吸血鬼の娘でも星を見つめたい   作:あん仔

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オリスタンドとのスタンド戦


前哨戦

 

 

 放課後になってすぐザンバラになった髪をどうにかするため美容室へ向かった。

 いつもお世話になっている美容師さんは、一目見ただけでおそらく何かを察して髪が短くなった経緯などには触れず普段通りの接客をしてくれた。

 私の周りにはいい人ばかりがいる気がする。

 

 ひとまずベリーショートに整えられて、スースーと久しぶりに空気の冷たさを感じるうなじを撫でる。ここまで短くしたのは小学生以来だ。

 自分でしたこととはいえ、また一から伸ばし直しである。

 

 

 日の傾きによって道路へ影が伸びている。そんな伸びた影の方へと帰宅のため歩いた。

 空が暗くになっていくにつれ、人の姿は減っていく。すぐそこの民家から子供の笑い声。夕食なのだろうカレーの匂いが漂ってくる。

 

 

 家に帰ったら家族がいて、温かいご飯が出来ているのいいなあ…と思いながら帰宅の足を早めた。

 まあゆうて?

 私の家でも家政婦さんの作ってくれている夕食が待っているんですけどね。

 

 なんて考えながら、なんとなしに道路に伸びた影へ視線を落とす。

 影の中ではやはりダンス・マカブラが一際濃い黒で存在をアピールしている。

 

 

 そうだ、私だって別に一人なんかじゃあなかった。決して離れることのないスタンド(傍に立つもの)の存在に安心感を抱いて、ホッと頰を緩めた。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 矢に磁石を近づける。動く様子はなく、どうも鉄ではないらしい。

 矢には甲虫らしき虫を模した意匠がされている。甲虫の表面を指でなぞる。冷たく硬質でスベスベとしている。

 

 虫の意匠ってなったらパッと思いつくのはやっぱりスカラベなんだよなあ。んでスカラベっていったら古代エジプトじゃん?

 スタンドの矢ってどこの遺跡から発掘されたんだったっけ?

 

 

 

「てっきり鉄器かと思ったんだけど…ハッ、()()()()()()……!?」

 

 

 思わず口を手のひらで塞いだ。

 慌てて周囲を見渡して、シン…と変わらず静まり返っている図書室に私のクソ寒い駄洒落を聞きつけた生徒がいないことを確認した。

 よかった…。駄洒落のつもりは全く持ってない言葉だったけれど、中途半端に気づいてしまって少し恥ずかしい。気をつけよう。

 

 矢についてどうにか解決しておきたいと、昆虫図鑑を探しに図書室へと訪れている。

 意匠から、なんとなく日本製ではないと推測している。

 日本の矢じりはもっと武骨というか…、この矢のような凝った意匠のされているイメージがない。

 と、思ったけどそうでもないらしい。

 昆虫図鑑のついでに刀剣図鑑で矢じりについての知識を得た。

 日本製の矢じりにも近代になるにつれ美術品的な凝った意匠が施されだすようだ。

 まあ、この飛んできた甲虫の矢はどう見てももっと古い時代のものなので完全に余談である。

 

 

 昆虫図鑑を脇に抱えて、図書室の学習スペースに座った。

 机の上に矢じりだけにした状態の矢を置き、ペラペラと図鑑を開く。

 そうして虫の図を見ていくとコガネムシ…が近いかもしれない。

 コガネムシというか、やっぱりスカラベなんだけれども。

 

 

 そうしている間に図書室がピリピリと肌を刺すような、ヒリついた空気に変わっていることに気がついた。

 ざわ…ざわ…ひそ…とごく小さく絞られた囁きが内容までは分からないけれど、かろうじて耳に届く。

 

 

 とある本棚の方を向き、顔を青ざめさせる自習中の一年生の視線の先を追いかけた。

 あまり広くない本棚の間を、長ランの裾を揺らした大きな背中が居心地悪そうに縫っていく。

 いわずとしれた学校一のモテ男で、番長空条承太郎である。わお。

 空条も図書室に来るんだ〜と、それなりに失礼なことを思いつつ異変の理由を把握できたため視線を図鑑へと戻す。

 

 

 机に置いた矢じりの甲虫の意匠をもう一度指でなぞった。やっぱりスカラベ説濃厚だ。

 スカラベ…古い…となるとエジプトなのよね。

 古代エジプトではスカラベってとどんな意味を持っていたっけ…と席を立って再び本棚へと足を向けた。

 前世で見た古代エジプトの因縁がどうこうする洋画では人まで食べるとかいう肉食スカラベがいたなあ。

 さすがにこの世界にはいないだろうけれど…そう願いたい。

 

 

 昆虫図鑑を本棚へ戻してから本棚を移動する。歴史というよりはオカルト分野だろう。

 古代エジプト……。

 オカルト分野の本棚に並ぶ背表紙を一つ一つ確認しながら条件に当てはまりそうな本を探した。

 

 

 知りたいのはエジプトにおけるモチーフの意味なんですわ〜!

 死者の書というタイトルの本に載っていたミイラの作り方に顔を顰めていると、視界の端に黒い学ランが入り込む。

 

 それがすっと隣に並んで動かないため私が邪魔になって目当ての本が取れずにいるのかと、死者の書のページをめくりながらほんの少し身体をズラした。

 しかし学ランは動かない。

 さすがに違和感を覚えて、そこでようやく本から顔を上げた。

 

 

「……」

「……」

 

 

 眉間に皺を作った空条がじっと私の手元を──手にしている本を見下ろしていた。

 お目当てはこの本でしたか……。開いていた本を閉じて、無言でそっと本棚へと戻す。

 それから本棚の死者の書へ手を伸ばした空条へ背を向けて図書室を飛び出した。

 

 

 もうやだ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 高校の十月には文化祭があるものだ。学校によっては夏休み前にあるところもあるというけれど、うちの高校では十月にある。

 こんなときになァ…という気持ちも少しはあった。でもガクセーはガクセーらしく一度きりしかない青春を思う存分に楽しまなければ損だろう。

 謎の矢のでどころやら近づいてくるエジプトへの旅だとか、考えるべきはたくさんあるけれど、だ。

 

 ちなみに私たちのクラスの模擬店は和風カフェ〜である。それぞれ自前の浴衣を──浴衣を持っていない生徒が貸してもらってというレベルの仮装カフェだ。

 時代が時代ならメイドカフェとかになっていたかもしれない。

 

 

 一般公開が始まる前に女子で集まり、それぞれが持ち寄った簪で髪を結いあったり普段あまり化粧をしない子に総出で化粧を施したりと、う〜んこれもまた青春だね〜とだな。

 

 

「恵古ちゃんもそろそろ休憩でしょ? 一緒に回らない?」

「うん」

 

 

 休憩時間が近づいた頃、紫陽花の浴衣に長い黒髪を玉櫛でまとめた委員長に声をかけられた。

 てっきり他校の彼氏と約束でもしているものと思ったけど、どうやら違うらしい。

 

 

「彼は進学校の生徒だから二年生でも土日は忙しいのよ」

「へえ、それじゃあデートとか出来なくて寂しいんじゃない?」

「そんなことないわ。毎日電話をしてるもの」

「あっ惚気だ」

「恵古ちゃんが言い出したんじゃないっ、ふふっ」

 

 

 クスクスと控えめに肩を揺らす委員長。率直にめちゃくちゃかわいい。

 恋する女の子だから可愛いのか、もとより委員長が可愛いからなのか。私にはどちらもだと思う。

 こんな可愛い子を彼女にしてる他校の彼氏うらやましすぎんだろ。

 

 

 縁日をしているクラスで射的をしたり、屋台で小腹を満たしたり、本当にお祭りみたいだ。

 廊下で見かけた空条はいつもの通りファンガールたちに囲まれていた。お疲れさんですわ。

 

 近くの教室の時計で時間を確認し、ゴミを捨てに離れていた委員長のもとへと向かう。

 何もない階段の方をじっと見つめている委員長の背中を軽く叩いて声をかけた。

 

 

「ねえ、委員長そろそろ…」

「ゔるぜぇエんあぁ」

「は…?」

 

 

 ギチギチと首だけで振り返り、委員長が涎を溢れさせながら低い声で返事をしてきた。

 明らかに可動域が限界そうな首もだが、委員長はさっきまでの淑やかさを何処へやら白目をむいてこめかみに血管を浮かせている。

 本当に同一人物? ゾッとするとような変化だった。

 

 

「ィいっづまでもォギャアギャアくんだらねェごとッばっぁかりくっちゃべりィやがってェよォオッ!!!!!」

「い、委員長…?」

 

 

 委員長の尋常でない様子に思わず後ずさる。グラグラと頭を抱えきれない様子で委員長が一歩、私へと近づいてきた。

 そこで気がついた。髪に差さっていた玉簪が委員長の手に握られている。

 一歩。また委員長の足が私へと近づく。

 ギョロギョロと目玉は動き、ついにはその唇から泡が漏れ出した。こわい。

 

 

「でンめェのぜいでよォ…ッ! おれァがァアDIOざまァにィッおしがりうげちまっッだじゃあねェがよォオッッ!!!! クソがキャァア!!!!」

 

 

 委員長が低い声で叫び、手に握る簪を私へと振り上げた。

 DIO……ッ!!!!!

 委員長が知るはずのない名前だ。つまりこれはスタンド攻撃!!

 

 私の足元からダンス・マカブラが一瞬で広がった。一切のものを吸収するダンス・マカブラに今まさに振り下ろされかけた委員長の腕は絡みとられ動きを止める。

 ナルトの影縫いの術…みたいな。

 

 触れている委員長の身体を吸収せずにダンス・マカブラが実体化している……。

 触れられたのか…という驚きを内心に隠す。そういえば断髪事件の際のトイレでダンス・マカブラに頰を()()()() た。

 

 

「デメェエ…!!!! やっばりィ!! スタンド使いなンじゃあねエがよオォッッ!!!! DIOざまッがらァあずがったァ!! おれン矢ァ!! がえぜェエッ!!!!!」

 

 

 私が自分のスタンドのことをほとんど理解できていないことはひとまず置いて、とんでもない形相で叫ぶ委員長……DIOの手下へ視線を戻す。

 矢……ということは、あの突然飛んできた矢を放ったのはコイツなのだろう。

 問題はこの委員長が本物なのか、入れ替わりなのかというところだ。

 心の底が冷水を浴びせられたように冷えていく心地だった。巻き込んでしまった。

 

 

「目的は?」

「いゔわげエねェだろがァア!!」

 

 

 委員長の身体へダンス・マカブラを這わせながら、操っているならどこかにいるはずの敵のスタンドを探す。

 

 

「そうやって私の前に姿を見せたのは何か目的があるからでしょう? 目的は先に明確に伝えておいた方が時間を無駄にしないで済むと思わない?」

「あ“ァッ…!?」

 

 

 努めて冷静に。お前のことなど全くこれっぽっちも意に介していないのだと、印象つけるために提案をする。

 委員長の身体のどこかにいる、あるいは単純な入れ替わりだと調べるための時間稼ぎだ。

 ダンス・マカブラが委員長の浴衣の下を這っていく。

 スタンドらしきものはない。未知のスタンド使い。それも洗脳か入れ替わり系。

 初めてのスタンドバトルがコレってハードモードすぎるでしょうがッ!

 

 

「テメエにスタンドがあるがァ確認ンンしろっでエェ、命令ざれでンだよオ!!」

「へえ……それで? 私にスタンドがあるとわかった。その次にあなたがしたいことは何? 内容によっては抵抗しないわ」

「……、ああ”ァ……デメェをDIOざまンどころォッにィ!! 連れでいぐウゥ!!!」

 

 

 ぎゃーすと叫んだ委員長。こめかみに浮かんでいた血管はぶちっとちぎれて血が噴き出た。

 真っ赤な血が私の方へと広がるッ!

 そして噴き出た血のなかにソレを見つけた。

 

 

『ぎひぎひッぶっごろじてやるゥッッ!!!』

 

 

 真っ赤な血が人の顔のようになって()()

 血の形のスタンド…!!?

 んなのありかよ!!?

 体表を探してスタンドが見つからないわけである。

 委員長を操るスタンドは委員長の体内にいるッ!

 そんなのどうやって引き剥がせと? 大きく委員長に傷をつくって大量に出血でもさせてみろと!?

 普通であれば委員長の無事を諦めるしかない最悪のスタンドだ。

 

 

「ダンス・マカブラ!! ()()しろッ!!」

 

 

 普通であれば、ね。

 体内にいるのだと理解(わか)れば、あとは対処するだけだ。自ら姿を現してくれて超ラッキー。

 例えば殴られた衝撃だけだとかも、ダンス・マカブラで吸収できるとすでにわかっている。

 神社の階段から落ちかけたときのスタープラチナの腹パンのおかげでわかったことだ。

 

 

 血液のスタンドを吸収しながらダンス・マカブラでキツく締め上げる。

 

 

「きゃー!!!」

「なんだコイツッ!! 急に倒れたぞッ!!」

「先生よんで!!!」

 

 

 少し離れた教室からそんな悲鳴が聞こえた。どうやら本体も近くにいたらしい。

 ふん、と鼻を鳴らしてダンス・マカブラがいつもの通り足元の影に沈み込んでいくのを見送った。

 スタンドの操作から解放され、倒れ込んだ委員長の身体を支える。

 

 

「あ、れ…恵古(えこ)、ちゃん? 私ったら、いったい……」

「最近文化祭の準備で忙しかったからねえ…私が先に教室に戻っておくから委員長は休んでて」

「えぇ…でも…」

「いいからいいから」

 

 

 手のひらをダンス・マカブラで覆い委員長の額に張り付いた血液の干物のような状態のスタンドを引き剥がした。そのまま足元のダンス・マカブラへと投げ込む。

 吸収したのはおそらく…スタンドのパワーのようなものだろう。

 

 せっかくの文化祭の楽しい気分に水をさされて大いに不快だ。

 それより重要なのはDIOが私の存在を知り、かつスタンド使いであるかどうかを知ろうとしていることだった。しかもあのスタンドは私をDIOのところへ連れて行くとまで言いやがった。

 

 人が突然倒れて騒がしい廊下を、ムッとしながら自分たちのクラスの展示している教室へと戻っていった。

 

 

 DIOの手下を倒し…倒したということでいいのだろうか。

 手下と連絡がつかなくなればおのずとDIOには私がスタンド使いであることはバレるだろう。

 

 

 後夜祭ではカップル成立と思しき生徒たちが楽しそうに過ごしていた。

 ファンガールの何人かも男子生徒とアベックを作っている。

 彼女たちの大半の目当てである空条は後夜祭の前にさっさと帰宅したようだ。さもありなん。

 

 

 

 そして何もないまま一ヶ月近くが経ち…空条承太郎が登校しない日が続いている。

 ……ついに始まったのだろうか。

 近頃はいつまた襲ってくるかもしれないDIOの手下を警戒していつもより早めに登校していた。

 けれど空条承太郎の登校は女子たちが色めき立つから時間が被らなくても割とわかる。

 

 

 誰もいない早朝の通学路。私の行手を阻むように一人の男が立ちはだかる。

 一見すれば、ただのチンピラのようなどこにでも居そうなガラの悪い男である。

 だが、その目に宿る明確な害意にはっきりと理解した。

 

 

「スタンド使い?」

「ええ、ええ、よォくおわかりで! さすがはDIOさまの娘さん! 賢くあられるッ!」

「……」

 

 

 目をかっ開き、上機嫌に口を開いた男へと警戒から一歩、後ずさる。

 こうしてさっさと姿を見せたということは…文化祭のときとは違うタイプのスタンド使い…!

 

 

 足元のダンス・マカブラをセーラー服の下で全身へと纏っていく。文化祭で襲ってきたスタンド使いは私をDIOのもとへ連れていくと言っていた…この場で殺されることはないだろうが念のためである。

 

 

「さあさあ、お迎えにあがりましたよオ、お嬢さまア! これよりお父上のところへお連れいたしまアアすッッ!!」

 

 

 男の背後に煙のように現れたのはピンク色をした腕のない胴体と周囲に両手を浮かせたスタンドだ。

 どんな能力であろうか。おそらくは実力行使(・・・・)の可能なスタンドのはずだ。

 しかし人型である。奴から私まで目測で距離は2メートル以上はある。

 近距離パワー型ならこれ以上近づかなければ問題な──、

 

 

「ロールウィズイット!!」

 

 

 男の掛け声。スタンドが地面を殴りつけた。ぐねり。視界が揺らぐ。

 地面がネジのように()()()()

 

 

「チンタラ逃げられちゃあ面倒だからよオ……!! DIOさまには息がありゃあどうなってても良いって言われてるンでなア!!! まずはその足ィッ!」

 

 

 地面ごと捻られたことで物理的に縮んだ距離。すぐ目の前に迫ったスタンドの拳が目の前に迫る。

 ──あ、これマズイ。

 

 

 ダンス・マカブラが覆っているのはセーラー服の下。足は素肌だ。

 拳は私の顔でなく、まっすぐにその下、宣言通り足の方へと向けられる。

 服の下でダンス・マカブラが足の方へと蠢く。けれど今まさに振り下ろされていく拳から足を守るには、ほんの一瞬の差で間に合いそうにないッ…!!

 

 

 

 足…骨と筋肉さえ無事なら逃げられる。この場から離れられる。まっすぐに私の脛を狙う拳を、ほんの少し。数ミリだけズラせれば、それだけで──状況を立て直せるッ!!!

 

 

 

 ビュンッ。

 セーラー服の襟からダンス・マカブラが伸びて風切り音を()()()()()

 拳の軌道がズレた。拳は地面を抉り捻る。

 

 ダンス・マカブラで脛ごと足を覆うも、捻りにローファーが巻き込まれてしまった。

 地面と同じように捻られたローファーのなかで左足の皮膚が裂けて血が噴き出る。

 

 

「ッ!!」

「ああ…??? ンだぁ? 消しゴムゥ…?」

 

 

 痛みに耐えて、ダンス・マカブラのスピードに手伝ってもらって敵のスタンドから飛び退いた。

 ジュクジュクと血が捻れたローファーの隙間から滴り落ちていく。ハサミの形に変形させたダンス・マカブラで捻れたローファーを切り取って脱ぎ捨てる。

 

 たった今の出来事に男が顔を顰めて、捻れた地面のすぐ近くに落ちていた白い何か──消しゴムを拾い上げた。

 

 それは使いかけの前の席の男子の消しゴムだった。

 さっきの風切り音……表現するなら、そう……まるで()()()()()()()かのような……それについて思い当たることがある。

 

 

「チッ…くンだらねえ真似ェしやがってェ……お嬢さまァ…一般人なら存知ないかもしれませんがねェ、こういうときには大人しく従っていねエと余計な痛い目に遭うンですよオ〜???」

「……初対面でいきなり殴りつけてくるような奴が何を言っても戯言でしかないんじゃあなくて?」

「あはァ……息さえありゃあいいってエ、言われてンだわア……小生意気なその舌ァ、捻り切ってやらァッッ!!!」

 

 

 

 どこかのぼんやりとしていた表情を鬼の形相へと変え、男が叫んだ。再び男のスタンドが拳を振り上げる。

 

 

「……()()()()……アンタのスタンド能力はすでにッ! 理解()っているッ!!!」

 

 

 理解さえ出来ているなら二度目のそれにも冷静さを失わずにいられる。

 さきほどは突然のことで咄嗟の反応が遅れてしまったけれど……このスタンドのスピードよりもダンス・マカブラの方がはるかに速いッ!

 近づいてくるスタンドの拳を見つめながら、纏っていたダンス・マカブラを()()へ変形をさせた。

 

 

 ──私はほんのちっともダンス・マカブラ(自分のスタンド)を理解できちゃあいなかった!!

 

 

 人型となったダンス・マカブラが()を握りしめる。

 

 

 ──ダンス・マカブラの能力は!

 ──吸収ッ!

 ──そして放出ッ!!!

 

 

 飛んできた矢と、その衝撃を吸収したとき──吸収した衝撃はもう一つある──ッ!!

 それはダンス・マカブラでさえ吸収しきれなかった、とんでもないエネルギーッ!!

 

 

 

「将来……()()と呼ばれるスタンドのパワーを食らえッ!!」

 

 

『オラァッッ!!!!』

 

 

 ダンス・マカブラが拳を敵スタンドの胴体へと叩き込んだとき、そんな空耳が聞こえた気がした。

 スタンドとともに男の身体が吹き飛んでいく。

 背骨が折れるか内臓がいくつか潰れるかはしているかもしれない。

 

 

「……私のローファーをダメにした報いと思えばね……」

 

 

 そもそも足ごと捻られようとしていたわけだし…?

 ……どうにか自分を正当化しようと試みて、結局放置はできずに足を引きずりながら近くの公衆電話で救急車を呼んでおいた。

 

 ハンカチをとりあえずズタズタになった足を巻き……いやもうダンス・マカブラで覆って止血と靴代わりにしてしまった方がいい。

 そうして足を引きずりながら、普段よりも倍以上の時間をかけて登校したのである。

 だって学校なら上履きを履いて帰れるし…そもそも帰宅するより学校の方が近かったので……。

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 スタンド名・ロールウィズイット

 

 腕のない胴体と、両手が浮いているスタンドヴィジョン。スタンドで触れたモノを捻る能力を持つ。

 破壊力ーA

 スピードーC

 射程ーE

 持続力ーC

 精密動作性ーE

 成長性ーD

 

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