夢覚めぬ者   作:うろ底のトースター

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白雪影

「いやはや本当に申し訳ない」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

初手土下座の後、事情を説明することになったのだが、彼女──獅白さんは大爆笑しながら許してくれた。

 

いっそ気持ちいいくらいに笑い飛ばしてくれたのがありがたい。傭兵なんて物騒な職業やっておきながら、なんとも明るい人だと思う。

 

「にしても、まさか名前を知られてるなんて。あたしも有名になったんだね」

 

有名も何も、戦場で会えば生きて帰れないなんて言われてるんですが。

 

「そういえば、どうしてこの学園に?名声作りにしてももう十分だと思うんだけど」

 

「あー、依頼でさ。入学してくれって言われたの」

 

「へー、ちなみに依頼主は?」

 

「学園長」

 

「学園長」

 

依頼されて学園に通う傭兵か。奇妙な生徒ばかり集まるもんだね、国内外関わらず。

 

「影丸くんは?」

 

「俺は、まぁ家系の問題かな。一族の期待を背負ってここに来てる」

 

影のチカラで没落魔術貴族復活大作戦!要はそういうことである。期待が重いが、いけ好かない魔術師共の度肝をぶち抜けると考えたら、やる気は湧いてくる。

 

「大変そうだね」

 

「やりがいはあるよ」

 

言ってたらなんか憂鬱な気分が吹っ飛んでった。むしろやってやるぞって思える。

 

よしまずは前の席の雪花嬢の鼻を明かしてやるぜ。

 

「ししろんその人誰?」

 

「さっっっっっっむ」

 

寒いって。冷たいって。きついって。確認するまでもねぇや。この氷みたいな冷たい髪色したのが雪花ラミィだ。

 

てかお2人知り合いだったの。

 

「おはよーラミちゃん」

 

「おはよー♡で、その人誰?」

 

温度差すごすぎだろ。もはや二重人格よ?

 

「さっき友達になった影丸くん」

 

「ども」

 

「ふ〜〜ん?」

 

まじまじ見てこないでください。怖すぎる。獲物を吟味する肉食獣みたいだ。

 

「本当に友達?」

 

「友達だよ」

 

違ぇこれあれだ、旦那に近付いてほしくない嫁さんみたいな。なに、この2人出来てんの?

 

まだジロジロ見てくる。友達だって言ったじゃんか。あと寒いんだけど。そろそろ漏れだしてる冷気止めてもらってもいいですか?このままだと春真っ盛りに凍死するんだけど。

 

と、ここで案内係によって入学式の会場へ移動するように言われた。

 

さすがに冷気はもう漏れてない。今日の気温は普通程度のはずなのに妙に暖かいぜ。

 

魔術師は怖い。俺は再確認した。

 

 

 

【白雪影】

 

 

 

長々とした老人たちの話も程々に、入学式は滞りなく終わりを迎えた。問題はその後のバトルロワイヤル説明会。ちゃんとあるって事実が恐ろしすぎてあとの説明が耳に入らんかったよ。

 

「おーい、カタカタ震えてるけど大丈夫かー?」

 

「もう寒くないはずなんだけど、風邪?」

 

おっと、動揺が身体に現れてたみたいだ。正直な身体ですねぇ。

 

「ホントに、あるんだなって、バトロワ」

 

「知らなかったの?」

 

「知らなかったっす」

 

「ぶ、武器は?」

 

「スゥー、ない〜、ですね」

 

堪えきれなかった笑いがとうとう溢れ出したようで、腹を抱えて大笑いする獅白さん。いや笑いごとじゃないんですけど。

 

「パンフレット見てないの!?」

 

「見なかったですねぇ」

 

そもそも受かると思ってなかったからね!

 

「ひー、ひー、あー面白っ!」

 

「俺は全く面白くないでさァ姐さん」

 

武器がないので即リタイアです!とか、かっこつかないなんてレベルの話じゃない。

 

「ん〜、ラミちゃん」

 

と、獅白さんが隣の雪花に向けて視線を一つ。すると雪花が露骨に嫌そーに顔を顰めて言った。

 

「やめとこうよ、弱そうだよ?」

 

「おう喧嘩か?買うぞ?」

 

いきなり罵倒してくるな。なんださっきから俺に対するこの態度は。

 

で、なんで急に俺の強さの話になったんだ?

 

「ま、人助けと思ってさ」

 

「・・・・・・・・・分かった」

 

すごーく不服そうなんだけど。

 

「ということで、影丸くんさ、あたしらと組まない?」

 

「え?」

 

俺としては渡りに舟な提案なんだが、武器を持たない人間なんて、拳闘士でもない限りは足手まといもいいところ。味方に引き込むメリットなんてないように思えるんだけど。

 

「ほら、あたしもラミちゃんも攻撃手段が遠距離だからさ」

 

「肉壁が欲しいと」

 

「自己評価低すぎない?」

 

「ししろんやっぱダメそうだよこの人」

 

なるほど、要は前衛アタッカーになってくれと。まあ、爺ちゃんに武芸は一通り叩き込まれてるから、素手でも前衛張れんこともないけど。

 

「うん、分かった。やるよ」

 

「決まりだね」

 

そうして、差し出された手を俺は掴んだのだった。

 

雪花は最後まで嫌そうだった。

 

 


 

 

教室に入って、すぐにその場にいる全員を見渡した。裏切り合いが日常茶飯事だった戦場でついた、癖のようなものだ。こうして見渡して、真っ向から戦って勝てるかを想定する。

 

そして、2人ほど格が違うのを見つけた。

 

久々に感じた、勝てないという確信。

 

片方の、初日から囲まれてる大人気なピンク髪さんはまだ分かる。目に見える脅威だからだ。

 

けど、もう片方、教室の隅で大人しくしている男子。あれはヤバい。()()()()()()()()()()()()()()()()()。得体が全く知れないのだ。

 

ハチャメチャに高い報酬が全額前払いなんて、とてもとても美味し過ぎる話につい飛びついてしまったけど、全く随分と怖い場所に来てしまったものだと思う。

 

ちょうど、私は彼の隣の席のようだから、ちょっかいでもかけてみようか。

 

なんて思って話しかけたら、数秒固まった後に全力で土下座をしてきた。曰く、とっても失礼な印象を持ってしまった、とのこと。

 

面白い人だった。

 

何故か途中で合流したラミちゃんに距離を置こうとしたのが気になるけど、多分初手で冷気飛ばしたのが悪かったんだと思う。

 

面白さはさらに加速した。

 

この人、バトロワのことを知らなかったらしく、武器を持っていなかった。普通入学する高校のことは調べないかな。

 

武器なし味方なしだとさすがに可哀想なので、これも何かの縁ということで仲間に引き込むことにした。私の感じたヤバさも見たかったしちょうどいい。

 

結論から言うなら、この選択は正しくもあり、間違いでもあった。

 

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