「婚約するなんてズルいですわ。」
そこにはグルグルメガネをして前世とは違いイモっぽい印象を受ける絢香がそこにいた。ここはソーマ君の病室だ。今ここには私とソーマ君、そして絢香がここにいた。
「今世では絶対に央路を逃さないって決めたの。どれだけ嫌われても、ズルいって言われても央路を手に入れられるならなんだってやるわ。」
「その気持ちの一割でも前世で持ってたら、結婚していたのはシルヴィだっただろうにな。」
「うわぁん。それはいわないでソーマ君。」
シルヴィは私を見て泣いてたふりをしている。
「わたしがイチを託したのに何処かの馬の骨に取られやがって。そこに関しては許してないからな、シルヴィ。」
「わかっているわ。」
シルヴィはイチ関連で暴走列車のように話をまとめた後、ソーマ君も記憶を取り戻していたことに気が付き、急いで病室に駆けつけたのだ。ひとしきり顔を埋めて泣いた後、お見舞いに来た絢香と鉢合わせた流れだ。
「先にイチ君と婚約関係を結ぼうとしたのは私よ!邪魔しないでくれる!」
「最終的に書面を残したのは私よ!これが動かぬ証拠だわ♡」
そういうとシルヴィは厳重に保管された契約書を見せてきた。そこには「シルヴィと央路は婚約の関係となる」「将来の結婚を約束する」「お互いの合意がないとこの契約は破棄されない」と書かれていた。
つまりは・・・。
「私が婚約破棄に合意するわけがないから、将来は結婚することは確定しているのよ♡」
「字がまだうまく書けないような幼子にこんな重い契約を迫ったのかよ・・・。」
「あまりにも非常識ですわ。」
オレと絢香はあきれていた。
「それが30を過ぎた行き遅れの必死さというわけね。」
「前世の年齢は関係ないじゃない!」
「いやこれはさすがにドン引きだぞ・・・。」
「うわ~ん。ソーマ君まで!!!」
シルヴィの嘘泣きは前世の経験のおかげかかなり上手くなっている。しかしオレは当然として、絢香も10年以上顔を合わせている。そのくらいは見破れる。
「絢香はいつもみたいな凛とした雰囲気がなかったからパッと見ただけではわからなかったわ。」
「当然ですわ。まだ私は庶民ですもの。」
「そういやお前、最初はこっち側だったっけ。」
「お金持ちと庶民をあっちこっちでいうもんじゃありません。」
「変わったよな~絢香も。」
絢香は記憶が戻った日の翌日にはお見舞いに来てくれた。もじもじしながら一輪の花をもって病室に来てくれた絢香を見てイタズラをしたくなったオレは思わず「キミ・・・ダレ?」って言ってしまった。するととても絢香は涙目になって「気にしないでください。人違いでした・・・」と言いながら病室から出て行こうとしていた。
余りにもその顔がいじらしくて、笑いが込み上げてきたオレはそのまま爆笑をしてしまった。キョトンとした顔の絢香に「嘘だよ。ありがとな絢香。」というとそのまま泣きながらシルヴィと同じようにベットに突っ伏して泣いた。そのあと泣きながら怒られたのだが・・・。
「おまえも勇気さえあればイチと結婚できたかもしれなかったのになぁ~。」
「前世の事はもういいでしょ・・・。」
「見た目だけでいえば絢香がイチの理想だったのになぁ。」
「もう、仕方ないじゃない。私はほら、前世でイチ君の事イジメたわけだし。今更どの面下げて告白したらいいかわからなかったのよ・・・。」
「んで、今の純粋無垢なショタ央路はそのいじめを知らないから告白できたわけだ。」
「うぐっ、もう10年もたったのよ。時効よ時効。前世ではイチ君にかなり尽くしたんだから。」
「知ってるよ、俺は空から見てたし。」
俺は俺でイチのことが気になりすぎて、ずっと上から見ていたのだ。結局オレはイチと一生を添い遂げることが出来なかった。それなのにオレは未練がましく死んでからもイチを追い続けていた。オレの死を超えてよくわからん女と結婚したときは正直嫉妬しちまった。これがシルヴィや絢香、せめてあの女騎士かギャルなら許せた。しかしオレが何も知らない女とくっつくのだけは違った。正直、シルヴィと絢香に腹が立っていた。天国いた俺は転生することがよく感じられた。その時はとてもうれしかった。またあのバカ騒ぎが出来る。また親友に会える。またイチに会えるって。シルヴィが今世でも同じようにもじもじしている感じだったらどうしてくれようか、いっそのこと一生超えられない壁として再び君臨してやろうかとも考えた。
「壁どころかブレーキ役になるとわな・・・。」
そんなこんなであの頃のバカ騒ぎに懐かしさを覚えていた。シルヴィと絢香の喧嘩なんかノーブルの時じゃあ考えられねえが、それでもあの頃に戻ったみたいだった。
「それで、シルヴィアさん。つかぬ事をお聞きしたいのですけど。」
「何かしら。」
「私がもしイチ君を落としたらあなたはソルティレージュの権力を使って私を排除するのかしら?」
シルヴィは口をつぐんだ。
「今の私ではシルヴィアさんの力を使われたら何も抵抗できないわ。何も持たない少女ですもの。」
「でも言っておくけど、もし私を権力で排除しようとしたら私は全力であなたを呪うわ。転生がある世界ですもの。きっと全力を賭して呪えば人一人くらいなら殺せるはずよ。こんなのが脅しになるのかもわからないけど、私もなに振りかまっていられないの。納得のいかないことをされたら私は何が何でもあなたを絶望の淵に叩き込むわ。何をしてでもね。」
その顔には強い意志を感じた。シルヴィはとても恐ろしい顔をしている。目のハイライトがない・・・。
「その勝負受けて立つわ。そこだけはフェアに行くわ。」
いつの間にかこの二人で勝負が始まろうとしていた。
「なあ、忘れてねえか。私は前世でイチと本当の意味で付き合って、看取ってもらった唯一の女だぜ。死ぬときにお前らに譲ったかもしれねえが、生き返ったんなら話は別だ。絶対に、誰にも、譲らねえからな!!!。」
俺だって参加する。
オレだって死ぬほど愛しているんだからな!!!。