貞操観念逆転世界に住む男子高校生の日常〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜   作:たんばりん

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第ニ話 サムライ

 

(さて、ポイントはここね)

  匠は左手首に巻かれたスマートデバイスに表示される指令を確認して、やがて視線を外へと向ける。

 車窓が瞬く間に変わり次の景色を映し出すのは、如実に彼が乗っている車両が猛スピードであることを示していた。

「それで危険度は?」

 彼は前方。運転席座っている女性に質問する。

「警戒度は“中位“。現在匠様の御同輩先んじて現場へと到着し対処予定です」

 感情が乗っていない仕事人然とした声音で回答しながら女性はさながらプロドライバーのように渋滞を縫うようにビュンビュンとスピードを出していた。

 

 ウーーーーン!

 まるでパトカーのようなサイレンをあげる車両にまるでモーゼの如く左右に進路が切り開かれる。

 [こちら、車両No123,管理局。現在地は堀川地区にて賀茂匠上級と合流。

 ポイント634には一八〇〇(イチハチマルマル)に到着予定。送る」

 

 [こちら管理局。車両No123現認。ポイントへのルートこちらで再設定……。ルート承認。600m先の薬局を右折し、誘導されたルートを進行して下さい。

 到着時刻一七五五へと変更。

 賀茂匠上級、至急交戦の準備を。検討を祈ります。送る」

 ブチリと通信が一方的に切断されると運転手はその場でため息を吐いて視線は前方に置いたまま言葉を吐いた。

「匠様。お楽しみの最中で申し訳ありません。しかしながら既に犠牲者も出ておりますれば、何卒貴方様のご健闘をお祈り致します」

 女性の強張った声が響く中、匠は「いいよ、別に」とつっけんどんに言葉を返して自身が座る後部座席の横。

 扉に内蔵されたロッカーを開き収納された武器を手に取る。

 

 “精器村雲(ムラグモ)

 柄、鞘、そして中身である等身までもが純白に仕立てられた彼専用に拵えた日本刀の銘。

 匠は一度チャキンと鞘から刀身を覗き見て再度納刀をする。

「でもやっぱり少し腹が立つね。邪魔をされて。

 そうだ。これが終わればどうかな?2人で大人のデートでも?」

 先ほどまでの声音と違い飄々と、運転手に声をかけるも、彼女はそれをにべとなく断った。

「申し訳ありません。我々赤母衣衆は()()()()()と交流することは固く禁じられております」

 今度は逆につっけんどんされてしまった匠は、「あっそ」とややへそを曲げた表情を浮かべていた。

 

 

「それでは、間も無くポイント手前に到着します。

 現在警察が警戒線を引いて混乱を抑えていますが、申し訳ありません。手前に停めてからは徒歩にて現場へと急行下さい」

 そんな言葉とほぼ同時に、赤母衣衆と名乗った彼女はそのまま急ハンドルを切ってドリフトの容量で人混み手前で停止させる。

 

 「こちら公安です!皆様っ!公安が参りましたのでご安心ください!!皆様、道を開けて下さいっ!」

 運転手を務めていた彼女は、ドリフトで停車すると同時に扉を開けて車外から出てパニックとなった群衆の前でそう叫んで進路を確保した。

「……あれが……」

 警察によって貼られた警戒線の内側を覗いてやろうと野次馬根性で密集していた群勢が後ろを振り向き手にしたスマホをこちらに向けた。

「通しなさい!

 さもなければ貴方達を公務執行妨害で逮捕します!

 ご存知の通り公安の任務を阻害する者は禁固10年です!道を開けなさいっ!!」

 大声を張り上げれば、ぞろぞろと左右に人が別れ始めた。

「行きます」

「はい。ご健闘を」

 道が開けた瞬間、匠がその場で脚に力を込めて跳躍する。

 

 バキッ。

 跳躍の瞬間、足元のアスファルトが砕けると同時に彼はさながらジェット機のように急加速をして瞬時に警戒線の中へと侵入した。

 

「御武運を……」

 もう既に視界にはいない匠を思いながら女性はその場で両手を拝んでいた。

 

 

 

 

 

 

 「こちら、匠。現状は?」

 匠が現場へ急行する中、無線機を起動し、現状を問う。

「こちら。蒼佳。現在目標を拘束中。迅速な現場到着を求めるわ」

 心地よい声音が彼の耳元に届き、匠は「あと10秒で会敵予定」とだけ告げた。

 

 警戒線を張られるのは現場から半径200mが通例である。

 しかしながらこと京都随一の繁華街での発生なので目的地は近いようで遠い。

 彼は丹田に力を込めてやがてソレを足先へと移行させる。

 アスファルトを砕き、建物の壁を重力関係なしに蜘蛛のように走る様はおよそ人間を超えていた。

「目標視認」

 壁を越え、建物の屋上へと飛びまるで空を駆けるように疾駆して、彼の視界に3人の人影を視認した。

 2人は黒い母衣と白い母衣をきた銀髪の女性。

 そしてもう一人は浅黒くその場で膝立ちに拘束されながら咆哮をあげる巨躯。

 

 「むらも、畏み天界に追わす一柱。その玉力をもって出でそうらえ」

 

 ――灯火――

 腰に佩いた白い日本刀を抜刀し、彼は槍投げの要領で刀を放つ。

 強弓で射られたかのように放たれた白き刀は空中で赤く染まり火を放ちながらその巨躯を貫いた。

「碧理」

 無線を通して短く白い母衣を着た女性の名を呼ぶと「わかってるわよ!!!」と怒声が返る。

 

 ”結ッ”

 気の強そうな声音の後に巨躯の四方に薄ピンク色の結界が現れソレを封じ込めた。

「燃えせ。不知火」

 その様を確認して匠が手印を刻むと結界内で燃え盛る炎。

 巨躯の叫び声が大気を、建物を振動させるも彼は尚、力を送り込む。

 

 

 咆哮のみが響いてしばらく、不意に咆哮が止んだあと一つの()の消滅を感じ取り、彼は力を緩めた。

「討伐完了」

 結界に閉じ込められ業火で焼かれていた巨躯が火は消失するとコケシサイズの黒く焼かれた物体に変わり、彼はその警戒を緩める。

 

「二人ともお疲れ様」

 匠が立っていた屋上から現場へと駆けおりて母衣を着た女性たちをねぎらうと一人は苦笑い、一人は怒号をもって返答した。

「貴方もね」

と答えるのは黒い母衣をきた銀髪ロングヘア―の美女。

 この世界の例に問わず胸部が著しく発展した女性であり、名を()()蒼佳と呼ぶ。

 年齢は今年で23歳と脂ののった頼れるお姉さまタイプである。

 

 「おっそいのよ!馬鹿!!」

と答えるのは白い母衣(どちらかというと巫女服)を着た女性。

 こちらは蒼佳と同じ銀髪の髪の毛をツインテールで結び、気の強そうな三白眼の彼女。

 名を()()碧理と呼ぶ。

 蛇足だが、彼女の胸部は蒼佳よりも更に発達しており、もはや暴力的な肉感となっている。

 匠と同い年である。

 

「アンタがもっと早く来ていれば犠牲者がもっと減ったのよ!自覚を持ちなさいよ!」

 そういってがなり声をあげるのは碧理である。

彼女の言も尤もであり。現に巨躯がいた足元には何人かの骸が転がり、その惨状を物語っていた。

 

「ごめんって~」

 しかし、匠は碧理の言葉にも、目の前の惨状にもどこ吹く風と瓢々とした様子で返して地面に転がった愛刀を腰の鞘にしまい込んだ。

 

「それで、()()は?」

 彼の言葉に蒼佳が首を横に振って言葉を続ける。

「ダメだったわ。ソレに丸のみされたみたい」

 そう言って彼女は地面に転がった黒い塊を顎で指してただ押し黙った。

 

 

 

 ソレとは即ち、鬼人(きじん)とよばれるソレである。

 人外じみた身体能力を有し、いたずらに人を殺め、喰らう。

 その好物は()性であり、彼らは生きるために人を喰らう種である。

 

 

 ――否、匠はこれを進化だと――心の中で思っている。

 

 この世界とは別の記憶を有する彼はこの世界との明確な違いを”鬼人”を通して如実に感じるのだ。

 前世との違いの中で、現代社会における男女比の割合が挙げられるだろう。

 出生の段階での男女比は5:5と前世と変わらず。

 しかしながら現存する人口全体での男女比をあげるとそれは1:10まで乖離するのだ。

 それには奴ら鬼人が好んで男を喰らうからだというの通説である。

 また、鬼人とはあくまで”人”である。

 人が進化した結果、鬼人であると彼が考える理由の最大の要因は、女性(人間)であれば、誰しもが鬼へと変わる可能性を有しているから他ならない。

 気という体内オーラを有する人間の中で女性のみが保持する”陽気”。これがネガティブな要因。それこそストレス過多であっても邪な邪気。”妖気”が混ざり合い、天秤が悪に染まった瞬間に鬼人へと変化する。

 故に、この世界の男性のほとんどが女性を邪険し、蔑視する。

 化け物だと。

 

 また男性しか扱えない”精気”と呼ばれる体内エネルギー。

 精気でしか妖気を祓うことが出来ない世界では女性は男性を神格化するのだ。

 

 

「まっ、とりあえず討伐完了ということで、俺はクラス会に戻るわ」

 匠は黒い物体となったソレをポケットに入れて振り返り二人へと手をあげて軽薄に笑った。

 

 

 

 

 鬼人を殺せる(祓える)唯一の職業(性別)

 人は彼らを――サムライ――と呼ぶ。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
日常モノと思わせての現代ファンタジーです。
皆様のご反応次第で続くかな……。
是非とも感想、評価どしどしお待ちしております、
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