだ我慢出来るレベルだけれど、

気になってイライラするレベルには到達してる。

 

 

『……腹、減ったな……』

この空腹感って、どうやったら収まるんだろう?

 

食べ物を斬っても空腹感が紛れなかった場合、

どうすれば良いのか本当に解らないので不安に押しつぶされそうになる。 

 

こんな事なら昨日、飯をガッツリと食っておけば良かった……

 

 

……ん? いや、待て……昨日……?

俺は昨日、何をしていたんだったか……?

 

 

昨日の出来事を思い出そうとした時、急に体内からの違和感を覚えた。

なんか異物としか表現しようがないナニカが、蠢いている感じがした。

 

『おい、おいおい……冗談、だろう……?』

その感覚は、ただただ不快なだけだった……

自分の中に、自分じゃないナニカに侵されている感覚……

身動きが取れないというのに、その感覚は好き勝手に動いている。

 

……正直、吐き気がした……

 

寄生虫とかだったら、どうすれば良いんだ?

最悪の想像しか出来ないが、正体不明というのが一番怖い……

 

俺は意を決して、その蠢いている感覚に意識を集中させる。

 

 

 

 

 

―― 瞬間、意識が断線した ――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――!?」

ラジオのノイズみたいな音が一種聞こえたと思った瞬間、視界が回復していた。

 

「!? ……あれっ!?、動く?」

身体もまた、正常に動いていた。

 

馴染みがある五感が舞い戻っている。

 

自分の手の平に視線を落とし、

握ったり開いたりを繰り返してみる。

 

……うん、問題は無い……

 

そのまま手首や腕を手の平で摩って……

感覚も正常であると確認出来た。

 

刀から人間の身体に戻った事に

安堵しながら周りの様子を確認する。

 

 

顔を上げて周りを確認すると、大きな映画館に俺は居た。

 

照明は落ちており、非常に暗い……

 

上映中なのか、最後部の映写機から馬鹿でかいスクリーンに光の帯が伸びている。

 

 

映し出されている光景は、何処かの森の中だろうか?

 

今時モノクロなんて珍しい……

というか、何処かで見覚えがある森の風景だ。

 

あれは、何処だったか……?

画面を見ながら悩んでいると、近くでギシリと床が軋む音がした。

 

 

「―― どわぁ?!」

「―― うひやぁ?!」

誰も居ないと思い込んでいたからか、ビックリして変な声が出た。

そして俺の叫びに反応するように、驚いた誰かの声が至近から聞こえた。

 

 

「ってか、誰だよっ!?」

その声の方向から距離を取り、

離れた所で立ち上り、いつでも逃げれる姿勢で戦闘態勢を取る。

 

「その声……もしかして、雫……?」

声がした方向に目を凝らすと、腰を抜かしたアオの姿が見えた。

 

「なんだ、驚かせるなよ……」

バクバク言ってる心臓を撫でおろしながら、俺は警戒を解く。

 

そして近づこうとした瞬間、アオは反対側の壁際まで逃げて行った。

 

「……何故に、逃げる……?」

「貴方、誰……? 本当に雫……??」

 

「どういう意味だよ?」

「だって、雫は永遠神剣なんだよ? 雫は人間じゃないんだよ?」

「俺は正真正銘の人間だっての! 刀になってたのは何かの間違いだったんだよ!」

 

「……そう、なの……?」

「そうなんだよ!」

「………………」

アオの警戒は、まだ解かれていない。

信じられないと表情が物語っていた。

 

「オマエ、俺が正真正銘の『時神 雫』様だって事……信じてないだろ?」

「え? どうして解ったの??」

「実は俺、アオの心が読めるのですよ」

冗談を言ったら、アオの目がキラキラと輝きだした。

 

「本当!? 凄いっ!! じゃあ私が何を思っているのか当ててみてよ!」 

「……凄いって、思ってる」

 

「凄いっ!? 当たってる!?」

「……凄い、当たってるって、思ってる」

 

「凄い! また当たった!!」

そりゃ当たってるだろうさ、何せ本人様の口から出た言葉だもん。

 

バカなのかな、コイツ……と、内心思いながら俺は最後尾の座席に座る。

 

そしてスクリーンに映し出される、

何処かで視た森の風景を思い出そうと必死に記憶を探る。

 

「う~~~~、ぬ~~~~??」

何処だったっけ?

最近見たような気がするんだけれど……?

 

悩んでいると、袖をクイクイと引っ張られる。

悩みながら隣に視線を向けると、アオがいつのまにか隣に居た。

 

「ねえねえ、雫……」

「……なんだよ?」

「さっきから何を悩んでいるの?」

 

「画面に映し出されている景色がな……

 何処かで見た事があるんだけど、何処で見たのか思い出せないから悩んでる」

「……ふ~ん……」

 

 

暫くした後、アオは再び俺に声を掛けてきた。

 

 

「ねえねえ、雫……」

「今度は何だよ?」

「私も座りたい」

「座れば良いじゃん」

そう言ったら、アオは立ち上がっている座面の上に座り込んだ。

 

「……??」

そして俺と自分の椅子を見比べて、ナニカが違うなぁと悩んでいた。

 

俺は溜息を付きながら、アオが座っている座面を倒してやる。

すると座面が勢い良く倒れ、アオはそのまま滑るように俺と座高が一緒となった。

 

「おおぅ、ふわふわ……なにこれ、楽しい……」

よほど気に入ったのだろう……

 

アオは立ち上がって座面が勝手に立ち上がったら、

その上に座り、尻からストンと座面に落ちる行為を繰り返している。

 

 

俺は鬱陶しく想いながらも、モノクロの画面に集中する。

 

暫くして、モノクロの画面に一人の老人の姿が映った。

 

その老人のお陰で、画面に映し出されている場所は、神木神社の裏という事が把握出来た。

 

「雫、このおじいちゃんは誰……?」

「俺の師匠っていうか、俺の遠い親戚だな」

 

名を『鹿島 信三』という。

俺に弓術を教えてくれた師匠でもある。

その昔は、名を轟かせていた退魔師だったそうだが……

今は引退、神木が管理している神社でおみくじとか、破魔矢など売っている。

 

 

師匠と別れて、しばらく森の中を歩いていると……

突如、大型の霊が地面から湧き出てきた。

 

「雫!! あれは?」

「ありゃ自縛霊だ……つーか、だんだん思い出してきた」

「?? じばくれい?」

「黙って見てろ」

 

普通、霊というのは夜になって目視できる存在である。

まだ明るい内に姿が確認できるということは、それほどの無念を背負った存在だ。

 

画面に弓が現れ、矢を絞って照準を合わせているシーンへ移行する。

 

矢を放つ……だが、効いている様子は全く無い。

それを見越して、悪霊が津波のように襲い掛かる。

 

「ひっ!!」

驚きすぎじゃね?

……っと思ったが、初めて映画というモノを見たのなら、この反応は当然かもしれない。

映像が目線の視点だから、本当に襲い掛かってくるように錯覚させる。

 

画面に写る映像は、横っ飛びをして回避したようで、ダメージは皆無である。

 

 

 

そして、再び自縛霊に照準を合わせる。

 

だが、今度は弓矢じゃなかった。

 

 

……『銃』だ。

俺の愛銃『50AE・デザートイーグル』

 

 

スライドが作動して薬莢が排出される。

霊は一撃でボロボロになり、もがき苦しんでいた。

 

 

それも当然。

 

装填されている銀製の弾頭は、

古今東西のあらゆる魔除やオマジナイを詰め込んでいる。

 

言わば、俺特製の弾頭……

実体を持たない存在に対して絶大なる効果を発揮するのだ。

 

トドメを刺そうと、銃口を霊の中核……

人で例えると心臓に照準を合わせたとき――

 

 

――悪霊が破裂した。

 

 

まるで空に吹っ飛ばされたように画面の視界が遠ざかっていく。

その過程で、自分と同じ顔の男が受身も取らずに倒れる姿が遠くなって ――

 

 

最後に、ブツン……と、画面が暗転した。

 

映像の終わりを告げるように、暗闇だった映画館の照明が灯った。

 

 

「雫……いまのは?」

「あれは、たぶん……俺の過去の映像だろ ―― !?」

質問に返答しながらアオを見た瞬間、思わず絶句した。

 

室内の照明がゆっくりと明るくなっていく……

同時にアオの身体が消えるように透けていく……

 

「おい、アオ?! 大丈夫か?!」

「え、なに? どうしたの? いきなり慌て ――」

アオは自分の身体が透けている事に気付く事無く、完全に消えてしまった。

 

「……え? ……は??」

なんで、いきなり消えたのか

解らぬまま絶句していると、スピーカーからブザー音が鳴り響く。

 

おもわず室内全体を見渡した時、

ふと消えかけている自分の腕が視界に入った。

 

気付いた時は、既に手遅れだった。

 

 

秒単位で、俺の身体がどんどんと透けて行き ――

 

悲鳴を上げる暇すら無く、俺の身体は完全に消失した。

 

 

 

………………

 

 

…………

 

 

……

 

 

 

意識が戻る。

 

闇の世界、視界が全て失われた世界……

しかし、周囲の状況が手に取るように解る感覚……

 

……ああ、そうか……

俺は再び、日本刀になってしまったらしい。

 

アオの気配を感じる。

どうやら、可愛らしい寝息を立てながら眠っているようだ。

 

 

 

それにしても、あの映画館はなんだったのか?

 

それを知る術を、今の俺にある筈が無い。

 

……けど、判ったこともある。

 

 

あの映画館で上映されていたのは、俺が昨日体験した出来事だった。

あの自縛霊が自爆した後、衝撃で空に吹き飛ばされた俺……

その過程で、自分と同じ顔の男が受身も取らずに倒れる姿が見えた。

 

その映像が意味する事、すなわち ――

 

『……幽体離脱って奴なのかな?』

だとしたら納得が行く……

 

俺の身体が日本刀に変化したのではなく、

幽体離脱した俺の意識が日本刀に憑依したというのが真相なのだろう。

 

だから、この世界は紛れも無い現実なのだと受け入れる切欠が掴めた気がした。

 

つまり、夢じゃないという事は……?

 

この状況は俺の願望とは無関係という事になる。

誰だよ、夢は『抑圧された願望』を開放するための手段とか抜かした奴!?

危うく、俺は幼女の裸を何時間も舐め回したい変態なのだと自負する所だったぜ……

 

 

……などと現実逃避をしていた、その時だった。

 

「うみゅ??」

アオの方から奇怪な声が漏れた。

……っていうか、ウミュってなんやねん?

 

新種のポケ〇ンかと突っ込みたくなったが、

ネタが通用しないのは予想出来るので口には出さないでおく。

 

「おはよう……しずく……」

アオの髪が跳ね上がって、まるで某漫画の超サ○ヤ人を連想させる寝癖だ。

ハードワックス付けなくても、髪ってああも重力に逆らえるんだなと感心するしかない。

 

『すげぇ寝癖だな……つーか、まだ夜じゃないのか?』

「ふえ? 外明るいよ?」

『マジで!? ……え? もう朝なの??』

周囲を確かめてみると、ベッドから起きて活動している人が数人居た。

 

「うん、雫……もしかして寝ぼけてる?」

映画館の夢から目覚めたばかりだが、寝惚けてはいない筈だ……

 

気付かなかったのは、光を認識出来ないからだと思う。

 

今も視界は闇一色なのだ。

闇に包まれたまま、周囲の情報が手に取るように把握出来るだけで……

 

「……雫?」

『ん? なんだよ?』

 

「私ね、変な夢見ちゃったんだ」

『変な夢って、どんな……?』

 

「刀じゃない雫と一緒に、変なところで ――」

『―― 知ってる』

二人とも同じ夢を見るとか、普通に考えたら有り得ない。

 

……が、俺は既に中世ヨーロッパを感じさせる場所にタイムスリップしてるのだ。

いまさら同じ夢を見た程度で動じないし、それがどうしたというのだ?

 

「……? なんで雫も知ってるの??」

『俺にも解らん……つーか、寝癖を直して来いよ……』

「む~」

不安定な足取りで、ドアに進む。

 

ドアの取っ手をつかむと思いきや、ゴンっと……

頭から扉に突っ込んだような、そんな乾いた音が響いた。

 

 

部屋に沈黙が訪れる。

 

 

「……zzz……」

『寝るな~~~!!』

「う、うぃ……」

アオは俺の声にビクッっと反応し、のそのそとドアを開け、とぼとぼと歩いていく……

 

アイツ、本当に大丈夫なのかなと心配になりながらアオの様子を観察し続ける。

 

 

半径10m以内の様子が手に取るように感じられるというのは、想像以上に便利だ。

壁で隔たれようが死角が存在しないのは革新的だと思った。

 

アオは瞼を閉じながら、ゆっくりと歩いている。

此処は2階で、階段まで後すこしの距離……

 

……これ、危なくね……?

 

『おい、アオッ! 馬鹿ッ!! 起きろっ!! オイッッ!!』

力の限り叫ぶが、アオが止まる様子は無い。

 

『やばい、ヤバイってッ!! 止まれよ、マジでッ!!』

俺が焦っていると、部屋の中からアオの危険行為を目撃したであろう

昨日会った緑髪のメイドさんがダッシュしてくれたお蔭で事無きを得た。

 

そしてアオと同じ目線にしゃがみ込んで、なんか『めっ』って注意してる。

だが、本人は寝惚け眼で聞こえていない模様……

 

そんな姿に微笑んだメイドさんは、アオをだき抱えて1階の洗面所に連れて行く。

 

そして、水で濡らしたタオルでアオの顔をゴシゴシと拭き始めた。

アオは驚いていたが、気持ち良さそうに受け入れている。

 

目が覚めたアオは、メイドさんに連れられる形でリビングへ……

 

12人が座れる大型のテーブルに着席した後、集まった奴等に紹介されている。

 

昨日出会った青髪ポニテの姉ちゃんに、赤髪ショトカの姉ちゃん……

アオより少し年上と思わしき青髪の姉妹と、黒髪ツインテールのガキンチョ……

あと、表情が死んでる赤髪ロングの姉ちゃん……

ここの寮生は、アオを含めて8人という事になるのだろうか?

 

それにしても、本当に絶世の美女や美少女ばかりである。

年長組に至っては全員胸がデカイのなんの……

 

此処は桃源郷に違いないと馬鹿な事を考えていた時、

美味そうな料理が続々と並べられていく……

 

 

俺の空腹感が更に増した気がした。

 

 

『……あれ? 俺の分は……?』

もしかして、無いの……?

いやいや……それは幾ら何でも、あんまりでは?

俺だってお腹減ってるんですよ?

 

『……アオ? アオさん?』

呼び掛けてみるも、アオが気付いた様子は無い。

 

『お~~~~いっっ!!』

思いっきり叫んでみるも、聞こえた様子は無い。

 

美味そうに飯食ってる様子だけが感じられる。

 

 

 

もしかして、声届く距離って短かったりするの?

嘘でしょ? 俺だけ飯抜きとか冗談でしょ??

同じ夢を見た仲なんだから、テレパスとか使えないの??

 

 

『……ぬぅぅ……』

いや、諦めるな……此処で希望を捨ててはいけない。

もしかしたらアオが俺の為に朝飯を持って来る可能性に賭けようじゃないか……

 

『頼む、アオッ! お願いしますっ!

 マジで俺も腹が減ってるんですッ!

 アオ様神様仏様っ! どうか俺にも御恵みをぉぉ……!!」

 

 

 

 

……必死に祈りを捧げた結果……

 

 

口の周りに飯の食べカスを付けたアオが無手で戻ってきた。

 

 

堪忍袋の緒が千切れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

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