織斑の末弟   作:影後

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ロックオン・ストラトス

日本では一人の女教師が1人部屋で泣いていた。

学園を飛び出した末の弟がアイルランドに向かい、

タブリンでのテロに巻き込まれて死んだと告げられたのだ。

遺伝子調査の結果織斑十春だと判明した死体が送られた。

無論、クラスメイトにも連絡がホームルームで連絡された。

しかし翌日、あろうことか見慣れる顔がその席に座っていた。 

 

「……お前、死んだんじゃ」

 

「おっと、先生。此処に居るのはアイルランドの国家代表。

 

成層圏まで狙い撃つ男。『ロックオン・ストラトス』だ」 

 

「……つまりか、自分の生体データやらをアイルランドに売り込んだ」

 

「おいおい、俺はロックオン・ストラトスだって言ってるだろ?第一、その織斑十春って奴の死体は見つかった。良かったな」

 

「アンタ!巫山戯んじゃ」

 

「知らないね、アンタは誰だ」

 

誰に対しても初対面かのように話しかけ挨拶を行う姿に驚く。

 

しかし、死体は既に見つかっているのだ。目の前の男が十春な訳が無いとリンも理解している。当日は合同授業も無いため、ロックオンは悠々とクラスから去り生徒会室へ向かった。

 

「……副会長、仕事たまり過ぎでは?」 

 

「主に貴方のせいかと」 

 

「……ハルくん」

 

「生憎だが、今の俺はロックオン・ストラトスだ。まぁ、アンタのその凍った心を狙い撃つと決めた事には違いねぇ」 

 

「まさか、日本国籍を捨てる為に死亡するなんて」

 

「まぁな、アイルランドの国家代表だ。専用機も貰えた」

 

「ニュース見たわよ、あり得ない動きね」

 

「伊達にシミュレーターはしてないさ。ほら!ペン動かせ、手伝うさ。副会長だけに迷惑はかけられん」 

 

「そう思うなら、死ぬ事は無かったと思いますが?」

 

「さぁな、元々血の繋がりもないんじゃないのか?俺は元来、日本人的な顔じゃないしな」 

 

「確かに、アジア系というよりヨーロッパ系の顔付きよね。それで、クラスメイトとは?」 

 

「仲良くやってるさ、ティナとも和解した」 

 

生徒会としての仕事が終わり、3人で雑談タイムに入る

 

「テロリスト討伐。

しかし、その際アイルランドの機密機体を奪取。

その後返却。しかも、そのアイルランドの機体は本来フルスキンタイプでもないにも関わらず、貴方の肉体に合うように変化。

さらに、パイロットよりも扱いに長け、もう一人の代表にも

土をつけた。何してるんですか?」

 

「どぉ!どぉ!怒らないで下さい。虚副会長。

俺はただ、民間人ごと殺そうとするテロリスト。

そう言う奴等が……心の底から許せねぇだけだ」

 

普段絶対見せることのない瞳、暗部の楯無ですら思わず身震いしてしまう様な殺気に言葉が出ない。 

 

「ロックオン!オキャク!ロックオン!オキャク!」

 

「ハロ、生徒会にいる時ぐらい静かに」

 

「生きてたんだな」

 

黒のスーツに身を包む女性、織斑千冬。

 

「誰だ?俺はロックオン・ストラトス。

 

ソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ」

 

(ソレスタルビーイング?ガンダムマイスター?)

 

思わず出た言葉にロックオンは内心しまったという感情を覚える。ソレスタルビーイングは此方に存在しないが、ガンダムマイスターの単語に関しては機体が連想される危険がある。

 

「何故…お前は私から」

 

「なぁ、笑える話をしてやるよ。俺には別の記憶がある。

アイルランドのダブリンだ。彼処で俺はテロにあった。

燃え盛る中で俺は必死に逃げた記憶がだ。

俺は誰だ?俺と兄弟という結果が出た2人がアイルランドにいる。ライルとエイミーだ。俺は彼奴等の兄だった記憶がある。

DNAでも兄弟と出ちまった。じゃあ、アンタラと過ごした俺は

なんだ?俺も驚いていてな、俺とアンタラの血の繋がり。本当にあるのか?俺は、アンタラの弟なのか?アンタは……

俺の本当の家族なのか?」

 

「……」 

 

千冬は目尻に涙を見せ、生徒会室を後にした。

 

「ねぇ、さっきの話本当なの」

 

「ん?あぁ、マジだ。と言ってもアイルランドで判明した。

俺は昔、手術した事があるらしい。と言っても記憶に無いがな。調べたら過去に1週間だけ疾走した日があってな。

兄貴は旅行、姉貴は仕事だ。誰も気づかなかった。

俺は誘拐されていたらしく、身体の中に二人の肉体が入ってる」

 

「は?」

 

「俺はニール・ディランディと織斑十春のハイブリッド

(という設定)だ。右脳と左脳も別々、臓器も綺麗に半分ずつ。

血もそうだ。血液検査からどちらの遺伝子もでる。

俺の身体で二人生きてるんだからな」

 

「じゃあ、貴方は誰なの?」

 

「俺は織斑でも、ディランディでもない。更識楯無。

お前の凍り付いた心を撃ち抜くと誓った男。

ロックオン・ストラトスだ」

 

キザな台詞を気にせず言いながら楯無の唇を奪う。

ロックオンがこの世界で本気で惚れた女性だ。

守りたいし、ものにしたい。奪われたくない。

 

「やはり旦那様とお呼びしたほうがよろしいので?」

 

「諜報員ならもう少しやらないとな。会長?会長!」

 

「……気絶ですか?本当に初心ですね」

 

「ひゃい………」

 

「ベッドも一緒にするか?」

 

「それはまだ止めていただけると。流石に妊娠で中退は悪い事では」

 

「にゃあ?!にゃにを」

 

「初心だな…まぁ、嫌いじゃないさ。

さて、会長。副会長、この書類にサインしてもらえないかい?」

 

そう言いながらロックオンは2人が見慣れた書類を突き出す。

シミュレーションルームの使用許可証だ。

 

「生憎、俺の専用機は機密が満載でね。

まだお披露目なんて出来ねぇのさ。だから……」

 

ロックオンはハロと共に変わらずシミュレーションルームに籠る。専用機は情報統制され、例えシミュレーションでも表に出すことは許されない。

 

「変わらねぇな…!R2S」

 

自分の今までの愛機のデータは変わらず存在している。

ロックオンは負けない。少なくとも、同じ相手に負けていられない。 

 

「…コレは記憶が戻る前の俺だ」

 

「ロックオン!ヤレルゾ!ロックオン!ヤレルゾ!」

 

「あぁ…ロックオン・ストラトス。R2S、狙い撃つぜ!」

 

ターゲットは甲龍。

ハロと学園にあるデータベースから現在の実力に限りなく近い

性能と戦い方を再現したAIだ。

だが、所詮AI人間の土壇場の動きは出来ない。 

 

「……こんなんじゃねぇ。彼奴の……あの女の動きは」

 

舐められた、死に物狂いで努力している全てを否定された。

この世界でロックオンの本名はニール・ディランディではなく、

織斑十春である。その心の底にある感情。ソレを忘れては居ないのだ。

 

「あぁ、判るぜ。俺(十春)、俺(ニール)もだ。

負けらんねぇ、そう思う奴は……一人は居るんだよ!」

 

織斑十春には凰鈴音が、

ニール・ディランディにはアリー・アル・サーシェスが、

 

「だからなぁ!

「「狙い撃つぜ!」」

 

このとき、二人が完全に一体となった。

記憶も感情も同じ。織斑十春でもない、ニール・ディランディでもない、ガンダムマイスター『ロックオン・ストラトス』の復活だ。

 

 

深夜、ロックオンも疲労からか深い眠りに入っていた時間帯。

二人の生徒と一人の教師がシミュレーター室のデータを閲覧していた。

 

「…凄いですね。有線シールドを自在に」

 

そう言うのはロックオンに副会長と呼びれている布仏虚だ。

楯無と共に常にロックオンのシミュレーターは確認しているが、

今回のデータはその中でもずば抜けていた。

 

「試験の時から十春君いえ、今はストラトス君ですね。

彼は跳弾を使っていました」

 

山田真耶。ロックオンが敬愛してやまない女性であり、

ある意味では師である女性だ。狙撃に関してはロックオン自前の特技であるが、跳弾は織斑十春が始めて試合で見たのが始まりであり、憧れが生まれた瞬間だった。

 

「それでも異常です。あの、ハロという支援システム。

彼が開発したらしいですが、AIですか?

意志があるように感じます」

 

楯無の言うのはハロだ。ロックオンの後ろか隣、場合によっては

肩に乗っている丸型のサポートロボット。

ソレを作り出したのだから笑えない。

更に今回の甲龍とR2Sの戦闘シミュレーション。

実力は現在のデータとなっているため、ロックオンが敗北し、

当時から幾ばくかの成長が見られるデータだがそれ以上に

ロックオンの成長が著しい。

 

「IS適正A−。しかし、身体が弱いと」

 

「えぇ、現在は吸入等はしていないようですけど。 

 

発作が起きない様に薬は現在でも服用しているようです。

 

でも、それ以上に………」

 

「はい、他の部活から苦情というか意見が上がっています。

 

誰よりもきついトレーニングを行っていると。調べましたが、

代表候補生以上でした。身体の弱い少年が行うレベルじゃない」

 

「でも、それが合ったからストラトス君は自力でアイルランド代表の地位も手にした」

 

「…死にましたけどね」

 

日本国籍では死んでいる。政府も直に死体を確認したのだ。

いや、してしまった。だから、アイルランドに手を出せない。

元々、日本人的な顔つきではなかったのもある。

 

「織斑先生は苦しむでしょう。でも、乗り越えて頂かなくては」

 

 

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