そこの陰キャ系メガネ女子、強者。 作:メガネだいすき
――私は転生者である。前世において有名な作品である"葬送のフリーレン"という世界に転生したのだ。
最初こそ驚きを覚えていたのだが、あいにく生まれてすぐではなく生まれて少し経ってから突如思い出したように前世の記憶が蘇ったのもあり、受け入れるのにさほど時間はかからなかった。
私の前世は"推し"に夢中になれるぐらいに、平穏な人生を送ったとも言える一生を送っていた。
前世、私が"推し"とそう呼ぶキャラクターは一人に限定されたものではない。ジャンル的には広い方にあたる。
そう……陰キャ系メガネ女子だ。
陰キャ系メガネ女子というのは、ありとあらゆる可能性を秘めている偉大なる存在だと私はそう考えている。
メガネを外したら美人、というギャップ。メイクすれば、かなりの美人に変身するという素質持ちなどなどしかりetc……とにかく凄い存在なのだ、陰キャ系メガネ女子というのは。
最初は、あまり満足に話しかけられなくて戸惑いを覚えていたあの子が――徐々に心の距離を縮めていって。最後には陰キャという要素が抜け落ちたように、積極的になる一面を見せてくる。
これぞ、ギャップだ。ギャップ大好き。愛してるぜ。死んでもいいぐらいに尊いんだ。
……ただのギャップ好きでは? とか言うのもアレだが、自分にとっては好みな属性しか詰め込まれていない存在と言える。
そりゃあもう前世では陰キャ系メガネ女子のキャラクターが出るアニメや漫画は全てチェックしていた。
その上でアニメはきちんと録画する。そしてちゃんと公式サイトを通してDVDやグッズを購入する。
DVDは、視聴用として1枚。そして大事に飾らせていただくという目的でもう1枚。いつも2枚ずつ購入して楽しむぐらいに、陰キャメガネ女子狂の私である。そんな陰キャメガネ女子という"推し"を楽しんで人生を送っていた――それが私の前世であった。
それを踏まえて考えると――陰キャ系メガネ女子があまりいないというこの世界は試練の一つではないのかと変に考えていたりもする。
正確に言うなれば"メガネ"という道具はある。現代とは大きくかけ離れた世界だが……それでもメガネが存在しているという事にはもう、世界に足を向けて寝られないぐらいに歓喜しまくっていた。
だが、"陰キャ系メガネ女子があまりいない"という事実――それに、私は大いに悩んだ。
そこでもう一つの要素――"推し"というか、好きなジャンルと言っていいか……そのジャンルが絡んでくる。
それは、"最強系"だ。
最強系主人公というものが、前世では流行っていた。神様からもらった能力で蹂躙していくモノもあれば一見役に立たないスキルでも解釈次第で大きく化けやがて最強へ至るというモノもあった。
そういう最強系主人公モノを好んで読んでいた。自分も転生したら、こういうスキルをもらって、それで異世界を楽しく生きてやるぜーとかそういう妄想をしていた事もある。
陰キャ系メガネ女子という"推し"に加え、最強系という"ジャンル"。
この二つを合わせると―――最強系陰キャメガネ女子になる。
これを思いついた時は、本当に身体の芯から痺れた感覚がしたね。
自分の愛してやまない陰キャ系メガネ女子が、最強に至る物語――なにこれ、神かよ??ってな。
そんな話があったらすぐさま購入して隅から隅まで見る。
だけど、私には誰かを指導して最強に至らせるという力は持ち合わせていない。そもそも指導ってどうやんのかな……って思うぐらいに不安要素有りまくりだ。
ならばどうするか――もちろん、自分が最強系陰キャメガネ女子になる!!
大人しいメガネの女の子が、いざ戦いをやると毅然とした態度に変わり、惜しむ暇もなく凄まじい魔法を展開していく。
――うん、素晴らしい。
「ふふ、ふふふふ……」
これぞ、究極の自給自足だと思った。
ただ、一言に"最強"と言ってもどれぐらいの域にいるのかがイメージしにくい状況にある。やみくもに最強を目指すといっても効率的ではないという事は分かり切っている。
つまり自分の思う最強無敵の"推し"に早くなりてーな。という訳である。
そう考えると……女神様に最も近い魔法使いという二つ名がある彼女――ゼーリエ。
女神様に最も近い魔法使い、つまり人間が習得できる魔法その全てを習得しているとも言え……まさしく"最強の魔法使い"とも言えるのではないか? と思う。
原作を知っている私から見ても彼女は規格外と言えるぐらいの存在。そんな彼女に、会えたらきっと"最強"の域をイメージ出来るだろうと考えている。
さて、彼女に会うといってもまだ何の実績もない私では社会的信用など皆無に等しい。彼女に会わせてほしいと頼んでも門前払いがいい所だろう。
ならば公式に会える方法……そう、一級魔法使いの座に就く事だ。一級魔法使いの座に就く際に"特権"として彼女から自分が望む魔法を一つ授けてもらえる。
そういった場に来て初めて"最強"という存在に相まみえることが出来るという事である。原作では、第三次試験で彼女自身が面接官を務めていたが――それは第二次試験で想定以上の合格者が出たというイレギュラーな事態があってこその事だ。
従来通りに試験が進むのであれば、恐らく最後まで残らないと相まみえないのだろうと考える。
――よし、一級魔法使いになる為に当分は訓練あるのみだ。
……そうそう、闇魔法使いとか言われないよう予め登録しとかなきゃな。
そう決めた私は服装や髪、姿勢を整えてから外出することにして。
それなりに整えて最後に
「……うん、良いね! これなら自分を推せるぞ!」
鏡を通して自らの姿を確認した私は、改めて気合を入れ直して外出することにした。
――――待ってろよ、最強!
◇
「あ、あの……よ、よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
この人が、
大陸魔法協会において、ある人物の実話が広がっていた。それが見習いである"九級から五級に飛び級を成し遂げた"という実話。
確かに、飛び級というのは階級が上の者からの許可を得れば可能な事。実例は少ないが、あるにはあった。
だが、見習いである九級から魔法使いとしての一人前である五級まで一気に飛び級を成し遂げたという例はなかった。
だからこそ、前人未踏とも言える所業を成し遂げた人物に注目が集まるのは言うまでもない。
その人物というのが――紛れもなく試験官の目の前にいる、エルケという人物。今回の試験は、二級――しかもこれが最終試験だ。
今度は、五級から二級への飛び級を果たそうとしていると来る。
しかし、正直に言うなれば……とてもそのような事を成し遂げたようには見えないといったところか。
姿勢はやや丸くなっており、顔立ちは子どものような童顔。そしておさげ三つ編みの薄い茶髪。
何と言うか気迫のきという文字さえ感じられないというのが正直な感想である。それに、ぐるぐるメガネ……?も合わさって尚更疑念を抱かざるを得なかった。
しかし、それはあくまでも私情である。実際最終試験まで残るほどの実力があるというのだから尚更。
最終試験は、試験官と一対一の実戦形式。階級的にはエルケより上である試験官だがだからといって油断していい話ではない。
真摯に試験官として励むのみだ。
そして――――試験開始と同時に。
「<
「ッッ!?」
エルケが発動させた魔法にて、炎球が生み出されると同時に試験官に向けて撃ち出された。それを目にした試験官は目を大きく見開く。
――なんだ、あの
気配は間違いなく炎のそれだが――自分が既知している炎と色が違うのだ。白みがかかっているような黄色い炎。異常なまでに熱気がこちらまで伝わってきていた。
身の危険を感じた試験官は、すぐさま全力とも言っていい防御魔法を展開しエルケの魔法を迎える。
避けられるなら避けたいところだが、あいにくエルケの魔法詠唱完了に炎球の撃ち出す速度があまりにも速かった為それも叶わなかった。
「――――」
そして――試験官は、急激に周りの時間の流れが遅くなったような感覚に陥る。
――自分の展開した防御魔法が、文字通り
だが、炎球の凄まじい温度によって防御魔法が
「ご、ごめんなさい」
「……、………………大丈夫です」
ちっとも大丈夫ではないのだが、そこは試験官としても最後のプライドがそうさせていた。
試験開始と同時に試験官を撃破。文句の言いようもなく二級試験合格となった。