鋼の意志でヒーローを目指す障子君を絶対に曇らせる妹 作:アキ山
スパロボも投稿せねば
雄英体育祭で起こった突然の乱入者。
件の少女自体が個性訓練の際に偶然迷い込んだという事もあり、雄英高校側や観衆に何ら被害はなかった。
しかし、実況席の中で行われた十分ほどの会話が世間に及ぼした影響は意外なほどに大きかった。
その内容が異形型個性保有者に対する地域ぐるみの差別や虐待の実態と、その被害者である未成年の少女が辿った転落だったからだ。
雄英体育祭はただの学校行事ではない。
日本はもちろん世界的にも指折りのヒーロー育成学校が行う、未来を担うヒーローの有精卵達が死力を尽くしてぶつかり合う一大イベントだ。
旧世界のオリンピックに代わるとまで言われるそこで社会の闇が暴露されたのだ。
国内外を問わず多くの反響を呼ぶのは当然だろう。
実際、体育祭の直後に欧米の各国から差別反対の声明が寄せられる事となった。
同時に国内でも差別を受けたとされる異形型個性保持者やその支援団体によるデモが全国規模で多発。
中には今までの鬱憤から暴動に発展する事例もあり、国は解決の為に重い腰を上げざるを得なかった。
政府は国際社会と異形型個性を持つ国民の留飲を下げるべく、発端となった少女に差別を行っていた村への立ち入り調査を行った。
少女が自主退学した雄英生の妹という事で村の特定が容易だったこと。
そして差別に現地警察官も加わっていた事を示唆された警察が汚名の払しょくと信用回復の為に積極的だったこともあり、捜査は迅速で大規模かつ詳細に行われた。
その結果、村長を始めとする村の殆どの大人が児童福祉法違反に暴行、殺人未遂などで逮捕された。
捕まった者達は『村の言い伝えは正しかった! 忌み子が村を滅ぼした!!』と被害少女に恨みを募らせていたが、そんな戯言を世間は相手にしなかった。
被害少女の両親も保護責任者遺棄罪で捕まったが、『私達が悪かった』と言い訳をすることなく警察に連行されたという。
また、この少女はヒーロー業界へも大きな波紋を呼んだ
なんと彼女はNo1ヒーローであるオールマイトの事を知らず、本人を前にしてもこう言い放ったのだ。
「助けてくれないヒーローの名前なんて覚える必要ないと思うけど」
この発言はヒーローが当たり前である世間はもちろんのこと、そこで活躍するプロヒーロー達も激しく揺さぶった。
如何に厳しい選抜を潜り抜けてプロとなったとはいえ、彼等も人間である以上は不可能な事もある。
ベテランはもちろん新人でも救えなかった者、取りこぼしてしまった被害者はいるだろう。
少女の言葉はそんな彼等の怨嗟を代弁した物と受け止められたのだ。
これは真面目なヒーローほど影響が大きかった。
己の指から零れ落ちた被害者の心情を一部でも知った彼等のショックは大きく、中にはヒーローの看板を降ろす者もあらわれた。
そんな彼等に一部では非難の声も上がったが、多くの人間や特に同じ業界の者達は責めることはなかった。
大事な者を失った遺族の嘆きを、怪我による障害を負って未来を閉ざされた者の絶望を、そして命を絶たれた者の死に顔を最前線で見るのはヒーローの宿命と言っても過言ではない。
その時、悔恨と己の無力感を胸に刻んでいない者などヒーローにはいないからだ。
同時に少女の発言は多くのヒーロー達が褌を締め直す切っ掛けにもなった。
もう彼女のような人間を生み出さないようにしよう。
自分を助けないヒーローなど知らない、そんな言葉を誰にも二度と言わせないようにしようと。
当然だが、少女の発言は競技を行っていた雄英生達にも多大な影響を及ぼした。
ヒーローを志す彼等にとって、自分の手が届かない者がどんな感情を抱くのかという一例はショッキングだったのだ。
己が追い求めてきた夢の舞台、その陰に横たわる深く昏い闇。
それを目の当たりにして心を乱さない者などいない。
特にUSJ襲撃事件で直接かかわり、障子目蔵のクラスメイトだった1-Aの生徒達はショックが大きいようだった。
しかし生徒・教職員共に意気消沈するなかで、むしろ発奮する者もいた。
それは緑谷出久と3年生の通形ミリオだった。
障子へ謝り彼等兄妹を闇から救うと決意していた緑谷は、少女のオールマイトを知らない発言に激怒した。
「オールマイトを! ヒーローを知らないなんて、人生の9割は損している!!」と、自分が彼女を助けてヒーローの価値を認識させるのだと元ある決意を更に強固にした。
ある意味、ヒーローオタクたる緑谷らしい発奮の仕方だろう。
それが結果として現れたのが、発言が出た当時に行われていたガチバトルトーナメントの対轟戦だった。
緑谷の説得で封印してきた炎の個性を放とうとした寸前、少女の『性的暴行を受けた様子を撮影されてネットに流された』旨の発言に動揺した轟は左腕に宿っていた焔を消してしまう。
対する緑谷は手始めにこの運動会でカッコいい所を見せて認識を改める足掛かりにしようと、個性の反動で両足をへし折りながらも突貫。
結果、氷壁をブチ抜いてきた緑谷の一撃を食らって轟は気を失い敗退することとなった。
その後、緑谷は負傷の大きさからドクターストップが掛かってしまうが、推薦一位を倒したというジャイアントキリングは彼の名前を校内で一躍有名にした。
一方の通形ミリオは少女が悲劇に見舞われた時、その場にいなかった自分を恥じた。
どんなヒーローでも事件や被害者の事を認識できなければ救えない。
けれど、自分は今彼女の存在を知った。
知ったからには落ち込んでいる暇も無ければ、社会の闇から目を背けている場合でもない。
暗がりの中にいる彼女へ手を伸ばし、光の中へと連れて来なければならない。
自分が…ヒーローがマントを羽織るのは、痛くて辛くて苦しんでる女の子を包んであげる為なのだから。
その為には信用を勝ち得なければならないと、ミリオはガチバトルトーナメントを勝ち抜いて3年でMVPに輝いた。
もっとも早々に帰った少女が自分の様子を見ていなかったと知った時には落ち込んだが。
◆
雄英体育祭終了から数日、世間やヒーロー達は忙しなく動いていた。
それは雄英高校の教師達も例外ではない。
「どうだい、埋島君」
「ダメですね。発信機の方は相変わらずうんともすんとも言いません。おそらく彼女がいる場所は電波障害になるモノが多くあるんでしょう」
職員室の一画で計器を弄っているのはサポート課を担当する教員の一人、パワーローダーこと埋島干狩だ。
その後ろには根津校長を筆頭に授業の無い教師たちが集まっている。
「けど、盗聴器の方は生きてんだよな?」
「女の子に仕掛けるのは、ヒーローとしてもかなりアレだけどね」
確かめるようなプレゼントマイクの言葉に、ミッドナイトがため息の中に少しの自己嫌悪を滲ませる。
あの日、実況席に向かったのはオールマイトと根津だけではなかった。
扉の陰に雄英教師の一人、スナイプも控えていたのだ。
そして彼は障子皐月のマタニティドレス、そのスカートの端にサイレンサー付きの銃で発信器と盗聴器が仕込まれた特殊弾を撃ち込んでいた。
これに関しては生徒の自主退学の原因に加えて、婦女暴行を受けた失踪中の未成年という事で早急な保護が必要と判断されたからだ。
「その責任は私がとるのさ。障子皐月さんはあまりに神出鬼没すぎる。確認されている3体の【娘】や不明とされた彼女自身の個性を考えれば、何をしでかすか分からないからね」
「早めに居場所を突き留めて我々で保護するべきだ。ヴィランに利用される可能性だってあるからね」
根津の言葉にオールマイトが憂いを込めながら続ける。
先のUSJにおいて、オールマイトは再び蠢動を始めた宿敵の存在を察知している。
あの巨悪が彼女に手を伸ばすかと思うと、気が気ではないのだ。
「だが、昨日音を拾った時は妙な声しか聞こえなかった」
「ああ、なんか虫か鳥の泣き声みたいな奴な。たしかあの嬢ちゃんが連れていた化け物もあんな感じに鳴いてたっけか」
相澤の言葉にマイクが頷く。
そう、障子皐月は自宅では全裸で過ごすのが常らしく、盗聴器の方も彼女の居場所について有力な情報が掴めていないのだ。
「けど、あたしゃ少し安心したよ。その娘がちゃんと母親してるのがわかってね」
「そうですね。望まぬ形で生まれた異形の子、最悪の事態になってもおかしくないですもんね」
「それでも子供が一人で育児するなんて負担が大きすぎるもんさ。誰かが傍で支えてやらないとダメだ」
リカバリーガールの言葉にミッドナイトは頷く。
数日前に聞こえてきた音声は、我先に集まる子供達に楽しそうに笑いながら授乳している少女の声だったからだ。
「ちょっと待ってくれ。……うん、音波の方はまだ拾えるみたいだ。スピーカーに出すぞ」
雄英の教師たちが口々に雑談する中、埋島の機器調整が終わりを迎える。
『───早速だが僕の子を産んでくれ』
そしてスピーカーが吐き出したのは、低い成熟した男の声だった。
「おいおいおい、いきなり何言ってやがんだ、コイツは!!」
「あの娘、また妙な事に巻き込まれているのか! パワーローダー、発信機はどうだ!?」
「ダメだ! まったく反応していない!!」
「この声…まさか……」
男のあり得ない発言にマイクと相澤が焦る中、オールマイトは脳髄に沁み込んで忘れられない怨敵の声に固唾を呑んだ。
『パパになってくれるの? ありがとう! でも、よくここがわかったね』
『君が連れ去った黒霧と僕は少しだけ感覚を共有していてね、居場所が分かるんだ。あと、その黒霧の方も返してくれると助かるんだけど、どうだい』
この時点で目の前の男がUSJ襲撃犯の黒幕、そうでなくても関係者であることが分かった。
途端に職員室は騒がしくなる。
「相澤君、警察へ連絡して捜査協力を! 例の少女がヴィランと接触したと伝えれば頷いてくれるはずだ! ほかの皆も街へ出る準備をしてくれ!!」
「わかりました!」
「クソッ! こっちの発信機がダメだってのに、なんで奴等は見つけられんだよ!!」
頷く相澤に愚痴を漏らしながら椅子から立ち上がるマイク
そんな中でもスピーカーから流れる会話は続いている。
『うーん。実はね、その人はもう死んでるの。だから死体も処分しちゃった』
皐月の物騒な発言に教員たちはギョッとしたものの、オールマイトは黒霧が拉致される際に全身火だるまになった事を覚えているのでそれが原因だと察する。
『そうなのかい? だが、僕を入り口からここまで運んだのは、黒霧の個性だったけどねぇ』
『あれはボクの娘がやったんだよ。朧って言うんだ!』
「朧か……」
「知らねえとはいえ白雲の名前をあんな化け物に付けるとは、やり切れねえぜ」
偶然とはいえ亡き友と同じ名を付けられた怪物を思い出して相澤とマイクの顔に苦い表情が浮かぶ。
『驚いたよ、まさか脳無の子まで産めるとは。開発者は彼等に性欲は無いと言ってたからね』
『そうなんだ。ところで脳無ってなに?』
『脳無は僕と友人が作り出した改造人間だよ。複数の個性をその身に宿すことができて、身体も常人よりも丈夫になる兵士としては優れモノさ。そういえば、さっき黒霧と君の子の名は朧と言ったね?』
『うん。それがどうかした?』
『面白い偶然だと思ったのさ。なにせ黒霧の素体になったのは、白雲朧という雄英生だったからね』
瞬間、職員室の空気が凍った。
「なん…だと……?」
油が切れた人形のように振り返ったのは相澤とマイクだ。
『雄英って、今の通ってる人ってこと?』
『いいや、十年以上前に事故で亡くなった子だ。面白い個性を持っていたんでね、火葬前に遺体をすり替えて改造したのさ。脳無の技術なら死体でも上手に活用できるからねぇ』
そう笑う男の声に、相澤とマイクはパワーローダーが操作する機器に襲いかかろうとして、それを周りから止められる。
「放せ、13号!!」
「落ち着いてください、相澤先輩!! ここであの機械を壊したら手掛かりが無くなります!!」
「ざけんなよ! ふざけんな!! 白雲の死体をすり替えただと!? 改造しただと!! じゃあ何か! あのバケモンが白雲の娘だってのか!!」
数人に押さえつけられ、涙ながらに叫ぶ相澤とマイク。
友人の遺体と尊厳を徹底的に貶められた事実に憤る彼等に掛ける言葉を持たなかった。
そんな中、オールマイトは歯を食いしばり固く拳を握る。
「間違いない。いま障子少女の前にいるのはオール・フォー・ワンだ」
死亡した雄英生の遺体をすり替えるコネ、脳無を開発する財力、そして他者を見下して不快にさせる為だけにあるような声としゃべり方!!
あの男だとすれば、障子皐月に盗聴器が仕込まれている事を察しているのだろう。
それが我々の手によるものだという事も。
だからこそ、敢えて我々の心にダメージを与えるべく最悪の事実を口にしたのだ。
破壊されてしまった黒霧という脳無の最後の使い道として。
『そういえば聞くのを忘れてたんだけど、おじさんってなんて名前?』
『オール・フォー・ワン。そうだね、長いから先生と呼んでくれればいいよ』
「ッ! 根津校長、行きます!!」
「待つんだ、オールマイト。障子皐月君の居場所が分からない今、闇雲に探すのは得策じゃない!」
「ですが、あの男が障子少女の前にいるのです! 彼女がどんな目に遭わされるか……!」
「今、サポート課の人間が探査用ドローンを街中に飛ばしてます。盗聴器の電波を手掛かりにすればある程度場所は絞れるので、もう少し時間をください!!」
「あの巨悪と戦うとなれば、君の力が必須だ。肝心な時にタイムリミットを迎えさせるわけにはいかない。あと少しだけ耐えてほしいのさ」
「わかり…ました……」
パワーローダーと根津校長の説得に食いしばった歯の隙間から言葉を絞り出すオールマイト。
そんな彼等の様子をあざ笑うかのようにスピーカーからの会話は続く。
『それでさ、先生。どうしてボクに子供を産んでほしいの?』
『以前、USJで君に襲いかかった男を覚えているかな? 死柄木弔というんだけど』
『しがらき? 誰それ』
『ほら、体中に手を付けていた男だよ。黒霧と一緒にいた』
『ああ、あの手男か! その人がどうしたの?』
『君が殺したあの男はね、僕が後継者と目していた人間なんだ。十年以上手塩にかけて育ててきたんだぜ?』
『だから、手男を殺した責任を果たせってこと?』
『そういう事になるねぇ。なにせ弔、いや志村転弧を用意するのは本当に手間が掛かったんだよ』
「……なんだって?」
オール・フォー・ワンが口にした名前にオールマイトは心臓が跳ね上がるような感覚を覚えた。
『さっきと名前違うね。手男ってシガラキじゃなかったっけ?』
『ああ、あれは偽名だよ。本名は志村転弧。僕がもっとも嫌う男が敬愛する師匠、その孫なんだ』
瞬間、オールマイトは吸った息を吐き出す方法を忘れた。
「う…嘘だ……」
オールマイトの脳裏に死柄木弔の死にざまが浮かぶ。
敬愛する師匠の、最後まで人の為に戦った師匠の孫があんな風に死ぬなんて……!!
『そんな人を何で後継者として育てたのさ?』
『もちろん嫌がらせだよ! 転弧にヴィラン連合を率いらせて悪事を重ねさせる。そうすれば平和の象徴たる奴が現れる。転弧では奴には勝てないから、惨敗して一度入ったら二度と出られない監獄タルタロスへ放り込まれるだろう。その時に教えてやろうと思ったのさ、お前が地獄へ叩き込んだのは尊敬する師匠の孫なんだって!!』
テンションが上がってきたのだろう、先ほどよりも声高に叫ぶオール・フォー・ワン。
オールマイトの顔色は真っ青で口の端から漏れた吐血が細い糸を描いている。
『聞こえるかな、オールマイト! 転弧の本当の家族はあの子の個性が暴走した事で全員死んでいる!! そして今度は転弧の番だ! 志村奈々の血脈は完全に絶えたということさ!!』
「オール・フォー・ワンッ……!」
『そして師匠の孫の仇はここにいるお嬢さんだ! どうする? この子を自慢の拳で消し飛ばすか!? 僕にしたように!! いいや、お前には無理だね! 平和の象徴たるオールマイトが人を、ましてや子供を殺すなんてできやしないからなぁ!! つまり、お前に許されるのは師匠の血族の仇を前に指をくわえて見ている事だけだ!! ざまぁないぜぇ!!』
「お…おぉ……おおおおおおおおおおおおっ!!」
オール・フォー・ワンの渾身の煽りに、オールマイトの口から洩れたのは無念と憎悪が入り混じった慟哭だった。
『先生、性格悪いね。というか、ここで叫んでもあのマッチョマンには聞こえないよ?』
『いいや、聞こえるとも。スカートの端を見てごらん』
『……ありゃ? なにこれ』
『盗聴器、それに発信機も仕込まれているようだね』
『あーあ、引っ越さないとダメか。……困ったなぁ』
『その前に答えが聞きたいな。僕の子を産んでくれるかい?』
『それはいいけど、その前に見せたいものがあるんだ。ついてきてくれる?』
『いいとも』
そうオール・フォー・ワンが応えると同時に、ブツンッという音を立てて盗聴器の通信は途切れた。
「盗聴器の音波信号が途切れました。どうやら破壊されたようですね」
「ドローンの探査は?」
「まだ完全な場所の特定はできていませんが、焼津市内であることは間違いないようです!」
「焼津ならここから近い。急ぎましょう!」
「オールマイト。ショックなのは分かるけど、今は立ち上がってほしいのさ」
「分かっています。障子少女が奴の毒牙に掛かる前に、オール・フォー・ワンを倒す!!」
こうして雄英高校は非常事態へと移行し、教師たちは巨悪と異形の少女がいるであろう焼津市へ出撃するのだった。
◆
オマケ・クイーンエイリアン、ディズニープリンセスへの道。
ある日、ボクは癒威への情操教育として、御伽噺の読み聞かせをする事にした。
ボク自身の文章読解力の向上も図れるし、次の女王である癒威も仲間の大切さや愛を学べる。
燈華が言うには一石二鳥の策なんだって。
今回題材にしたのは白雪姫。
皆が知っている有名な童話だ。
他の子供達もワクワクしている事だし、早速始めよう。
―――
昔々、ある王国の女王様は伴侶を失ったことを悲しんでいました。
王配の男性は馬車の事故で亡くなってしまったのですが、その忘れ形見に女王様のお腹に一つの命を遺していったのです。
それを知った女王様は星に祈りました。
女王「どうか…どうか……この子が健やかに生まれてきますように」
この時代は赤子が元気に生まれ育つ可能性は今ほど多くありません。
愛する者の最後の贈り物を失いたくない女王様は必死に星へ願いを託しました。
すると赤子の誕生を控えたある日、星は女王様の願いを叶えるべく使者を遣わせてくれたのです。
使者【プレデリアン】「シャアアアアアアアッ!!」
女王「むごご……」
使者は女王様に親愛のキスをすると、そこからお腹の中の子供に祝福を授けました。
その甲斐もあって、女王様は珠のような可愛い女の子が産むことができました。
王女【チェストバスター】「キィィッ! キィィッ!!」
女王「い…忌み子だ! これは悪魔の子だ!! 早く処分してしまえ!!」
大臣「しかし! 王族が子を殺すのは法で禁止されています!!」
女王「それが人ではないとしてもか!?」
大臣「残念ですが……」
王女は美しく成長し、彼女の美麗さは家来や皆からは畏れ多いと遠巻きに見られるほどでした。
王女【ウォーリアー】「キシャアアアアアアッ!!」
メイド「お…恐ろしい……」
従者「化け物め…何故女王陛下はあんな怪物を殺さないんだ……」
騎士「王国の鉄の法がそれを禁じているのだ。罪人の塔に幽閉するのが精いっぱいなのだろう」
しかし、ある日悲劇が起こってしまいます。
なんと王女に侍従の娘を殺害したという濡れ衣が着せられてしまったのです。
王女【プレトリアン】「シィィィィィッ!!」
従者「な…何故だ!? 何故幽閉されている王女の部屋の中にメイドの死体が!!」
メイド「食事を…食事を持って行った時に殺られたのよ!!」
騎士「なんということだ!? 神よ! あの怪物に聖なる鉄槌を!!」
美しい王女を日ごろから妬ましいと思っていた女王様は、これを理由に魔法で王女を赤ん坊にまで若返らせて国から追い出してしまいます。
女王「貴様はこの王国を蝕むガンだ!! 消えろ! 我が生涯の汚点よ!!」
王女【セミ・クイーン】「シギャアアアアアアアッ!?」
実は女王様は王女を亡き者にしようと、以前から画策していたのです。
それも国中から注目を浴びる自分の娘の美しさに嫉妬しての事でした。
女王「あの化け物め! 日に日に大きくなって凶暴性も増している!! 鏡よ! あれを滅ぼす術を我に授けよ!!」
魔法の鏡「無理ぽ」
女王「……貴様、それでも英知を司ると言われた伝説の神鏡か!?」
魔法の鏡「ババァ必死乙」
しかし王女は星に守られていたのか、命を奪う術がありません。
王女に行った仕打ちは、魔法の鏡にまで裏切られた女王様の苦肉の策だったのです。
こうして国の端にある森へ捨てられた哀れな王女。
そんな彼女を助けたのは無垢な白兎でした
王女【スーパーフェイスハガー】「シュバッ!!」
白兎「ピィッ!?」
親切な兎を始めとする森の動物たちの献身によって、王女は再びスクスクと成長していきました。
バンビ「ピキィッ!?」
王女【ウォーリアー】「ムシャムシャムシャ……ゲフゥ!」
そうしてかつての美しい姿を取り戻した王女は7人の小人と出会います。
グランピー「なんじゃ! あの化け物は!?」
ドック「悪魔じゃ! 悪魔が出たんじゃ!!」
バッシュフル「ぶっ殺せ!!」
王女【プレトリアン】「シギャアアアアアッ!!」
小人達は森の外の人間に酷い事をされたのでしょう、王女を見るとイジワルをしてきました。
しかし心優しい王女は彼等を恨まずに星へ祈りました。
小人達が綺麗な心を取り戻してくれるように、と。
ハッピー「びゃああああああっ!?」
スニージー「は…ハッピーの胸から化け物が!!」
ドーピー「ま…まさかワシ等にもすでに──ブゲェ!?」
スリーピー「ドーピーぃぃぃっ!!」
すると神は王女の願いに応えてくれたのか、小人達はとても親切で優しい人になってくれたのです。
こうして小人達の助けを借りた王女は森の中で静かに、そして幸せに暮らしていました。
王女【ヤング・クイーン】「キュェァァァァァァッ!」
クマ「グオオオオオッ!?」
狼「キャインッ!?」
狩人「クマや狼から化け物が!? この森は地獄…ぐげぇ!?」
ウォーリアー「キシャァァァァッ!!」
ですが、王女の平穏な生活に暗雲が忍び寄ります。
なんと王女が生きている事を女王様は知ってしまうのです。
将軍「辺境の村はもちろん、近頃は城下町にも夜になると正体不明の魔物が現れて人を攫うと……」
大臣「噂ではその姿は呪われた王女に酷似しているというのです」
女王「あの化け物め、しぶとい! 森へ兵を出撃させよ! もはや奴は王家から追放された身! 殺す事になんの障害も無い!! 今度こそあの憎き悪魔を滅ぼすのだ!!」
目障りな王女が生きていた事に激怒した女王様は、兵隊達に森を襲わせました。
ヒックス「くそっ! ハドソンがやられた!!」
ドレイク「バスケス! ここはもうダメだ! 撤退するぞ、バスケェェェェス!!」
バスケス「聞えただろ、ゴーマン隊長!! ズラかる許可を!!」
ゴーマン「しかし将軍の指事なく撤退するわけには……エイポーン、どうすればいい!?」
エイポーン「隊長! 乱戦状態ではあの魔物どもには……ぐわっ!?」
ウォーリアー「シャアアアアアアッ!!」
女王様の暴虐によって、多くの命が失われました(森の仲間が死んだとは言ってない)
これに深い悲しみを覚えた王女は、二度と悲劇を繰り返させない為にも女王様と対峙する事を決意するのでした。
将軍「ダメです! 魔物の数が多すぎて防衛線を維持できません!!」
大臣「へ…陛下! 城から落ち延びください!!」
女王「たわけ! 我等より民の安全を優先させよ! 民あっての国…ぐわぁっ!?」
近衛「へ…陛下!? あの方の玉体を貫いているのは尾か!?」
王女【クイーン】「シィィィィィィッ!!」
女王「がふっ!? い…忌々しい化け物め…やはり産まれた時に始末しておけば……」
王女【クイーン】「シャアアアアッ!!」
将軍「陛下の身体が二つに引き裂かれた!?」
ウォーリアー「キシャアアアアッ!!」
ウォーリアー「シャアアアアッ!!」
大臣「こ…この国はもうおしまいじゃ!!」
こうして女王様と向き合った王女は、彼女から王位を受け継ぐことができました。
その後、国は更なる繁栄を迎えたのですが、何故か近隣では王国は滅びたと噂が流れたのです。
そして美姫が森の中で永遠の眠りに就いている。
彼女の眠りを覚ます事が出来るのは、王子様の熱い接吻だけとも。
王位継承から数カ月が過ぎた頃、近隣国の王子が一人で噂の森へ足を踏み入れました。
目的はもちろん、眠れる森の美姫です。
森の中にいる酸の血を持つ凶悪な魔物を時に退け、時に逃げ惑いながら王子は花畑の中央に置かれた一つの棺を発見します。
王子「あ…あれが美姫の眠る場所に違いない!!」
長年の苦労が報われる時が来たと、王子は喜び勇んで棺を開けました。
王子「ひ…め……?」
エッグチャンバー「くぱぁ……」
こうして王子は新たな姫と熱い接吻を交わし、王国は益々栄える事になったのです。
めでたしめでたし。
――――
物語を話し終えたボクは、回りにいる子供達に感想を問いかけた。
「どう、おもしろかった?」
「ギィ! ギィィィッ!!」
「キシャアアアアッ!!」
「グゥオオオオオオオッ!!」
口々に喜びの声を上げる娘達。
どうやらボクの読み聞かせは好評だったようだ。
「シャアアアアアアッ!【ママ、よかったよ! けど話の合間合間に入ってたイメージはなんだったの?】」
「あれはボクなりの挿絵みたいな物かな。ああいうのがあった方が話に入り込めるでしょ?」
読み聞かせの発案者である燈華にボクは笑顔で応える。
白雪姫を読みながらああいう光景が頭に浮かぶあたり、やっぱりボクは人間辞めてるんだなぁ。
まあ、今更だし子供達と一緒ならむしろ望むところだけどさ。
オールマイトへの嫌がらせに命を掛ける男、AFO!!