Devil May Cry Another Trigger 作:究極の闇に焼かれた男
MISSION0:PROLOG
【悪魔】--伝説上や御伽噺の存在とされているそれは人知れず人間の世界で暗躍し、人々の心を惑わせて命を奪い欲望のままに暴れる魔界の住人達。
今から2000年程前に【魔界の王】と呼ばれる存在と共に悪魔の大軍勢が人間の世界へと侵略して来た。
悪魔の圧倒的な力の前に人々は滅ぶ寸前まで追い詰められる事となったが、1人の悪魔が王を裏切り人間の味方となり魔界の軍勢を退けたと言われている。
その悪魔は己の力と共に魔界を封印した後、人々の世界に留まりその暮らしと営みを見守り続けたと言う。
だが、その悪魔がある1人の人間の女性と恋に落ちた事によって、悪魔と人間の血を受け継ぐ1人の少年が誕生していた事を世界は知らずに居た。
2000年後…
【ベイロンシティ】--様々な諸外国が運営しているにも関わらず、何処の国にも属さないメガフロート型の人口都市。そこでは"D災害"と呼ばれている事件が多発していた。
D災害とは悪魔と契約した人間…通称"悪魔憑き"が引き起こしている事件で、表向きでは事故や災害等として語られている裏で多くの問題を引き起こしている災害と言っても差し支えない存在である。
D災害に対してベイロンシティ警察内に存在している特別犯罪対策局こと"対魔局"が主に取り扱っているが、対魔局では対処が困難と見なされた場合は入札という形でPMC(民間軍事会社)へと外注している。
しかし、そんなベイロンシティ内で唯一PMCでは無く独自に悪魔退治を生業とする1人の青年が居た。
どんなに安くても悪魔退治を引き受け、確実に悪魔を仕留めると言われている青年へと依頼する者は数知れず、彼に依頼する者の殆どは対魔局やPMCを信頼出来ないと言った様々な理由が多いいとされている。
そんな悪魔退治を行う青年の名を【黒咲優也】と呼ぶが、彼の事を知る人々はこう読んでいる。
【デビルハンター】と。
──────────
ベイロンシティの歓楽街に在るカジノハウスの店内、そこで類人猿に似た姿をした巨大な悪魔と、腰に銀と黒の二挺の拳銃を差した1人の青年が対峙していた。
「──おいおい、遂に猿がカジノをする時代になったのかよ……勘弁してくれ。そんな下手なコメディ番組みたいな状況で博打なんてやれるかっての」
青年が笑みを浮かべながら言い放つと、類人猿に似た悪魔は唸り声を上げながら長い腕を振るい青年の事を殴り飛ばそうとする。
悪魔が放った大振りの一撃に対して青年はその場から軽く飛び上がって回避すると、逆さまの状態で銀と黒の二丁拳銃を引き抜き悪魔に銃口を向けると引き金を引き始める。
凄まじい炸裂音と共に放たれた弾丸は悪魔の腕に直撃すると血を流しながら千切れ落ちる。
「おっと! 流石に片腕だけで博打は難しい。 こりゃあ、引退する事をオススメするぜ」
華麗に着地した青年が視線を向けると腕が千切れた事で地面をのたうち回っている悪魔の姿を見て、青年がそう告げるも凄まじい激痛に襲われている悪魔の耳に聞こえていなかった。
「ガッツが足りないみたいだな……デカい割りに虚仮威しもいい所だ」
青年はどこか落胆した様子で呟くと、背中に背負ってある髑髏の意匠がある一振の大剣を手に取ると悪魔に向けて切っ先を向ける。
「だが───お前を狩らない理由にはならないんでな。遠慮なく斬らせてもらうとしようか!」
そう言うと青年は大剣を片手で持ち悪魔目掛けて駆け出すと、地面を強く蹴りつけながら飛び上がると落下の勢いに乗って悪魔の脳天へと大剣を突き刺す。
脳天を貫かれた悪魔は凄まじい量の血を流し始めると藻掻く様に暴れるも、血が流れ続け悪魔の動きが鈍くなり始めて行く。
そして血を流しきった悪魔は絶命すると共に、黒い灰となって消滅するのだった。
悪魔が消滅すると地面に突き立てられている大剣を引き抜いた青年は軽く息を吐き、引き抜いた大剣を背中に背負い直すと近くで隠れていたカジノハウスのマスターへと視線を向ける。
「これで依頼は完了だ。後始末はそっちでやってくれると助かる」
青年がそう告げるとカジノハウスのマスターである男は満足した様子で頷くと、一つのアタッシュケースを青年に差し出す。
「実に素晴らしい仕事振りだったよ。これはあの悪魔を倒してくれた感謝の印だ。好きな様に使ってくれ」
「そうかい。それなら遠慮なく貰うとしよう」
男からアタッシュケースを受け取った青年はそう答えると、後始末を任せカジノハウスを立ち去って行く。
そんな青年の後ろ姿を見て男はジッと見つめながら、少しの間を置いてからある事を呟いた。
「流石は噂のデビルハンター。その名に恥じない実力と性格、どうりでPMCや対魔局から恐れられる訳だ」
──────────
ベイロンシティの住宅街に位置する場所、そこに青年の自宅である一軒家はあった。
「…時間を掛け過ぎたか。流石に『あの娘』も寝てるかな」
自宅の前でそう呟く青年の口調はカジノハウスの時と打って変わって年相応の物となっており、その表情は何処か申し訳ないと言った顔をしていた。
「……とりあえず、速攻で謝るか」
意を決した様子を見せた青年は自宅の扉を開けて中に入り、リビングの方へと向かうとそこには1人の少女がソファに座っている姿があった。
美しい桃色の髪と紅い瞳を持つ少女の姿を捉えた青年は見慣れた光景に頭を搔いていると、青年の存在に気が付いたのか少女が視線を向けて来ると満面の笑みを浮かべながら口を開いた。
「お帰りなさい、ユウくん♪」
「ただいま。それと遅くなってごめん、【キサラ】」
キサラと呼ばれた少女が口を開くと青年こと黒咲優也は返事を返しつつ、頭を深く下げながら謝罪をする。
「ううん…ユウくんの事だから、きっとお仕事の方を頑張ってたんでしょ?」
「それでも長い時間、独りにした事に変わりは無い。だからごめん」
「大丈夫……ユウくんは他の誰かの為に、それ以上にわたしが普通の人間として暮らせる様に頑張ってるのは分かってるから」
優也の言葉に対してキサラがそう告げると、キサラの言葉に優也はどこか気恥ずかしそうに頬を搔きながら視線を逸らし始める。
その様子を見てキサラは、くすくすと笑いながら優也に対して口を開く。
「それよりもお腹空いてるだろうと思ってご飯の用意はしてあるから早く一緒に食べよ?」
「キサラの手料理か、それは残す訳にはいかないな。それじゃあ遠慮なく貰うかな」
優也がそう答えると「直ぐに持ってくるから、少しだけ待ってて」と言い、キサラは食事を取りにキッチンへと向かうのだった。
そんなキサラの後ろ姿を優也は優しく見送ると、近くの棚に背負っていた大剣を立て掛けるとソファへ腰を下ろし、キサラが来るのを待つ事にするのだった。
それは単なる偶然が重なった結果に過ぎなかった。
とある悪魔と人間の間に生まれた1人の青年が、偶然立ち寄った雪山の洞窟にて自身と同じ存在である1人の少女と出会い、恋に落ちた末に結ばれた。
これから語られるのは悪魔の血を受け継ぐ青年と少女と、それを取り巻く様々な人間達の物語である。
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