貞操観念逆転世界に住む男子高校生の日常〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜   作:たんばりん

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第一話 天国と地獄

「待って、めっちゃイケメン」

 

 ある学校の体育館。

 真新しい制服に身を包んだ多くの女子生徒が壇上に登る1人の男子生徒を見上げて室内にさざなみが走った。

 

「ーーーーー新入生代表。賀茂匠」

 本日は入学式。

 答辞を述べた男子生徒は()()()()()()珍しく容姿が整った偉丈夫。

 漆黒を思わせるほどさらりとした黒髪に、男子生徒を表す白色の学生服とのコントラストがまるで非現実さを醸し出していた。

 

「やっぱり、ココは違うね!受験戦争勝ち残ってよかった!ほら、アソコに立っている男子もイケメンだし、さすが()()だよね!」

 賀茂と名乗った男子生徒によって湧き立った1人の女生徒が口巻いて辺りを見渡す。

 

 男女比率としては、3:7

 ここ、京都特区内の高等学院としても他を突出する男女比。

 人口の男女比率が1:10と乖離した世界では天国(ユートピア)と呼ばれている。

「しかも、ここに通う男子ってことは少なくとも“Bランク“以上ってことだし、まさに天国だよねー」

 

 また、違う女子生徒が下卑た笑みを浮かべた。

 そんな彼女の容姿は整い、肉体は出るところは出て、引っ込むところが引っ込んでいた。

 そしてそれは彼女だけではない。

 この空間にいる全ての女子生徒が美女と形容しても差し支えない。

 

 〇〇高等学院。

 ここ、京都特区にある入学難易度Sランクの学校は筆記試験の他に美貌試験。果てはスタイルについても点数化され、世の女性達から更に秀でた者達。

 顔は整い、スタイルは同い年の一般的な女性達の追随を許さない。

 

 改めてここは、〇〇高等学院。

 またの名は天国(ユートピア)

 彼女達はこれから始まる新生活に想いを馳せ、胸が高鳴っていた。

 

 

 

 ーーー

「はぁ、めんどくさ」

 女子連中の泡立つ声の中でボソリと呟く男子が1人。

 いや、呟いたのは彼であるが、彼は同級生となる男子連中も同じことを考えているだろうと内心考えている。

 (本当になにが天国だよ)

地獄(ディストピア)だろ。こんなとこ」

 学園のみならず彼は日本、いや世界が地獄だと考え思わずため息を吐いた。

 彼ら男子には学校選択の自由もましてや、居住区を選ぶ権利も存在しない。

 今や、男が1人に対して女が10人となるこの現代社会において、彼らは、もはや国の共有財産である。

 幼少期に強制的に行われる生体検査を受け“Bランク“と階級つけられた彼には、国が引いたレールをただ生きるしか選択肢はない。

 女子と違い、周りに立つ男子の顔色に生気はなく、ただこれから始まる新生活(地獄の日々)に絶望するだけだ。

 “男子は一様に国の財産である“

 日本国憲法第2条に記載されるその条文から、この世界の歪さを感じない男子はいないだろう。

 “財産“などと、宣っているがその実、本質は奴隷であると彼は考えている。

 飢えた獣どもに奉仕を強要される国家体制。

 いつ、自分が喰われるか分かったものではない女性に対して嫌悪感を覚えない男など存在するものか。

 そんなことを考え、男は再度ため息を吐いて天を見上げるのであった。

 

 ココは〇〇高等学院。

 ユートピア(天国)と呼ばれるここは、性別によっては地獄(ディストピア)と呼ばれている。

 

 

 

 

 

 

「改めまして、賀茂 匠です。よろしくお願いします」

 

 新入生代表で答辞を答えた男。

 場面は変わり、教室へと舞台を移して行われた入学オリエンテーションの一つ。

 自己紹介で匠は淡々のそう呟いて自己紹介を終える。

 

「やっぱりSランク男子は違うわ」

 ボソリと女子生徒が匠を見てそう呟いた。

 クラスに生徒は30名。その内男子は5人。

 男子のランクを表す首に巻かれた布製のチョーカーは、Aランクを表す黒色が4人、そしてSランクを表す“白色“しか存在しない。

 まさか日常生活を送る上で関わりあうことが出来るとは思っていなかったSランクの男子を見て彼女の目は爛々と輝いていた。

 

 

「カモっちよろしくねー」

 クラスメイトの自己紹介タイムが終わりこのクラス担任教諭が黒板に明日の予定を書き始めた時、不意に匠に声が掛かった。

「あ、はい。よろしく」

匠はその声の主を見て答えた。

横から声がかかった。

ピンク髪の今世で珍しいギャル然とし、色気を振りまく女子生徒である。

新入生のくせにブレザーは羽織っておらず、胸元をざっくりと開けたワイシャツからこぼれそうなほど豊満なバスト

シャツから透けてみえるヒョウ柄のブラジャーに匠は思わずごくりと唾を飲み込んだ。

「私、ちなみ。咲良ちなみ。よろしくね!カモッち!」

猫を彷彿とさせる顔つきの美女(ちなみ)がほほ笑んでピースと匠の目の前でジャスチャーを送る。

ジャララと腕輪につけた金色のブレスレッドが音を立てた。

「カモっち?なんだそれ」

咲良の口から出たちなみに匠は首をひねる。

(なぜ、カモなのか)と。

「ん~、なんとなく?可愛いから?」

そんな疑問を他所に、ちなみ舌をぺろっと出して再度はにかむ。

「可愛い?俺が?」

「そ、カモっち。めっちゃ可愛いよ!だから、ちなみが守ってあげる!」

「はは、それは頼もしいな」

匠の疑問に咲良はちなみの豊満な胸を叩いて答えた。

ボヨンと音が聞こえるように彼女の豊満な胸が振動した。

 

その答えを聞いて匠は思わず苦笑をこぼす。

(守ってやるか)

どちらかというと自分が彼女を守る立場であるのだが・・・・と匠は考えつつ彼女へと手を伸ばす。

「カモっち?なに?」

差し出された匠の手を見て咲良は首をかしげる。

男から女へのボディタッチ。この世界ではめずらしいパターンだからか、ちなみの頭の中では疑問符でいっぱいになった。

 

「これから、よろしくね」

匠はそう言って彼女へ笑いかけた。

それにより彼女は匠が意図していることに合点がいったのか、一瞬ぼっと顔を赤くしたちなみは慌ててその手を両手で握ってブンブンと振った。

(とりあえずこれで、ハーレムルートのフラグ一つ目は立てられたかな)

匠はちなみに握られた手を見ながらそんなことを考えていた。

 

 

 

ここは天国《ユートピア》と呼ばれる場所。

または地獄《ディストピア》と呼ばれている場所。

女からすれば、高ランクの男子とのかかわりができる天国

男からすれば、弱肉強食な現代社会を生き抜いた猛獣たちに囲まれる地獄

その中で、匠はただ、異質な存在だった。

 

 

「カモっち~。よかったらこの後カラオケで親睦会しようよ~」  

入学オリエンテーションもすべて終わり、ちなみが匠にそう声をかけた。

彼女の後ろにはクラス中の女子が集まっている。

「いいよ。行こうか」

「きゃー!カモっち最高!」

匠はちなみのその提案に了承の意を込め、頷く。

その様子を見てクラス中から女子達から黄色い歓声が上がった。

「ちなみにほかの男子は?」

匠の言葉にちなみはふりふりと首を横にふった。

「カモっちだけ~」

「そっか。それじゃあ、行こうか」

「おっけ~、じゃあ行こう!」

ちなみが手を上げて叫ぶとクラス中からも呼応するようにおーという歓声が上がる。

匠はちなみの先導に従って教室をあとにする。

向かうはカラオケボックス。

そこで親睦会という名のハーレムキャバクラが始まるのである。

(今日中にひとり食べれるといいなぁ~)

そんなことを思うほどに匠は女に飢えていた。

 

 

 

-----------

「どうしてみんなそんなに離れてるの?」

場所は変わって、匠たち。クラスの全員(男子を除く)。その総数25名は最寄りの駅前のカラオケのパーティールームで彼はそう呟いた。

コの字型の巨大なソファーの真ん中に座るのは匠で、彼の両端には1m以上のスペースが空いている。

片や、女性陣については匠とのスペースを明けている関係からかすし詰めのように渋滞しながらも彼女たちの表情は明るい

 

 

「だ、だって、近づきすぎちゃうとセクハラにならない?」

匠の左隣に陣取る女性がそう返して目を泳がせる。

「いや、委員長。これじゃあ親睦を深めるための会なのに俺だけ疎外感を感じるんだけど」

匠は苦笑いを浮かべながら委員長と呼んだ女子に言う。

茶髪ボブでおっとりした顔つき、委員長然とした赤ぶち眼鏡をしたこれまた胸の大きな女性。

上村響は本日のオリエンテーションにて委員長っぽいということで、クラス委員長を任命された女性である。

そんな彼女は、「そ、そっか。匠くんはSランクだもんね」と返して「えいっ」吐いてから彼との距離を詰める。

また反対となりを陣取っていたちなみも委員長に釣られるように匠との距離を詰めてはにかんだ。

「カモっちってさ、もしかして女の子好きだったりするん?」

彼女の言葉で室内に静寂が走った。

 

ゴクリ。

どこからかそんな音を匠の耳が捉える。

これは彼女たちにとっては、重要なポイントである。

女性を毛嫌いしない男性は少ないというのがこの世界での共通項であり、巷ではランクが高い男子になればなるほど、男性ホルモンが豊富な関係で、女性に対してオープンになるというのが、彼女たちが愛読する漫画での共通設定。

そんな設定がある種、都市伝説のように広まり、女性たちの受験戦争(特区の学校への入学)はそれはとんでもない苛烈さなのだから。

 

 

「まあ、今まで完全に男子onlyの環境で監禁されていたからね」

そういって匠はほほ笑んだ。

これはこの世界の悪習だと匠は考えている。

なぜなら、彼は前世の記憶を持ち、一度死んでからこの世界へと転生されたのだから―――

 

 

匠が転生して5歳の時、彼は”男性管理局”なる公的機関より強制的な検査を受けた。その結果Sランク。

男性のおよそ5%となる狭き門をくぐり抜けた彼(男性)がその先待っているのは、強制的な隔離システムである。

この世界での男性が女性へ抱く嫌悪感は強い。”女は男を襲う生き物”とインプットされる中で、順調に成長した男子は、女性に対して、ひいては性に対して非常にネガティブな印象を育てるのだ。

故に国は、検査の結果Sランクの男性、端的に言えば精子の活動量が豊富で男性ホルモンの高い男たちを隔離し、女性を断たせる。

そこでやや歪んだ性教育を含める様々なカリキュラムを行い、15歳の中学卒業時まで軟禁をするのだ。

故に、彼女たちが考える高ランクになれば女性に対しての忌諱感が薄くなるというのはあながち間違っていない。

 

むしろ、前世で全くモテた経験のなかった匠が5歳~今まで女性断ちを強制されていたのだ。

転生も相まって彼は非常に性欲旺盛な男へと成長していた。

 

「だから、あまりセクハラとか気にしないで。むしろウェルカムだから」

そしてその後続けた「でももし俺を期待させてしまったら責任は取ってもらうけどね」という言葉に室内が沸いた。

彼女たちが夢想していたヒーローが今、現実に現れているのだ。

「じゃあさ、!じゃあさ!手とか繋いだりするのも?」

どこか飢えた獣のような顔つきに変わるちなみに匠は笑みを返した。

 

「それぐらい全然いいし、むしろまだ狭いだろうから俺の上に座っていいよ」

そういって彼はちなみに手首を引いて自身の上へと座らせる。

むにゅり。

女性特有のやわらかい肉感が彼の太ももに伝播する。

 

「えっ!う・・・・そっ!」

彼の膝の上に尻を向ける形で座るちなみがそんなことを呟く。

彼女の顔がまるでタコのように赤く染まり、ときどきびくびくと身体を震わせる。

「うーん、後ろ向きだとなんか距離を感じるかな」

匠がそう呟いてちなみの腰に両手を添えてぐるりとその場で反転させる。

 

「キャーーーーーっ!」

その体勢に女性たちはまた沸き立った。

「いやいやいやいや、あんなん、もうエッチじゃん・・・Sランク男子やば・・・」

彼らとはやや離れた席に座る女性がそんなことを呟く。

「ていうか、もはや対面騎乗位だし」

「いや、あれは対面座位というのよ」

それに呼応するようにまたほかの女性達が合いの手をいれる。

 

「ちょ、、ちょっとこれは、私てきにあ、アウトかなーっておもうんだけど・・・」

口元を手で隠し、両脚をM字開脚で彼に見せつけるように座るちなみがぼそぼそとそう呟いた。

超がつくほどのミニスカートの中はヒョウ柄のブラジャーと同じ柄であり、腰は時折びくびくと震えている。

 

「大丈夫。大丈夫。それに本当はもっといろんなことをしたいんでしょ」

 他の連中に見せるつけるように。

 プレイボーイここにありと宣言するように全員に聞こえるように言葉を吐く匠に遠巻きで見ていた女子が叫んだ。

「アカン、これウチ我慢できひんっ!シよ!」

 ナニがとは言わずもがな、勢いよくその場から立ち上がり匠近くに寄ろうとしてきたクラスメイトに周りが絶句してただ彼女を眺めていた。

 

「やめなさいっ!破廉恥よ!というか、賀茂くんも煽らないで!!あなたも犯罪者にはなりたくないでしょ!」

 まるで行く手を阻むように壁のように立ち上がった黒髪ポニーテールの美女がそう叫んだ。

「吉田さん、堪忍してぇな!無理やで!こんなエロエロ男子前にして……こんなん据え膳やで!ウチはやるで!今日で処女卒業するんや!」

 コテコテの関西弁を放つのは確か自己紹介で“土井 律“と名乗った紫髪の女子。みずから「ドイツって呼んでな」と自己紹介していた女性だ。

 スポーティを思わせる全体的にシュッとした姿で匠は触手が動かないなと当時思っていた人物だ。

 

「やめなさいっ!せっかく受験戦争に勝ち残ったのにそれを1日で不意にするの!?

 この学校に入れたんだから、ゆくゆくは“交配プログラム“で卒業できるわよ!」

 そう叫んで突進してくるドイツを受け止め、流れるように背後に周り羽交い締めするのが“吉田美咲“

 彼女について匠も覚えている。

 というか、彼の()()()の中に入った女性だ。

 身長はおよそ175cmと、女性の中でも頭一つ出た高さに、四肢はすらっと細い。

 しかしながらその胸部は“暴力“というほど盛り上がった女性だ。

 もちろん顔もクラスで1.2を争うほど整っていたりする人物である。

「咲良さんも早くそこから降りて!上村さん!あなたさっきからポケーっと賀茂くんに見惚れてないで動きなさいよ!委員長でしょ!」

 美咲の声に顔を赤ながら俺の顔を見ていた委員長に喝を入れると、彼女ははっと、表情を作ってその場に立ち上がる。

「土井さん、ストップ。一旦落ち着きましょう。ね?」

 ドイツに向かって片手を突き出し「まあまあ」という声音に真剣さは全くない。

「てゆうか、なんで委員長まで匠くんと手を繋いでんねや!離せやあああ!その手ェ!」

 そう。委員長もまた匠の毒牙に掛かっていた最中。

 テーブルの下でにゅるっと伸びた匠の手は先ほどからずっと恋人繋ぎでずっと握られていたのだ。

 そして彼女は立ち上がってもその手を離してはいない。

 

「賀茂匠っ!良い加減にしなさいっ!もう少し節操を持ちなさいっ!」

 フルネームを読んで説教をする美咲に彼は「はいはい」とどこか気怠そうに答えて委員長と繋いでいた手を離して、上に乗ったままで身悶えていたちなみを優しく退かせる。

「アっ……」

 退かす最中、名残惜しそうな声を上げるちなみに彼は耳元で「続きはまた今度」と囁いた。

 

「土井さん!お願い!交配プログラムで私が先に選ばれたら順番譲ってあげるから!」

 未だバタバタと暴れる彼女をなんとか宥める美咲の拘束は力強い。

 やがて、フーフーと息を荒く吐きながらドイツは沈黙の後、渋々と言ったように暴れるのをやめた。

「ほんまやね。絶対やで!」

 なんとか宥めすかすことに成功した美咲も「えぇ。約束は守るわ」と言葉を返して彼女の拘束を解いて、場に沈黙が訪れる

 

「……えっと、じゃあ……いろいろあったけど……懇親会を始めようと思います……。乾杯」

 このままではまずいと考えた委員長がやや締まらない乾杯の音頭をあげた。

 そぅ。まだクラス会は始まってすらいなかった。

 

 

 

 

「えぇ、じゃあ匠くんもオナるん、むっちゃ性欲旺盛やん。さすがSランク」

 乾杯前にしばし混乱があったがそれもなんやかんやで始まって1時間。

 カラオケルームの中はガヤガヤと盛り上がっていた。

(下ネタで)

「まあ、ソレなりにね。参考までにだけどみんなは普段にどのくらいクチュ(オナ)ったりするの?」

 匠の言葉に急遽始まった日々の日課の回数についての暴露タイム。

「ウチは、3回かな、朝に1回に夜に2回」

「私は一回」

「2回っ」

「……8回くらい……かな」

 蛇足だが、クラスでの最高回数はどこか恥ずかしげな表情を浮かべた委員長だった。

「すごっ!8回とか猿やん」

 乾杯前の己の言動を忘れたのか。委員長に向かってドイツがそんなことを突っ込んだ。

「ちなみに吉田さんは?」

 匠は遠巻きに座ってどこか怒ったような表情で黙り込んでいた美咲にそう声をかける。

 余談だが彼は先ほど来、彼女の下の名を呼び捨てに呼んで「馴れ馴れしいわよ」と嗜まれた結果、名字呼びとなっている。

「い、言うわけないでしょ!!」

 しかし他の女子とは違い彼女は目をキッと吊り上げてそのままぷいっと顔を逸らす。

「吉田さんってなんか風紀委員みたいだよねー」

 ちなみがそんなことをボソリと呟くと一同がうんうんとその場で頷く。

 彼女はこの世界でも少数な貞操観念強めだったのだ。

「どーせ、吉田みたいなタイプが1番クチュってたりすんやで、むっつりや。ウチが保証したる」

 ドイツの言葉に「誰がムッツリよ!!!」とその場で怒りを表す美咲。

 なんやかんやと言って懇親会は非常に盛り上がっていた。

 

 

 

 ――――

「はい。匠くんあーんして♡」

「あーん」

 パクりと差し出されたポテトを頬張りおまけにペロリと差し出された指先を舐める。

 匠の両サイドを順番で変わるという謎ルールが施されたカラオケルームはもはや、彼からすればキャバクラと化していた。

 クラス連中はその全員が美女、美少女。

 ムンムンといろいろなメスな香りが彼の鼻腔を刺激する。

「カモっちぃ〜女王様ゲームしよぉー」

 順番により彼から離れた席に座るちなみがそんなことを宣った。

彼はその言葉に「いいよ」と返答しようとした時、匠の腕に巻かれたスマートウォッチが、まるでアラームのように機械音を上げる。

 様々な音をかき混ぜたような、どんなに騒がしい空間でも耳に入るように敢えて不協和音に設定された音が室内に響いてガヤガヤとしていた部屋は、一瞬として水を打ったように静寂が包んだ。

 

「……っち」

 誰かの舌打ちが部屋に響いた。

「ごめん。呼ばれたみたい。ちょっと行ってくるね」

 匠はキリっとした表情に変わりその場から立ち上がり帰り支度を整える。

「こんな時に()()()アラームかいなぁ、魔が悪いわぁ〜!」

 静寂に響くドイツの言葉に美咲が待ったをかけた。

「土井さん、それは言ってはダメよ。分かってるでしょ」

 彼女の言葉にドイツは「へいへい、黙りまーす」と口をへの字に押し曲げた。

「……た、匠くん……行ってらっしゃい……」

 委員長が心配そうな表情で彼の瞳をじっと見つめる。

「カモっち〜。絶対明日も学校来てね!」

 ちなみが彼に向かってガッツポーズをとり笑顔で微笑む。

()()()行ってらっしゃいませ。賀茂匠くん」

 今までのつっけんどんとは違う、どこか淑女を思わせる態度に変わった美咲。

 他のメンツもまた、彼のスマートウォッチから発せらる音についての理由は検討がついている。

 ――緊急なのだ――

 それも彼のように“Sランク“の男性となると、当然――――だから。

 

 匠は「うん、じゃあみんなまた明日っ!」と手を挙げながらイソイソと部屋から出ていく。

 匠が去った室内には先ほどまでの喧騒はなく、しばし沈黙が続くのであった。

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