うらしまは
たすけたかめにつれられて
りゅうぐうじょうへきてみれば
えにもかけない うつくしさ
「それでこりゃいったいどうなってるんだ。なんでお前達が白傘と一緒にいるんだ?」
「さっき説明しただろう海靈」
言いながらも海靈は心海を抱き上げて力いっぱい抱きしめていた。
心海は恥ずかしがっているがまんざらでもないような様子。
見てるこっちはなんか熱い。
「みんな見てます!降ろしてくださいって!あ、龍太さん無事で良かったです」
「ありがとう。熊に関してはカオルと志郎がなんとかしてくれるそうだ」
「これじゃ俺の負けじゃないか。でも見過ごせないことのほうがもっと大きい。お前達、海琴を封印して俺も封印するつもりだったのか」
「お分かりかと」
「そうか…」
海靈の手に雷撃が走る。
「お前達頼りにしていたが…長いこと見守っててくれてありがとう。軽率な言葉でしかないが…これでおしまいだ」
雷撃が空間を支配し感電し爆発する。
しかし傘達は無傷だった。
「おしまい?海靈様、ずいぶん力を落とされたようで」
「…俺の力が通用してない?」
「信仰の略奪ってそういうこと…」
「他の妖怪だったら今ので終わってたはずだ」
俺達は心海を探す最中、熊を追いかける海靈を見つけた。
姫が危ない!手伝ってほしい。
俺のその言葉だけで海靈は付いてきてくれた。
彼は心海の場所が分かるようだった。
何とかこうして心海が封印される前に駆け付けることが出来た。
だが…
「海靈、今お前の力はこいつらには通用しない」
「残念だけどそうみたいだな」
「でもお前のおかげで心海を助けれた」
「心海?…どういうことだ?」
「…全部終わったら本人から聞け。神様だろう」
「…わかった。でもどうしたらいい?俺の力は通用しないし君達も満身創痍じゃないか」
海靈は困ったような笑みを浮かべながら言った。
「その通りです。二人増えようが問題ありませんでしたな」
白傘と赤傘は一つに集まり真っ白な法衣を纏って赤い錫杖の杖を握り天蓋を被った姿になった。
俺はその姿を見据える。
「それが本当の姿か」
「えぇそうですとも。改めまして海靈と波魂。そして魔法使い殿。我の名前は大黒天…ああいえ大白天でしたな。この姿こそ我の本来の姿」
「ずいぶん神々しいわね」
「ありがとうございます魔女殿。
そして見るのも…最後になるでしょう」
大白天は杖を一振りする。
風が吹き荒れ俺達は飛ばされる。
「愉快でございますな。ははは」
「いってえ…パトリシア庇ってくれてありがとうな」
「いいけど、あれどう倒すのよ。虎の巻にあんなのは書かれてないわよ」
「す、すみません…」
「俺が時間を稼ぐ、その隙に君達は海琴を連れて」
「それは無しです妖様」
「…どうして?」
「無しです」
「だけどこのままじゃ」
「無しです」
「…そうか。わかったよ」
二人をやり取りに俺は口を開く。
「俺達は俺達で時間を稼けばいい」
「???」
「龍太?あなた…?」
「心海!指揮を頼む。なるべく時間を稼げる戦闘を考えてほしい」
「っ!わかりました。パトリシアさんと妖様は前衛をお願いします。龍太さんはサポートを」
「わかった任せてくれ」
「よっし、夕方くらいまでは稼ぐか」
「前衛私とコイツなんだけど。なんで龍太が偉そうなのよ」
俺達は立ち上がり、大白天へ挑む。
パトリシアを見ると杖だけだった。
今回も大鎌を振るわないらしい。
振るうに値しない…そういうことだろう。
けど海靈の攻撃のほとんどは大白天に通用しないから防ぐのは海靈が行いパトリシアが攻撃として動いている。
俺は二人が大きなダメージをくらわない様に立ち回り力を使っていく。
心海はそんな俺達全体を見て指揮を執る。
「思ったよりもやりますな」
「場数は踏んでるからな」
「ですがそろそろ限度がおありでしょう」
やっぱり体力とかは俺達が先に切れる。
海靈も息を吐いていた。
「人の子。俺達はどれくらい時間を稼げばいい?」
「それは…今だ!! 」
俺は次の言葉を大声で発する。
突然の大声に視線は全員俺を見た。
空から大白天に向かって風の刃が降り注いだ。
「そういうことだったのね龍太」
大白天より高い位置の空を飛んでいるのはカオルだった。
「お待たせ!」
カオルもまた大きな声で俺達に言った。
「今の人の子は空を飛べるのか…」
海靈はそこに驚いていた。
風と光を自由に扱う魔法がカオルだ。
「あの女は…。厄介だ。忌々しい」
大白天が空を見上げ呟いたのが聞こえた。
カオルは剣を上段に構えそのまま振り下ろす。
再び風の刃が降り注ぐ。
大白天も応戦するように錫杖を鳴らし風の列破をカオルに向かって放つ。
「互角か…!」
「いや…まだだ!カオルの力はこんなものじゃない!」
そのままカオルは剣を輝かせ横に構えると背に翼が見えた。
そのまま翼を剣に乗せ振り抜く。
光の一閃とも言うべき一太刀が大白天を真っ二つにした。
そのまま地面に落ちて姿が見えなくなった。
「見えなかった…すごいな…あの人の子は」
「俺もそう思うぞ」
「感心してる場合かしら二人とも」
「落ちた場所に行きましょう」
俺達は大白天の落ちた場所に向かうと余語がいた。
「志郎!」
法衣を掴み金属の杭で逃げないようにしていた。
「やぁ龍太。それにみんな。パトリシアも無事で良かった。
この妖、逃がさないでいて良かったよ」
「小賢しい人間め…」
真っ二つになった大白天は相当妖力をカオルに削られたらしい。
「竜宮城クーデターってやつか。お前の企みはここまでだな」
「あと少しだというのに。…姫?何を?」
心海は倒れた大白天に近付くと法衣を漁った。
「白傘、これは返してもらいます」
大粒の真珠だった。
「姫様…」
「私は姫ではありません。別の世界からやってきた珊瑚宮心海です。あなたの主である波魂姫、私じゃありません。姫様はここにいます。主達がどんなことを考えていても…その矛先を間違った方向に向けてはいけないのです。あなたのその思いは伝えるべきものです」
そう言った心海に驚いたのは他でもない海靈だった。
大白天は無言だったが口を開く。
「……そうでしたな。50年前祭事が終わりを告げお二人が帰る途中、我らは姫様に声を掛け騙して封印を施しました。封印は解けませぬ。姫様はもう戻ることはなく姿を見せることはない。それが妙なことを考えるものですな。我らはあなたのお姿があまりに似ていて声を掛けてしまったのですから」
「どうしてですか?」
「もういないと分かると、会えぬと分かると寂しくなるものですよ姫様。海靈様そうでございましょう?」
「…そうだな」
「あぁ…最初から声など掛けなければ良かった。そうすればこんなことにならずに…。封印なんてしなければ。
我らはもっと…姫様を。海靈様を…。理解出来たでありましょうか」
俺は口を開く。
「声を掛けて良かったんじゃないかな?それを思い出せたんだから。今そう思えたんだから。あれやこれやと後から考えるのは人間も妖も神も案外変わらないと俺は思うぞ」
「…人の子よ。あなたの思う物語とその言葉は本当に面白いですな」
そう言って大白天は存在を保てなくなったのだろう。真っ白の霧の様に消えていった。
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カオルさんが駆けつけた時に最後の熊を倒し玉手箱を取り返してくれていました。
龍太さんの時間を稼ぐというのはカオルさんが駆けつければ逆転出来ると踏んでいたのことでした。
私は玉手箱を持ち、お祭りを勝利することが出来ました。
これでお祭りはおしまいです。
私と妖様は互いに最後の言葉を交わしたいとそう考えてました。
知って知らずか龍太さんは私と妖様を二人きりにしてくれました。
波打ち際、私と妖様は話します。
「心海…そうか。それが君の本来の…名前」
「はい。妖様に渡したその真珠が本当の波魂姫です」
「そうか…本当にそっくりだ。声も背丈も髪も仕草も…」
妖様は私の髪と頬を触り見つめます。
「…そうみたいですね」
「…あぁいろいろとすまなかったね」
夜のことを思い出したのでしょう。
バツが悪そうな顔をしました。
「本当にそうですよ。これからは気をつけた方がいいと思います」
「うーん…善処するよ」
これは善処する気はないかもしれませんね。
妖様は真珠を手のひらに転がしそれを見つめる。
「また会えるだろうか。もう会えないのだろうか…」
妖様はそんなことを言います。
その声はどこか悲しそうでした。
ため息をつきたくなるとはこういう気持ちかもしれません。
最後に弱々しい姿は見たくありませんでした。
気を遣うというのは難しいです。
でも遣わずに話せるというのは居心地がいいんです。
「…また会えますよ。会いに行きますから」
「…心海?…それとも海琴?」
妖様は一瞬驚いた顔をしました。
それは誰にも言わない私だけの秘密にしておいた方が面白いかもしれません。
好きというものは案外海とよく似ていますからね。
「心海ですよ妖様」
「そうか。…ありがとう心海。
本当に会えたような気がした。数日しか会えなかったけど釣りとか一緒にやれたこと楽しかった。…いつまでも大好きだ」
妖様は私を強く抱きしめました。
勢いで唇まで奪っていきます。
人前を気にしないってのは困ります。
でもこれから長いですから。分かってみようと思います。
私の中の妥協点です。
キス…受け入れてしまってるんですから。
しかし本当は私の秘密に気付いてるとかないですよね?気のせいですよね?
まるで自分に言われてるんじやないかと思って恥ずかしいです。
ですがそれでもよく、その言葉は私の心に染みました。
海を染めるような真珠のような愛情そのものでした。
エネルギー不足から解消された気分です。
「私も大好きです妖様。
ありがとうございました」
しばらくお互いに抱擁し妖様は私から名残惜しそうに離れます。
「そろそろ行かないとだ…」
「これからどちらに?」
「君の社殿を整えて。いつでも帰ってこれるようにしておくよ。傘もいないし…これから数十年忙しくなるな」
「…!?」
「じゃあまた心海」
「えと。はい、お気をつけて妖様」
こうして妖様は海へ戻って行きました。
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「終わったようで何より」
「無事にお祭りも終わって良かったよね」
「みなさんありがとうございました」
「いろいろ大変だったけどね」
「でも無事に海は平和じゃない。
後はあなたが帰るだけね。あの門かしら」
パトリシアが指を指す場所に扉があった。
「本当に場違いな洋式扉だな…」
「この扉の先はなんていうの?」
カオルが言うと
「テイワット大陸です。ここと同じように大きい場所ですよ」
「そうなんだ。いつか見てみたいところだ」
俺の言葉に心海は頷くのを見て聞いた。
「心海はここで何か得られたか?」
「ここでですか?…そうですね…好きになることというのはそれは海と似ている……でしょうか」
「なるほど…。いろいろあったがいい夏を過ごせたなら良かったよ」
「夏…そうですね。私にとってここは多くを学ばせてもらいました。素敵な海、不思議な妖怪達、そして妖様。いろいろありましたがここに来れて良かったです。みなさんありがとうございました」
俺達は頷く。
俺達も楽しかったと沢山の言葉を掛けた。
名残惜しいが心海は帰らないといけない。
俺達は心海を見送る立場なのだから。
「元気で」
「はい、お元気で」
心海は扉に手をかけて元の世界へ帰って行った。
「…行っちゃったな。俺達も帰るか…。もう一遊びしたら…」
「うん、もう一遊びしたらだね!」
「海水浴とかは明日しましょ!」
「花火とか出来るか海の家のおばあちゃんに聞いてみるよ」
こうして俺達の夏もまだまだ続いていく。
END
ここまで読んでくれてありがとうございました。
この先は読みたい人向けになります。
心海の恋物語っぽくもなってしまいましたけど物語は無事完走して良かったです
前書きにも書いているのでお気付きかもしれませんが今回の物語は浦島太郎というお伽噺をモチーフに物語を付けました。
心海は人魚のようにりゅうぐうのつかいのように綺麗でかわいい女の子です。
竜宮城のお雛様、もしくは乙姫様。
心海はそれがとても似合う人物だと私は思っています!
この世界で心海がやって来たら、きっとこんな感じに過ごすのかもとそんな話を書けたかは分かりませんけど物語そのものは納得しているので良いと思っています。
この世界の案内人ことナビゲーター達には感謝しても足りません。
今回の物語のネタをいくつか紹介すると
竜宮城のお姫様は間違いなく心海になります。
乙姫には結婚している殿方がいらっしゃいます。
その人物は海靈様、原神世界ではオロバシノミコトをモチーフにさせていただきました。
実際にテイワットでオロバシノミコトが心海が生まれる世代まで生きていたらもしかしたら心海を嫁にしていたこともあるんでは?なんてことを考えました。
この魔神は心海を大事にしていたはずです。
想像が膨らみます。
しかしそうなると浦島太郎は誰か…となりますがそれは白傘と赤傘、本名は大黒天となるのでしょうね。
浦島太郎は三年もの間、竜宮城で過ごしました。
乙姫と夫の関係を知らないはずがありません。
浦島太郎はこの乙姫に恋をしていた。しかし乙姫は夫がなんだかんだ言いつつ大好きなのでしょう。
浦島太郎はそれに気付くことはないのだと思いました。
物語では玉手箱を開きおじいさんになってしまいお仕舞いですが、玉手箱を開けずに再び竜宮城に戻れても入る隙はきっとなかったようにも感じます。
今回の物語はそれをモチーフに姫様を封印する手段を取ります。
言葉を伝えることを忘れてしまいましたが心海はそれでも伝えるべきと言うのは乙姫様も同じことを考えたはずだからです。
今回はここまでになります。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
ちなみに次回作も考えてます。
列車に纏わるお話を付けていこうと思っています。
よろしくお願い致しますね。
みすぶるーでしたっ