俺だけレベルアップのアカデミア 作:みかん
第1話
人間は誰しも平等な生き物だと思っていた。
だがそれは、少年が僅か五歳の時に間違いだったと思い知らされる。
そしてそれは、少年にとって最初で最後の挫折でもあった。
ことの始まりは中国軽慶で報じられた「発光する赤子が産まれ」というニュースだった。
そのニュース以降、世界各地で「超常」は発見され「超常」の原因も判然としないまま時は流れて行き、いつしか「超常」は「日常」に「架空」は「現実」に変わって行く。
更に時は流れて世界総人口の約八割が何らかの「特異体質」となった現在未だ混乱渦巻くこの世の中で、誰しも一度は憧れた職業が脚光を浴びていた。
その職業の名前は「超常」を犯罪に使用する者達を取り締まり、市民を守る「ヒーロー」だ。
そんなヒーロー達はたちまち市民権を得ると公的職務に定められ、国からを収入を市民からは名声を与えられるようになった。
「えー、君達も三年生ということで本格的に将来を考えて行く時期になったと言うことで、今から進路希望のプリントを配るわけなんだが大体みんなヒーロー科志望だよね」
『はーい』
「うんうん、みんな良い個性だけど校内では個性発動は原則禁止になっているから気を付けるんだぞ」
折寺中学のとある教室では帰りのHRが行われていた。
HRが始まると担任教師は進路希望のプリントを用意しながらも、生徒達を煽り持っているプリントを教室中にばら撒く。
生徒達は担任教師の煽りに答えるようにそれぞれの個性を発動させながら自分達がヒーロー科志望だということをアピールする。
「せんせー、俺をこいつらと一緒くたにするのはやめてくれ。俺はこんな没個性の奴らと仲良く底辺高校なんざに行かねぇよ」
「確か、爆豪は雄英高校ヒーロー科志望だったな」
教室中が祭りのような盛り上がりを見せている中、爆発頭が特徴的な少年が机に足を上げながら同級生達を挑発するような声を上げた。
祭りのような盛り上がりを見せていた教室はたちまち爆豪に対するブーイングに染まり掛けたが、担任教師の「雄英高校」という学校名だけで瞬く間にブーイングは消え去った。
「雄英高校ヒーロー科」はNo.1ヒーロー オールマイトやNo.2ヒーロー エンデヴァーなどをはじめとした名だたるヒーロー達を輩出し、偉大なるヒーローになるのには雄英高校卒業が絶対条件と言われるほど、ヒーローになるための登竜門と認知されている高校だ。
爆豪がそんな雄英高校ヒーロー科を受験することを知った生徒達がざわつき始めると爆豪は椅子から勢いよく机の上に飛び乗り、No.1ヒーロー
オールマイトを超えると宣言した。
この爆豪によるオールマイト越えの宣言により、再び教室中は祭りのような盛り上がりを見せたのだった。
「そう言えば、緑谷も確か雄英高校のヒーロー科志望だったな」
「いやいや、緑谷は無理でしょ!?」
「確かに緑谷は勉強はできる方だけど、ヒーロー科は勉学だけじゃ入れないぞ」
担任教師は思い出したようにそんなことを口にした。
他の生徒達は「緑谷」と呼ばれた男子生徒の方を振り返ると一斉に吹き出し、教室中はまたたく間に爆笑の渦に包まれたのだった。
「そ…………そんな規定はもうないよ!!」
「こらデク!!!」
「うわぁ!?」
「おい、没個性どころか無個性のてめぇが何で俺と同じ土俵に立とうとしてるんだ?」
「待ってよかっちゃん。別に僕は君と張り合おうとしたわけじゃないよ、ただヒーローは小さい頃の夢だし。それにやってみないと分かんないし…………」
「何が"やってみないと分かんない"だ!! 無個性のてめぇに何が出来るんだよ!!」
「…………おい、黙れよお前ら」
教室中が爆笑の渦に包まれているなか、緑谷出久は立ち上がり弱々しくも反論しようとしたが、爆豪の爆破という個性により教室の隅に吹き飛ばされてしまった。
個性を躊躇無く緑谷に発動させた爆豪は更に「無個性」と蔑みながら他の生徒達とともに緑谷の全てを否定する。
自身の夢を一瞬にして否定されクラス中の笑いものにされた緑谷が俯き反論することを諦めていると、今まで机に伏せていた青髪の少年が起き上がり爆豪と他の生徒達に向かってそう言った。
「あん? おい、お前今なんって言った?」
「だから、黙れって言ったんだよ」
「誰が誰に向かって言ってんだよ!?」
「誰にって…………。俺とお前、そして緑谷も同じ人間だろ」
「同じ人間じゃねぇよ!! デクもお前も無個性だろうが!!」
追撃するかのように緑谷に詰め寄っていた爆豪は足を止めて後ろを振り返り、青神拓哉を睨み付けた。
だが拓哉は爆豪に臆することなく同じ言葉を繰り返した。
激昂して我を忘れている爆豪に対して「自分達は同じ人間」だと反論したが、爆豪は個性を発動させながらそれを否定した。
「あぁ、確かに俺は無個性で武力じゃお前には適わないが、人脈では俺に分があると思うぞ」
「あん? 何いってんだ?」
「忘れたのか俺の父親の職業を?」
「つっ…………!!」
「思い出したみたいだな。俺の父親はヒーロー関連を扱っているジャーナリストだ、今お前達が緑谷に対して行っていた行為は全てこのスマホに録画している。もし、これ以上緑谷を蔑み否定するつもりならこの動画を父親に渡して世間に公表してもらう、もしそうなければこの中で一番の打撃を受けることになるのはお前だよな爆豪?」
「チッ…………」
拓哉が父親のことを話題に出した瞬間、今まで個性を発動させ威圧を続けていた爆豪は個性を解除した。
爆豪が個性を解除したのを確認した拓哉は更に畳み掛けるようにスマホを取り出して今までの一連の出来事は録画していると話し、これ以上緑谷を蔑む行為を続けるのなら動画を父親に渡して世間に公表してもらうという脅しをかけたのだった。
爆豪は流石に率先して虐めを行っている動画が世間に公表されるのは不味いと思ったのか舌打ちをして席に戻って行った。
帰りのHRが終わり生徒達は鞄を背負いながら遊びの話で盛り上がっているなか、緑谷だけはクラスメイト達と会話を交わすことなく無言でヤフートップニュースを見ながら、今日起きたヒーロー関連のニュースを確認していた。
「緑谷、帰ろうぜ」
「あっ青神くん、うん帰ろう」
「勝己、俺らも帰ろうぜ」
「あぁ…………」
拓哉に声を掛けられた緑谷は記事に夢中になっていたため、直ぐに気が付くことが出来なかったが、慌てて顔を上げて鞄を背負い拓哉とともに教室から出て行った。
一連の光景を無言で見ていた爆豪は友人である少年に声をかけられると、二人の後を追うように教室から出て行く。
「なぁ、知ってるか緑谷」
「えっ、なに青神くん?」
「このトンネルに幽霊が住み着いているって噂」
「ゆ…………幽霊!?」
「あぁ、実際に隣のクラスの奴がこのトンネルを通った時に襲われたらしい」
「ヒ…………ヒィィィ!!!」
トンネルの中を歩いている拓哉は隣に居る緑谷に対して「幽助が出る」という話をすると、それを聞いた緑谷はトンネル中に響き渡るような悲鳴を上げて、産まれたての小鹿のように震えていた。
「悪いただの冗談だ」
「その冗談は本当にタチが悪いよ青神くん…………」
『Mサイズ…………隠れミノ…………』
「わっ…………!?」
「緑谷!!」
拓哉が幽助が出るという話しは冗談だと話すと、緑谷は胸を撫で下ろしながら息を着いた。
すると後方のマンホールからそんな声が聞こえ二人が振り返った瞬間、マンホールからヘドロ型の敵が現れ緑谷に襲い掛かった。
襲われた緑谷は抵抗虚しくヘドロ型の敵に飲み込まれてしまった。
「んー!!」
『そんなに抵抗しなくってもただ君の身体を乗っ取るだけだから落ち着いていれば大丈夫だよ。苦しいのはたった数十秒だから直ぐに楽になるよ。それにしても、本当に助かったよ君はまさに俺のヒーローだ』
「おい、いい加減に緑谷を離せ!!」
『流動的なんだから殴れるわけないだろ、君はただ大人しく友達が俺に乗っ取られるのを見てればいいんだよ』
「友達が目の前で苦しんでるのに大人しく見てられるかよ!!」
拓哉は直ぐに友人である緑谷を助けるために殴り掛かるがヘドロ敵の身体は流動的になっていたため効果はなかった。
しかし諦めることなく、緑谷を助けるためにしつこくヘドロ敵に殴り掛かっていると、マンホールの中から一人の大柄の男が現れて放ったパンチの風圧でヘドロ敵を吹っ飛ばして緑谷を救出した。
そしてその大柄の男に二人は見覚えがあった。その男の正体はヒーローを志望する者ならば誰しもが憧れる存在No.1ヒーロー オールマイトであった。
「いやぁ、私の敵退治に巻き込んでしまってすまなかった少年達。いつもはこんなミスをしないのだが…………しかし、君達のお陰でこうして敵を確保することが出来た本当にありがとう!!」
「お…………お……オールマイト!? あっ、そうだサ…………サインをこのノートに!!」
「まじで、本物のオールマイトかよ…………」
「って既にサインしてある!! あ……ありがとうございます、このサインは家宝に家の宝にします!!」
「嬉しいのは分かるが、取り敢えず落ち着け緑谷」
「そこまでお礼を言われるほどではないさ。それでは、私はこいつを警察に届けるので、次はまた何処かで会おう!!」
「えっ、もう行っちゃうんですか?」
「あぁ、プロは常に敵か時間との戦いだからね。それでは今後とも、応援よろしく!!」
一瞬してヘドロ敵を吹っ飛ばして緑谷を救出したオールマイトは気絶したヘドロ敵をペットボトルに詰め込んだ後、自身の不注意で敵退治に巻き込んでしまったことを謝罪した。
だがそんなオールマイトの謝罪は二人の耳には聞こえていなかった、何故ならそれを凌駕する程の出来事が目の前で起こっているからだ。
緑谷は慌てて地面に散乱しているノートを一つを拾い上げてオールマイトにサインをお願いするが、それを予知していたのか既にノートにはサインが書かれていた。
憧れのオールマイトからサインを貰い興奮状態の緑谷とそんな緑谷を落ち着かせようとしている拓哉にそう声を掛けたあと、オールマイトはペットボトルに詰め込んだヘドロ敵を警察に届けるために勢い良く飛び立って行った。
「やっぱり、生のオールマイトは凄かったな緑谷…………って居ないし!? まさか、興奮のあまり飛び立ったオールマイトにしがみついたのか!!」
オールマイトを見送った拓哉は隣に居る緑谷にそう声を掛けるも返答がなく、おかしいと思いながら隣を見るとそこに緑谷の姿は無かった。
拓哉は緑谷が興奮のあまり飛び立ったオールマイトにしがみついて行ったと考えて、慌ててオールマイトが飛び立って行った方向に向かって走り出して行った。
B組女子 誰が好き? (ヒロインには関係なし)
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