協力者が必要と感じた私は地上に向かい海の家に向かいました。
魔法使いという単語。
私は魔法使いではありません。
しかし私の格好を見て魔法使いと勘違いしている人がほぼ多数です。
つまり私のような力を扱える人がこの世界のどこかにいるということです。
頼らない手はありません。
海の家までやってきました。
「しかし、どうやって連絡を取ればいいのでしょう…」
ベタな話ですがお店の人に聞いてみます。
何か分かるかもしれないですね。
「お嬢ちゃん魔法使いかい?」
逆に声を掛けられました。
お婆さん店主です。
「その服はここらじゃ見ないからね」
「あ…、はい。連絡を取りたいのですがどうすればいいかと」
「携帯は?」
「え?」
「あー?スマホ?」
「え?」
「ないのねー」
「はい、ないです…」
スマホも携帯もどういったものかすら分かりません。
なんて言ったら摘まみ出されるとかありませんよね?
「じゃあ家の使いな」
厨房の奥に通されて畳のある部屋に通されました。
「使い方わからないよね多分」
「すみません」
電話というのに初めて触れましたが便利です。
少し緊張します。
わざわざ番号というのまで押してくれました。
『森宮学校の浅井だ。誰だ』
「あの…珊瑚宮心海と言います…実は」
森宮学校という場所へはすぐに繋がりました。
『祭りはいつだ?』
事情を話すと電話の向こうから声が聞こえました。
「あ…明後日です。2日後に」
返事はしばらくありませんでした。
急な連絡なのに電話に出てくれただけでも御の字のはずです。
エネルギー不足です…。ちょっと無理になってきました。
私は電話を切ろうとしました。
『祭りの当日…必ず向かわせる。
君の力になってくれるはずだ珊瑚宮心海』
「!!。ありがとうございます!」
『健闘を祈る。がんばれ。諦めるんじゃないぞ』
嬉しくなり私は受話機を持ったまま頭を下げました。
浅井と名乗った人は受話機を切る音がしました。
ツーツーと音が響きます。
「終わったかい?」
声を掛けられました。
「はい。ありがとうございます」
『諦めるんじゃないぞ、がんばれ』
顔も分からないのにそう言われただけで救われた気分になりました。
エネルギーが少し回復した気分になりました。
「まだ1日なんです…きっと帰れますよね」
学校ということは寺小屋…あの声の人は先生でしょうか。
とても力強く優しい先生に違いありません。
私はこの地域を散策することに決めました。
少しでも見識と情報を波魂姫を探すために。
広い海、綺麗な青、町並みを見ても知らないものばかりでした。
どことなく稲妻の文化に近い場所であるような感覚です。
岩場を見つけました。
こんなところに波魂姫はいないなんて思いましたが先客がいました。
釣りをしている着物の男。
そして頬に鱗の男…
こんなところに…
「あなた昨夜の」
私の声に男は振り向きました。
「海琴こんな場所まで来たのか」
「……」
明るいのに私のことをそう呼んでいる。
たしかに今日の服は私の服ではありません。
波魂姫…彼女の物でした。今私が着ています。
相当似ていなければ間違えないでしょう。
逆に私はこの男をなんて呼んでいるのか分からないのです。
「私」
「うん」
「あなたをなんて呼んでいたのか忘れました」
棒読みで言いました。知りませんし。
仲が悪いなら悪いでいいと。
「妖様って呼んでたろう」
「え…?えー…」
「なんでそんな嫌そうな」
嘘なのか本当なのかわからないことを言うからです。
でも彼は笑いましたがちょっと残念そうに顔を動かします。
頭の右に半透明になっている角が見えました。
なるほどこれなら人に混じってもわかりませんね。
そう呼んでほしいととでも言っていて…呼んでいたんでしょうか…。
私はもう少し波魂姫を続けることになりそうです。
「それで妖様、昨夜はずいぶん好き勝手してくれましたね」
「会ってなかったからついな」
「ついで襲ってほしくなかったんですけど…そもそも理由になってませんけど…」
妖様は竿を上げました。
魚が釣れてました。
「大きいですね」
「そうだろう、まぁ海琴は魚が嫌いだから結局最後は逃がすか俺が食べるかだ」
こうして話していて思いますがとても海を荒らすような人物には見えづらいです。
私はアザラシと会話している気分になります。
そんな感じです。
「ところでなんで妖様と呼んでほしいんです?」
この質問は危険だったでしょうか…そう思いはしましたが妖様は気にした様子もなく口を開きます。
「俺と君は似ているけど種族が違うからさ」
「違う…ですか」
種族…?
「龍か蛇の違いみたいな」
「当たらずとも遠からずだ」
私がそう言うと彼は岩場から降ります。
何か気に障ったことを言ったのかもしれません。
「妖様?…どうしました?」
「釣り餌を切らした。廃屋に隠してあるんだ。
一緒に取りに行こう」
全然気にしてませんでした。
彼は鼻歌交じりに歩きます。
廃屋にたどり着くと彼は足を止めます。
「ん、荒らされてる?」
間違いなく誰かがいた形跡がありました。
「妖様ここへは戻ってないんですか?」
「え?あぁ今日朝に来た時が最後だ。入るのは躊躇うが釣り餌はこの中だからなぁ…」
私と彼は中に入ります。
海靈様は釣りが好きなんだなと私はこの時思いました。
「あれ?妖様?」
いつの間にか彼がいなくなってました。
別れ道があった時間違えて逆の方へ行ってしまったようです。
踵を返そうとした時でした。
チャピチャピと音が響きます。
部屋の奥です。
始めは水かと思いました。
「ッ!」
着物を着た四人の男女が血まみれになって何かを貪っていた音でした。
ガタッ…と私を驚いて戸を蹴ってしまいました。
四人の顔がこちらを向きます。
私はようやく何を食べているか分かり口に手を当てました。
しかし嘔吐している余裕はありません。
人が人を食べているなんて誰が想像付きましょうか。
「肉だ…」
「新しい肉がきた」
「今日はご馳走だ…」
「ああああああああ」
四人は雄叫びをあげながら迫って来ました。
速い…。
人の動きではない。
一撃はもらってしまうかもしれません。
そう覚悟しました。
その時、一筋の紫の稲妻が私の横を通り過ぎ四人の内の一人を貫きました。
その稲妻は蛇のように龍のように動き消えました。
「怪我はないか海琴」
「ッ!?妖様!」
私は何回驚かされることでしょうね。
いつの間にか彼が後ろに立っていました。
頬の鱗は紫色に輝いていて右手は紫の蛇の稲妻が踊っていました。
「さて…お前達は誰の女に手を出そうとしたか分かっているか?」
「あ…妖様…?」
ちょっと恥ずかしい。
自分のことじゃないはずなのに…。
「あぁ…こいつらは現代妖怪。元々は人間でそれが幽霊とか地縛霊とかだったんだけど魔力を得て妖怪になったんだ。時々こういうのが出てくる。俺達とは違って…あまり良くない者達だ」
「……???」
四人はそれでも私達を食べたいらしく襲い掛かってきます。
廃屋なのに風が吹きこみ私は背筋がぞくりと震えました。
「さぁ少し本気を見せようか」
彼の戦い方に既視感を感じたのはこの時でした。
私はこの人を間接的に知っているような気がしたのです。
岩場へと戻ると彼は再び釣り糸を垂らしました。
「妖様助けてくれたんですよね」
「当然。お前は俺の大事な嫁なのだから」
「……………」
顔が熱いです…。
ですが今は気になることが出来ました。
それを聞かないと…。
「その…妖様ってもしかして赤傘達や白傘達に農業や製塩を教えてたことあります…?」
初めてあの場所を見た時、農業や製塩場があちこちにありました。
私はそれを思い出しました。
彼はこちらを向きました。
少し驚いたような顔でした。
「話したことあったかな?」
その言葉に私は首を傾げます。
分かりませんし知りません。
だからこういう動きと素振りしか出来ません。
しかし彼はどう受け取ったのか笑って答えました。
「そうだよ。すごく感謝されたよ」
「…やっぱりそうなんですね」
私はあなたを知識として知っています。
自分を私には神とは呼ばさず妖様と呼んでもらっている。
私の知るそれは魔神でした。
海祇島、今でも崇拝して神として感謝を続け祀っている私達が敬う存在。
オロバシノミコト。
あなたはここにいたんですね。
「妖様、ありがとうございます。私達は元気にやれていますから」
「え?急にどうしたの?。いやどういたしましてだけど…」
不思議そうに言いながらも彼は楽しそうに竿を振り魚を釣っていました。
良い人なのは間違いなさそうでした。
こんなに…いえ…"私"を思っているのに。
それが余計に不思議で仕方ありません。
私がそう感じているのに…波魂姫はどこにいるのでしょう…。
仲が悪いとは白傘達の勘違いなのでしょうか。
疑問が多いです。
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その夜ですが
「だからどうして夜這いしてくるんですか妖様。
いろいろおかしくありませんか?」
「こうでもしないとさせてくれないだろう」
「いやそもそも私は…いえ、ではなくてですね昨日に続いて今日もですか」
「そうだ、だから大人しくするんだ」
「いやです絶対いやです」
そんなやり取りをしてその晩も私は襲われてました。
正直連日で来るとは思ってなくそもそも連日もしたくないというのが私の意思表示なのですが…。
巫女が神様に捧げられるなんてのは古今東西文献から伝承より多く伝わる話しですがこんな捧がれ方は嫌すぎました。
波魂姫はもしかして現人神ではなくとも半神半人では…と思い何故かそれが当たらずとも遠からずな気がしました。
長生きしてるようですし…。
それならば巫女としても神としても成立はします。
妖怪の世界は複雑です。
そう考えてる間に私の抵抗虚しく…。
もしかしたらこれが嫌すぎるのが理由で帰ってこないなんて…
…ありませんよね?
海靈様と波魂姫は複雑な関係なのです