妖怪ウォッチ シャドウファンタジー   作:U.ティーズ

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あの日、俺はキミョウな物に出会った。


♯1 最高で一生のともだちに出会った日

あれば小学5年生の夏。俺は家の裏の山で1人で遊んでいた時、何か大きな音がして興味本位で音のした方に行くと、そこには自分の背丈と同じ位の大きな岩があった。その下には蛇が挟まっていて身動きが取れなくなっていた。

その蛇はまるで影の様に真っ黒で普通の蛇には見えなかった。俺は近くのラグビーボール位の石と少し太めの木の枝を持ってきててこの原理で岩を少し持ち上げた。すると、その少しの隙間から蛇はスルスルっと出てきた。影の様なその蛇は頭を上げると此方をじっと見つめてきた。「次は気をつけなよ!」と言うと、茂みの中に入っていった。

この日から俺はこの影の様な蛇を週1で見かける事になる。目を見ると何故か蛇の言いたい事が何となく分かり、水をあげたりオヤツの茹で卵をあげたりしていた。

そんな日を続けていると不思議な事が起こり始めるようになった。

例えば、学校にほぼ遅刻しかけた時何故か教室のドアを開けても誰1人反応していなかったにも関わらず出席をとる時には認識されていたり、怪我をした時異常なまでに治りが早かったり、通学から帰宅まで何かに守られている様な安心感があったり。

そんな毎日を過ごしながら成長していき4月、高校1年生となった。

 

俺は堅石 影刃(たていし えいは)。いわくりという所にある堅石(たていし)神社の神主、堅石 実刃(たていし じつば)の息子で双子の弟が居る。名前は光刃(こうは)。根暗な俺と違い、スクールカーストトップの陽キャだ。今日俺達は神主である父親から話があると言われ2人して正座して話を聞いていた。

実刃「今から2人に話すのはこの神社の在り方についてだ。」

光刃「在り方?」

実刃「この神社はな、怪事件や妖怪達の相談所になっているんだ。」

影刃「相談所…もしかして、父さんが時々お客さんと話があるから入るなよ、って話聞いてるアレ?」

実刃「正にそれだ。あれは妖怪が関わって居そうな事件を持ってきた人間の相談者や助けを求めてやってきた妖怪達だ。」

光刃「そうだったんだ。それで、僕や兄さんに話したって事は、僕らにその相談所をやって欲しいって事?」

実刃「賢い息子たちで助かるよ。最近40代の体では辛い事が増えてきてな…お前達にはこの仕事を継いでもらいたいと思っているし年齢にも丁度いいと思ってな。」

光刃「母さんはこの事知ってるの?」

実刃「勿論だ。みこは視える人でな、中学の時にここに相談に来たんだ。私が今のお前達と同い年の頃だったな。」

影刃「成程。でその母さんは?もう6時半だよ。」

実刃「もう直ぐ帰って「ただいまー!」ほら。おかえり。」

光刃「おかえり母さん。」

影刃「おかえりなさい。夕飯何?」

みこ「フッフッフ、楽しみに待ってなさい!実刃さん、2人にはもう渡したの?」

実刃「今からだ。さて、今日まで妖術や我流の剣術を教えてきたがそれは今から渡す物に関係がある。光刃、少し前に出なさい。」

光刃「はい。」

実刃「お前にこれを授ける。」

そう言って父は後ろに置いてあった1m位の直方体の木箱を光刃の前に置いた。紐を解き蓋を取ると中には一振の刀が入っていた。

実刃「妖刀ヤマタノオロチだ。」

光刃「ヤマタノオロチ?」

実刃「この刀は妖力が込められている。1太刀振るえば切り傷は8つ。そこからこの名がついた。本来なら影刃が継ぐはずなんだが…」

影刃「妖力少ないからね、俺。光刃が持つべきだ。」

そう、兄弟逆だろと言わんばかりに我が弟は超ハイスペックだ。簡単な妖術なら火、水、土、風、氷、雷と6つの妖術が使える。回復と吸収しか使えない俺とは違うのだ。それどころか顔が、運動神経が、頭が、とても良い。オマケに性格も。ラノベか漫画の主人公だ。しかも何をしなくても妖怪が視える。この神社を継ぐために産まれてきた様なものだ。それに比べ俺は妖怪も視えなければ顔も運動神経も頭も普通だ。性格も悪くは無いといった所だろう。オタクな俺とは正反対で、光刃に近い事は出来ても絶対に越えることはない。文字通り俺は影なのだ。

光刃「…分かった。俺が継ぐよ。」

そう言って刀に触った瞬間だった。刀が眩い光を放ったかと思うと刀の上に『何か』が居た。俺でも分かる程の強い妖気。

光刃「君、は…」

実刃「久しぶりだな。」

みこ「何時ぶりかしら?」

光刃や両親には見えている様だ。居た堪れなくなった俺は部屋を出た。例によって俺が部屋を出た事は気づかれなかった。

悔しかった。どうして俺は…と思ったが、何回も考えてきた無駄な思考。直ぐに辞め別の事を考える。どうして父は俺にも相談所の事を話したのか。人間相手ならまだしも妖怪から相談を受けるのに見えない俺が話を聞こうにも声すら聴こえない俺が出てもしょうがない筈。多分神主の方を俺に継がせる為に光刃のしなければならない事をちゃんと見てもらおうと思った、こんな所だろう。これなら辻褄が合う。

いや、そうなると念刃(ねんば)おじさんはどうなる?父さんの弟の念刃おじさんは俺と同じく視えない人で結婚して県外に引っ越している。多分俺はこの家を出て行くことになるんだろう。その方が自然だ。

そうなると俺はどうするべきか…金だな。何時出ていけと言われてもいい様に金を貯めなければ。

夕飯はとても豪勢だった。夕食の後、光刃が自室に戻ってから父さんに社会経験をしたいという理由でアルバイトをさせて欲しいと頼んだ。2人とも渋い顔をしたが了承してくれた。

次の日、学校からの帰り道に、昔からよく行っていた駄菓子屋にアルバイトで雇って貰えないか聞くと人手が足りないらしく二つ返事でOKされた。

働いてみて分かったがとても忙しい。自分が通う高校は大学付属で小中高と全て合体しており1学年4クラス、それはもう凄い人数が毎日来る。最低2クラス分は来る。そんな人数入ってしまうこの駄菓子屋も変なのだが。

 

バイトを始め1ヶ月。ある程度のルーティンが出来上がった頃、家の蔵の掃除をする事になった。半年に1回はしているのだが訳分からないものが沢山あり全然片付かない。そして俺はこの日、自分の人生を大きく変える奇妙なモノを手にする事になる。

それははたきで埃を払っていた時、何故かとてつもなく興味をそそられる10cm四方の木箱を見つけた。

影刃「妖、怪…読めない…」

蓋に貼られた紙の文字はかすれて読めず何なのか分からない。父に聞いても分からないらしく、貰っていいか聞くと良いと言うので掃除を終え自室に帰ってから箱を開けることにした。

中にはほぼ黒1色で、S字の様に曲がった金色の線で4つに区切られた文字盤、針、ベゼルが金色のどこか高級感のある腕時計が入っていた。左手首に巻いてみると何故かしっくりくる。ただ不思議なのは、蔵にあったにもかかわらず埃1つなく、時間も合っている。何故か取手のついたベゼルが下半分180°しか動かない。右側面についた小さなレバーを上げるとライトが着くようになっている。夜に便利かも。

次の日から俺はその時計をつけて過ごしていた。

 

ある日、金曜日だった事もあり、友人たちと 遅くまで過ごしていた。親には遅くなる事は連絡してあり、まぁちょっとお小言があるぐらいだろうと思っていた。

―――体が動かなくなった。

時計は22時を指している、と確認した瞬間文字盤がゆっくり開き赤い字で鬼と書かれている文字盤が出てきた。正面から凄い勢いで灰色の煙が襲ってきた。両腕で顔を覆い隠すこと数秒。目を開けると世界が一変していた。家、塀、街路樹、全てがくすんだ色へ変化し、さっきまで聞こえていた車の音も聞こえない。

その時、幼い頃に父から教わったとある話を思い出した。それは子供たちの見る悪夢で、その悪夢に登場する鬼は、子供たちの心配事や恐怖心を具現化した幻。鬼に捕まらずに脱出したものは、心が強くなりながら目覚め、捕まったら成長せずに目覚める。その名も…

影刃「鬼時間…」

参ったな…鬼時間がどういう物かは思い出せても対処法が分からないんじゃどうしようも無い。脱出したものはって事は何処かに出口があるんだろう。取り敢えず近くの家の塀の中へ入る。塀から目だけ覗かせて辺りを伺う。紫色の巨大な目玉に角が付いたヤツがちらほら居る。アレに見つかったらダメなんだろう。

にしても出口って何処だ?行く宛ても無いのに動き回るのは危険と判断し、そのまま隠れることにする。大体3分ぐらいたった頃、近くにドシーン!と何かが落ちる音がした。

大体100m無い位の所、道路を挟んで家2件向こう位か。もう一度目だけ出して周りを見る。すると、それこそ道路を挟んで家2件先、家と家の間から赤く巨大な何かが通っていくのが見えた。もしかして近くにワープしてきた!?要するに同じ場所に留まる事は不可能という事だ。ここが見つかるのも時間の問題。

もう一度辺りを見回し、何もいない事を確認して家の敷地から出て、赤いのが通って行った反対方向へ逃げる。約2分位逃げた頃、時計から音がした。時計を見ると赤い矢印が出ている。もしかしたらこの先に出口があるかもしれない。直感的にそう思った俺は矢印の方へ向かって歩き始めた。方角的には家の方向だ。何となく安心感を覚え、たのが悪かった。

影刃「痛っ!ってヤバ!」

ふと気を抜いてしまい、十字路の出会い頭であの紫の巨大な目玉にぶつかってしまった。ピピーッ!っと笛のような音をさせたかと思うと執拗に着いてくる。走って逃げていると遠くからドスドスドスと大きな足音が着いてくる。大通りに出ると足音の正体が分かった。

影刃「真正面に出てくるのはズルいって!」

巨大な赤鬼だった。一目見て分かった。捕まったらヤバい。兎に角矢印の方へ無我夢中で走った。だが赤鬼の方が足が速く、追いつかれそうだった。もう駄目だ。そう思った時、頭の中に声が響いた。

?『こっちだ!左に曲がれ!』

何も考えず交差点を声のした方へ曲がる。

影刃「うわっ!」

曲がると何者かに体を捕まれ人の家の塀の中へ引っ張られ、口を押さえられる。

影刃「ん〜〜!」

?『静かにしろ!見つかるぞ!』

そう言われ取り敢えず黙った。数秒後あれだけ追い回してきた鬼達は何事も無かったかのように散り散りに去っていった。

?『はぁ、急に口を押さえてすまない。大丈夫か?』

影刃「あ、うん。大丈夫…って、あれ?」

辺りを見回しても誰も居ない。

?『見えていないのか?えっと確かこういう時は…照〜らせ照らせ〜♪』

影刃「て、照らせ?なにを?なにで!?」

照らす、ということは光?そういえばこの時計ライトが着いていた。右側面部のレバーを上げると『ぽわぉわぉぃ〜ん』といった感じの音と共にライトが光る。声がする方へ向ける。

影刃「君、は…」

そこには白髪に赤い瞳、黒人のそれではない灰色に近い黒い肌。それでいて忍者の様な和風な服。そして目を引く動く黒いマフラーの様なもの。彼を形成する全てが異質に見えた。まるで人では無い様な…

?「察しの通り私は人では無い。妖怪だ。」

影刃「妖怪?なんで妖怪が俺を…」

?「助ける様な事をするのか、と聞きたいのだろう?」

影刃「アッハイ。」

?「実は我々はもう既に出会っている。」

影刃「出会ってる?俺妖怪の知り合い居ないんだけど…」

?「勿論この姿で出会っ訳では無い。思い出して欲しい、私の容姿に似た別の生き物に山で出会っている筈だ。昨日もあっているぞ。君の家の近くだったな。」

そこまで言われて思い出せない俺では無い。

影刃「あの黒い蛇?」

?「ご名答。私は影オロチ。オロチの影として暗殺を生業としている。」

影刃「影オロチ…あっ!俺は堅石 影刃。宜しく。それで、出会ったことがあるのは分かったけど、どうして助けてくれたの?俺水あげたりゆで卵あげたりしたぐらいだよ?」

影オロチ「十分だ。そもそも初めて出会った時は岩に挟まれた私を助けてくれた時だろう?あの時使えるべき主を見つけたと思った。暗殺業をしている故姿を見た者は消してきたが君は別だ。勝手で悪いが常日頃から君を守らせて貰っていた。」

常日頃から?って事は

影刃「誰かに見られている様な気がしてたのは影オロチが守ってくれてたって事か。」

影オロチ「その通りだ。他にも怪我は私の妖術で治したり、学校に遅れそうな時は取り憑いてバレないようにしたりな。」

影刃「常日頃からありがとうございます!」

影オロチ「気にしないでくれ。先ずは鬼時間から脱出しよう。私が取り憑くから周りは気にせず襖まで向かうんだ。」

影刃「分かった。うん?襖?」

影オロチ「行けば分かる。」

影オロチによると紫色の巨大な目玉は見回り鬼と言うらしい。取り憑いて貰っているので目の前を通り過ぎても何の問題も無く安全に襖まで辿り着いた。

影刃「マジで襖じゃん。」

襖をくぐり鬼時間から脱出した。

影刃「一時はどうなるかと思ったけど影オロチのおかげで助かったよ。ありがとう!」

そう言うと影オロチは立て膝をつき顔をこちらに向けて話した。

影オロチ「堅石 影刃様、これからも末永くお仕え致します。雑用から暗殺まで何なりと申し付けください。」

影刃「暗殺って。殺して欲しい相手なんか居ないしなぁ。」

影オロチ「必要な時に命じて頂ければ。先ずは此方を。御手を拝借。」

そう言うと影オロチは1枚のメダルを手渡してきた。

影刃「これは?」

影オロチ「妖怪メダルです。ともだち契約を結んだ人へ妖怪から渡すメダルです。左手首につけている妖怪ウォッチを使えば何時でも呼び出す事が可能です。」

影刃「ともだちと結ぶ契約にしてはこっちが有利過ぎない?ってかともだち?」

影オロチ「はい。」

影刃「なら主従みたいな関係はやめよう。ともだち、でしょ?」

影オロチ「! 承知。敬語でなくても良いのだな?」

影刃「勿論!改めてこれから宜しく!」

影オロチ「こちらこそ。」

握手を交わした。

影刃「ん?」

影オロチ「どうした?」

影刃「…なんで俺妖怪が見えてるの!?ってか妖怪ウォッチって何!?」

影オロチ「…そこからか。」

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