「…タッグマッチだと?」
「言うけど、私が原因じゃないわよ!
上からのお達し。今の学年は君も含めて専用機持ちが」
「……」
「まぁ、ハル君の場合。『かなり』グレーよりだけれど」
「日本国籍は無いさ、問題ねぇよ」
「…問題はあるわよ?貴方、パートナー申請してないでしょ。
言うけど、私は駄目よ。あくまでも同学年で。まぁ、抽選相手をみればね。ほら、端末を」
「……嘘だろ」
「そうね、冗談じゃないわよね。だって
『タッグパートナーを気絶させた』のだから」
ラウラ・ボーデヴィッヒ レーゲン
ロックオン・ストラトス 打鉄
「……打鉄なんて使った事ねぇよ」
「そうね、シミュレーターは基本的にラファール・リヴァイブ。
でも、良い機会だから練習しなさい」
「了解、どうせセブンガンの許可は降りねぇしな」
「あれはあくまでも山田先生の施しよ。貴方の専用機じゃないのだから。わかってるわよね?」
「了解、兎に角本番までにはものにするさ」
翌日からロックオンは打鉄の習熟訓練に努めた。
機体は借りれない為、シミュレーターを。
シミュレーターが駄目ならジムで訓練を。
ソレが駄目ならマラソンを。
大会当日まで肉体を酷使し、限界まで鍛え上げた。
「……連携の訓練に誘わなかったな」
「勝手に動け。俺はスナイパーだ、合わせるのが仕事だ」
「…織斑十春、教官の弟。だが、身体も弱く、常に姉と兄に比べられた。勉強は出来るがそれ以外はまるで駄目。
そして、アイルランドのテロで死亡」
「今はロックオン・ストラトスだ」
「はっきり言おう。私はお前に対して同類の様な親近感が湧いている」
そして、一息ついてラウラは伝えた。
「やれるな、ロックオン・ストラトス」
「カバーはしてやる、ボーデヴィッヒ」
打鉄に支給される武装は『刀タイプのブレード』ともう1種。
つまり、手の内を一つ完璧に潰されているのだ。
カタパルトにのり、レーゲンが出ていくのを見送る。
「……ロックオン・ストラトス。打鉄、出るぞ」
刀を持ちながら打鉄がアリーナに着地する。
レーゲンは既に戦闘態勢に入っており、
着いたロックオンに視線を送る。
そして、反対側のカタパルトから白式とオレンジのラファールが現れた。
(…キュリオスと同じ色か)
だが、あのラファールのカスタムはあくまでも拡張領域を更に伸ばしたというもの。機体性能も上昇しているが、キュリオス程では無いだろう。
「1戦目で当たるとは、待つ手間が省けた」
「俺としては、そこの女を今度こそと思ってたんだがな」
刀を向けた先にアリーナのカメラがズームされる。
底にいるのは鈴音だが、苦しそうな顔を隠さない。
「ラウラ、お前もそう思ってくれてるなら何よりだ。
ハル、俺もそう簡単には負け無い」
「ふん……時代遅れの旧式に接近戦しか出来ない欠陥機。
私がお前達をまとめて倒してやる」
「…ボーデヴィッヒ、燃えるのは良いが土壇場でミスるなよ」
ロックオンは怒りを収め、かつてのように自分を落ち着かせる。
チームプレイならロックオンは慣れている。
あの難癖もあるメンバーと共にやっていたのだ。
今は精神が年齢に引っ張られているが、
今なら前回のようなミスも、ましてや仲間を撃たせる等と言う事をする気はない。
「…背中は任せるぞ、ロックオン・ストラトス」
「了解だ、刹……ラウラ」
一瞬、ほんの一瞬、見間違えてしまった。
男と女、似ても似つかないがロックオンはその言葉にそう返してしまう。
「試合開始まであと5秒―」
4―3―2―1ー0
「叩きのめす!」
「開幕直後の」
「軍人なら無駄口なんて叩くなよ!」
ラウラの言葉を遮り、ロックオンは白式の後ろに隠れたラファールを狙う。
「見えてたの!?」
「スナイパーってのはな、戦場を認識してこそなんだよ!」
「くっ……」
「くそ…この盾使えやしねぇ…唯のデッドウェイトじゃねえか!」
空中に浮きながらもソレは確実に死角を作る。
はっきり言えば付け焼き刃、どうしてもラファールに似せた動きになってしまう。
「やっぱりね、君の戦い方を見たけど…君の得意は機動射撃。
高機動からの射撃戦だ!打鉄はラファールと違って防御力はあるけど、その分機動性で劣ってる!シミュレーターで練習したみたいだけど!」
「……わかってんだよ!それにな………」
「パージカノウ!パージカノウ!」
「ナイスだ、ハロ!俺は何も一人でやってねぇ!」
ハロがシステムを切り替えた事により、打鉄の盾が落ちて行く。
そして、隠された武装が見える。
「ハンドガン?!」
「レーザーガンだがな!」
背中にスナイパーライフルをマウントし、地面に落ちた2丁の
レーザーガンを瞬時に拾い、シャルルに向けて撃つ。
「くっ……」
「どうした……狙いが甘いぜ、お兄さん?」
「…同い年に言われたくないねぇ!」
「生憎だが!まだ14なんでな、俺はお前等よりも歳下なんだよ!」
「は?」「え?」
「戦場で立ち止まるな!」
ロックオンは即座にスナイパーライフルに持ち替え、
シャルルの額を撃ち抜く。
「かは…」
「シャル!」
「お前は離れてな!」
捨てた盾を蹴飛ばし、白式が対応せざる得ない様にする。
「サーベルは」
「んなのは使うかよ!」
もう一つのデッドウェイトを投げ捨てたロックオンは射撃戦に
本腰を入れていく。
「うそ……此方はサブマシンガンなのに!」
「動きが単調なんだよ!」
「それでも!」
はっきり言えば、ロックオンに勝ち目はない。
いくらロックオンの実力が高いと言えど、機体性能と武器の数が違いすぎる。レーザーガンも予備弾倉は多くない。
もし、無くなればスナイパーライフル一丁。
その残弾も心もたない。
「もらった!」「なっ?!」
シャルルに釘付けになっていたのが仇となる。
一夏はレーゲンの攻撃を抜け、シャルルの援護の為に『瞬時加速』と共にスナイパーライフルを破壊した。
「お前……学校の備品を!」
「悪いな!でもシャルの方が大事だ!」
「…一夏」
頬を赤らめているシャルルと抜かれた事に対して不満げなラウラ。
「済まない、してやられた」
「気にするな」
ロックオンは捨てたサーベルを右手に。
そして、左手にレーザーガンを装備した。
奇しくも、あの日と似通っている。
問題があるとすれば、打鉄備え付けのサーベルは『刀』。
「得意のライフルは無い!降参したら?」
「あぁ……降参?生憎だがな、やれるかよ!
ハロ、手加減無用だ!全リミッター解除」
「キケン!キケン!」
「此処で此奴を落とさねぇと……頼む、相棒!」
「システム、オールグリーン!システム、オールグリーン!
ノコリ100セコンド」
「上等!」
「な?!」
ロックオンはあの時のように全てを速度に回す。
擬似的なトランザム、攻撃性能へ変わらない。
だが、生命維持、絶対防御に回されるエネルギーの大半が
スラスターや速度に関係する方面に向かう。
「そんな……専用機でもない!ただの、打鉄で!」
「狙い撃てないんでな…圧倒させて貰うぜ!」
「くっ……スナイパーの筈でしょ!」
「ブレードを使わねぇのはプライドの問題だ!
別に使えねぇ訳じゃない」
ロックオンは狙撃機体であるデュナメスで接近戦機体の
スローネツヴァイともほぼ、互角にやりあったのだ。
「なんで邪魔するのさ!一夏は君のお兄さんでしょ!」
「俺はデュナメスのガンダムマイスター、
ロックオン・ストラトスなんだよ!」
ISの武装はどれもこれもサイズが大きい。
そのため懐に入りれたら射撃戦の機体は本来、
対処が難しいという欠点がある。
だから、最低限サーベル等の接近戦兵装が積んである。
「それにな……俺個人の馬鹿みたいな感情よりも、
パートナーの意思を今は優先してやりたいんだよ」
「君は!」
「ロックオン!」
「ハル!先にお前だけでも!」
ラウラが叫んだ時には白式は零落白夜を使い、
打鉄を斬りさこうと動いていた。
「くそ……」
左腕が斬られ、一気にシールドエネルギーが消えていく。
だが、それだけだ。サーベルを失ったが、武器ならある。
「まだだ!」
だが、一瞬の隙をシャルルは許さずライフルで
左足のスラスターを破壊する。
「ダメージレベルB、生徒会役員がこれか……罰則だな。
シールドエネルギー残り20%。残り時間……20セコンド」
「ロックオン、もう良い!お前は」
だが、ロックオンは動く。
使える武装としてまたレーザーガンがある。
残り時間は少ない、20秒もない。
だが、それでもまだロックオンは戦える。
「どうせ負けるんだ、ならパートナーの為に
……幾らかは道連れにしてやるよ!」
ロックオンは残ったスラスターを全開にして、一夏とシャルルを閉じ込めるように円を描きながら射撃する。
「…感謝するぞ、ロックオン・ストラトス」
「まずい!」
「バカだな、俺には2丁の銃があるんだよ!」
レーゲンのレールカノンを射撃しようとしたR2Cの手元を撃つ。
弾倉だけを狙い撃った様で、実弾のライフルは誘爆し煙が立ち込める。
「そんな……相手は手負いなのに!」
「撃て……ボーデヴィッヒ!」
「済まない……」
「シャル!」
土煙が晴れた時、レールカノンのチャージは終わっていた。
質量弾が音速の数倍の速度でR2Cに命中し、その衝撃で激しく吹き飛ぶ。
「……落ちなかったか」
「……ロックオン・ストラトス。お前は」
「駄目だな、俺もまだまだだ」
疑似トランザムと莫大なダメージにより、打鉄はもう戦闘行動は出来ない。ソレスタルビーイングのパイロットスーツを模したそれのおかげで、肌の露出もなければ今はヘルメットのせいで顔すら見えないが、ラウラは何処か笑っているように見えた。
「お前の実力なら勝てる筈だ……そうだな。零落白夜の特性、
ソイツは忘れるなよ」
ロックオンはスパークする打鉄と共に離脱する。
「撃ってくると思ったが?」
「別に……被害者を増やすつもりはないよ」
「……弟を背中から撃つかよ」
ロックオンが敗退した試合を監視室から2人の教師がみていた。
「織斑君とシャルルさんもそうですけど、
ハ…ストラトス君とボーデヴィッヒさんの連携も流石です」
「奴は2週間、打鉄の習熟訓練のみを行いボーデヴィッヒとは
いっさいの連携訓練はしていない。…ハルの才能か。
織斑とデュノアはデュノアが織斑に得わせているから成り立つ。それに、山田君に勝つ為にハルは取り組んでいる」
「…ラファールが使えれば貸し出しも申請したんですけど」
「特別扱いに……いや…ならないか。
今の打鉄もそうだが、かつてのラファールもハルのフィッティングが行われたのは試合当時だ『ショー・マスト・ゴー・オン』
を密かに改造していたのは想定外だが……」
「ハル君、あの後の事情聴取のときに
『リサイクルが罪になるなら世界中犯罪者です』
って言ってましたし、廃材の使用許可証も持ってましたし」
「だが今回は運だ。使い慣れたラファールであれば……」
「えぇ、ハル君の盲点でしたね。
基本的にラファールだけを使っていた為、シミュレーターも
基本的にラファール。打鉄は今回、いえ2週間前からでした」
「それでもドイツの代表候補生のパートナーとして遜色ない動き、更に言えば一夏からの横槍がなければデュノアを落とせて居ただろう」
「……私、嬉しいですよ。
ハル君は最初、経験が足りませんでした。でも今のハル君は全力で戦っているだけでなく、私を超えようとしてくれています」
「……そうか(仲直り、しなければ)。
そう言えば、ハルは専用機を」
「はい、アイルランドの国家代表となり
機体名『デュナメス』と呼ばれる第3世代機を。
しかし、データベースに登録されていますがスペックの大半が不明。ハル君もお披露目まで我慢してくださいと」
「……デュナメス、力天使か」
「ハル君を考えれば、射撃機体の筈です」
「……そうだな。それは……ん?!」
「…織斑…先生?」
真耶の隣から怒気が上がる。
ソレは監視カメラに映っている一つの映像だ。
「……あわわわ」
「更識……死にたいようだな」
ある意味、見たくなかった一幕を観てしまった千冬は青筋がでてくるが、以上の問題が起こる。
「あれは……VTS?」
ValkyrieTraceSystem
ヴァルキリートレースシステムの頭文字からVTSと呼ばれたそれは、千冬がドイツ軍にて教鞭を振るった際のデータを元にして作られた物だ。いわば、織斑千冬のデッドコピー。
成長する事は無く、唯当時のデータで戦うのみ。
だが、ソレが世界最強なのだからたちが悪い。
「不味いですよ!」
「教員の制圧部隊が」
その時、武器庫から直通で内線電話が入る。
「どうした!」
「此方、生徒会役員。
トラブル発生に付き、制圧行動に移ります」
ソレはいつの間にか武器庫に移動し、監視カメラに敬礼しているロックオンだ。IS用スナイパーライフルを背負い、IS用グレネードランチャーまで装備している。
「待て!ハル!」
「…そうだな、巫山戯た意地の張り合いは無しだ。
姉さん、俺は生徒会役員としてトラブルを止める義務と
トラブルを起こした張本人に罰則を与える義務がある。
…今回はフルマラソンじゃ済ませねぇな」
そのままロックオンはアリーナに向かう。
「織斑先生、良いんですか?」
「私は教師だ。命令違反した生徒に対する罰則を与えても何ら問題はない」
「…フフッ……そうですね。ハル君、命令違反ですね!」
それにもう一つ、千冬には理由があった。
未だアリーナから出てこない、シャルルと一夏。
ある意味、サポートとして最高の人員だろう。
(頼んだぞ、ハル)
そして、アリーナに向かう通路でハルを待ち構えるように
セシリア、鈴音、箒が立っていた。
「……一夏さんを助けに行きますのよね?」
「ハル、お願い。私も」
「…頼む、見ているだけは嫌なんだ。だから」
「……俺は何も見てない。例えば、起動状態にある打鉄がアリーナ前に置いてあることも、後ろから誰かがついてきていることも知らない」
「ありがとうございますわ!」
「ハル、済まない」
「……ハル、その」
「鈴音、お前を倒したい気持ちは変わらない。
お前は俺の今までを踏み躙ったしな。でも、今必要なのは
ボーデヴィッヒ、デュノア、兄さんの救助だ。だから……
お願いね、鈴姉さん」
「…うん!」
鈴姉さん。ソレは織斑十春がかつて鈴音を呼んていた呼び方。
「…私には無しか」
「箒姉さんもだ、打鉄のフィッティングは自分でやれよ?
あと、乗った瞬間厳罰は覚悟してくれ」
その頃、アリーナ内では動かない織斑千冬。
SE切れ間近で下手に動けない白式とR2Cが睨み合っている。
「……一夏、どうする?」
「千冬姉の偽者は倒したい、でも……」
「白式、R2C。そこから離れろ!」
声と共に後退した2人の前でVTSは爆撃される。
「…嘘でしょ、反動をものとも」
「それじゃあ、違反者。2人を宜しく」
弾切れまでグレネードランチャーが撃たれる。
だが、撃つロックオンの背から3機のISが飛び出した。
「「「一夏(さん)!」」」
「セシリア!鈴!箒!なんで?!」
「一夏さんが危険な状態でしたので!」
「デュノアだっけ?アンタも補充しなさいよ」
「私が抑えておく、二人とも頼むぞ」
「……」
エネルギーコアからバイパスで白式とR2CにSEが渡る。
「…これでも20%か」
「僕は40%」
「嘘…私の甲龍、もう50%よ」
「ブルー・ティアーズも同じくです」
「お前等!話してる暇あるなら手伝え!」
「ごめんなさい、ハル…はる?!」
「冗談じゃねぇ!」
ソレは『暮桜』。
擬似的に作り出されたそれだが、箒とロックオンを殺さんと迫る。
「篠ノ之…生きてるか!」
「お前、自分の心配しろ!」
「死にかけだ!見てわかれ!」
箒の前では暮桜の雪片をスナイパーライフルで押さえているロックオンがいた。ISと生身の力の差で今にも潰れそうだ。
それだけでない、破片か何かが刺さっている。
スーツの右脇腹が朱色に染まり、赤い液体が滴り落ちる。
「ハルを離せ!」
「…助かったぜ、兄さん」
「……後は任せろ。千冬姉の偽者は…俺が」
「……俺は別に死にたいわけじゃないんでね。ISもねえし、狙撃に徹する。後は頼むぜ?エリートさん」
「その怪我では」
「生憎だが、オルコット。…織斑千冬の癖を理解してるのはこの世で正々3人だ。こんなふうにな」
箒に迫った暮桜の腕がスナイパーライフルで狙撃される。
「動けないが、援護はできる。俺のタッグパートナーの救助は頼んだぞ」
ロックオンはスナイパーライフルを抱えながら走る。
脇腹はスーツによって圧迫されている為、完全では無いにしろ止血になっているのだ。
「…世界最強のデータから作られた偽物」
それでも、戦闘能力は世界最強として居た時代。
世代遅れの機体、更に雪片という刀タイプのブレードのみ。
そのはずなのに、代表候補生+αに対して互角に渡り合う。
「……残弾は1、どうする?」
マガジンに弾はない、暮桜を押さえていた打鉄は倒され、
結局専用機持ちが対応している。それでも、勝ち目はない。
「兄さん、零落白夜で仕留められるか?」
「…隙があれば、行けるはずだけど」
「なら、簡単だ。専用機持ちが全力でやる。隙を見て、斬れ」
「そんなの」
「囮にしろ、それしか無い」
ロックオンの言葉に非情になりきれない一夏は否定をしようとする。
「……偽物を倒したいんなら、選択を誤るな」
シャルル、鈴音は倒された。
だが、白式の零落白夜を完全に当てるタイミングはない。
「不味い…一夏さん!」
ブルー・ティアーズを抜け、瞬時加速にて白式に迫る暮桜。
「あぁ、俺を忘れてたな」
ロックオンは背後に移動していた。
暮桜も既に戦線離脱していたと思っていたことだろう。
銃声と共にスナイパーライフルの弾丸が暮桜に迫る。
「AI、機械じゃそうだよな」
どうしても機械は反応してしまう。
特に、敵対者を倒す事を意識するAIは。
「皆…ありがとう!」
スナイパーライフルを構えるロックオンにせまる暮桜。
アイアンサイトを覗きながら、自らの勝利を確信する。
「チェックメイトだ」
ロックオンに雪片が振り下ろされる。
ソレをスナイパーライフルで受け止める。
「おぉぉぉぉ!!!」
暮桜の背中が零落白夜によって斬り裂かれ、
中にいたラウラが救助される。
そして一夏に群がる様にメンバーが寄っていく。
「………」
スナイパーライフルとグレネードランチャーを背負い、
アリーナから出る。
「改めてよ、弁明はあるかしら?」
「その前に……医療キットくれないか?」
「武器は私が、ハル君はお嬢様と共に保健室へ」
ロックオンに肩を貸し、楯無は歩く。
「……厳罰よ。わかってるわよね?」
「あぁ」
「他にも織斑先生に対しても……他には」
「…あぁ……」
「聞こえてるわよね?」
「………あぁ…」
「…うそ、今すぐ行くから……お願い!歩いて」
ロックオンの脇腹の傷は大きく、出血も大きい。
意識を失う狭間で、ロックオンは確かに歩いている。
「…なぁ……刹那、お前は……変われたか?」
「誰よ刹那って!兎に角、目を開けて!頑張って歩いて!」
ロックオンは死ぬつもりはない。
ただ、休みたいだけだ。
「……騒ぐなよ。まだ死なねぇさ」
「なら歩いて!お願い……お願いだから」
ロックオンは保健室の前で意識を失った。
死んだ訳では無い、ただ出血と疲労だ。
ロックオンが目を覚ました時、夕暮れが迫ってきていた。
部屋にはもう一人おり、ロックオンが目覚めたのを知ると話しかけてきた。
「…生きていたか、ロックオン・ストラトス」
「ボーデヴィッヒか……お前の願いは叶ったか」
「負けた…完膚なきまでに。
済まないな、お前の望みは叶わなかった」
「気にするな、俺も面倒を見るってのを思い出した」
「……お前も強い、お前は何故そこまで」
「俺はとあるウサギ曰く、『気持ちの悪い腰巾着』らしい。
織斑千冬と織斑一夏と篠ノ之箒に付き纏う…な」
「『天災』の言葉か?」
「肉体的にも、俺は弱かった。
俺は努力しただけだ、常に弱者として守られるのが嫌だった。
織斑千冬という鳥籠の中に居るのが嫌だった。
『天災』の言う通りさ、俺の本心ではあの家はただの鳥籠だ。
俺がラファールで飛んだ時、自由を感じた。
鳥になれた、だが……そのせいで誰かの未来が奪われた。
俺はただ、自己満足の為に動いてるだけだ。
努力してるのも、ただの『エゴ』だ。
自分は努力してる『自分が落とした誰かの為にも』ってな。
結局、自己満足で罪悪感を忘れないようにしてるだけさ」
「…罪悪感か」
「あぁ、その罪悪感も終わりだ」
「…一つ聞かせてくれ。お前は、土壇場いや…はっきり言う。戦場を知っているな。だが、日本人の……教官の弟のお前が」
ロックオンは再び、設定を使う事にする。
「俺は…織斑千冬の弟、織斑十春じゃない」
「意味がわからん…どういう」
「織斑千冬と織斑一夏が居ない夏休み、日本に居た少年は人知れず誘拐された。その時、年齢は違うがまさにドッペルゲンガーとしか言えないアイルランドの少年と出会ったんだ。俺は世界最強の弟だが、肉体が弱かった」
「……」
「狂気の実験さ、別人同士を半分ずつ掛け合わせた。
臓器、肉体、脳組織。俺はその実験が成功したのさ。
ただ、肉体が馴染むまで時間がかかった。
それだけじゃない、実験中の記憶を全てもう一人の俺。
ニール・ディランディの記憶と共に封印した」
「……まて、まさか」
「そうだ、俺は人を殺した経験がある。
ニール・ディランディの意識と織斑十春の意識が融合したのが
今の俺、『ロックオン・ストラトス』だ」
「…そうか」
「じゃあな」
「待て、お前は負傷者で」
「厳罰を受けなくちゃいけないんでな。お前も……そうだな、
フルマラソンは覚悟しておけよ?」
「……嫌だ」
「軍人だろ、民間人に負けるなよ。ラウラ」
ロックオンは最期にラウラの頭をくしゃくしゃと撫でた。
過去、妹エイミーにしたように。
部屋から出ると気まずそうな顔の鈴音が壁に寄りかかっていた。
「……よぉ、盗み聞きか?」
「……アンタは誰なの?」
「ふ…俺か?俺は…アイルランドの国家代表。
成層圏まで狙い撃つ男、『ロックオン・ストラトス』だ」