前方から飛んでくる攻撃魔術を防ぐ。
「なんだ、貫通魔術だぞ……!?」
覆面の連中は驚いているがそんなこと知ったこっちゃない。
性にも無く立つ腹は冷静に思考を回すのを妨害しているものの……残念ながら私には今目の前の連中が使ってきているような攻撃性のある魔術は使えない。
「こいつ、魔術障壁じゃないならなんだって言うんだ……!」
務めて涼しい顔をして見せているけど、今私が使っている《疎密壁》は魔術素子の存在できる空間を定義する、あるいは存在できない空間を定義することで魔術的な壁を作る。
私の場合、運動を持つ魔術素子が触れた場合その運動を捻じ曲げるから、一般的に使われる障壁魔術との相性は最悪。魔術素子の運動を固定化かつ積層して展開するのが障壁魔術だから、私が触ると崩れてしまう。でも、そんなことは今はどうでもいい。私を狙うためにほーちゃんを攻撃した、こいつらを許さない。
「教える必要はないよ」
見た感じ、覆面は光をある程度カットしているだけでかつ眼鏡のように隙間も見える。だったら……
「とっとと眠ってもらうから」
空間に鏡を作り出す。物質化させる必要はない。光を反射させるだけでいいのだから。
「その必要はないわ。《バインディング・マテリア》」
『月紅の瞳』を使おうとした矢先、覆面の連中を縛り上げる鎖が現れる。
「水羽……《返却》で来たの?」
「えぇ。穂星が連絡くれてね」
「そう……」
鎖を集約して三人の覆面を外す。だいたい30代くらいだろうか。そんなのはどうでもいい。私は目さえ見えていればいい。
「どうせいつもの連中の下請けでしょ?【グリモア】の特異魔術師を欲しがるような連中は、そいつらしかいないじゃない」
「じゃあ洗いざらい吐いてもらおうとしても無駄か……」
「機嫌、悪いわね」
「そうだね、すこぶる」
結局『月紅の瞳』を使って連中を眠らせる。
「……埋める?」
「埋めないわよ。七瀬さんのほうに報告すれば何かしらの情報は持ち帰ってくれるわ」
納得はいってない。いまだに落ち着かない。この沸々と湧き上がる怒りは、何?
「怖い顔ね、穂星は無事よ?」
「私じゃなくて先にほーちゃんを狙われた」
「それが理由?自衛の魔術の使い方を教えてないせいじゃないの?」
「教えるタイミングがなかった」
「教えようとしなかったでしょ」
「じゃあなに?狙われたほーちゃんが大怪我すればよかったとでも言うの?それで魔術を覚えるように?そんな目に遭わせたくないから、私は……!」
「すとーっぷ!」
肩で呼吸をしながら、割って入ってきたほーちゃんを見る。
見ればわかる。ほーちゃんは無事だ。でも、無事じゃなかった可能性がまだ私の思考から離れない。そんな想像を、現実ではない事象を振り払えない自分が許せない。
「ほーちゃん……」
「大丈夫。私は無事、元気だよ」
優しく、ほーちゃんは私を抱きしめてくれる。暖かい。
「……ごめん……」
力が抜けていく。ゆっくり、私もほーちゃんの身体に腕を回す。
「私を守ってくれてありがとう、つーちゃん。怖かったよね。私も怖かった」
「ごめん……」
「私こそごめんね。つーちゃんだけに、戦わせちゃって」
「巻き込みたくなかった、こんな思い、させたくなかった……!」
「うん、ありがとう」
腕の力が強くなる。呼吸も落ち着いてきた。怒りも収まってきた。
「……七瀬さんの気持ちもわかるわ。路上でいちゃついてないの、【グリモア】の保全班が来るわよ」
「あはは……水羽ちゃんもありがと、また明日」
「えぇ、また明日」
ほーちゃんと手を繋いで帰る。
この日が、私たち