彼女は青を忘れない   作:ミスブルー

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この世界の案内人、再びです。
巫凪龍太
余語志郎
桜カオル
パトリシア・ユピテル

「たとえ翼をおとされても」から再び集まります。
この4人が心海のナビゲーターとなります


青の世界の案内人

とても暑い夏の日。

俺達は遠征に駆り出された。

 

「海だよ!龍太くん!」

 

「そうだな暑い…」

 

海だよ!と俺に声を掛けた彼女は桜カオル。

俺が付き合っている人であり森宮学校現生徒会会長、魔法使い最強と言われている。

ちなみに俺は巫凪龍太。

隣にゴシックの服を身につけて金髪の長いツインテールに背中には羽を生やし細い針のような黒い尻尾のある彼女はパトリシア・ユピテル。

彼女の隣にいる黒髪の一見パッとしない少年は余語志郎だ。

 

「その自己紹介はショックだよ龍太」

 

「俺とお前じゃどう考えてもカオルとパトリシアの前じゃ霞むんだよ…」

 

そんな余語はパトリシアと付き合ってるんだけどな。

 

さて、今回俺達は京の都と呼ばれた場所より西より上の北側にある京の海と呼ばれる場所に来ることになった。

 

妖怪のお祭りが始まる海棲祭だ。

けど俺達は話を聞くまで知らなかった祭りだ。

妖怪達は着実に力を付けている。

人も知らない伝承のみでしか語られたことのないお祭りだとか。人間はほとんど知らない。

妖怪達のみで盛り上がっているのだろう。

そんな中、人から依頼が来た

 

珊瑚宮心海という魔法使いの応援要請だ。

 

「知らない名前だ」

 

「応援要請ってどこかで依頼を受けていたってことよね?」

 

「しかも一人で受けてたんだろうか」

 

「ほんとに森宮の子?」

 

俺達はそれぞれの感想を持って現地に向かう。

 

「海の家?」

 

「集合場所ここで合ってる?」

 

「合ってるわよ」

 

「それにしても客が少ないな」

 

 

「森宮学校の魔法使いの方々でしょうか」

 

感想を述べている中、声を掛けられた。振り向くと人魚のような和服を着た長い桃色の髪をした女の人がそこにはいた。

 

「応援要請って聞いたんだけど」

 

カオルが口を開く。

 

「すみません、私は魔法使いではありません。ですがここで元素の力を見せたら魔法使いだと勘違いされてしまい」

 

元素の力…?勘違い?

 

「…誤解されて魔法使いの援軍が必要だってここの人に思われたんだな」

 

どうりで今この海の家は客が少なくされてるわけだ。

 

「すみません。あ、自己紹介が遅れてしまいました。私は珊瑚宮心海と言います」

 

「いいんだ。俺達は…」

 

俺達はそれぞれ自己紹介を名乗った。

 

「良かったです。ようやく地上の人の助けが得られそうです」

 

「俺達も早く来られたから良かった」

祭りまで実際時間が1日もあるからな。

 

「本当にありがとうございます」

 

 

彼女は椅子に座り込む。疲れているように見えた。

 

「何があったか聞いてもいいかしら」

 

パトリシアの問いに心海は頷いた。

 

この地では昔、神様の真似をして海の覇権を賭ける祭りが行われていた。元々それは人がやっていた祭りだったが時代の流れと一緒に行われなくなった。しかし妖怪達はその祭りが大層気に入ったようで今では50年毎に白傘と赤傘のそれぞれ主がこの海を賭けて勝負をしているらしい。

明日祭りが行われるのに白傘達の主は姿を見せない。

赤傘の主は既に姿を見せているのにだ。

白傘達は負けたことはないが負ければこの海に何が起こるかわからないという。

それで聞けば心海は白傘達の主と似ているということで追いかけ回され代わりに務めているということ。

主同士は夫婦だったということ。

しかしあまり今は仲がよくないらしいということ。

 

「………情報多すぎない?」

 

カオルが呟く。

難しいこと考えるの苦手だもんな…。

 

「本物の波魂姫を見つけることが先か…」

 

俺の言葉にみんなは考える。

 

「赤傘の主には会ったのか?心海」

 

「え、あっはい。会いましたけど…何と言えば」

 

「話したのか?」

 

「はい。ですが」

 

「???」

 

「本当に仲が悪いのか分からないことがあったり私の知ってる人に似ていたりするんです…」

 

心海が波魂姫を演じてるわけだからな。

 

「演じれるくらいに似ているってことは本物の波魂姫も心海と似ているのかもな。なら心海の知り合いと似ている人がいてもおかしくはないかもな」

 

「そんなに似てるのかい?波魂姫ちゃんと珊瑚宮ちゃん」

 

余語の言葉に心海は小さく頷く。

 

「白傘達の言葉や言動を見るとどうやらとても似ているみたいですね…」

 

「なるほど…とりあえず近くまで行ってみよう。何か俺達もわかるかもしれない」

 

海の家の人に礼を言って後にした。

 

海辺を見るとすごく綺麗で青い海だった。

 

「紺碧だなぁ」

 

余語も同じことを思ったようだった。

観光客も結構いた。

 

「みんなこの海を見に来るのね」

 

パトリシアもそんな言葉を呟く。

心海はそれに頷いた。

 

「ここの海はとても綺麗です。

守っていく価値のある大切な場所です」

 

その言葉に俺達は顔を見合わせる。

 

 

「この奥から彼らの陣地です」

 

森の奥を心海を指した。

普通の人はたどり着けないような場所になっていた。

これは魔法使いしか入れない空間に近い場所だな。

俺達は心海が先導してくれるのを付いていく。

心海の胸元に付いている道具に俺達は見覚えがあった。

神の目。青バージョンだ。

珊瑚宮心海もきっとあの世界からやって来た迷い人なんだろう。

今回も大きな物を背負ってることになりそうだと俺は考えた。

 

森を抜けると海が見えた。

 

「乱暴はおやめください!うわ!!」

 

叫び声が聞こえた。

 

「白傘達の悲鳴です!」

 

心海が駆け出した。

 

白傘というのは心海にとって関係無いはずだが心海からは仲間意識みたいなものを感じた。

俺達も追いかけるために駆け出す。

 

 

「やいやい。白傘共、受けてばかりか!」

 

「そうだよなぁ我らが海靈様は既に指揮してくださっている」

「貴様らの主はまだ姿を見せないでいるもんな」

 

「どうせあの姫は我らが恐ろしくなってこの地を去ったのさ!」

 

赤傘達が刀を抜き白傘達を傷つけていた。

 

「そんなことはない!姫様はいる!来てくださる!」

 

「私達が信じているのだから!きっと!」

 

「信じるものは救われるなんて言葉は意味がないんだ!いる神こそ、見える神こそ全てさ。あんな姫の忠誠なんてやめて我ら赤傘に憑け!」

 

刀が再度振り下ろされるその時、赤傘全員の顔が水の塊で包まれた。

 

溺れて窒息する瞬間にバシャリ!と大きな音を立て砂地に水が割れる。

 

「…な…なんだ…?!」

 

「そこまでです赤傘達」

 

心海が水の魚を宙に泳がせていた。

 

「私…この波魂姫はここにいます。戻って始まりの時を待っていてください。これ以上彼らに暴挙をなさるなら…」

 

心海が手を動かすと水の魚は大きな口を開いた。

それを見た赤傘達は悲鳴を上げながら撤退していった。

 

「姫様ありがとうございます!」

 

「お怪我はありませんでしたか?」

 

「大丈夫でございます」

 

「波魂姫様の為ならこれくらい何ともありませぬ!」

 

俺達が追い付くと白傘達に囲まれている心海を見つけた。

白傘達が俺達に気付いた。

 

「姫様…この者達は」

 

「地上の協力者です。本物の波魂姫を探すのを手伝ってくれる魔法使いの方々です」

 

「………左様ですか。魔法使い…。皆様感謝致します」

 

白傘の一人が頭を下げた。

 

「心海大丈夫だったか」

「はい、この通りです。ですがご覧の通り状況はあまりいいとは言えません。このままでは」

 

「心海が祭りに参戦しないといけなくなりそうということか」

 

「その通りです…」

 

心海は白傘達に一時間の休憩の後、再び捜索と他の妖怪達へと聞き込みをお願いをしていた。

 

白傘達は「わかりました!」とみんなで移動していった。

 

「私達も移動しましょうか」

 

歩いていると思いのほか小さな妖怪達がいた。

 

「魔女がいる」

「魔女がいる」

とそんな囁き声がよく聞こえた。

 

「パトリシアさんは魔女なんですか?」

 

心海が聞く。

 

「あいつらが私を見て言うからかしら?」

 

「そうです」

 

「そうね、魔法使いとは異能を持つ者全てをそう呼んではいるけれどこの四人の中だと一番私が魔女よね」

パトリシアは少し自慢気にそう言った。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「恐ろしいほどに手がかりゼロだ」

 

俺の言葉にみんなそう思ったらしい。

思った以上に地域も広いのだ。

 

「これは…あれね。心海が波魂姫の代わりに祭りをやってもらうしかないってこと?」

パトリシアはそう言う。カオルも続く。

 

「それで勝てたらいいのかな?」

 

「でも相手は名のある神ってやつよ」

 

二人の会話に俺も余語も考える。

 

「波魂姫を探すのを一旦放棄する」

 

俺は呟く。

4人は一斉に俺を見た。

 

「龍太、あなた正気?心海に祭りの人身御供をさせる気?」

 

「勝てばいいんだ。祭りの内容は毎回違っているだろう」

 

「何が言いたいわけ」

 

「俺達で心海を勝利に導くんだ。ここにいる魔法使い達は最強と言っていいメンバーだろ。バトルなら負けはなし。探し物は難しいが考えようだ。本物の波魂姫探しは祭りが終わった後でも心海が帰った後でも魔法使い大勢でゆっくり探せばいい」

 

俺の言葉にみんなは考え込む。

しばらくして心海が口を開いた。

 

「たしかに最後は任せてしまうかもしれませんがそれが一番いい手段と言えますね」

 

「珊瑚宮ちゃんがいいならって俺は思うけどね」

 

余語の言葉にみんなは一瞬顔を合わせて頷く。

 

「決まりだな。波魂姫探しは放棄して祭りの情報を集めよう」

 

そうして俺達は資料館や神社に訪れた。

今の所まったく手がかりはなし。

 

「最後は浦島神社か」

 

「ここ本当に玉手箱があるんだよね?」

 

「そう言われてるな。実際見たことないけど」

 

「ワクワクするね!」

 

「そうだな」

 

カオルと俺が頭を寄せて軽くコンっとしてから境内に入る。

話しながら神主に会いに行き話をして資料を見せてもらった。

俺は資料を読み…

 

「五穀豊穣…もしかしてこれか」

 

海を賭ける。大地、海の幸の感謝を捧げるためのお祭り。

その元ネタはこれじゃないか?

 

俺はみんなを呼んだ。

心海はそれを読み終わった後、

 

「海の家に戻りましょう」

 

そう言った。

 

 

 

心海は作戦会議を開いた。

俺達に虎の巻というのを書いている。

隣で俺はそれをスマホで写真を撮ったり内容を記録したりしていた。

思った以上にしんどいが内容はありとあらゆる対策が書かれていた。

そこには万が一自分が祭りに参加できなかったことや波魂姫本人が現れたり見つかった場合のパターンも書かれていた。

参加できないことがとても疑問になった。

 

「祭りに参加できないなんてあるのか?」

 

俺はそう聞くと心海は一瞬苦笑したがその後思い出すように恥ずかしがり不思議と嬉しそうにした。

 

心海から返事と言葉はなかった。

だが俺の質問には何か答えたつもりなのだろう。

 

心海は虎の巻に集中し直した。

そういえば心海はこの2日間、海靈様という人物と接触しているんだったな。

それは恐らく今日も、つまり今夜もだろう。

似ている上、この二柱は夫婦だ。

 

あー……なんか分かった。

 

深くは聞くまい…。

"本人達"がいいならそれでいいかとそう思った。

 

虎の巻が完成した。

「分厚いわね」と言ったのはパトリシアだ。

俺もスマホに記録したそれを三人にシェアした。

「文字だらけ…!」とカオル。

余語は読み込むように読んでいた。

 

「明日はよろしくお願いします」

 

心海はそう俺達に言った。

 

 

そうして祭りの当日がやって来た。

 

 

砂浜には大勢の妖怪達や出店のような物。

トカゲの串焼きなんて売っていた。初めて見た。

イモリのクレープ、カエルのタピオカなんてものもあった。

喰えるのか?飲めるのか?。

 

赤傘集団、白傘集団。

 

「逃げずに来たか白傘!」

 

「当然だとも!我らに恐れるものはない!」

 

「ならばもっとこっちに来いよ!臆病者共め」

 

「昨日の件があるのだ。易々とそんな物騒な所なぞ行くわけなかろう」

 

「なんだと…!やりあえばこちらが勝つのだ」

 

「お前達…始まりまで静かにしていろ」

 

「失礼致しました…」

 

海靈が初めて口を開き赤傘達を黙らせた。

 

「失礼をしたな、白傘達」

 

「…滅相もございません」

 

両者御輿を担ぎ上げ、そこに海靈と波魂姫こと心海が座っていた。

二人は狐の面を着けており口元だけ見えていた。

「何で狐の面なんだい?龍太」

「ここが地域としては京の都だからそう言ったことに関わりがあるのかもしれないな」

「なるほどね…」

 

俺と余語が会話をしてる最中、心海と海靈は会話をしていた。

 

「無事に祭りが開催されて何よりだよ」

 

「そうですね、今回も勝たせていただきますよ」

 

「そうか、ならこちらも負けてられないな」

 

両者共にバチバチしていた。

俺達は妖怪達に紛れ込み観戦の中の紛れていた。

事前にグラサン女こと浅井先生から借りた紙の面のおかげで俺達が人間であることは気付かれていない。

この面には妖怪の血で書かれているからその匂いで気付かれないんだそうだ。

 

ちなみにパトリシアは素顔で恐ろしいくらい目立っていた。

 

「おいなんでアイツだけバトルするドレスで来てるんだよ」

 

黒紫のゴシック服に厚いヒールを履いて金髪の長いツインテールをたなびかせて日傘をさしている。

 

「珍しい客もいるみたいだな

あの娘は天魔のお嬢さんかな?」

 

「一際目立ってますね」

 

海靈と波魂姫がそんな会話をしている。

 

実際心海はパトリシアの種族は分からないはずだから合わせているんだろう。

海靈はそれを疑うことはしない。

そう考えていた時、こっちを見た。

目が合った。

海靈は笑った気がした。

俺は慌てて目を反らす。

勘もいいのかもしれない。

人間がいることに気付いてるんだ。

なら何で心海が波魂姫じゃないことに気付かない?

余計に不思議だ。

 

ちなみにカオルにはちょっと遠い所から見てもらっている。

カオルの魔力は凄まじくそれだけが理由じゃないようだがとにもかくにもカオルを見ただけで妖怪や怪物達に恐れられているらしい。

余語は妖怪達に、もみくちゃにされている。

無事だといいが余語。

 

太陽がてっぺんに登ったその時、雲に乗った骸骨の顔の老人妖怪が姿を現した。

 

「大安吉日、善き天気に恵まれました。海靈様、そして波魂姫様。よくぞ祭りに来てくださりました。まずは感謝を」

 

おばあちゃんの声だった。

 

「そして祭りに集まりしお客様、来てくださりありがとうございます。これより祭りを開催致します。

さてお祭りの占いの結果、勝負内容は捜索」

 

捜索?…探し物ということか。

 

「お互いに大事な物をこの玉手箱に入れていただきます」

 

綺麗な小さな化粧箱を取り出し蓋を開けた。

海靈からは腕に付いていたホタルガラスのような腕輪。

心海からは首に付いていた青紫色に光る石が付いたネックレス。

その二つが玉手箱に吸い込まれるように入っていった。

 

あれが二人の大事な物。

少なくとも心海にとってじゃなく波魂姫の大事なものだ。

パトリシアもそれを目利きするように見ていた。

 

 

骸骨の老妖は笛を取り出してさらに壺を取り出した。

 

ピーヒャラー…

 

笛を吹く。

壺から出て来たのは巨大な狼、巨大な猪、巨大な熊だ。

 

そして玉手箱を3つに分けて飲み込んだ。

 

「「!?」」

 

心海と海靈が驚いた。

 

あれらの内二つは幻術だろう。

もしかしたらあの二人にはそれが分からなかったかもしれない。

三体の獣達は森の中へ姿を眩ました。

 

「それでは準備が整いました。いざ開始!」

 

法螺貝を吹き大きな音が響く。

 

妖怪達の歓声が上がり屋台もさらに賑わう。

 

「やれやれ…まさか大事な物が入れられてしまうなんて。勝たせてもらうよ海琴」

 

海靈は御輿から降りて稲妻のような速さで森の中へ入っていった。

「我々も海靈様に続けー!!」

 

赤傘達も続くように追いかけていく。

 

「波魂姫様、我々も参りましょう」

 

「はい!行きましょう!」

 

「俺達も行こう。おい志郎。行くぞ!大丈夫か!」

 

もみくちゃのぼろぼろかと思ったら傷一つ、衣類の乱れすらない余語を見つけて連れ出す。

カオルもパトリシアも姿は無かった。

率先して獣達を探しに行ってくれたんだろう。

 

「いやーぐしゃぐしゃにされて大変だったよ」

 

「ご苦労様だな。でもここからだ。勝機は五分五分だしあの妖っぽい動物達多分強いぞ」

 

「結局戦うんだね俺達~」

 

「まず俺達は心海達と合流だ」

 

「了解だよ」

 

さぁ海棲祭の始まりだ。

 




お祭りの開催です
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