ロックオンが帰還してから1組と2組の関係は最悪と言っても良い。2組の男子生徒たるロックオンは模範生ながら、
1組の織斑一夏、篠ノ之箒、そして教員の織斑千冬との関係は
まさに最悪であった。2組でも凰鈴音にも常に睨まれており、
当人は気にしていないが周りが気にしている。
「ティナ、エミリー先生を見てないか?」
「まだ来てないよ。多分、職員室だと思う」
「はぁ…職員室ね…まったく、面倒だ。
俺はオリムラ・トウシュンじゃないロックオン・ストラトス
なのにな。ハル、ハルって呼んで来る」
「……そりゃあファミリーが死んだら誰でも悲しむよ。
ましてや」
「おっと!」
ロックオンはティナの口に手を当てそれ以上を言わせない。
「悪いな、じゃあ行ってくる」
教室から去るロックオンをティナは溜息をつきながら見ている。
ロックオンの態度はおろか何一つ変わってない。
ただ、ハルと言う呼び名には特に反応しなくなった。
最初は偽物かと思ったが、皆本人だと確信して接している。
むしろ、オリムラ・トウシュンだと暗黙の了解だ。
「はぁ……」
「ティナ、あの……」
「リン、ハルとの関係改善は諦めた方がいいんじゃない?
ロックオンだと多分反応してくれるよ」
「でも……私はその……ハルに謝りたいし」
「………ジャパンだと確か、前途多難よ」
「…ごめんなさい」
クラスで行われている会話など知らないロックオン。
エミリーを探しに職員室に向かう間、懐かしい顔とであった。
「よぉ、元気してたか?」
「あっ……織斑十春」
水色髪の少女。
データで知った最愛の人の妹。
おそらく、かつて自分と同じ家族に対してコンプレックスの
あるであろう少女。更識簪。
「悪いな、今の俺の名前はロックオン・ストラトスだ」
「?」
「成層圏まで狙い撃つ男。ロックオン・ストラトスだ。宜しくな」
「ヨロシク!ヨロシク!」
「ハロ、勝手に出てくるな」
「ロックオン!アイボウ!ロックオン!アイボウ!」
「あっ……あの時の」
「アンタのおかけで俺は生きてる。勇気に感謝だ」
「…私、守ってもらったから」
「そうか……兎に角だ。俺はアンタが居なくちゃ死んでたんだ。ありがとうな」
「え……うん」
「じゃあな、簪」
ロックオンは簪の頭を優しく撫で、その場を後にした。
「……私の名前」
そして目的地たる職員室につくと出会い頭に黒スーツの女性と対面してしまう。悲しそうな顔をする女性に道を譲り、そのまま入る。
「挨拶はしないのか?」
「魔が悪いんで。それと、エミリー先生。
俺はアイルランド人です」
「……願えば祖国にお前を推薦したと言うのに」
「アイルランドに用があったんですよ」
「…本題はなんだ」
「俺は専用機を出すつもりは当分はないんでね。変わらず、
ラファールを使いたいと思ってるんですよ」
「ほぉ、何故だ?」
「負けたからです。敬愛する先人に装備を与えられながら、俺は負けた。たった…たった10秒リミッターを外すのを遅らせれば勝てた。偏に…俺の経験不足だ」
ソレは職員室にいた教師全員が聞いていた。
そして、何のことだかが直ぐに理解できる。
「……最期、生命維持まで切ったのに俺は負けた。
俺は2度も負けねぇ、あの女を狙い撃つ。借り物の翼、だけど、
ソレは俺を信じてやってくれた先生に対しても……」
「お前……鍛えてるのは」
「……彼奴はティナも侮辱した。俺の今までも。
国家代表候補生、俺は今アイルランドの国家代表だ。
でもな、それとコレとは話が別なんだよ。だから…許可が欲しい。俺に専用機を使わせないでくれ」
「……わかった。使う使わないはお前の意思だ。
此方が関与することじゃない。良いな?」
「オーライ!っと…違うな。ありがとうございます。
エミリー先生」
ロックオンはそう言うと職員室を出ていった。
「……はぁ………マヤ、彼奴の尊敬する先人って貴女でしょ?
どうにかできない?」
「……アレは駄目ですね。その…楯無さんにも聞きましたが、
織斑先生と一夏君、そして鈴さんがコンプレックスになっています。彼が満足せるまで努力させるしか無いかと」
「……模範生なら模範生で居て欲しいだけれど」
同日、1年1組は歓声に包まれた。
無論、ソレをロックオンは2組から聴いていたが。
「……隣が煩いが、此方は此方でその騒いでも良いんだぞ?」
「ホームルームを始めます」
「…鈴音、始めろ」
クラスの雰囲気は1組とは違い実に厳格だ。
「1時限目は合同授業だ。遅れるなよ」
着替えの為、移動が必要になるが1組とは違い2組は静かだ。
そして、ロックオンが全身タイプのスーツを来ていると二人組が入ってきた。
「あっ……ハル」
「え?知り合い?」
「俺の弟の…」
「知らねぇな。俺はロックオン・ストラトス。
成層圏まで狙い撃つ男だ」
「イチカ、キョウダイ!イチカ、キョウダイ!」
「ハロ、静かにしてろ」
そのまま何も言わず、ハロと共にアリーナへ出る。
一瞬、苦しそうな顔をする織斑千冬と視線があったが、
ロックオンは変わらず静かだ。
「……お前、織斑十春だな」
「人違いだ。俺の名前はロックオン・ストラトス。
アイルランドの国家代表だ。
それに、ソイツは死んだ、アイルランドでな」
「ふん…」
銀髪眼帯の少女が話しかけてくる。
気配は何処か自分と同じである。
「……お前は努力で地位を勝ち取ったな」
「努力?」
「あぁ、お前は教官の弟だが」
「……巫山戯んなよ」
ソレは1組、2組、問わず雑談を止めるには十分な程の低い声。
「俺はなぁ…誰かの努力を踏み躙って此処に居る。
努力で地位を勝ち取った?お前が知った口を聞くんじゃねぇ。
俺はな、落ちちゃいけねぇんだよ。ソレが、俺が踏み躙った誰かに出来る……最低限の礼儀何だよ」
「……先人から言わせてもらう。お前の努力はお前のものだ」
銀髪の少女はそれだけ告げるとロックオンから離れた。
「あっ……あの……ロックオン?」
「悪いな、ティナ。皆も……忘れてくれや」
ソレはロックオンの、織斑十春の心からの独白。
知っていたのは楯無だけだったが、こうして広まってしまった。
そして数分もせず、ラファールに乗った教師が堕ちてきた。
ソレは尊敬する山田真耶、兄たる一夏に胸を揉まれるという点以外、別におかしな所はない。
専用機持ちたる鈴とセシリアが誰かと戦うデモンストレーションを千冬は話していた。
その時、どうしてもロックオンは闘志が隠せなかった。
「……あの……ストラトス君が凄い怖いんですが」
「山田先生、変わって貰えませんか?」
「え?」「「は?」」
「駄目です。今のストラトス君を戦わせる訳には行きません」
「……了解です。(まぁ、貴方が負ける訳ありませんし)」
ロックオンはそのまま下がる。
不穏な空気が立ち込めるが、誰も何も言わない。
ロックオンは離れると食い入るように真耶を見つめる。
ティナが近づいてきて軽口を言う。
ロックオンの真剣な眼差しは茶化しが利くものではない。
でも、友人として聞くべきだと感じた。
「……山田先生が好きなの?」
「……師匠を超える。なら、全て研究すべきだろ。
ソレに……鈴音とオルコット嬢が山田先生に勝てるわけがない」
「うそ……山田先生ってそんなに強いの?」
「……見ていれば判るさ」
そして、真耶の駆るラファールは瞬く間に鈴音の『甲龍』と
セシリアの駆る『ブルー・ティアーズ』は撃墜判定を受ける。
「状況終了です」
ニッコリと微笑みながらそういう麻耶にロックオンは尊敬の眼差しを向けている。ソレを気付いたのか、気恥ずかしそうに顔をそらす。
「……コレでIS学園教員の実力が判ったろう」
そして、ISの操縦訓練に入る。
ロックオンはラウラ・ボーデヴィッヒの班だ。
「……民間人とは思えないな。鍛え上げられた肉体。
それに、その目。お前、一体何を見てきた」
「何をだ?地獄だよ、誰彼構わず死んでいき、隣にいた家族や親友が死んでいく世界だ」
「……お前の目は良い」
「お前は俺を怒らせる天才だよ」
ロックオンは怒りを通り越して呆れを感じている。
何故かは判らない。なんてことは無い。
努力を踏み躙ったいなければ、むしろ認めてくれているからだ。
ソレはソレとして受ける言葉は怒り心頭だが。
そしてリーダー、ラウラ。副リーダーロックオンで進んでいく。
「……こんな事も出来ないのか!」
「止めろ、民間人が四六時中ISに触れられると思ってるのか!」
「シミュレーターぐらいは乗れる筈だ。調べたが、基本的にシミュレーターは空いている。誰かが独占している訳でもない。
コイツラは怠っているだけだ」
「軍人じゃねぇ。お前はただの生徒に何を求めてんだ」
「軍人だ、ISは兵器だぞ。
ソレを扱うからこそ、覚悟がいる。だが、コイツラは違う」
「ストラトス君、大丈夫。復習とかしてないのは本当だから」
「うん、庇ってくれてありがとう」
「ほう、自分の改善点は理解するか」
「だから……教えて下さい!ボーデヴィッヒさん!
ストラトス君!」
「……判った。だが、私のはドイツ軍式だ。厳しく行くぞ」
ラウラはまるで指揮官の様にチームの生徒達を厳しく、
だが的確な指導で導いて行く。
正直、始めからそうしろという感情は否めないが、
ラウラが鞭、ロックオンが飴として活動できただろう。
「片付けは俺がやる」
「えっ…手伝おうか?」
「悪いが、コレもトレーニングなんでね」
ロックオンはISスーツを着るたびに筋肉が鋭くなっている。
しかし、ソレも妥当だろう。
生徒会に意見具申される程に厳しいトレーニングを行っている。
そして、その理由も皆が知った。
千冬の解散の号令と共に、ロックオンは更衣室に走る。
ソレは一重に、会いたくないという気持ちの現れだ。
「あっ……」
「……どうした」
「いや……なんでもない」
「そうか」
「えっと、僕は」
「デュノアだったな。ラファールの解説をしていたな。
俺もラファールを愛機にしてる。いつか、俺のR2Sとお前の
R2C、何方が上か……決めようぜ」
「あっ、R2C?」
ロックオンはそれだけ言うと廊下の奥へと消えた。
そして放課後、ロックオンが生徒会の仕事を終え立ち去ろうとした時だ。
「ねぇ、ハルくん。シャルル君だけど」
「嫌な予感がする、知りたく無い」
「女性で企業スパイらしいのよ」
「俺の話聞いてたか?知りたくないって言ったよな」
「まぁ、君みたいに訓練も受けてなければ唯の素人みたいだし、多分親御さんが守りたくて此方送った様なものだし」
「なぁ…会長、俺に何しろと」
「お兄さんを宜しく」
「……なら、報酬でアンタを貰うぞ」
「……冗談よね?」
「……未成年だからな。でもな、俺からなら」
「……あの、ハル君。私も居るのですが」
「副会長、失礼しました」
ロックオンが去ると残されているのは楯無と虚。
「彼、アプローチと言うか……その二人きりの時も」
「……お願いですから在学中はお辞めください」
「耐える」
ロックオンへの対応に激しく疲れている学園最強が居ましたとさ。