永遠神剣になっちゃった   作:ASファン

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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった

※属性:シリアス※


第2節 『勇者の素質』

「ねえ、アオ……」

「どうしたの、ヒミカおねえちゃん?」

「何故、訓練でも無いのに神剣を持ってきているの?」

 

ヒミカと呼ばれた赤髪ショートカットの姉ちゃんは、

リビングの食卓の上に置かれた俺を指さして問いかけて来た。

 

「だって、雫が一人にしないでって怒るんだもん……

 一人になると寂しくて死んじゃうって言うから……」

 

「ずいぶんと情けない事を言う神剣なのね」

『なんだと、こら……?』

昼飯を食いっぱぐれない為の生存戦略にケチをつけられて、思わず腹が立つ。

 

……が、俺の声が届かないので怒っても意味は無いだろう。

そもそも腹が立つ以上に腹が減っているので、怒って余計なカロリーを消費したくない。

 

腹が膨れたら覚えてろよと内心思いつつ

改めて周りを見渡すと、アオより少し年上と感じるガキ共が居た。

 

赤い髪のツインテール……

青のポニーに、その隣に同じ色をしたショートの気の弱そうなガキ……

そして、黒い髪をしたツインテール……

ちなみに、アオはストレートのロングヘアーである。

 

この構成は一体……授業でもやんのか?

「じゃあ、昨日のおさらいと……そうね、今日は社会常識について教えるわよ」

 

どうやら講座らしい。

正直、ありがたい……俺は、この世界のことは何一つ知らんのだ。

 

「始めに、昨日の話題は覚えてる? ……ネリー」

ネリーと呼ばれた青髪のポニーテールのガキは

「げっ!?」っと非常に判りやすい態度を示した。

 

その横で、気の弱そうなガキが耳打ちで教えている。

 

「ス、スピリットのことっ!!」

「そうね、次からはシアーに教えてもらわずにちゃんと勉強すること」

「だって、ハリオンの授業って眠くなるんだもん!」

ハリオン……? 何処かで聞いたような……? 

 

「たしかに、あの間延びした声で授業をやれば眠たくはなるわね」

間延びした声と聞いて、すぐにピンと来た。

ああ、あの胸がでっかいメイドの姉ちゃんか……

 

 

「まあ、それはともかく……」

コホンっと咳をして、ヒミカの姉ちゃんは話を再開する。

 

「昨日のおさらいとして、ヘリオン……言ってみなさい」

「は、はいっ! 私達スピリットは、

 戦いの道具としての役目を果たせるように日々訓練をしていますっ!」

『……ん?』

いま、ヘリオンと呼ばれたガキが何を言っているのか、全く理解出来なかった。

 

「その通りよ、ヘリオン……アオも最低限、コレだけは覚えておいてね。

 どんな場合でも人間様の言う事は絶対! 例外無く逆らってはダメ!

 毎日のように言ってるけど、反論なんてしたら殺されるだけなんだから

 本当に気を付けなさいね……特にネリー、オルファッ!!」

「うるさいなぁ、そのぐらいネリーだって解ってるもんっ!」

「オルファだって知ってるもん! じょーきしッ! って奴だよね!」

「あの、オルファさん? じょーきし、では無く常識ですよ?」

「ヘリオンったら頭悪過ぎるよぉ、こういうのは意味さえ通じれば良いのっ!」

「……へぅぅ……」

 

『……うん??』

人間様ってナニ……? コイツ等も人間でしょ?

それとも、本当に人間じゃ無いとか?

 

いやいや、何処からどう見ても美女・美少女にしか見えんが……?

 

それ以前に、ヘリオンとかいうガキが口にしていた

『戦いの道具としての役目』とは何ぞや?

もしかしてコイツ等全員、傭兵稼業に身をやつしているの?

 

でも、人間様に絶対服従とか、逆らえば殺されるとか

物騒な発言を鑑みるに、人権が無い奴隷っぽい立場なのか?

 

でも身嗜みが綺麗だし、肌に汚れなんてモノは無い。

そもそも、この建屋には浴槽もあるみたいだし……

人権が剥奪されて虐げられているとしたら環境が良過ぎる。

 

 

 

俺の混乱を他所に、授業は進んでいく……

 

 

内容は、この世界においての一般常識……

というよりは、スピリットという種族の観点から見た一般常識だ。

 

スピリットとは国の保有物であり

永遠神剣という武器を手に、国の為に戦う事が義務付けられている種族である事……

 

 

つまりコイツ等の正体は軍隊だったという訳だ。

人間様のいう事に絶対服従という言葉にも納得した。

 

人間様というより上官様の事なのだろうが、

上官と言ってもガキ共が理解出来ない可能性を考慮して

人間様と拡大解釈で口にしたのだと思う。

 

命令を拒否すれば銃殺刑という厳しい軍隊が存在したと聞くし、

上官様に反論したら殺される、という言葉も脅しを籠めて伝えているのだろう。

 

そして、アオが此処に連れられてきた理由にも納得した。

 

アオは身元がハッキリとしない孤児みたいなもんだし、

住所不定の孤児達が成人したら国防という仕事に斡旋する為に、

今から教育を施しているのだろう。

 

だから、スピリットっていうのは身寄りが無い孤児達の総称なのだろう。

……正確には、軍の養成施設で教育を受けた孤児達の総称なのだろうが……

 

 

そう考えると、何もかもが腑に落ちた。

 

 

次は地理に関するお勉強となった。

 

北方には5つの国が存在する。

その5つの国の内、最も北側に位置する国が『ラキオス王国』

それが俺達を保護した国の名称だ。

 

西には『サルドバルド王国』

南西に『イースペリア王国』

南東に『バーンライト王国』

その更に南東に『ダーツィ大公国』

 

以上、5つの国がある地方を総じて『北方五国』と呼称している。

 

特に注意しなければいけないのは『バーンライト王国』……

『ラキオス王国』との関係は険悪であり、軍事的な小競り合いが絶えないのだとか……

 

 

聞いた事が無い国名ばっかりで、頭が真っ白になりそう。

此処、地球じゃなくて、もしかして異世界なのではという考えが脳裏を過ぎる。

 

無機物憑依、時間逆行、果てには異世界転移……?

そこらのファンタジー小説でも、ここまで属性てんこ盛りな作品なんてあっただろうか?

……っていうか、これが本当に現実の出来事だとしたらマジで意味が解らない。

 

どんな天文学的確率やねん、っと突っ込みたくなる。

 

 

「そろそろ良い時間だし、此処までにしておきましょうか?

 明日までに、ラキオスの周りにある国を覚えてくる事……

 ……ここまでの話で解らなかった所とかある?」

「はいはい、は~い!!」

突然、オルファとかいう赤髪ツインテールのガキが元気よく手を上げる。

 

「珍しいわね……じゃあオルファ、何が解らなかったの?」

「昨日、エトランジェさんが現れたって噂本当!?」

 

「オルファ、授業と関係無い事を聞かないでよ。

 それに第1詰所に住んでる貴方が一番よく知ってるんじゃないの?」

「だってオルファ……ラースの護衛任務で、ずっと戻ってないし」

 

「えとらんじぇ??」

アオの問いに、ヘリオンとかいう黒髪ツインテールのガキが答えてくれた。

「エトランジェって言うのはですね、

 異世界から訪問された勇者様のことなんですよ」

 

隣から、ネリーとかいうガキがその話に便乗する。

 

「私達よりも、ず~っと強くて、上位神剣を使って世界を救う勇者様なんだって」

「憧れちゃいますよね~~」

 

「そのえとらんじぇっていう人も、すぴりっとなの?」

「そんな訳無いじゃん、エトランジェ様は人間だよ」

アオの問いに、ネリーが答えた。

 

『……え、あれ……?』

 

昨日……? エトランジェ……? 異世界……? 人間……?

 

俺が、この世界で目を覚ましたのは昨日の事だ。

無機物憑依したあげく、中世時代まで時間逆行して、

あげくの果てには異世界転移なんていうフルコンボを食らっている。

 

天文学的確率に愛された俺は、勇者の素質があるという事では?

 

ガキ共の反応を見てると、肩書だけでモテモテになる事は解る。

 

此処に居るヒミカの姉ちゃんとか……

此処には居ないメイドの姉ちゃんとか、

セリアとかいう姉ちゃんも勇者様に憧れてるんだろうか?

 

顔面偏差値最高レベルの姉ちゃん達からモテモテになるって、マジ?

 

『ふふ、勇者か……いいな、その響き……』

俺の野心に火が付いたのは言うまでもない。

 

 

 

「はい、静かに!!」

不機嫌そうにヒミカの姉ちゃんが注意すると、あっという間に騒ぎが収まった。

 

「アオ、エトランジェって言うのはね、

 異世界から召喚され上位永遠神剣を操る人間のことよ。

 情報は定かではないけど、配属されるのなら情報が回ってくる筈よ」

 

「そうなんだ」

「じゃあ、今日の授業はこれで終わりっ!

 午後は訓練所に集合だから遅刻しないようにしなさい」

 

はーい、とガキ共は返事をし、各々席を立つ。

 

 

「アオ、ネリー達と一緒にヨフアル食べに行こ!」

「よふある??」

「知らないの~、とっても美味しいんだから! ほら、行こう!」

アオがネリーに引っ張られるように連れていかれる。

 

「オルファも行く!!」

「シアーも」

「わ、私も行きます!」

ガキンチョ共は、賑やかに部屋を出て行く……

 

 

残されたのは、俺とヒミカの姉ちゃんだけ……

 

 

『……ん? あれ……?』

座学が終わったら御飯という話では?

 

ご飯って此処で食べるんだよね?

なのに、何処に行くつもりなんだ??

 

観察してみると、ガキンチョ共はメイドの姉ちゃんの部屋に向かっている。

厨房では、セリアの姉ちゃんが美味しそうなスープを皿に盛り付けている。

そしてヒミカの姉ちゃんは、ガシッっと俺が収まっている鞘を持ち上げた。

 

この時点で嫌な予感しかしない。

 

 

『アオぉぉおおおおっ!! アオさぁぁぁあああああん!!』

俺が必死に叫んでも、アオは気づいた素振りを見せない。

 

 

そして俺はアオの部屋に戻された。

 

バタンと扉が締められると共に、途方も無い空腹感に襲われる。

 

 

 

 

 

俺が発狂したような叫び声を上げても、誰にも気づかれる事は無く

 

皆が美味そうに昼食を食べる光景を一方的に感じながら

 

俺は空腹感と共に泣き叫ぶ事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 




本編内容を修正、及び北方五国の情報を記載。


『ラキオス王国』
かつて大陸の半分を支配した聖ヨト王国の末裔の一つ。
イースペリア王国、サルドバルド王国と共に
『龍の魂同盟』を結んでいる同盟国であるが、
帝国の勢力圏に属するバーンライト王国とは激しく対立している。

当初は国家規模は小国で、マロリガン共和国といった
反帝国系の非同盟国からは敵視は受けていなった模様。
小説版では人口は1万人。林業が盛んであるとされる



『イースペリア王国』
ラキオス、サルドバルドとは『龍の魂同盟』を結んでいる同盟国の王国。
ラキオスとは同盟関係にあるが、イースペリアは多くの非同盟国と隣接しており、
軍事力に余裕がなく相互援助がほぼ不可能な状況となっており、
『龍の魂同盟』は実質的に不可侵条約に近い。

小説版では人口は2万4千人。
『龍の魂同盟』の友好国にマナの加工製品の輸出を行っている他、
肥沃な大地が多いため、豊かな国家であるとされる。

儀式に選ばれた女性が女王になるという
非世襲の特殊な王国で現女王アズマリアは信託により10年前に即位。
レスティーナとも親しく、彼女がラキオス王に即位した暁には
両国の関係はより強固になると見られていた。



『サルドバルド王国』
小説版では貧困国という設定で、
国民の数がラキオスの四倍以上の4万人でありながら
食糧事情が皆無なため、国民の大半が貧困に喘いでいる。

スピリット隊もラキオスと比較して非常に脆弱な質となっており、
同国の上層部では妖精趣味が珍しくない。

元々はラキオスの領土であったが、貧困地域を切り離したい
当時のラキオスにサルドバルドの貴族が唆されて、独立した経緯がある。
そのため、帝国よりも着実と国土を伸ばすラキオスを恐れている。




『バーンライト王国』
ラキオス王国に隣接する小国で、帝国の属国。
ラキオスのエーテル変換施設を狙った
軍事行動を引き起こすなど小競り合いが絶えない。

神聖サーギオス帝国から派遣されたと噂される極力なスピリット部隊を有しており、
小国ながら軍事力は不釣り合いな程に高い。

小説版では人口は9千人。
鉱業が盛んで、帝国に資源を輸出し、
代わりに帝国のマナ加工製品を輸入しているとされる。

国王は暗愚な人物で王妃が事実上支配者という状況だったとされる。




『ダーツィ大公国』
帝国の属国。かつてはスピリットを最初に保有し、
堂々と帝国と隣接しながらも独立を維持していた大国だった。

しかし、イースペリア王国との軍事的緊張と
軍拡により端を発したジージスの呪い飢饉の影響で、
現在は国土の大半が砂漠に飲み込まれてしまい国力が急落、
そのまま帝国の勢力圏に組み込まれた。

それでも北方五国の中ではそれなりの軍事力を有していたため、
マロリガン共和国議会でも危険視されている等の影響力を保持していた。

小説版では人口は2万人以上。
現ダーツィ大公は無能な人物ではないのだが、
自国の凋落に伴い、無気力になっているという。
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