TSビッキーは少女達に愛される 作:勝機を零した、掴み取れん
「ただいま……っと」
二課でのトレーニングを終えた響は、自宅のアパートへと帰ってくる。
「……おかえり」
部屋に入ると、そこには一人の少女が立っていた。
「ただいま、クリスちゃん」
「……遅かったな、どこほっつき歩いてたんだよ?」
少女──雪音クリスは、不機嫌そうな口調で響に尋ねる。
「ごめん、ちょっと二課の方でトレーニングしてた」
「ふーん……」
クリスは響の言葉を聞くと、彼に近付いてくる。
「……先輩たちもいたんだな?」
「うん……そう、だけど……怒ってる?」
響はクリスの態度に戸惑いながらも答える。
「別に……あたしとは一緒にいない癖に、先輩達とは仲良くしてるんだなって!」
「うぐっ……」
(やっぱり……怒ってるよね?)
クリスの棘のある言い方に響は何も言い返せなかった。
「……まぁ、いいさ」
クリスはそう言うと、響に抱きつく。
「えっ!?」
その事に響は驚きの声を上げる。
「……なんだよ? あたしだって、お前とくっつきたいんだよ……悪いかよ?」
クリスは顔を赤くして言う。
「そ、そんなことないよ!」
響は慌てて否定した。
「……なら、良いだろ……?」
クリスは小さく呟くと、そのまま自身の豊満な胸を響の身体に押し付ける。
「ちょっ!? クリスちゃん!?」
響は顔を赤らめながら慌てる。
「……別に、これくらい良いだろ?」
クリスはそのまま、さらに身体を密着させてくる。
「ちょ……ちょっと! もう離れてよ!」
「嫌だ」
クリスは即答して更に強く抱き締めると、響の耳元で囁いた。
「お前が悪いんだぞ? あたしを放ったらかしにしたお前が……」
そしてそのまま、彼の耳を甘噛みする。
「ひゃあっ!?」
思わず声が出てしまう響。そんな反応を見て楽しんでいるかのように、クリスはそのまま行為を続ける。
「可愛い反応するじゃねぇか」
クリスは妖艶な笑みを浮かべながら、舌を出す。そしてそのまま響の耳を舐めた。
その感触はとてもくすぐったかったが、同時に心地良いとも思えた。
(うぅ……なんでこんな事に……!)
心の中でそう呟くも、身体は正直らしく素直に反応してしまう。
それを察してか、彼女は更に激しく責め立てるように耳を舐めてくる。
「んっ……ふぅ……」
吐息混じりの声と共に吐き出される唾液の音と息遣いに聴覚を支配され、頭がクラクラしてくる。
(ダメだ……こんなの耐えられない……!)
そう思った瞬間、彼女は響から離れる。
「……っ!?」
突然の事に驚く彼を見て、クリスはニヤリと笑った。そして再び耳元に口を近付けて囁く。
「まだ終わりじゃねぇぞ?」
それだけ言うと、今度は首筋に噛み付いた。
「痛ッ!? なんで噛むの!?」
「うるせぇ。黙ってろ」
クリスはそのまま、響の首筋に吸い付いた。
「ちょっと! クリスちゃん!!」
響は抵抗するが、クリスは構わず吸い続けた。
「……ぷはっ……」
そしてしばらくした後、クリスが口を離すと……そこには赤い痕が残っていた。
「これでよし……」
クリスは満足そうな表情を浮かべる。
「これであたしのモノって証がついたな」
彼女はそう言って微笑む。その笑みはとても妖艶だった。
「クリスちゃん……どうして……」
響は困惑している。それもそうだろう。いきなり首筋に噛みつかれ、痕まで付けられたのだから。
「どうしてって……こうすれば、常にあたしの事を意識させられるだろ?」
クリスはそう言うと、響の身体から離れた。
「……っと、そろそろ飯にしようぜ。あたしが作っておくから、お前は先に風呂に入ってろよ」
そしてクリスは何事もなかったかのようにリビングへと戻って行った。
「クリスちゃん……」
響は呆然と立ち尽くしていた。
────
「……はぁ」
一人、湯船に浸かる響は深いため息をついた。
(まさか……あんな事をしてくるなんて……)
先程の行為を思い出して、顔が熱くなるのを感じた。
(でも……クリスちゃんは嫉妬深いからなぁ……)
響はクリスの事を思い浮かべる。何故かはわからないが、彼女は独占欲が強い。
今までも何度か他の女性と話しているだけで機嫌が悪くなることがあった。
(出会った頃は……あんな感じじゃなかったんだけどなぁ……)
響がクリスと出会ったのは、二課に配属されてすぐの頃だった。
クリスは奏や翼のようにシンフォギア適合者の一人であり、本来ならずっと前から二課に配属されるはずの少女だった。
しかし、幼い頃に両親のNGO活動で訪れた南米の内戦に巻き込まれたせいで両親を失い、捕虜としての生活を強いられていた。
その後、彼女は救助されて二課に配属することになったのだが、それが響と同時期だったのである。
最初の頃は、まだ心を開いてくれず、冷たい態度を取られていたのだが、響と過ごすうちに段々と心を開き始めていったのだ。
それからは一緒に食事をしたり遊んだり……こうして同じ家で過ごす信頼関係にもなっていた。
だが、ある日を境に突然、彼女は響に対して独占欲を見せるようになったのだ。
(なんでだろう……)
考えても理由はわからなかった。ただ言えることは、彼女が自分に依存し始めているということである。
そして今日もまた、その兆候が出ていたことに響は気づいていた。
「でも……クリスちゃんを一人にするわけにはいかないよね……」
そう呟いた響は湯船から出て、身体を洗い始めた。
────
「上がったよ」
パジャマに着替えた響がリビングに戻ると、そこにはエプロン姿のクリスの姿がテーブルに料理を運んでいた。
「おう、ちょうどよかった。今できたところだから座ってろ」
クリスはそう言いながらテーブルの上にお皿を置く。
今日のメニューはハンバーグのようだ。美味しそうな匂いが食欲を刺激する。
「……いただきます」
響は手を合わせて言うと、箸でハンバーグを一口サイズに切り、口に運ぶ。
すると口の中に肉の旨味が広がり、とても美味しいと感じた。
「どうだ? 美味いか?」
そんな様子を見ていたクリスが聞いてきたので、響は大きく首を縦に振った。
「うん! すっごく美味しいよ!」
クリスは嬉しそうな表情を浮かべる。
「そっか、なら良かった……」
そして彼女もまた、料理を口に運ぶ。そんなやり取りを交わしながら、二人は食事を進めていった。
「ごちそうさまでした」
二人は手を合わせて言い合うと、食器を流し台に運んでいく。
「あっ、洗い物は俺がやっとくよ」
「いいのか?」
「うん! 作ってもらったんだからこれくらいはさせてほしいな」
「……そっか、ありがと」
クリスは響にお礼を言うと、着替えを持って浴室へと向かった。
────
それからしばらくした後、お風呂を済ませたクリスはパジャマに着替え、響と一緒にソファで寛いでいた。
「……そろそろ寝る?」
時刻は既に夜の二十二時を回っている。それに気づいた響はクリスの方を向いて言った。
「そうだな……。じゃあ、ベッドに行くか」
クリスは立ち上がると、響の手を引っ張って寝室へと向かう。
「……うん」
響は小さく返事をして、クリスの後に続いた。
「それじゃあ、電気消すぞ?」
「うん」
部屋の灯りが消えると、二人はベッドの中に入る。
二人が一緒の家に過ごすようになってからは、同じベッドで寝るのが当たり前になっていた。
「へへっ……やっぱり、お前のそばに居ると落ち着くな……」
響の身体に抱きついたクリスはそう呟く。
「クリスちゃん……」
そしてクリスは、響の手を恋人繋ぎのように握ってきた。
「……なぁ」
「どうしたの?」
「……お前は、あたしから離れたりしないよな?」
クリスは不安そうな声で聞いてくる。
「もちろん、離れたりなんてしないよ」
響は笑顔で答える。その言葉を聞き、クリスの表情は明るくなった。
「そっか……良かった」
彼女は安堵しきった様子で息をつく。
「約束……だぞ?」
「うん。約束……」
響がそう言ってクリスの頭を撫でると、彼女は安心した様子で眠りにつくのだった……。