【無慈悲な】侵攻蟲苗床化計画【異世界攻略】   作:オルフェイス

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ボルト魔聖国編 2

 

 

【四十八日目】

 

 

 

 グレネードランチャーのように飛ばせる虫を用意してみた。

 

 とはいえ直接的な殺傷力はない。どちらかといえば爆風と酸性弾がメインだ。

 

 濃度の高い酸性の猛毒を、グレネードのようにして放つ。それによって特効を剥がしつつ酸で武装を溶かす。直接当てる必要はなく、着弾した時点で爆風と酸性の霧が散布される。

 

 とはいえこれは試作。実際に効果的となるかは不明で、今後次第だろうな。

 

 というわけで試してみた結果は成功。特効は剥がせたし酸も有効だった。あとは数を増やしていこう。酸も虫には通用しないように調整が必要だな。

 

 次だ。

 

 

 

【四十九日目】

 

 

 

 冒険者もそうだが、近頃は騎士も調査に加わっているようだ。

 

 虫もそうだが、何より苗床のいる巣をいくつか潰されたのは痛いな。小分けにしておいたから全滅は免れたと見るべきか、それとも集中していなかったから潰されたと見るべきか……

 

 今は多くの虫が必要だから、こういう小さな被害でも痛いものだ。

 

 特効対策には酸、爆風。そして虫の死骸は攻撃の範囲外であったことから死骸を利用した虫の武具を作ればいいという考えに至った。

 

 虫の硬い部分を利用し、鎧とする。虫の鋭い部分を使い武器とする。

 

 人型の虫である傲慢や人に擬態する嫉妬であれば有用に扱えるだろう。問題なのはそれに比例するだけの数なのだが……そこは思いついた日からとにかく量産しているが、足りるかどうかは不明だ。

 

 他に敢えて問題点を挙げるとすれば、虫たちには戦闘技術がないことか。あくまで能力による押しつぶしと蹂躙がメインだったからな。

 

 しかし、そこはボルトに潜入させている嫉妬の虫が人として活動しているため、それに伴って戦闘技術を身に着けている。

 俺を介して共有すれば、技術はそっくりそのまま取得できる。その段階になればボルトでの潜入も必要ではなくなるだろうし、最悪嫉妬の虫がバレても問題ない。

 

 念の為、最初は酸と爆風と虫の数で押して、それでも駄目そうなら人型をメインとした虫たちにやらせるつもりだ。

 

 あと数日ほどでボルトに攻め入る。肝心な情報は手に入らなかったが、そこは仕方なかったと諦めよう。

 

 

 

【五十日目】

 

 

 

 ボルトに攻め入るに当たって、工作をしようとしたことはある。

 

 地下を掘るとか、水源に毒を入れるとか、いつもの常套手段だ。俺も最初はやろうとした。だが失敗した。そもそも出来なかったのだ。

 

 地下にはどうやったのか特効の力が行き渡っている。水源もまた然り。行こうとしたなら肉体は衰弱、そして死に至る。

 何らかの方法で特効の力を地下と水源に宿らせるなりしたのだろう。

 

 もしかしたら何らかの機具が埋め込まれているのかもしれないが、遠目から見ただけでは何もわからない。地下はそもそも掘り進められず、水源は虫の目でも見通せない。

 

 そんなわけで、地下と水源を攻められないのはそういう理由からだった。

 

 だが、そのせいで考えたくない可能性を思いついてしまった。特効の力が空間に作用し、結界のように覆われる可能性だ。

 正直、そんなことされたら打つ手がなくなる。時間を待つしかない。

 

 以前考えていた結界云々を実現されるとか最悪だ。本当に。

 

 ……いや。

 

 生死に拘らなければ……カルヴァリと同じようにやれば、行ける、か?

 

 しかし、するにしても環境がな。

 

 山もないし意図的に災害を起こせるような場所がない。

 

 やはり正面から攻めるしかないか……

 

 

 

【五十一日目】

 

 

 

 騎士が……ボルトと言う国の中で分散していた者たちが一斉に集結している。

 

 騎士も村人も関係なく。戦うためではなく、守るために。

 

 王のいるその場所に集まっている。

 

 なるほど、わかりやすくて助かるな。下手に逃げられるよりやりやすい。

 

 とはいえ騎士が集まるということは戦力が増加したということ。さらに言えば、戦力は何も騎士だけではない。兵士も騎士ほどではないがレベルが高い。クロノス、カルヴァリと同等と思ったほうがいい。

 

 兵士は力押しでなんとか出来るとして……騎士だな、問題は。

 

 嫉妬の虫が活動してきたおかげで正確な数も把握できた。千は超えても二千に至るほどではないらしい。

 

 あとは……王と魔聖騎士か。

 

 最低戦闘力がクロノスで俺を襲った三人組と同じとして……最大はどのくらいだ? カルヴァリの皇帝と同じくらいと思っていいのか?

 

 わからない。だが、それすらも踏み潰せるように戦力を整えてきた。

 

 本当は、クロノスでやったような戦術はしたくないのだが……四の五の言ってる場合じゃないか。

 

 用意はしよう。何事にも備えは必要だ。

 

 明日には攻め込む。成功するのかどうかは……相手次第、だな。

 

 

 

【五十二日目】

 

 

 

 失敗だ。

 

 虫もかなりの数減らした。

 

 まずは数を補完しなくては……

 

 

 

 


 

 

 

 

「被害は」

「何処も無事な場所がありません。騎士の二割が死亡、二割が行方不明、残りの六割は重軽傷を負っています。兵士は死傷者行方不明者多数、詳細な数は現在確認中とのことです。魔聖騎士は……オスカーが戻ってきませんでした」

「……そうか」

 

 ボルト魔聖国の()王、ローア・セフィーラ・ボルト。

 それに付き従うのは、魔聖騎士の一人、クリス・レートン。

 

 王と騎士の二人は、長い廊下を歩きながら先日起こった戦いの詳細をまとめていた。

 

「侮っていたわけではなかったが……想定が甘かったな。こちらから打って出れれば良かったが……」

「そのようなことをしていれば、即座に厄災に国を滅ぼされていたことでしょう」

「で、あろうな」

 

 クリスは顔を苦々しく歪め、王は表情を変えずに淡々と呟く。

 

 その表情からは感情が読み取れないが、しかし魔聖騎士として王に仕えてきたクリスは王はみだりに感情を露わにしてはならないことを知っている。

 

 王がどのようなことを思っているのか。それは当人にしかわからないことだった。

 

「厄災の根城は」

「残念ながら……」

「難しいか」

「はい。そもそも特定の場所に留まっていない印象を覚えます」

 

 厄災。ボルトでは、いずれ来る脅威として予言されていたもの。倒さねばならない敵。さもなくば滅びる運命となる悪。

 

 そしてその厄災は、過去に何度もボルトを、この大陸に住まう者達を滅ぼそうとしてきた。

 

 時に一つの個体として。時に無数の群れとして。

 

 今回で三度目。しかしその被害は歴代の厄災よりもはるかに多い。

 

 個体では初代に劣り、数では二代目に劣る。

 

 しかし、その悪辣さと手段を選ばないやり方は、今までのどの厄災よりも脅威であると認識されていた。

 

「厄災は代を経るごとに強くなる。とはいえこれは、強くなるというよりも賢くなっているな」

「今回の侵攻も、全勢力を投入したものではないでしょう」

「こちらは数で劣り、情報で劣り、さらには籠城戦と来た。厄災本体を叩かねば切りが無い」

「王の構築した結界も、長くは持ちません」

 

 ─────今回の侵攻。

 

 敵である虫は、明らかにこちらの有利を打ち消してくるような戦い方をしていた。

 

 王によって与えられた加護の力。それの弱点を突くように戦い、滅ぼさんとした。

 

 爆風によって一瞬加護を剥がし、そのまま酸の猛毒によって武装と身体を溶かす。そこを、音を超える速度で迫る虫が突進する。

 

 とにかく厭らしく、まともに戦おうとはしない。単純な肉体の性能ではこちらが劣っているとわかっているのに、なお手を抜こうとはしない。

 

 慢心が何一つとしてない。故に厄介だった。

 

 王の構築した加護によって満たされる神聖結界がなければ、そのまま国の内部へと攻め入られていただろう。

 

 結界の内部にいた虫は全て駆逐した。死んだ数よりも殺した数のほうが多いだろう。しかし……

 

「こちらは手を切らされ、あちらにはまだ余裕があるか。まったく、私の代でこのような厄災が来るとは……今は亡きクロノスからの情報がなければ、すぐにでも沈んでいただろう」

「……」

 

 追い詰められているのはこちらだと、二人は理解している。

 

 延々と生み出される虫には原因がいる。そいつを倒さなければ勝利は不可能。だが、肝心の厄災本体は隠れて姿を表さない。

 

 王は国を守らなければならない。騎士も、そのためにある。

 

 守るか、攻めるか。勝つには攻めるしかない。だが……攻めに出れば、国は滅びる。

 戦力の分散という方法もあるが、そうすれば勝率はさらに低くなる。

 

「打って出なくてはならない。この身を賭けてでもな」

「陛下……」

 

 だからこそ。

 

 今、必要なのは命を投げ捨てる覚悟。

 

 何を犠牲にしてでも勝つという意志。

 

 王自らを犠牲にしての、勝利。

 

 それしか道は残されていないと……女王は誰よりも、理解していた。

 

 例えその先に、死よりも惨い末路が待ち受けているとしても。

 

 

 

 

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