「…会長辺りなら色々とやってくると思ったが、まぁ今更か」
外出届等はハロを通したハッキングで全てを終わらせ、ロックオンはアイルランド、ダブリンに飛んでいた。
荷物は最低限のみ、パスポートと財布類。着替え。
元々、荷物は最小限しか無いロックオンにとって準備は簡単だった。
「…しっかし、玩具以外で申請できないもんな」
ロックオンの持っているバッグの中にはハロが入っている。
音は出さないが、ロックオンを見つめる視線が何処か懐かしい。
やく半日をかけてロンドンに付く。
どうせ足は付く、やれる事は今のうちにやるしかない。
自身を監視する気配もなく、荷物を受け取りそのままダブリン行きの便に乗る。
ダブリンに着いた頃は早朝であり、一度予約したホテルに向う。
最低限の荷物のみを置き、貴重品は隠す。
「さて、行くか」
着慣れた私服に着替えホテルを出る。
黒のスカーフとサングラス、ブラックのハット帽を被る。
英語は慣れているため、花屋で花束を買い、続いて露天でフライドポテトを買う。その後、見慣れた墓地に向った。
「世界が変わっても此処に埋葬されるのか」
「ライルとエイミーは生きて、俺が死んでるとか、笑えねぇよ」
花束を置き、立ち去ろうとすると聞き覚えのある声がした。
「もう、お兄ちゃんの馬鹿」
「ったく、エイミー。少しは落ち着けよ」
同い年ぐらいで自分と瓜二つの顔を持つ少年と更に歳下の少女の姿が見えた。運命の悪戯としか思えなかった。
かつて、死んでしまった妹が双子の弟と仲よさげに歩いている。
成せなかった世界が目の前に存在している。
だが、ロックオンはそのまま二人とすれ違う様に立ち去ろうとする。顔は同じだが、別人なのだ。
(せめて、ライルとエイミーの居る世界)
「…!待って!!」
「エイミー!いきなり」
「兄さん!あの人を……あの人を止めて!」
「おい、アンタ!悪いが妹が」
止まりたかった、でも止まれない。
走り出すのは不自然過ぎた、だからそんな事はしなかった。
それが、ロックオンの仇となった。
「!」
「やっぱり」
「何と勘違いしてるか知らないが、俺は帰る予定なんだ。悪いな」
「まって…あの花、貴方があげたんでしょ!お母さんが大好きだったチューリップ、それにフライドポテト。お父さんがお酒と一緒に食べてた。ねぇ、ニール兄さん何でしょ?」
「…ニール・ディランディは死んだ。その墓の下に居るだろ」
「そうだ、俺もエイミーも、兄さんを埋葬したさ。父さんと母さんと一緒にな!だから、だからこそわかんねぇ!アンタは誰なんだ」
「さぁな、どうでもいい事だろ」
「…聞けよ、アンタが兄さんなら、エイミーのこの顔を見て!何とも思わねぇのか!」
ロックオンの知るエイミーは甘えたがりの少女だった。
ライルの袖を掴みながら、泣きそうな顔でただ見ている。
「エイミー、ライル、俺と出会った事は……いや、俺の目的からしたらでもなぁ……」
ロックオンは顔に手を当てながら考える。
間違いではない、エイミー·ディランディを利用してアイルランド政府に渡りをつけようとしていたのだから。
「兄さんなのか」
「さぁな、ライル。お前がエイミーの兄なんだ。守ってやれよ」
「待てよ!」「待って!」
エイミーとライルに手を掴まれ、ロックオンは離れることは出来ない。
「せめて、せめて顔を見せて。お兄ちゃん」
「…なら、一度見たら忘れろ。良いな」
ロックオンは見せるべきでは無かったと思っていた。
その顔はライルと瓜二つ、エイミーにとって2年前に失った顔だった。
「やっぱり…生きてた……生きて」
「どうやって…あの爆発は」
「…じゃあな。ライル、俺に対するコンプレックスなんて考えるなよ。お前はお前だ、エイミー、俺の正体を知りたいならIS学園に行け。そこで、見せてやるさ」
ロックオンはそのまま歩き去る。
この邂逅が波紋を生み出すことを、まだ彼自身は理解していなかった。
アイルランドでの目的の一つの達成したが、やるべきことは多かった。
KPSAの所在確認、アリー・アル・サーシェスの存在、また類するテロ集団。
残りの時間をノートパソコンからのハッキングで過ごした。
結論として、KPSA及びアリー・アル・サーシェスは居なかった。
居れば、両親の仇として今度も同じように戦うだろう。
だが、KPSAもアリー・アル・サーシェスも存在しなかった。
その代わりに亡国機業〘ファントムタスク〙という謎の存在が浮かび上がる。
「……」
翌日、ロックオンは個人でアイルランド議会の見学に来ていた。
変わらず共和制を敷いており、見慣れた風景が広がっている。
だが、平和という物は何時も唐突に破壊される物である。
「何が!」
そこら中から爆発が起こり、見慣れた風景が広がっている。
自分達が、ソレスタルビーイングに対するテロ行為。
あれと同じことが行われていた。
ISテンペスタと呼ばれる機体だろう。ソレと見覚えのあるISが戦闘していた。
「な!あれはデュナメス⁉️」
自身の愛機に似た機体が戦っている。第2世代か第3世代ISだろう。フルスキンタイプでは無い。
青い塗装を施されているが、武装は見慣れたスナイパーライフルだ。
「きゃぁぁぁ」
「代表候補でもその程度か」
「エイミー!」
つい、ロックオンは叫んでしまった。
自身の妹が苦しんでいる、ソレを見捨てられるほどの理性はない。
「民間人か…見られたがまぁ、殺せば」
「ハロ、エイミーからデュナメスを」
「待って…何で…この」
「リョウカイ!リョウカイ!」
ハロのハッキングによりエイミーからISが外される。
ブレスレット型の待機形態だが、ロックオンはソレを握りしめた。
「エイミー…ライル…お前達が居る。なら、せめて少しでもマシな世界に」
「やっぱり……お兄…ち」
ロックオンはそのままISを装着する。
しかし、違うのは全身を覆う鎧、フルスキンタイプとなっている事だ。
「sadarsud…サダルスードか」
それは自身のデュナメスの前身となった機体であった筈だ。
データのみで知っている機体に今乗っている。
コーン型の変わりに三点式の推進器。だが、ラファールよりも性能、推力、共に上だった。
「男が?まさか、2人目」
「まぁな、随分と秘匿されてたらしいからな!」
IS学園の生徒達は知っているが、外的には織斑一夏が知られている。理由はメディアに撮られたかの違いである。
ハル·オリムラ、ロックオン・ストラトスはメディアに出た事もなければ学園内で検査したため情報は最低限しか出ていない。
「…太陽炉そうか……GUNDAMなら」
「何を」
「なんで……なんで……ソレを」
「ハロ、TRANS-AM(トランザム)だ」
「リョウカイ!リョウカイ!」
サダルスードの装甲が赤く発光する。
ロックオンはその機動に慣れている。
「なんだ…なんだ…ソレは!」
「外しはしねぇ!」
残像が現れるほどの高機動から2丁のGNマシンピストルによる射撃が行われる。テンペスタの搭乗者は即時に理解した。
先程の代表候補とは違う、目の前の男は戦争を経験し命のやり取りをしたことがあると。
「舐めるなぁ!」
テンペスタのランスがサダルスードに振るわれるが、そこにあるのは残像でしか無かった。
「ロックオン!ロックオン!」
「あぁ、懐かしいな。ロックオン・ストラトス。狙い撃つぜ!」
テンペスタにGNスナイパーライフルから圧縮された粒子ビームが放たれた。ソレは何発も、回避することはけして叶わない。
無慈悲な連続射撃だった。
「がっ…かは」
「生きてたか、絶対防御だったな」
サダルスードはGNマシンピストルを女の額に押し当てる。
いくら絶対防御があろうと衝撃は来るはずだと。
脳を揺らし、何度も甚振れば死ぬはずだと。
「お前が殺した命に…地獄で詫びろ」
「待って!」
しかし、引き金を引こうとしたロックオンをエイミーが止めた。
「離せ、エイミー!父さんも、母さんも、此奴らみたいな奴等に」
「もう良い…もう良いよ、ニールお兄ちゃん何でしょ?ねぇ、お願い……もう、止めてよ」
「……くそ」
ロックオンはISを外し、その素顔をエイミーに見せる。
「私は生きてるよ、生きてるから……もう良いの」
「……」
エイミーを抱き締めようとしつつ、ロックオンは自身の立場を思い出し押しのける。その腕に彼女のサダルスードを握らせ、走り出す。
「まって!待ってよ……ニールお兄ちゃん!!」
エイミーのボロボロの肉体ではロックオンを追うことはできなかった。
「……なんで」
ロックオンが見えなくなっても、エイミーはただ泣きじゃくった。