【無慈悲な】侵攻蟲苗床化計画【異世界攻略】   作:オルフェイス

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冥凶死粋

 

「始めろ」

 

 合図を送る。

 

 その合図と共に、虫たちが一斉に空へと昇る。

 

 蜻蛉、蝿、蛾、蜂などなど。

 

 飛べる虫は一様に羽を使って飛び、とある蟻を抱えて目的地へと進む。

 

 その先にあるのは、クロノス和國。

 

 今回の殲滅対象であり、未来を予知してくる相手のいる國。

 

 その國の上空へと虫が到来する。昇っていた太陽の光を隠し、ブブブブと鳴り響く大量の羽音。

 

 ……ああ、何処かで見た気がすると思ったらアレか。蝗害だ。アレにそっくりなんだ。でも蝗害よりも規模は広いし虫そのものが大きい。

 

 そんなことを考えていたら、クロノスの方から虫を迎撃するために何やら地上から飛んできた。

 

「矢だな。あと魔法」

 

 地上から放たれた大量の矢と様々な属性の魔法。流石に数が数だから避けきれずに何十匹も命中し地上に落下していく。

 そして、落下した瞬間に虫が破裂、自爆した。

 

 ジバクアリ。前世では世にも珍しい名前の通り自爆する蟻のことだ。思い出したのはつい最近だが、生み出せるようになったのもつい最近だ。

 

 今日が初出の虫なのだが、しっかりと対策されていたわけだ。けど、驚くことではない。

 

「まあ、そうだろうな」

 

 対策するだろうとはわかっていた。どのような対策をされるのかはわからなかったが、最悪数で押せるように揃えたのだから。

 

 ジバクアリのレベルは、変動せずⅠのまま。しかし俺のレベルアップによってレベルⅢ相当の力を持つ。

 つまり威力は十分ということである。

 まあ最も、当たればの話だが。

 

「当たればじゃなくて、当てるんだよ」

 

 虫が飛来する。

 

 蟻を抱えた虫たちが、クロノスの上空に到達しようと飛翔する。

 

 迎撃しようと矢が、魔法が飛び交う。

 

 当たっては落ちて、当たっては落ちて。大量の虫の死骸が地面に落下し肉片となる。

 

 同時進行で地上に虫を進めても良かったのだが、その場合上空から落ちてくるジバクアリの自爆をモロに受け止めることになるので断念した。

 

 何十、何百の虫が落とされたのだろうか。いや、そんな数ではきかない。数え切れないほどに多くの虫が撃墜されている。

 

 しかし、どれだけ撃ち落とそうとも虫は途切れない。

 

 消耗戦を前提とした虫の特攻。とにかく増やすことだけを考えたから数は多い。ざっと万は超えてるんじゃないだろうか。

 

 矢は消耗品だ。魔法は違うだろうが、燃料が必要でありガス欠を起こすのには違いない。

 

 そろそろ途切れるだろう……などと考えていたら。

 

「あー」

 

 思わず声が出てきてしまった。

 

 矢は途切れた。魔法は続いているが、数が少なくなっている。

 

 だが代わりに石が飛んできた。

 

 石。原初から存在する投擲物である。確かに石なら集めればいくらでも投げれる、だろうが……一体虫のいる上空と地上との距離が、どのくらいだと思っているのだろうか。

 

 最低でも数百メートルは離れているはず、なんだが………どういう筋力をしているのだろうか。これはちょっと想定してなかったな、反省しよう。

 

 だが。

 

「焼け石に水だな」

 

 石があったとしよう。それが沢山あったとしよう。それで沢山の虫が殺せるとしよう。

 

 だからなんだ、と。俺は言う。

 

 虫は、数百や数千ではない。万を超えるのだ。どれだけ投げようとクロノスに虫が到達することを遅らせることしか出来ない。

 

 ……思えば無感情に増やし続ける作業は中々にキた。もう二度やりたくないと思うくらいには精神的に疲れた。

 

 なのでこれで成功して終わってくれると本当にありがたい。

 

 次々と撃ち落とされていく虫たち。石を投げつけてくる兵たち。互いにどんどんと数を減らしていき……どちらかが無くなる前に、虫が範囲内に入った。

 

 そしてジバクアリを落としていく。上空から落下していくジバクアリはクロノス和國へと着弾……する前に、投げられた石で撃墜された。

 

 蟻は破裂することなく地面に叩きつけられる。

 

 惜しいところまで行った。間に合っていなければ一気に場を崩せたのだが。

 

 しかし。

 

「遅いか早いかの違いでしかないな」

 

 範囲内に到達した虫は、一匹だけではない。

 

 二匹、三匹、四匹と徐々に範囲内に入ってくる虫たち。そして落とされるジバクアリの対処に石や魔法が当てられ、そしてそれによって空いた隙間に虫が入り込んでいく。

 

「詰みだな」

 

 もう、ここまで来れば止められない。

 

 出来た穴から次々と虫は入り込んでいく。

 

 いくら撃ち落とされようと関係ない。侵入を防がれる段階は過ぎ去っている。

 

 沢山のジバクアリが、落とされていく。

 

 それを迎撃しようとしているが……一匹のジバクアリが地上に到達し─────

 

 破裂、爆散した。

 

 周辺にいた兵士は吹き飛ばされるだけにとどまる。傷はあるようだが一発では致命傷にはならないようだ。いやどういう肉体をしているのだろうか。

 

 けど、一発で終わりじゃない。

 

 次から次へと、ジバクアリが降り注ぐ。

 

 落ちた虫から連鎖するように爆破していき。

 

 クロノスを爆発音で包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジバクアリの投下は、建物の形が殆どなくなるまで行わせた。

 

 延々と爆発音が鳴り響き、地面を揺らした。数は、どのくらいだろうか。少なくとも千は超えてたのではないかと思う。

 

 そんなことをしたら捕獲するための人がいなくなってしまう。新しい苗床が増やせない。そう思うだろう。俺だってそう思う。

 

 けど、それでも投下を続けたのには理由がある。

 

 未来を見る相手。当然、ジバクアリのことも知っていただろう。であれば、その対処法だって考える時間はあった。

 なのに対応が稚拙に過ぎる。来る前に撃墜するでは、穴がある。

 

 なので考えた。他に爆発を防ぐ方法があるのではないかと。

 

 その予想は的中した。

 

「やっぱりな」

 

 ジバクアリの連続爆発を喰らった奴は死んでいる。だが、その前に避難した者は五体満足で生存していた。

 

 クロノスは地下という天然のシェルターを使って爆発を防いだのだ。

 

 地下に部屋を作って、防ぎきれなければ地下に避難、か。なるほど確かに良い手だ。ジバクアリ対策はしっかりしていたわけだな。

 

「なら次だ」

 

 地上の虫を進ませる。

 

 撃墜されることなく空にいた虫も襲わせる。

 

 ここからが本格的な戦争だ。そして、単純な物量戦ではこちらが有利。質も数もこちらが上。

 未来の予知も、ここまで来ればもう関係ない。

 

 さて、どのくらいで終わるか、

 

「ん?」

 

 ─────視界がズレる。

 

 瞬間、襲い来る激痛。

 

 斬られ、た?

 

 視界が、暗く……

 

「危ない」

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 というか一度死んだのか今の。

 

 俺の死に気付いた虫たちが暴れ出す。

 

 周辺にいる者を擦り潰そうとする。

 

 それを避ける、二つの影。

 

「ちょ、なんで死んでないの!? ミスったの!?」

「確かに斬った。その上で蘇った、のか」

 

 ……俺の頭を斬ったのはこいつらか。

 

 首飾りがなかったら今のでゲームオーバーだったな。いや、そもそも接近に気付けなかった。虫たちも気付いていなかった、ってことは気配を隠すのが相当に巧いな。

 

 ステータスを閲覧する。

 

 

《ムロマチ・アシカ》

戦闘力:4155

 

《カラクサ・カグラ》

戦闘力:4361

 

 

 戦闘力も、今まで見た中でも上位。手強い相手だな。

 

 とはいえこっちの最大戦力に及ぶほどじゃない。問題なく倒せる。

 

 常に虫をつけておいて良かった。そうじゃなかったら戦力不足だったかもしれない。

 

 この戦闘力で二人程度なら問題は、

 

「まだいたか」

 

 死角から襲い来る斬撃を、常に俺の周りにいる百足……ラビュタントが今度こそ防御する。

 

 硬い甲殻に跡を残すだけで斬撃は通らず、一人の男が二人の前に降り立った。

 

 

《ヒラ・タケル》

戦闘力:5090

 

 

 ……なるほど。

 

 あの皇帝ほどじゃないが……二番目に強いな、こいつ。

 

「あの百足は硬い。女の方を狙うぞ」

「言われなくてもわかってるっつーの。ほら、やるわよアシカ」

「わざわざ姫様の命を破ってまで来たんだ、その首、貰い受けるぞ」

 

「倒せ。生死は問わない」

 

 虫を呼ぶ。

 

 三人が襲い来る。

 

 ラビュタントは、俺の周りで蜷局を巻いて斬撃を防御する。

 

 視界がラビュタントで塞がれる中で、近くに潜んでいた虫たちが一斉にこちらに集まり始め、襲撃者三人組へと襲いかかった。

 

 虫の視界を共有しながら、相手の戦闘を観察する。

 

 三人組は……戦闘力そのものは皇帝には及ばない。技巧は確かに高いが、速さや力強さは劣っているように見える。

 蟷螂が、蜘蛛が、ストリングモースの糸が、三人組を襲う。

 しかし、決められない。

 

 連携が異常なほどに巧い。互いにカバーし合うから隙がない。むしろ連携することでさらに強くなっている。

 虫が一匹、倒された。レベルⅤであり、戦闘力で優っているはずの虫が、である。

 

 この三人組には、戦闘力という数値は当てにならないな。

 

 ラビュタントを投入すれば倒せるのかもしれないが……リスクが大きい。多分、奴等の攻撃を防げるのはラビュタントくらいだ。ストリングモースの糸では、多分一度は防げても次は通される。

 

 それに、ラビュタントに籠もっているから攻撃してこないようだが、ラビュタントが離れようものならすぐにでも攻撃してくるだろう。

 

 だから、ラビュタントは使わずに倒す。

 

 そのためには……避けられない攻撃が良いな。ちょうど、余り物がある。

 

 時間を稼ぐか。

 

「ああもう、糸が鬱陶しい!」

「タケル! 糸使いは、」

「ダメだ、分ければ物量で潰される」

「少しずつ削るしか無いってわけ……!」

 

 あちらも焦れてる。しかし迂闊に飛び込んでは来ない。流石に実践経験が長いか。油断でもしてくれれば獲れるのだが……

 

 一人だけ抜きん出ていたが、一人でしかなかった皇帝の方がはるかにやりやすい。

 

 今は、相手の体力やらを削ることに集中しよう。

 

 蟷螂が襲う。こいつは鎌が四つあるな。それをアシカとやらが一対防ぎ、もう一対がアシカを切り裂こうとするが、それをカグラが鎌の根本を斬ることで防いだ。

 

 タケルが蟷螂を仕留めようとするが高速で突進してきた蜻蛉を避けたことで間に合わず、蟷螂が斬られた鎌を再生させて仕切り直し。

 

 ……というか再生できたのか。初めて知った。

 

 一連の行動だが、実は1秒も経っていない。とてつもなく速い高速戦闘である。俺の肉眼だと影しか捉えられないほどだ。虫を介することでなんとか視認できてる感じだな。

 

 そう考えていたら、目的のものが来たらしい。

 

 ちょうど俺達の真上に来るように位置して、そして持ってきた虫を投下、と。

 

「……あっ!」

 

 カグラが先に気付いて上を見上げていた。

 

 だが、既に遅い。

 

 カグラの反応に気付いた二人も逃げようとしたが、虫たちに押さえ込まれる。カグラは見上げた隙を突かれてストリングモースによって拘束された。

 

「このっ、」

「くっ」

「っ!」

 

 動きを止めることに成功した三人に。

 

 遠隔でレベルアップさせたジバクアリ改め、レベルⅢ、ニトロアントの大群による連鎖爆発が火を吹いた。

 

 

 

 


 

 

 

 

《カルヴァリ帝国及びクロノス和國の崩壊を確認しました》

《ミッション達成&特殊条件達成》

《報酬:二十万ポイント&竜の冠、時止めの勾玉、位相の鐘》

 

 

 

「ふぅ、疲れた」

 

 あの三人組を爆発によって動きを止めることに成功。

 

 おかげで殺すことなく生け捕りにすることが出来た。

 

 そのタイミングでクロノス和國の崩壊が完了したらしい。

 

 前回とは違う通知と、複数のアイテムを貰うことが出来た。

 

 ……正直、疲れたからそういうのを見るのは明日にしたい。流石に一度死んだのは精神的にキツかったらしい。緊張を保たないといけなかったから今まで何の問題もないように見せかけていたが……もう休みたいな。

 

「……? どうした」

 

 ぼーっとしていたら、ある虫から意思が飛んできた。

 

 俺と虫には繋がりがあるから、やろうと思えば意思を飛ばすなんてことが出来る。といってもやろうとする知能がなければ意味がないから、滅多にないのだが。

 

 聞けばある雌が欲しいらしい。大変美しく、白く、小さく、未成熟ながらも育てば美味しそうなのだとか。

 

 あー、こいつ傲慢と色欲のダブルだな。試験的に属性付与を二重に出来ないかと試してみたのだが、知能と色欲が高くなりすぎて面倒になって放置しておいたんだった。

 

 以降は一つに絞ったほうが良いと決まったから、ダブルはこいつしかいないんだった。

 

「勝手にしていい。逃がしたりしなければな」

 

 とりあえず好きにしていいと言っておいた。

 

 特に人にこだわりなどないし、俺には美学とかもない。

 

 というか今は何も考えたくない。休みたい。

 

 そんなわけで、すぐさま意思を伝えると同時に俺は地面に寝転がった。

 

「できれば、もうこんなに疲れるのはゴメンだな」

 

 そう呟いた。

 

 こうして、クロノス和國の崩壊が完了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 




今回は邪神も気を遣った

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