【無慈悲な】侵攻蟲苗床化計画【異世界攻略】   作:オルフェイス

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魔神最終戦
魔神■■■■■


 

 

 この世界には二柱の神がいた。

 

 滅びと死と破壊を司る魔神と、誕生と命と創造を司る生神。

 

 その二柱は原初の存在……名前すらない強大なモノが二つに分かたれ誕生した神だった。

 

 なぜ分かれたのかは誰も知らない。生まれたときから二柱であったために、魔神と生神ですらなぜそうなったのかわからない。

 

 ただ、最初はそのようなことなど気にせず、二柱は本能のままに力を振るった。

 

 生神が創り、魔神が壊し、生神が産み出し、魔神が殺した。

 

 終わることのない鼬ごっこが繰り返されたが、生神はその無限ループに嫌気がさし、とある行動に移った。

 

 それは自分の存在を分け与えた生命の創造であった。

 

 その生命は、今までに生神が創ってきたどの生命よりもはるかに頑丈で、そしてなにより強大だった。

 

 あの魔神でさえ壊すことが難しかったほどに。

 

 それが後に耳長のシャバドゥスと呼ばれることになる、生神に良く似た生命の誕生だった。

 

 生神は大層喜んだ。ようやく魔神に壊されないモノが生まれたのだ。自分の身を削るという痛みを伴うことだったが、それ以上に喜びが勝った。

 

 生神は何度も自分の身を削り、強力な生命を創り出し誕生させた。

 

 時を操る刻獣クロノス。

 

 空を覆う天翼スルバーン。

 

 魔を崩す聖なる力を持つ角聖ボルト。

 

 誰よりも強靭な肉体を持つ竜王カルヴァリ。

 

 ─────そして、無数の生命たち。

 

 名を挙げた五体以外にも、生神によって誕生した生命は数え切れないほどいた。その頃には魔神でさえ手を出すのは面倒だと思わせるほどに生命で溢れていた。

 

 しかしその代償は大きかった。

 

 生神はあまりに自分の身を分け与え過ぎた。

 

 いつ目覚めるのかわからないほどの永き眠りにつかねばならないほどに衰弱しきっていた。

 

 そして神が一柱この世から去り……片割れを好いていた魔神は、弱った生神の力を取り戻すために虐殺を始めた。

 

 強大だった。しかし、全ては生神を取り戻すため。

 

 またあの日々のような、壊して創ってを繰り返すために。

 

 何度も殺した。逆に封印されることもあった。長い眠りにつかねばならないこともあった。それでも殺した。

 

 あまりに長い年月が経過して……ついに残った全ての眷属の討滅が完了した。

 

 その過程で眷属の末裔は魔神の側面を備えた姿へと変化したが、既に必要な分の力を持つ眷属を殺した以上どうでも良かった。

 

 しかし、ある問題が発生した。

 

 生神は既に死んでいたのだ。

 

 より正確に言うなら、生神の魂が死んでいた。

 

 生神の肉体は分散した力を戻したこともあり、一度は力を失い縮みこそしたが健在だった。

 

 それでも、あまりに永い年月を力を失った状態でいすぎた。魂は死に、肉体だけが残ってしまった。

 

 そこで魔神は考えた。どうすれば以前のように生きてくれるのだろうと。

 

 ─────魂がないのなら、新しい魂を入れればいい。

 

 魔神はまずそう考えて魂を用意した。

 

 そして、魔神の知る生神を取り戻すには以下の工程を経る必要があると考えた。

 

 まず生神の肉体に用意した魂を入れ馴染ませる。より早く馴染ませるために生神の眷族の末裔を殺させ、僅かに残った力を取り戻させる。

 

 次に完成した生神を自身と融合させる。

 

 つまり、自分たち二柱を原初の存在に戻そうというのだ。

 

 そうすれば再び原初の存在が誕生し、そしていつか同じように二柱へと分かれるだろう。

 

 記憶は失われるだろうが存在は残る。魔神にとって自分の記憶など些細なことでしかなく。

 

 それこそが、生神を取り戻すために思いついた方法だった。

 

 

 

 

 

 

 

「どう? これでも短くしたんだけど、わかってくれたかな?」

 

 

 

 

 ……頭が痛いな、本当に。

 

 情報量が多すぎだ。なんでいきなりそんなことを言うんだこいつは。

 

「……まず聞くが、なんでそれを俺に教えた。気絶させるなりして、勝手にやれば良かっただろう」

「誤って殺したくないからね。私は力加減が下手だし、取り返しのつかないことはしたくないんだ。契約をすれば最悪殺してもいいからね」

「便利だな契約」

 

 恐らく内容次第だろうが、誤って殺してしまっても生き返る……いや、死ななかったことになるのか?

 

 ……正直、こいつの説明を聞いても内容が全く理解できない。

 

 俺の肉体が実は死んだ神様のものだったとか、こいつの生神とやらへの激重感情とか、情報量が多すぎるんだよ。

 

 それに感性。こいつの言ってることは一度死んでやり直すってことなのに、それをあっさり受け入れすぎている。理解できないし意味がわからない。

 

 だが俺なりに簡潔に整理して、わかることもある。

 

 その融合とやらを行ってしまえば、俺の意識は間違いなく消え去ることだろう。そうなれば死ぬことと同義であり……

 

 つまり─────

 

「……要は」

「?」

「おまえは今から敵、ってことだな」

「─────君が嫌だって言うなら、そうなるね?」

 

 こいつは敵で、俺の命を脅かすものだということ。

 

 それさえわかっていればいい。

 

 この邪神……いや魔神だったか。

 

 この魔神にどのような事情があろうと、俺がこいつの目的のために使われていたとしても関係ない。

 

 相手が国ではなく神になっただけだ。

 

 虫を呼び寄せ、こいつを殺す手段を考え、

 

「あーちょっと待って。まずは契約を済ませよう。さっきも言ったけど私は手加減が下手だし……今ここで殺し合うのは君にとっても不利だろう?」

「……」

 

 魔神の言葉で虫たちへの指示を、一旦保留にする。

 

 ─────魔神の言葉は正しい。

 

 俺と魔神。戦うにしてもこの距離は近すぎる。

 

 こいつの言ってることが正しければ、魔神にとっては手加減が難しいために。俺にとってはそもそも自分が主体となって戦わないために。

 

 もし今殺し合ったとして。

 

 負けるのは間違いなく俺だった。

 

「その契約はどうやる」

「互いに契約を結ぶという意識を持って、ルールを決める。それだけだよ。この契約は神同士じゃないと成立しないけど、君には関係ない。それじゃあ内容を決めようか」

 

 だから、ここは乗る。

 

 正直、契約だとか破れば死ぬとか言われても信じきれない。実際に見たわけじゃないからな。

 

 それでも、今は時間が欲しかった。

 

 こいつを殺す方法を考える時間。

 

 今すぐにこいつを殺すのは無理だと理解している。

 

 ─────こいつの戦闘力を見れば、そう思うしかない。

 

「賭けるのは自分の全て。勝利条件は相手を戦闘不能にすること。そして戦いの最中は殺そうとしてもどちらも死ぬことはない─────でいいかな? 他に何かある?」

「開始時間を決めたい。開始は今から一週間後、日が落ちた時点で始める」

「うん、私はそれでいいよ─────はい、成立と」

 

 その言葉はひどく軽かった。魔神はパンと手を打ち、契約が出来たという合図を知らせているようだった。

 

 本当に契約とやらを結べているのか不安だが……もうここは信じるしかない。

 

 なにせ、こんなのでも神らしいからな。

 

 ……それは俺もか。自覚はないが。

 

「それじゃあ、私は一旦帰るよ。一週間後、日が落ちたら来るから……楽しみにしてるね?」

「行くならさっさと行け」

「ふふ……またね」

 

 そう言って。

 

 魔神は消えた。

 

 ……何をするにしても、まずは魔神の転移対策を練らないとな。

 

 そう考えていると、

 

「……あぁ、これがあったな」

 

 空に浮かぶウィンドウに、まだ手を付けていないものがあることに気がついた。

 

 バタバタしていたために確認が遅れたそれは、スルバーンを滅ぼした証明。

 

 いつもの報酬だった。

 

 

《スルバーン天空都市の崩壊を確認しました》

《ミッション達成》

《報酬:十万ポイント&天の宝珠》

 

 

 ポイントはともかく、新しいアイテムが手に入ったのは大きい。

 

 効果も確かめておきたいが、今は考えなくてはならないことがある。

 

「時間は作れた。問題はどうやってあの魔神を殺すか」

 

 奴がわざわざ時間指定に応じたのは、それでも問題ないと判断したからだろう。

 

 つまり勝てると思ったわけだ。それだけの自信がある。

 

 そして奴の自信は恐らく正しい。

 

 話の最中、奴の戦闘力を見てみたが……規格外の一言だった。

 

《■■■■■》

戦闘力:33333

 

 ─────本当に規格外だ。

 

 戦闘力の数字が一律『3』なのもアレだが、なにより驚くべきなのはその戦闘力の高さ。

 

 俺の虫でさえ一番高い戦闘力を有する憤怒の虫に角笛を使ったとしてもギリギリ一万を超える程度だというのに、こいつはその三倍以上は掛け離れている。

 

 まずはその戦闘力の差を埋めないことには、こいつには勝てない。名前の黒塗りとかは今はどうでもいい。

 

「まずは虫の戦闘力を上げる方法を探さないとな」

 

 

 

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