吸血鬼の娘でも星を見つめたい   作:あん仔

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短いです


VS女帝

 

 

 

修行者(カトゥー)の荒行ですね。話には聞いていたが本当にやっているんだな」

 

 

 ベナレスへ向かうバスのなかで窓へ身を乗り出すように花京院が呟いた。

 修行僧という様子の人々が頭を地面に埋めたり、剣山の上で逆立ちをしたり、とすごい迫力だ。

 

 

「相変わらず詳しいね」

「家族でよくあちこち旅行するからかな、そういう話を聞く機会が他の人より少し多いんだろう」

「ほ〜ん」

「キミのその自分で聞いておいて興味なさそうなのなんなんだい?」

「な〜にが荒行だよ、客寄せのトリックじゃあねえのォ?」

 

 

 くるくると前髪の毛先を指に巻きつけながらの花京院の言葉に適当な返事をした。

 ホルホースを逃すきっかけとなってしまった謎の女に根気よく話しかけていたポルナレフが私と花京院の座っている座席に腕を乗せてニヤリと笑う。

 

 

「あそこで何か燃えているようだが…?」

 

 

 空条先輩もまた呟く。川の岸辺でゴオゴオと炎が空へ激しい煙の柱を作っていた。

 キャンプファイヤーの木材のように組み立てられた炎のなかに、よくよく目を凝らせば人らしき影が横たわっている。

 激しすぎる荒行で修行者が死んだら近くで火葬しちまおうってことか〜。効率的でええやん。

 

 

「どうした? じじい、元気ないな」

「うむ…虫に刺されたと思ったところにバイ菌が入ったらしい」

 

 

 やたら静かなジョースターさんに違和感を覚えたらしい空条先輩とジョースターさんのそんなやりとりが前の座席から聞こえてきた。

 気になって腰を浮かせるとジョースターさんの右腕が真っ赤に腫れ上がってしまっていた。

 虫さされからバイ菌が〜という経緯も嫌だけど見方によっては顔の形にも見えて尚更薄気味悪い。

 

 

「腫れてますね…それ以上悪化しないうちに病院へ行ったほうがいい」

「わ…そうだね、ジョースターさん、病院で薬とかもらっといたほうがいいですよ」

「やっぱァ…?」

「これなんか人の顔に見えないか? へへへ……」

「おい! 冗談はやめろよ、ポルナレフ」

 

 

 ダラダラと冷や汗を流しながら「やっぱヤバいと思う〜?」という表情のジョースターさんの様子にもしや病院嫌いかと勘繰ってしまう。

 私も病院は嫌いなので、気持ちは少し分かる。

 

 そんなやりとりのあと、とくに新手のスタンド使いに襲われることもなく辿り着いたベナレスでホテルへ向かう。

 バス移動からのベッドとシャワールームでテンション上がりまくりである。ちなみに今回は人数の関係上一人部屋だ。推奨はされないけど仕方ないね〜。

 

 空条先輩はおじいちゃんを病院へ引っ張っていくだろうから、しばらくは自由時間になりそうだ。

 

 

 とりあえず風呂に入ろう!

 一日中バスでの移動であちこち凝ってるし、髪も埃でギシギシだ。

 シャワーを終えて、鏡台に腰掛けドライヤーを使おうとして、そこでふと気がついた。

 耳たぶに新しく黒子が増えている。三連のそれを指でなぞる。

 

 

 ……少し嫌な感じがした。鏡で髪色を確認しても、どこも金に変わってはない。

 

 

 そりゃあね、どんどん物理的な距離が近づいていくよう旅をしているわけですからね。

 近づくにつれて影響が大きく強まっていくのは、まあまあ理解の及ぶ範疇だ。

 いやあの……ディオの遺伝子が強すぎる……。

 

 

 ついつい額を押さえ、深くため息を吐き出した。

 

 

「エコー、いるかい」

 

 

 控えめなノックの音と花京院からの呼びかけに部屋の扉を開ける。

 扉の前には花京院と空条先輩が並んで立っていた。

 

 

「病院でジョースターさんが敵のスタンド使いに嵌められて殺人未遂容疑で警察に追われている」

「え…? どゆこと…?」

「……じじいがすでに敵は倒してるそうだが、このホテルに警察がやってくるのも時間の問題…ということで俺たちも今すぐここから逃げるぜ。急ぎな」

「わ、ワァ…! 今日はベッドで眠れると思ったのにィ…!」

「ポルナレフもジョースターさんと合流済みだから、僕らで移動用の車を買いに行くぞ!」

「え〜ん!!」

 

 

 大急ぎで荷物をまとめて2人とともにホテルを脱出。そのすぐあとにパトカーが数台、ホテルの前に停まったので追われることにならないでよかった、と息を吐く。

 

 

 車を購入後、ベナレスの街外れでジョースターさんとポルナレフと合流した。

 

 

「それにしても、どこで買ったかは知らねえがよく高校生だけで車なんて買えたなァ…」

「もともと財団から話は通っていたみたいだからな…僕らは署名するだけで済んだんだ」

 

 

 手に入れた車の運転席に座りながら、顔をしかめるポルナレフに助手席の花京院が答える。

 カルカッタでのジョースターさんの財団へ連絡は移動手段の確保という目的もあったらしい。

 

 

「それと…どうやら俺は未成年に見えねえ()()()…らしいから、な……」

「えッ!? 先輩、気にしてたんですか!?」

「……」

 

 

 ニコリ、と空条先輩が無言で笑顔を作る。

 あんまりにも珍しくてギョッとした。恐怖で心臓止まりそう。

 脳裏によぎるのは香港で偽船長の正体を看破しようとした際の言葉である。

 

 

 ── 私もこいつ怪しいと思います! 老け顔の空条先輩が未成年に見えるわけないし! 外国人が学ランなんて知らねーだろッ!

 

 

「俺は根に持つタチなんでね」

「や、ヤダな〜、アレは船長の正体を見抜くための冗談じゃないですかァ、先輩!」

「お前の暴言は全部メモしてあるぜ」

「じょ、ジョースター、さん…、あのぉ……おたくのお孫さんのことなんですけど……」

「う〜む、仲良きことは美しき哉、と…言う奴じゃなァ、ウンウン」

 

 

 一戦を終えたばかりで疲労をみせるジョースターさんへ助けを求めてみれば、そっと顔を背けられた。思わず頭を手で抱えてうめく。私今…後部座席で祖父孫に挟まれてんすよ……逃げ場がない。

 

 

「……花京院、席変わって……」

「自業自得だ」

「ひどい…ポル…」

「運転できんなら代わってやるぜェ?」

 

 

 出来るわけねーだろ!!!

 

 

 

女帝戦

〜完〜

 




次回バトルです
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