ちょっとしたショートショート

1 / 1
カンナとカスミ

D.Uの中心からの外れ、俗に言う郊外の中層ビル群。都会ほど人がごった返しているわけでも、田舎ほど閑古鳥が随所で泣いている訳でもない。そんな場所で、突如轟音が響いた。

「ハーッハッハッハァ!偶には自治区の外で開発するのも悪くないではないか!」

それはキヴォトス屈指のテロリスト集団、温泉開発部によるものだった。普段は在籍校であり、火山地帯が故に大体どこでも掘れば湯が湧くゲヘナ自治区で活動しているがしかし、彼女らをそこに縛り付けるものはない。時折自地区の外で活動する事もある。そしてそういった時に彼女らを捕らえ、治世を安定させるために動くのはゲヘナの風紀委員ではなく――

「ヴァルキューレ公安局だ!お前たちをテロの現行犯で逮捕する!」

その地域の治安部隊だ。

 

「かのご高名な狂犬まで出ばって来るとはな。全く、我々をなんだと思っているのだろうか。」

「知らないけどこれすごく不味いんじゃない?」

副部長の言う通り彼女らはヴァルキューレの生徒たちに取り囲まれている。「突撃!」と言うカンナの号令と共に包囲部隊が開発部に襲いかかる。

「ただの警察部隊がなんだ!私たちは風紀委員会を何度も退け、ヒナ委員長からも逃げ切った事があるんだぞ!」

もちろん黙ってお縄に着いてやる温泉開発部ではない。彼女らにとって最早親友とも言える爆発物を用いて警察学校の生徒たちをなぎ倒し包囲に穴を開ける。

「地面を掘り、発破をかける。爆発物の利用はお手の物か」

チッと舌打ちをする。一網打尽に部員たちを捕らえることは不可能だと考えたカンナは部長のカスミ1人に狙いを定めることにした。部員たちは開いた穴から逃げていく、ヴァルキューレの公安局の練度と装備では到底抑えきれない。でもそれでもとカンナは中心へと向かう。大将首はそこにあるはずだ。

 

爆発により道路が大きく陥没したことによりできた大穴の前にその女は居た。ゆるゆるとした白衣をはためかせ、これ愉快とばかりに笑みを浮かべている。

「やぁやぁ、まだか公安局局長直々に私に会いに来てくれるとはねぇ」

「それだけお前も有名人ということだ。現行犯で意地でも逮捕する。」

「意地でも……ねぇ」

彼女はその言葉を聞き、趣味の悪い笑みを浮かべた。

「我々温泉開発部は行き場のない生徒達の受け皿としての面も持ち合わせているコミュニティでね、可哀想だと思わないかね?」

「生憎だからと言って逃がしてやるほど私は人が出来できてないんでね。狂犬の名は知っているだろう?」

ハンドガンを構えにじり寄る

「ああ、『知っていた』さ。だが、目の前にいるのが彼の狂犬だとは思えなくてなぁ」

ピクリ、とカンナの肩が揺れる

「人の話に耳を貸し、これ程までに対話ができるようではな。多くがお前を狂犬と呼ぶのはお前が見えていないに過ぎなかったのでは無いか?私には見えるぞ、お前のその首につけられた輪が。――正義の奴隷よ!忠犬よ!お陰様で私の家路は拓かれた!またいつの日にか会えれば会おうでは無いか!」

「なっ……」

その瞬間カンナの背後で大爆発が起きる。振り返れば多くの部員がおしよせてこているではないか。数には流石に多勢に無勢、そのままカスミは消えていった。

「チッ」

してやられた。ここまで分かりやすい時間稼ぎに引っかかったとは。

――しばらくすると生活安全課が住民からの話を聞きやってきた。

「カンナ局長!犯人は!?」

「逃した。それも私があいつの挑発に乗ったからだ。少しトサカにきている」

やってきたキリノにカンナは苛立ちを隠せずにそう答える。

「と、トサカですか?カンナ局長ってその……犬の耳ですよね……」

恐る恐るキリノがそう聞くと、カンナは思わずぽかんとして、少し微笑んだ後、銃床でキリノの頭をポコンと叩いた。

「全く……慣用表現ぐらい識っておけ」

そう言ってカンナは帰って行った。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。