織斑の末弟   作:影後

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臨海学校

ロックオンは珍しく休日を過ごしていた。

まぁ、1人ではないが。

 

「ハル、どっちだ?」

 

「アダルティックなエロスを求めるならブラック。

清楚さ、気高さを求めるならホワイトだな。

まぁ、俺個人の考えだがブラックで良いんじゃないか?」

 

「そうか、しかし一夏と違って頼りになるな」

 

「朴念仁と一緒にするな」

 

「なら、ストラトス君!私は」

 

「山田先生なら……イエロー……グリーン」

 

「……迷うんだな?」

 

「姉さんと違って、ほんわかしてるタイプは始めてだ。

アンタならクールビューティータイプで済んだが……

ヘアカラーに合わせるか……それとも、イエローで……」

 

「イエローが良いです!」

 

「サイズはご自身でお願いします」

 

そう、現在。姉と師匠の水着選びにつきあわされていた。

 

「それで?お前の水着は?」

 

「ウェットスーツだ、それ以外にあるかよ」

 

「……済まない」

 

ロックオンは入学してからというもの、切創、銃創、骨折。

と数多くの怪我をしてきた。

中には痛々しい手術痕もあり、露出を多くは出来ない。

 

「別に良いさ、んじゃ俺も試……」

 

「そうだな、みせ……」

 

「はい、きっと格好………」

 

ロックオンが更衣室を開けると何故か見知った顔がいた。

片方は水着でもう片方の制服に寄りかかり、上目遣いで

見つめている。

 

「……俺は帰る」

 

「待て!ハル誤解だ!」

 

「誰だ?俺の名前はロックオン・ストラトスだ。

人違いは勘弁だぜ」

 

流石に更衣室で及ぼうとした相手の家族だとは思われたくない。

 

「あ……ストラトス君?」

 

「んーと、あっ…店員さん会計お願いします!」

 

本当なら試着したかったが問題はない。

サイズはあっていたのだ。

ロックオンは試着よりもすぐにこの場から離れたかった。

 

「それで逃げ帰ったと?」

 

「なぁ、会長。俺はあの朴念仁がそこまで及んだとは思ってない。でもな、不特定多数の人に見られた可能性があるんだよ」

 

「あっ……そうね。それで、水着は」

 

「見るか?」

 

ロックオンがシャワー室に入り着替える。

そして楯無に見せたのは肉体にぴったりとした

フード付きのフルスーツだ。

 

「……色気も何も無い」

 

一部が大きく鳴ることもなければ、フードを被っているせいで

丸顔にすら見える。真っ黒のウェットスーツ。

むしろ、ダイビングスーツとでも言えるほどの物だ。

 

「体温を保ってくれる一品だ。

此奴なら氷点下でも活動できる」

 

「……そう」

 

正直サーファー等のウェットスーツを想像していた為、

呆れが強いが、子供らしく楽しんでいるのだと思える。

 

「別に楽しむつもりはないさ、俺はそこまで子供じゃない」

 

「え?」

 

「辞退しようとしたんだがな、

先生方が許可してくれないんだ。

更にだ、『織斑一夏と凰鈴音の問題』が起きた場合、

ティナに全て任せるつもりかと言われた」

 

「……うわぁ」

 

「まぁ、この際だ。日本の温泉を堪能するさ」

 

「…半分、日本人よね?」

 

「…悪いな、ニールに引っ張られた」

 

幼少期、篠ノ之家からの施しで何度か温泉旅行に付き合わせて

もらった記憶はあるが、過去の事だ。

正直、記憶に無いのが正しい。

 

「泳いだりとかは?」

 

「しないさ」

 

そして臨海学校当日。

ロックオンがバスに乗ると隣の席の生徒に話しかける。

 

「悪い、ちょっと疲れててさ。着いたら起こしてよ」

 

「良いよ!でも、うるさかったらごめんね!」

 

学友達の騒がしさを聞きながら目蓋を閉じる。

 

「テメェだって同じじゃねぇか!」

「紛争根絶を掲げる!テロリストさんよぉ!」

 

それは彼奴との最後の会話だった。

鹵獲されたスローネと自分の相棒が切り合っている。

 

「咎なら受けるさ…お前を倒した後でなぁ!」

 

利き目が利かない状況でもロックオンはサーシェスに迫る。

 

「絶対許さねぇ!」

 

GNスナイパーライフルを右手撃ちながらで、

左腕のGNサーベルで近接機体たるスローネツヴァイと

互角にやり合う。

 

「テメェは…戦いを生み出す権化だッ!!」

 

フル・スロットルでスローネツヴァイにデュナメスが迫る。

 

「喚いてろ!同じ穴の狢がァ!!」

 

「テメェと一緒にするじゃねぇ!」

 

叫び声と同時にGNスナイパーライフルを離し、

もう一本のサーベルでスローネツヴァイの片腕を

斬り捨てる。使い終わったサーベルを投げ捨て、

スナイパーライフルを再び持つ。

 

「俺はこの世界を……」

 

「テッキセッキン!テッキセッキン!」

 

あの時のMSさえ居なければ、いや……

何れにしろ利き目が見えていない時点で何れ負けていた。

 

「……あぁ……何やってんだろうな……俺は……」

 

ボロボロの身体でGNアーマーのキャノンと接続した

スコープ端末から悪魔を狙う。

 

「けどな……此奴をやらなきゃ…仇を取らなきゃ…」

「俺は……前に進めねぇ……世界とも…向き合えねぇ」

 

「はぁ……はぁ………だからさぁ………」

 

 

「狙い撃つぜぇぇ」

 

 

誘爆したスローネツヴァイは確認した。

でも…GNアーマーは貫かれ、スーツには推進剤は無い。

それどころか……身体も動かない。

 

「……刹那…答えは……でたのかよ」

 

「満足か……こんな世界で…………」

 

ー俺は―――嫌だね

 

「ロックオン!ロックオン!ロックオン!ロックオン!」

 

「…ストラトス君?」

 

「あっ…あぁ……」

 

「魘されてたけど……大丈夫?」

 

「……大丈夫だ、だから……そんな顔をするなよ」

 

隣りにいた生徒が苦しそうなロックオンをのぞき込んでいる。

 

「(……満足か?、こんな世界で……俺は)

寝れねぇな」

 

 

 

 

 

「それでは…本日から3日間お世話になる花月荘だ」

 

千冬が教員代表として話し始める。

旅館の女将から挨拶をされ、

千冬と一夏と共にロックオンも行う。

 

「弟の織斑一夏です」

 

「はじめまして、ロックオン・ストラトスと言います」

 

「あら…変わったお名前で」

 

「本名は平凡ですよ、色々と事情がありまして」

 

そのままロックオンは一夏と同じ部屋に連れて行かれる。

 

「お前達は私と同じ部屋だ。異論は認めんぞ?」

 

「なぁ、姉さん。俺を防波堤にしようってか?」

 

「……私の部屋だ。来るはず無いだろ」

 

「……なぁ、ハル。千冬姉と何話してるんだ?」

 

「唐変木、朴念仁、アンタは周りをよく見ろ」

 

「?」

 

「一応言うが、教員と生徒だ」

 

「はい、千冬ね……織斑先生!」

 

「了解しました、教官殿」

 

「止めろ」

 

じゃれ合いをしているとは摩耶が入ってきた。

 

「あっ…織斑君、ストラトス君。

そう言えば、織斑先生と同室でしたね」

 

「……さて、織斑。織斑おと……ストラトス。私は仕事だ。

ここからは自由時間だが……」

 

「おっと…なら、その会議に参加させて欲しいんですが」

 

「なに?」

 

「俺の専用機、表に出そうと思ってまして。

先生方には事前にデータの共有をと」

 

「判った、ストラトスは来い。

織斑、何処にでも遊びに行ってこい」

 

「ハル、その」

 

「おいおい………なんでそんな顔をするかねぇ。

水着はある、海で会おうさ」

 

そして場所は変わって教員会議。

場違いな人間が一人いるが、それに対しての会話から始まった。

 

「なんでお前がいる?」

 

「エミリー先生とマリア先生。専用機を使おうと思いまして」

 

「お前、専用機を使わない許可を求めておいてそれは」

 

「……問題が起きるからですよ」

 

「あの……ストラトス君。問題とは?」

 

「この学園には俺が許せない無差別テロをやりやがった女。

その妹が在籍してますね」

 

「おい…ストラトスお前」

 

「すみませんね、ニール・ディランディの記憶ですと。

アイルランドの自爆テロのせいで両親死でますから。

どうしてもテロリストって奴が…許せないんですよ」

 

それは殺意に満ちた言葉。

ロックオンの体質は教員全員に共有されている為、

〘記憶〙という言い方に疑問はない。

 

「次に、織斑十春の記憶から。実はですね、その妹。

篠ノ之箒の誕生日がこの3日間で来ます。

あのテロリストは織斑千冬、織斑一夏、篠ノ之箒を

大切にしている。それこそ、世界がどうなっても良いほどに。

そんなテロリストが、妹の誕生日に何もしないと思いますか?」

 

「織斑先生…幼馴染の貴女からは」

 

「あり得る、何か起こってもおかしくはない」

 

「…でしょう。だから、何が起きても対処出来るように。

専用機を開放しようと思いまして」

 

「……それで、専用機は」

 

「コレです、コレ」

 

ロックオンは緑色の腕輪を見せる。

見た目は便利な腕時計だが、ソレが待機形態なのだろう。

 

「……展開はするなよ。見せる必要はない」

 

「コレでも…国家代表です。理解してます」

 

「……他にはあるか?」

 

「特には」

 

「ストラトス、お前の発言には一考の余地がある。

我々も対処を考えておく。取り敢えず、生徒らしく今は遊べ」

 

「了解しました、織斑先生」

 

ロックオンは敬礼をした後、部屋から退室する。

そして、自室に向かおうとした時、であった。

 

「へぇ~〜〜…お前、生きてたんだ。

力作のゴーレムも使い所かなぁ?」

 

「……お久しぶりですね、博士。織斑千冬はアチラです」

 

「ふ~ん、そっ」

 

興味なさげにスキップしながら消えていく。

だが、ロックオンは笑っていない。

 

「……篠ノ之箒。一体何を願った」

 

 

 

 

 

 

 

 

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