ガンダムSEED~オリ主で主要キャラ全員生存ルート爆走記~ え? キラが女の子とか聞いて無いんですけど 作:とーふ@毎日なんか書いてる
(第三者視点)
セナが全世界へ戦いを仕掛けてから、いくつもの季節が過ぎていった。
しかし、あの事件以降オーブでも、プラントでも、月でも、セナの姿は目撃されていない。
その事で、一部の人間はあの戦いでセナが命を落としたのだと考え、また一部の者は戦いの傷を癒しているのだと考えていた。
そして、ある者達は、国連やコンパスがセナを利用する為に監禁しているのではないかと考えた。
そう。ダイダロス基地の司令官や、大西洋連邦の大統領選挙に出馬した男が所属している反乱軍が、まさにその『ある者達』であった。
彼らは、表舞台から姿を消したセナの痕跡を追い、その足取りが大西洋連邦で途切れた事を知った。
故に、大統領を目指したのだが、それも突如現れたセナの意思を継ぐと世界中に表明し続けて来た女性、フレイ・アルスターの登場によってその道を閉ざされ、また同志であったダイダロス基地の司令官も捕縛されたという事で、八方塞がりとなってしまったのである。
だが、運はまだ彼らの味方をしていた。
「何? ラクス・クラインが地球へ? それに、穀倉地帯で目撃情報だと?」
反乱軍の下に舞い降りたその情報に、彼らは穀倉地帯へと部隊を送り込むのだった。
セナを確保すれば、どの様な不利な状況からでも逆転できると、そう信じて……。
そんな危険な者達が迫っている事など知らず、大西洋連邦にある広大な穀倉地帯では、今日も平和に時が流れていた。
「んー! もうすっかり秋ねー」
「そうですね。風が気持ちいいです」
やや古びた小屋の中にある一室で、木製の窓を開きながらベッドに座る少女セナに笑いかけるのは、コンパスの総裁であるラクス・クラインとまるで双子の様によく似ている少女、ミーア・キャンベルだ。
「せっかくだし、今日は外を散歩しようか」
「でも、申し訳ないですよ」
「はい。禁止! 言ったでしょ。そういう遠慮は無しだって」
「……はい」
「よく出来ました。じゃ、準備してくるから待っててね」
「はい」
俯きながら、そう答えたセナの頭を軽く撫でて、ミーアは外行きの格好に着替え、セナの服も着替えさせる。
そして、ミーアでも十分に抱えられるセナをベッドから車椅子へと移動させると、そのまま家から出ていくのだった。
「秋って言っても、まだ暑いわね。はい帽子」
「ありがとうございます」
ミーアは自分とセナの頭に麦わら帽子を乗せると、そのままゆっくりと車椅子を押して、どこまでも広がっていく小麦畑の間を進んでゆくのだった。
一応舗装されている程度の道は、車椅子をガタガタと小さく揺らすが、セナが気にした様子はない。
むしろ、視界の先……どこまでも広がって行く黄金の世界に目を細め、喜んでいる様だった。
「凄いですね。ミーアさん」
「そうねぇ。プラントでも、こんな光景は見れないわ」
そのままミーアとセナは小麦畑の近くにあるやや小高い丘の上に行き、そこに生えた一本の木の下にレジャーシートを敷いて座る。
支えが無いと倒れてしまうセナはミーアに寄りかかりながら、風に吹かれて波打っている黄金色の海を見つめた。
「セナは……さ」
「はい」
「やっぱり、もう、治らないの? その足、とか」
「はい。無理だと思います。ユーレンパパもそう言っていましたし」
「っ! セナは、それで良いの!?」
「はい。これが世界を、多くの人を傷つけた罰でしょうから」
セナはもうすっかり力の入らなくなってしまった腕を何とか持ち上げて手を握った。
しかし、それも数秒しか持たず、すぐに膝の上に落ちてしまう。
「だから、本当はミーアさんや、ユーレンパパたちに迷惑をかけるのは、違うのかなって思ってるんです」
「セナ」
「……分かってますよ。ミーアさん。分かっています。こうして私が甘える事で、皆さんが嬉しいのなら、私はそう在りたいと願っています」
「……うん」
ミーアはセナの言葉に目を閉じて答えた。
自らの中に眠る、邪な願いを心に秘めながら。
そう。ミーアも、キラもラクスも、そしてカガリやアスラン。アズラエルやクルーゼなど。多くの人間が、おそらくこの状況を願っていた。
セナがもう一人で行動する事が出来ず、セナの願いを叶える可能性のあるホープセイバーは国連の地下に、そして∀ガンダムもまた元の場所へと帰った。
もはやセナに何もする事は出来ない。
だが、だがそれでも……。
ミーアたちは、これが本当に正解なのか分からずにいたのだった。
だからこそ、ミーアはセナが何を考えているのか、知りたいと願ってしまうのだ。
「むかし」
「ん?」
「昔、ある人から教わりました。戦いの続く世界では人は心を落ち着ける事が出来ない。だから、人が安心して眠る世界を作る為に戦うのだと」
「……」
「私は、彼の様になりたかったんです。コーディネーターも、ナチュラルも関係なく、人の命を大事にしない人と戦う。そう在るべきなのだと考えて……」
「……セナ」
「でも、私は間違っていたんですね」
セナが遠い世界を見ながら呟いた言葉にミーアは心を傾ける。
「あの時、世界の人たちの意思を感じました。声を聞きました。もう、世界は私の知っている世界では無いのだと、知りました。私が何もしなくても……人は、世界は変わってゆける。争いの無い世界へと」
「じゃあ、セナ……!」
「はい。そうですね。ミーアさんの言う通り、私はこのままここで過ごす方が良いのかもしれません。英雄とか、救世主ではなく、ただのセナとして」
朗らかな笑顔で、そう言ったセナにミーアは目尻に涙を浮かべながら、何度も頷いた。
しかし、そんな二人の世界を壊す様に大勢の人間が、武器を手に空から降りてくるのだった。
「ラクス・クライン! やはり貴様らがセナ様を隠していたか!」
「……貴方方は」
「我々は世界解放軍! セナ様の理想に従い、コーディネーターもナチュラルも関係なく、傲慢なる者達から世界を解放する為に結成された戦士団だ!」
ミーアの問いに応え、男たちは銃を向けたまま周囲を囲んでゆく。
だが、セナが居る以上、ミーアは動く事が出来ず、見つめるばかりであった。
そして、解放軍もまた、セナのすぐ近くにミーアが居る以上、手出しが出来ず硬直状態が続いてしまう。
そんな止まった世界で唯一自由に動く権利を持っているセナは、ミーアにお願いし、体を支えて貰いながら解放軍と話をするのだった。
「セナ様! その様な者に頼らずとも」
「いえ。ミーアさんは私が今最も信頼している方ですから。これ以上はありません。それは不服ですか?」
「その様な事はございません!」
「では、このままお話させていただきますね」
セナはニッコリと笑って、その小さな口を開いた。
「初めまして。でしょうか。解放軍の皆さん。私はセナ。セナ・ヤマトと申します。まず最初に。私はもう、この世界に対して大きな干渉を行うつもりはありません」
「……そんな!」
「無論、私がお話する事で喜ぶ方が居るのなら、出向く事もあるかもしれません。ですが、カガリお姉ちゃんの邪魔をしたり、キラお姉ちゃんの迷惑になる様な事は、もうしたくないんです」
「……」
「どうか、分かっていただけませんか?」
セナの問いかけに、一番前に立っていた男は地面に膝をつき、銃を落としながら涙を流す。
「自分は!! 自分は、エイプリルフールクライシスで、セナ様に心を救われました。弟は心臓の病気で! 医療機器を止めれば、すぐにでも死ぬ。そういう状態でした。ですが! セナ様のご厚意で、命を繋ぎました。もう弟はこの世を去りましたが、弟は最期まで、最期の瞬間まで、笑って終わる事が出来ました。だから、だからこそ……自分は! セナ様の手を振り払ってしまった事が許せないのです!! その事で、セナ様を追い詰めてしまった事が! だからこそ、今度こそは! この命を使いたいと」
「……手に触れてもよいですか?」
「は、はい……!」
セナは力の入らない手で男の手を握ると、その温かさを感じながら微笑む。
「お名前を聞かせていただいても……?」
「はい。自分はオーラス・フォルジュといいます。弟はレオンス・フォルジュ」
「オーラスさん、にレオンスさんですか。良いお名前ですね」
「ありがとう、ございます」
「オーラスさん。私に、オーラスさんの願いを歪める事は出来ません。ですが、弟さんの平穏を願い、今もこうして私を気遣って下さる貴方の手が、血で濡れて欲しくないと願ってしまいます」
「……っ! セナ様」
「私の願った世界は、今ここにある様な、命が溢れる世界と、こうして、皆さんと語らい、苦しみを分かち合い、喜びを分け合って、安らかに眠る事の出来る世界なのですから」
セナはオーラスから周囲に居る者達へと視線を順に向ける。
「ですから、話をしましょう。幸い私にはまだ多くの時間が残されていますから」
そうセナは、穏やかに微笑みながら告げるのだった。
はい。
という訳で、ようやっとセナの話ですね。
穏やかで平和な世界をイメージして書きました。
200話近く戦乱の中に居たセナもこれでようやく休めるという訳です。
では、後1話お付き合い頂けますと幸いです。
ではまた明日ー