【無慈悲な】侵攻蟲苗床化計画【異世界攻略】   作:オルフェイス

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カルヴァリ帝国・クロノス和國編 3

 

 

【三十日目】

 

 

 

 カルヴァリを滅ぼせた。とりあえずこれは良いとしよう。

 

 しかし減らしたクロノスの戦力もカルヴァリの兵で補充され、俺という虫の統率者のことも十中八九バレたと見ていい。

 

 ……少し、焦りすぎていたようだ。反省しなくては。

 

 だがカルヴァリを滅ぼしたおかげでカルヴァリ側にある迷宮と人的資源を大量に獲得することが出来た。

 しばらくは迷宮の攻略、周回と死んでしまった虫たちの補完に時間を充てるとするか。

 

 それと並行してクロノスの食料に打撃を与えるべく畑……というより土地か。土地に毒を蒔き、家畜を殺し、少しずつ削っていく。

 

 とはいえクロノスも何の対策も講じない、というわけではないだろう。手を打ってくるはずだ。

 

 ……クロノスに漏洩したということは、その先にあるボルトにもバレている、という前提で動いたほうがいいな。

 嫉妬の虫の情報収集は続けさせているが、何をしてくるのかわからない。

 

 シャバドゥスに残していた虫たちをこちらに呼ぶか。戦力が減っているからな、補充しておきたい。

 

 ここで重要になるのは、ボルト、スルバーンとの戦いの前にどれだけ戦力を温存できるのか。クロノスを滅ぼせてもその次で負けました、では意味がない。

 勝って滅ぼす。それが当面の目標だ。

 

 だが。

 

 あの時、カルヴァリの皇帝に相当近付かれた。神樹の首飾りがあったとはいえ、下手をすれば俺は死んでいただろう。強さもそうだが、何より皇帝の問いは俺にとって良い糧となった。

 

 滅ぼしたいのか、変えたいのか、支配したいのか、壊したいのか。俺は結局、何がしたいのだろうな。今はまだ、その答えは見つかっていない。

 

 クロノス、ボルト、そしてスルバーン。

 

 奴らを滅ぼせば、何かわかるのだろうか。

 

 

 

【三十一日目】

 

 

 

 迷宮の周回に出向いた。

 

 カルヴァリに存在する迷宮の数、なんとシャバドゥスよりも多い。軽く十は超えていたと思う。ただ多すぎて今日だけでは全部は回りきれない。

 

 そこら辺はまあ、追々になるだろう。

 

 クロノス戦に向けた工作も行っているが、カルヴァリよりも厳しい戦いになるだろう。

 

 まず結束力が高い。カルヴァリではそれを実感するまでもない戦いだったので気にならなかったが、要は途中で逃げ出したりという戦線の崩壊が見込めない。ぺースを崩すのが難しくなるのだ。

 

 次にこちらが有利な局面に持ち込み難い。地下は固くて掘り進め難いし、相手の戦力も手堅く強い。カルヴァリと違って近くに巨大な山脈もないから環境を味方にできない。

 物量によるゴリ押しも良いのかもしれないが、相手に何が出来るのかわからないからこれは避けたい。

 

 あとは飛び道具……魔法的なやつか。高火力でまとめてやられるのは避けたい。立地も平面ばかりだしな。

 そういえば魔法を使ってる奴はいたが、防御に使う奴を見たことがないな。いや、そういえばカルヴァリとの戦いでも極端に少なかったように思う。土砂崩れで大半が生き埋めになったからか?

 

 クロノスは……そういえばクロノスの武器は他とは違っていたな。なんというか、刀とかあったし鎧も武者っぽい。前世の日本みたいな武装というのか。和國ってそういうことなのか?

 

 地下は掘り進めさせつつ、攻略した迷宮は周回させる。それでポイントと苗床と虫を確保しよう。日進月歩、少しずつ戦力を高めていこう。

 

 ……そういえば、そろそろポイントに相当な余裕が出てきたな。俺自身のレベルアップが出来そうなくらいだ。

 

 俺自身のレベルアップは全体の戦力の向上に繫がる。やっておいて損はないな。

 

 じゃあ明日レベルアップしよう。

 

 

 

【三十二日目】

 

 

 

存在昇華(レベルアップ)を確認しました》

《眷属の能力が大幅に向上しました》

《権限の制限が解除されました》

《肉体を最適化します》

 

 以前とさほど変わりない通知がやってきた。

 

 ざっくりとわかるのは、まず虫たちの戦闘力の向上。さらにもう1段階上がったようだ。レベルⅠがレベルIIIに匹敵するほどにまで強くなっている。

 

 つまりレベルⅤの虫はレベルⅦ相当の力を得ることが出来たわけだ。その戦闘力は確認してみた限りでは平均4000、憤怒の虫ともなれば6000を超えてくる。カルヴァリの皇帝相手でも小細工なしで勝てそうなレベルにまで到達していた。

 

 権限の制限解除は……だいたいは虫関連だ。以前は直接召喚できる虫の数には限界があり、数を増やすためには苗床を使うしか方法がなかったが、今ではその限界がなくなっている。

 

 そして虫の召喚できる種類。ある程度ジャンルが決まっていたのだが、今ではもうその区別が存在しない。呼び出したい虫をある程度イメージすれば好きなように呼べるようだ。

 消費するポイントの調節も可能となり、即戦力を生み出せるのは大きい。

 

 だが、消費するポイントがあまりに大きい。レベルⅤを作ろうものなら軽く七桁を超えてくる。緊急の時以外でレベルⅤを生み出すことはないだろう。

 

 あとは……そうだな、俺の肉体とかか。

 

 この身体はさらに大きくなり、胸も豊かどころではないほどに大きくなっている。それに合わせて身長も伸びた。だいたい、170は超えてるんじゃないか? もちろん髪も伸びた、地面に着くくらいだ。とはいえ流石にこんなに長いと邪魔だな。

 

 戦闘力の方も向上しているのは確認している。

 

 

《 》

戦闘力:2006

 

 

 ……とはいえ虫たちに比べたらはるか下でしかなく、直接戦うよりも虫を使って殲滅したほうが強いのだが。

 

 元より変えるつもりもなかったのだ、俺自身の戦闘力などおまけに過ぎない。

 

 俺がレベルアップしても虫たちの仕事に変わりはない。より早く仕事を行えるようになり、より強くなった。今はそれだけだ。

 

 話は変わるが、クロノスへの工作は続いている。食料の減少、単独行動している者の捕獲、虫たちによるクロノス内部の情報収集─────

 

 その全てが、()()()()()()()

 

 出来ないわけではないのだ。食料の備蓄は少しずつ削っているし、クロノスの戦力も単独行動した者から捕獲している。しかし、クロノス内部への侵入が出来ていないし、外に出向く者は必ず団体で行動している。

 畑に蒔いた毒も早期発見かつ的確に対処している。

 

 なんだろうな、この感じ。

 

 カルヴァリやシャバドゥスとは違う。今までの相手が悪い方だったのだと思うのは、確かにそうなのだが。それにしては対処が早すぎやしないか?

 

 まるで何が起こるのか、事前に把握しているかのように的確過ぎる。

 

 何らかの指示を行っているのがクロノスの上……宰相とか将軍とか、あるいは国主だとして。その内の誰かが、虫の行動を読み切っている……?

 そんな奴がいる、としてもまあ不思議ではないが。

 

 明日になったら、少し試してみるか。

 

 せっかく強くなったというのに、やはり楽にはさせてくれないか。

 

 

 

 

【三十三日目】

 

 

 

 

 虫を使い実験してみた。

 

 土を掘る。人を襲う。畑を荒らす。空から監視する。クロノスへ遠くから投擲を行う。毒を蒔く。水源を汚染する。

 

 兎に角様々なことを虫を使って複数同時に行う。それに対してクロノスはどう出るのか。

 

 結論から言うと、その半数を対処された。

 

 そう、半数である。全部ではない。

 

 これはつまり、相手は先読みが得意であり仮想敵である俺が何をするのかを考え対処するが、全てには対応できなかった─────と、()()()()()()のが狙いか。

 

 クロノスは的確にされたら嫌なことは防いでいる。監視、土を掘る、投擲などは防いでいない。だが水源汚染や毒、畑などに関しては防衛に成功していた。

 

 致命的な部分だけを絶対に防いでいる。1日の間に何度も行おうとして全て失敗に終わった。

 

 相手はこちらの動向を把握しているわけではない。こちらの行動を読んでいる……知っているのだ。頭の中を覗いていたりするわけではないのは救いか。

 

 上記の結果から、俺の予想としては未来予知かそれに近い類の何かであると推測した。

 誰が持っているのか。知りたいところではあるが、難しいだろうな。

 

 それを知ることは不可能だと思おう。

 

 だが限界はある程度わかる。

 

 相当遠い未来は見えない。それこそ1年後なんて見通せないのだろう。わかっているのなら俺を抹殺するべく行動しているはず。少なくともシャバドゥスに警告なりするだろう。敢えて見逃したのであれば話は別だが。

 

 そして常に見通せるわけではない。相手が生き物であれば、当然睡眠は必要。寝ずの番も出来るだろうが限度がある。

 

 とはいえ、全てかもしれない、という推測だ。当たっていたら良いな、と思うしかない。

 

 ではどうするのか。

 

 見通したとしても尚、対処できない力で押し潰せばいい。

 

 というより、それしかオレにはわからないし出来ない。俺は戦術家でも戦略家でもない。未来がわかっているかのように行動することなんて不可能だ。

 

 だから、いつも通り。

 

 いつも通り、虫を使って蹂躙する。

 

 方法は……ああ、何処かで見たことがある。

 

 なんでも虫の中には、自爆する虫がいるという。

 

 その虫を生み出せるのかはわからない……いや、わからなかった、か。今は出来る。レベルアップしたからな。

 

 まずは数を増やそう。性質が性質だから苗床で増やす、なんてことは出来ないだろうが……ポイントを貯めて増やすしかないか。

 

 

 

 

【三十四日目】

 

 

 

 

 虫を増やし、迷宮を攻略し、ポイントを増やし、苗床を増やしつつも、クロノスへの試みは行われている。

 

 どれだけ先が見えるのか。どれだけ沢山見えるのか。どれだけ長く見えるのか。どれだけ、どれだけ、どれだけ……

 

 今できるのはこれだけだ。

 

 俺が虫を増やし、何をしようとしているのかもクロノスは分かっているという前提で俺は動かしている。

 ボルトの介入の可能性も想定している。時間を掛ければ援軍が来るのかもしれない。

 

 だが焦ってはならない。あちらは容易に数を増やせないのに対して、こちらは僅かな時間でいくらでも増やせる。苗床と虫、それさえあれば十分すぎるほどに。

 

 焦るな。時間が経れば経るほど、虫は増やせるのだ。今は待て。

 

 シャバドゥスにある巣を襲撃されて苗床から救出される、なんてことになったら面倒だから、蝿や蜻蛉に監視は続けさせている。

 

 スルバーンを相手にするとなれば対空戦力は大量に必要となる。出来ることなら地上の虫はともかく飛べる虫は過半数以上に保っておきたい。

 

 とはいえ、それも相手の戦力が想定内であればの話だが……そこら辺は考えても仕方ないか。クロノス、及びボルト潜入中の嫉妬の虫による監視は継続させている。何かしらの動きがあれば気付けるように。

 

 今はまだ出来ることは少ない。

 

 だが、あの虫の数が揃い次第、攻め込むとしよう。

 

 

 

 

【三十五日目】

 

 

 

 

 最近生み出し始めた虫の中で、寄生虫というものが存在する。

 

 こいつを人に寄生させれば、楽に虫が侵入できて攻略も簡単になるんじゃないだろうか。

 

 とはいえそのためには一度捕まえて寄生させなければならないわけだが、そもそも寄生出来るのだろうか。この寄生虫、普通に肉眼で見えるくらい大きいのだが。

 

 というか操れるのか?

 

 ……操れる虫とかいたな、そういえば。なら出来るのか。

 

 一度試して、なんら違和感がなければ問題ないが……寄生されてるとなれば脳に問題が起こっても不思議じゃなさそうだな。

 

 クロノスを試すように何度も時間と場所、タイミングを変えて試行錯誤しているが、未だに突破できていない。虫を大量に使ってやればゴリ押し出来るのかもしれないが……

 

 いや、そうか。クロノスを襲撃させてる間に水源を駄目にしてしまえば良かったのか。そうすれば虫は使うが確実に潰せる。

 

 本当に今更だな。

 

 虫の数も揃ってきたし、明日には始めるとしようか。

 

 ついでに水源も狙おう。万が一勝てなくても引けば全滅を狙えるしな。

 

 

 

 

【三十六日目】

 

 

 すごく疲れた。

 

 詳細は明日に回す。以上。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 これは夢だった。

 

 これから起こる光景が、夢として出てきている。

 

 空を覆い、太陽を遮るほどの大量の虫が迫る。

 

 その虫たちは種類の異なる虫を持ち、上空に滞留する。

 

 そして、その虫を放り出した。

 

 空中から投げ出された虫はあっという間に地上に落下し……

 

 そのまま破裂した。

 

 建物は崩され、人が爆ぜる。

 

 大量に落とされた虫爆弾によって、全てが木っ端微塵と化す。

 

 後に残るのは血の霧と飛び散る肉片、そして建物の残骸だけ─────

 

 そこで、夢は終わった。

 

 

 

 

「はぁ……っ、はぁ……!」

「姫様」

「姫様、お水にございます」

 

 気付けばそこは見慣れた自室であり、これから終わることになる場所の一つだった。

 

 息を荒げ、布団から飛び起きた少女。髪は白く、背も小さい。まだ齢十を越えたばかりの幼い少女。頭部からは小さな耳が生え、尻尾が布団からはみ出ているのが見えた。

 

 この少女こそが、クロノス和國の国主。祖である刻獣クロノスの直系にして先祖返りの異能の持ち主。

 それがトキカセ・センリだった。

 

 手渡された水を勢い良く飲み干すと、すぐさま息つく暇もなく喋りだす。

 

「急いで、弓兵の用意を」

「御意」

 

 彼女の側近であり、クロノス最高戦力の『三刀』の一人、タケルは命じられるがままに瞬時に部屋を去った。

 もとよりこれはセンリの予知を頼りにしてのもの。迫る脅威に、どのような対処が正しいのかを知るためにセンリは予知を何度も行っていた。

 

「がふ、ごほ、ごほ」

「姫様!」

 

 センリが咳き込む。

 

 口を押さえた手には、真っ赤な血があった。

 

 彼女の予知は、自身の命を削る。

 

 祖の獣、クロノスは息をするように時を操り未来を見たと言う。

 しかし力も衰え、数を増やす代わりに姿形をも変えた刻獣の末裔である少女では時を操ることなど出来ない。

 

 精々が夢を介して未来を予知するだけであり、それも命を削ることで初めて成立するものである。

 

「姫様、もう無茶をなさらないでください。本来なら1日に一度だけでも厳しい予知を、こんな短期間に使うなど……」

「ごほ、ごほ……っ、私は、大丈夫」

「ですが……」

 

 彼女の見た未来はどれも悲惨だ。

 

 時に虫の餌とされ。

 

 時に飢餓で苦しみ。

 

 時に毒で息絶え。

 

 そして今、虫の侵攻が始まろうとしている。

 

 今までに見た未来よりも、はるかに数が多い。総力戦となるだろう。

 

 だが……未来を見たからこそ、彼女の中にある絶望は大きい。

 

「(私は、最後まで抗わないと)」

 

 負け戦なのだ、最初から。

 

 未来を見ただけでは首謀者は特定できない。無限に虫を増やせるであろう元凶を断たなければ未来はない。そしてそこに至るまでの未来が、センリには見えなかった。

 

 打って出るという案も出てきた。『三刀』を含めた少数精鋭で元凶を討つと。しかしそれも、センリ自身が却下した。

 

 なぜなら見えてしまった。全員、帰ってくることが叶わない未来を。

 

 『三刀』の三人は、皆センリと親しい仲だ。失うのは怖い。しかも死ぬとわかっている未来に行かせるのはセンリ自身が嫌だった。

 

 例え近い未来、この國が滅ぶとわかっていたとしても。

 

 だから彼女は既に決めていた。

 

「(タケル、アシカ、カグラ)」

 

 『三刀』の三人には、ボルト魔聖国に救援を求めてきてもらう─────そういう建前で逃すことを。

 

 既にボルトの王には話を通してある。

 

 民も『三刀』と共に避難させる手筈だが、どうしたって間に合わない。避難させるのは子供を優先させ、逆に戦える者は最後まで残すようにしてある。

 

 相手が動く前に完了するのが理想だったが、既に未来は決まってしまった。

 

 そして、残るのはセンリもだった。

 

 命を繋ぐために自身の命を捨てようとしている者を放って逃げることは彼女には出来なかった。

 

 『三刀』が戻ってくれば、すぐにでも出立するよう言い渡すことになるだろう。

 そしてそれが、今生最後の別れとなる。

 

「(ごめんなさい。あなたたちを騙すことになる)」

 

 センリは謝る。もう、次がないとわかっているから。

 

 これから自分は死ぬだろう。未成熟であるが故に、虫の苗床に成るのは耐えきることが出来ない。

 

 その後の未来で、『三刀』がどうなるのかはセンリ自身にもわからない。

 

 だから心の中で祈った。

 

「(どうか、末永く生きてほしい)」

 

 例え誰を犠牲にしたとしても。

 

 あの三人には、生きていてほしいから。

 

 センリはただ祈る。これから先の未来を、三人の幸福と長寿を。

 

 

 

 

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